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どうなる米中貿易戦争?

2018年06月22日

どうなる米中貿易戦争?


 トランプ大統領は6月18日(日本時間翌19日)、新たに2000億ドル規模の中国からの輸入品に対し、10%の(25%ではないようです)追加関税を課すと警告しました。

 これは米国通商法301条に基づき中国の知的財産侵害に対する報復として適用するもので、6月15日には1102品目・500億ドルの中国からの輸入品に25%の制裁関税を上乗せすると発表していますが、その第2弾と考えられます。

 ただその実施については、産業ロボットや電子部品やハイテク製品など818品目・340億ドルについては7月6日から、残る化学品や光ファイバーなど284品目・160億ドルについては一般の意見募集後に発動すると2段階に分けています。

 中国もそれを受けて即座に大豆、牛肉、自動車など米国からの輸入品545品目・340億ドルについて、同じ25%の追加関税を7月6日から発動し、原油、エチレン、医療器具など114品目・160億ドルについても米国と同じタイミングで発動すると発表し、一歩も譲りません。

 トランプ大統領の6月18日の警告は、中国が最初の500億ドルに対抗して即座に同じ金額に対する報復関税を発表したことに対する「報復の報復」の意味合いがあります。

 しかし通商法301条に基づく追加関税は、昨年(2017年)7月頃から選別作業に入っていたはずで、その実施については1年弱かかってやっと545品目・340億ドルが確定しただけです。1品目ごとに膨大な事務作業が必要となるからです。

 だいたい昨年(2017年)1年間で、米国は中国から5054億ドル(モノだけ、以下同じ)を輸入していますが、逆に中国への輸出は1302億ドルしかなく(つまり米国は3752億ドルの対中貿易赤字となります)、仮に2000億ドルが追加されれば中国からの輸入の約半分に追加関税がかかることになります。

 また逆に中国が報復しようとしても米国からの輸入は1302億ドルしかないため、足りません。ちなみに中国が米国から輸入している1302億ドルの内訳は、最大が航空機(160億ドル)、その次が大豆(120億ドル)となっています。

 ここで米国が最初の340億ドルについて発動を約3週間後の7月6日としている理由は、その間に中国からの大幅譲歩を引き出そうと考えているからですが、そのまま時間切れになり本格的な米中貿易戦争に突入することになりそうです。

 ちなみに米国の輸入制限はもう1つあり、拡大通商法232条により安全保障上の問題があるとして米国が輸入する鉄鋼(25%)とアルミニウム(10%)にそれぞれ追加関税を課しています。中国と日本は3月23日の公表時から即日実施となりましたが、猶予されていたEU、カナダ、メキシコも6月1日から実施となったため、それぞれがWTOに提訴しています。

 トランプ大統領は、自動車や自動車部品に対してもこの拡大通商法232条を適用する可能性に言及していますが、1年近い調査期間が必要となるため、すぐに実施というわけではありません。

 また6月20日になって米国は、鉄鋼とアルミニウムのうち代替が難しい日本製品を含む42品目について、追加関税対象から除外しています。

 さてトランプ政権におけるこれら強硬な通商政策は、米国を含む世界の経済や金融市場にどのような影響があるのでしょう?

 そもそも2017年における米国の貿易赤字(モノだけ)は7962億ドルと9年ぶりの大きさです。ちなみに米国のサービス収支は2440億ドルの黒字で、モノとサービスを合わせた米国の貿易収支は5660億ドルの赤字となります。

 米国の貿易赤字といっても、基軸通貨であるドルが相手国(黒字国)に渡るだけで、結局は相手国による米国債の購入や米国への直接投資などを通じて還流しているはずです。やや乱暴な言い方ですが、基軸通貨である米国はいくら貿易赤字が巨額でもドルへの信認が維持されている限り(当面は維持されているはずです)何の問題もないはずです。

 ありえませんが仮に米国が貿易黒字になってしまうと、ドルが世界中から米国に還流するため世界は一転して流動性不足に陥ってしまいます。

 単純に考えれば米国も報復する相手国(とくに中国)も、輸入品価格が自動的に追加関税分だけ上昇するため、かなりのインフレとなって消費が減退するはずです。また制裁関税で競争力が回復した(とくに)米国企業は雇用を拡大するため人件費も上昇することになります。

 つまりどう考えてもマイナスしかない貿易戦争ですが、まだまだ激しくなっていくような気がしています。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.22

FRBが予定通り利上げ

2018年06月15日

FRBが予定通り利上げ


 FRB(連邦準備理事会)は6月13日まで開催されていたFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFF翌日物誘導金利を0.25%引き上げ、1.75~2.0%としました。

 今回の利上げそのものは市場で確実視されていましたが、本年(2018年)における利上げ回数が3回(つまりあと1回)から4回(あと2回)に引き上げられたと伝えられたこともあり、NYダウが119ドル安の25201ドルとなりました。

 FOMCとは、FRB理事7名と、全米に12ある地区連銀総裁からNY連銀総裁を含む5名が交代で投票権を持ち、過半数の賛成で承認されます。ところが現時点におけるFRB理事は、パウエル議長、クォールズ副議長、ブレイナード理事の3名だけで、4名が空席のままです。理事の指名権があるトランプ大統領がグッドフレンド教授ら3名を指名していますが、議会(上院)の承認が遅れており、まだ就任できていません。

 つまり今回の(今までもそうですが)FOMCは3名のFRB理事と5名の地区連銀総裁の合計8名で評決され、今回は全員賛成で利上げとなりました。またFOMCは年8回開催されますが、その後にパウエル議長の記者会見が行われるのは4回(3、6、9、12月)だけで、ここのところ金融政策はこの4回のFOMCで変更されています。

 パウエル議長は今回の記者会見で、年8回のFOMC終了後すべてに記者会見を行うと公表しましたが、それで利上げ回数が増えるわけでもないため、あまり気にする必要はありません。

 ここで今回、本年(2018年)の利上げ回数が3回(つまりあと1回)から4回(あと2回)に引き上げられたとされますが、もちろんパウエル議長が記者会見でそう言ったわけではありません。

 FOMC終了後に、3名のFRB理事に、すべての地区連銀総裁の12名を加えた15名(FRB理事の空席がすべて埋まれば19名となります)による、各年末の政策金利予想を図表化したドット・チャートが公表されます。そこで前回まで年3回と予想していた1名が今回は年4回に変更したため、その中央値が年3回から年4回に動いてしまっただけの話です。これもそれほど気にする必要はありません。

 また来年(2019年)は前回までと同じ年3回の利上げと予想されていますが、この通りとなれば本年末の政策金利は2.25~2.5%、来年末には3.0~3.25となります。

 さてこれを見た(確かに多少はタカ派=引き締め的に見えなくもありませんが)6月13日の金融市場はどのように動いたのでしょう?

 まず米10年国債利回りは一時3.01%まで上昇しましたが、結局は2.96%と前日までとほとんど変わらない水準で終了しました。いつも言うように米国の短期金利(FF金利、短期国債利回り、せいぜい2年国債までの利回りなど)は人(FOMCメンバー)が決定しますが、長期金利(その代表が10年国債利回り)は米国経済に対する市場の見通しを反映するため、それぞれが連動するとは限りません。

 この米国の長短金利差はすでにリーマンショック前の2007年のレベルまで縮小していますが、FRBが予定通りのぺースで来年末まで利上げを継続すれば、当然に米国経済の減速要因となるため長期金利がそれほど上昇するとも思えず、長短金利差が一層縮小してしまうことになります。

 株式市場でも利上げはプラス材料であるため株価が上昇するはずの金融株が、この利鞘(長短金利差)の縮小傾向から収益がそれほど拡大しないと見たのか、軒並み下落しています。

 リーマンショック以降、米国をはじめとする世界各国経済の潜在成長率が逓減しているため、物価がそれほど上昇せず、何よりも長期金利がそれほど上昇していません。

 本誌は米国経済がこの利上げペースについていけず、どこかでFRBは利上げを中断するかペースをスローダウンさせるかの判断が求められると考えます。その時こそ急激なドル安・円高になると考えています。いつも指摘していますが、今後の米10年国債利回りの水準は「とくに注目しておくべき」と考えます。

 その為替市場ですが、発表直後に一時1ドル=110.84円までドル高・円安となりましたが、本日(6月14日)の東京市場では1ドル=110円台前半の動きとなっており、これ以上のドル高になるようには見えません。

 またドルの水準を表すICEドルインデックスも、わずかながら下落しています。

 つまり今回の利上げ直後の各市場の動きを見る限り、予定通りの利上げだったとはいえ、米国経済は利上げを来年末まで継続しなければならないほど過熱しているようには見えません。

 最後にFOMC後の報道を見て「あれっ」と思ったところは、FRBも量的緩和時に大量に買い込んだ米国債やMBSを、Reserve Balances(日銀の当座預金に相当)でファイナンスしていますが、それに対する付利は政策金利の上限が適用されています。つまり今回の利上げでその付利が2.0%になるはずですが、それが何と1.95%と0.05%だけ低くなっています。

 意味がよくわからず、大変に気になっています。こういう細かいところが、あとになって重要な意味があったとわかることがしばしばあるからです。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.15

ケネディ暗殺に関する機密資料の全面公開がまたしても見送られた

2018年06月05日

ケネディ暗殺に関する機密資料の全面公開がまたしても見送られた


 日本の官庁では、重要書類が「勝手に」書き変えられたり、「密かに」紛失していたりするそうですが、本日はもう少しスケールの大きな話題です。

 少し前になりますがトランプ大統領は4月26日、1963年11月22日にダラスで暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領に関する機密資料の全面公開を「引き続き」見送り、2021年10月までに改めて公開の是非を検討するようCIAやFBIなど関連官庁に指示しました。

 これには少し解説が必要です。ケネディ暗殺については約500万件の資料があり、そのうち約4万件については安全保障上の理由から公開禁止となっていました。米国ではその安全保障上の理由とは便利な言葉で、先日もトランプ大統領が通商問題に使っています。

 ケネディ暗殺については1992年に成立したJFK暗殺記録収集法により、すべての未公開資料が25年以内に一般公開されるよう定められました。

 そしてその25年目となった2017年10月26日に2891件の資料が公開され、そのうちこれまで完全未公開だった資料も53件含まれていました(後述します)。ところがトランプ大統領はそこでも安全保障上の問題があるとして、一部資料(件数は不明ですが2万件ほどあるはずです)の公開を6か月間の期限付きで見送っていました。

 そしてその6か月目だった本年4月26日、トランプ大統領は再び未公開の重要資料すべてについて、今度は2021年10月まで2年半もの期限付きで一般公開を見送ってしまいました。

 またそれとは別に未公開の重要資料がかなり「紛失」しているようで、ケネディ暗殺の「真相」はまだまだ解明されないことになります。これはもちろん一般公開されると都合が悪い関連官庁があるからです。

 具体的にはCIA、FBI、国務省などですが、ケネディ暗殺への直接・間接の関与というより、関連する「悪事」が明るみに出ることを恐れているか、逆に致命的ミスでケネディが暗殺された責任を問われたくないからと考えられます。

 さてケネディ暗殺については、事件を調査したウォーレン委員会が1964年9月に「オズワルドの単独犯行で、一切の政治的背景はない」と結論づけてしまいました。もちろん素直にそう信じている米国民はほとんどいません。

 そこで2017年10月26日に公開された資料の中で、それまで完全未公開だった53件に何が含まれていたのかを見てみましょう。

 まずテキサスにあったジョンソン副大統領(ケネディ暗殺で大統領に昇格)の自宅を訪れた訪問者リストがありますが、ジョンソンは副大統領だったのでテキサスの自宅も警護されていたはずで、訪問者リストがあってもおかしくはありません。

 また初代のFBI長官で、何と37年間(1935~1972年)もその地位にあったエドガー・フーバーが、オズワルド容疑者がダラス警察署内で射殺された翌日に「これでオズワルドが犯人ではなかったとの陰謀説が出回ることを懸念している」と書いたメモもあります。

 いろいろな意味にとれるメモですが、そんなメモを残すということはFBIもケネディ暗殺に何の関係もなかったことになります。

 そしてこの53件の中で最も注目すべきは、ケネディ暗殺の数週間前にオズワルドがメキシコを訪れ、メキシコシティにあるソビエト大使館でKGB第13課(暗殺などを担当する部門)の人物と会っていたというCIAのメモがあります。

 オズワルドは1959年にソ連に亡命していますが、1962年に米国に帰国しています。そしてCIAはケネディ暗殺の2か月も前からオズワルドの家の電話を盗聴していたようです。

 ダラスにおけるパレードの道順を決めたダラスのカペル市長の実兄が、ビックス湾事件の責任をケネディに問われてダレス長官とともに解任されたCIA副長官のチャールズ・カペルであり、CIAはいろいろな意味でケネディ暗殺に最も深く関与していたはずです。

 そのCIAもオズワルドの電話を2か月も前から盗聴しておきながら、事件当日はオズワルドに何の警戒もしていなかったことになります。

 つまり公開されなかった資料と言っても、それでケネディ暗殺の真相がすべてわかるようなものがある可能性が少なく、結局のところケネディ暗殺は永遠の謎となってしまうような気がしています。


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■闇株的見方 » 社会 | 2018.06.05

復活する米朝首脳会談の裏側

2018年06月01日

復活する米朝首脳会談の裏側


 いったん6月12日にシンガポール開催が決まっていた米朝首脳会談が、5月24日にトランプ大統領により突然に「中止」と発表された直後から、関係各国の水面下の動きが本格化してきたようです。

 そもそも米朝首脳会談の目的は、米国は北朝鮮の「完全な非核化」とくに米国領に届く核弾頭搭載のICBM開発の停止、北朝鮮は経済制裁の解除や「できれば」米朝国交開始であるはずで、GDPが米国の数百分の1しかない北朝鮮が渾身の国力で核開発を行い、その開発停止を切り札に見事に米国から「大きな妥協」を引き出す寸前まで漕ぎつけていました。

 もっとも北朝鮮は金正日総書記時代の1993年に核拡散防止条約(NPT)を脱退し、核実験と弾道ミサイル発射実験を繰り返したため、当時のクリントン大統領が寧辺(ニョンビョン)への空爆を検討したことがあります。そこで北朝鮮が「ソウルを火の海にする」などと渾身のブラフをかけたことからクリントンが空爆をあきらめ、結局のところ北朝鮮がそれまで進めていた核開発を凍結することを条件に、米国が軽水炉2基と重油を年間50万トン供給する「米朝枠組み合意」まで妥協してしまいました。

 もちろん北朝鮮の核開発凍結は完全に反故にされ、今日の北朝鮮の「核の脅威」となりますが、今度は金正恩がそれを再び持ち出して米国から「大きな妥協」を引き出そうとしていることになります。

 それでは今回、いったんは6月12日開催で合意していた米朝首脳会談が「中止」となった背景は何だったのでしょう?

 直接の理由は北朝鮮が5月16日の「南北閣僚級会談」をドタキャンしたとか、北朝鮮高官が「米朝首脳会談も考え直さなければならない」などと大きな態度を見せ始めたことにトランプが激怒したからとされていますが、ここはちょっと考えてみる必要がありそうです。

 この北朝鮮高官とは崔善姫・外務次官のことですが、彼女は長く北朝鮮北米部長を務めた北朝鮮でも「最もまともな外交官」であるはずです。その彼女の発言としては違和感があり、かなり誇張されているような気がします。

 さらに北朝鮮は5月9日にスパイ容疑で拘束されていた3人の韓国系米国人を「先に」開放しており、またトランプが米朝首脳会談の「中止」を宣言するまさに数時間前には、予告していた通り豊渓里の核実験施設の廃棄(坑道入り口の爆破)も実行していました。

 一部には金正恩が5月7~8日に二度目の訪中(大連)を行い、習近平が改めて「後ろ盾」であることが確認されたため、その辺から金正恩の態度が大きくなったともいわれています。もともと朝鮮半島と中国東北部の利権は江沢民派が独占していましたが、習近平は昨年秋の共産党大会で江沢民派を一掃し、ようやく朝鮮半島利権を手にしたことは事実です。そこで金正恩も本年3月末に初めて訪中しています。

 しかしこれから米国と厳しい通商交渉を行う必要のある習近平が、北朝鮮カードを確保しておく必要はあっても、そこでわざわざ米朝首脳会談を「中止」させるよう圧力をかける必要もないように思えます。

 つまり米朝首脳会談を「中止」に追い込んだのは、米朝接近を警戒する中国(習近平)の圧力でもなさそうで、結局のところ主導権を確実に握り、米朝首脳会談の効果を世界的なものに拡大したい(もちろん本年秋の中間選挙対策です)トランプの仕掛けた作戦だったと考えます。

 実際にトランプは5月24日に「中止」と発表した時も、決して金正恩を批判せず、むしろいつでも(金正恩からの働きかけを)待っていると繰り返していました。そして米朝首脳会談に向けての水面下の「本当の動き」は、むしろこの時から始まったといえます。

 真っ先に動いたのは韓国の文在寅で、5月26日には予定になかった南北首脳会談を板門店で再度行い、金正恩から「完全な非核化」の意思を引き出すと、今度はトランプに「再考」を必死に働きかけました。

 そして北朝鮮も現地時間5月31日に最側近の金英哲・朝鮮労働党副委員長を18年ぶりに米国に派遣し、同5月31日までの2日にわたってポンペオ国務長官と会談しています。金英哲・副委員長は金正恩・委員長の親書を携えていると思われます。

 また同時に板門店とシンガポールでは、米朝間の実務者協議が行われており、当初の予定通り6月12日にシンガポールにおいて米朝首脳会談が行われる「準備」が整ってきているようです。その直前の6月8~9日にはカナダで先進国首脳会議(G7、シャルルボア・サミット)が行われるため、トランプにとっては絶好の「下準備」の機会となります。

 また5月31日には、ロシアのラブロフ外相まで北朝鮮を初めて訪問し、金正恩と会談しています。世界的に北朝鮮の「立場」が上がったことは確実です。

 翻って安倍首相はシャルルボア・サミットの直前に訪米し、拉致問題を議題にするようトランプに依頼するようです。出遅れ感が否めません。


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■闇株的見方 » 社会 | 2018.06.01

混迷深めるイタリア政局 波乱がありそうなユーロ

2018年05月30日

混迷深めるイタリア政局 波乱がありそうなユーロ


 久々にNY時間終了まで様子を見ていたため、早朝の更新となります。

 3月4日に行われたイタリアの総選挙以降、積極財政策など大衆迎合主義(ポピュリズム)を掲げる「五つ星運動」と、EU懐疑派で移民排斥を(さらにはEU離脱まで)掲げる極右「同盟」が連立政権を目指し、5月23日に一旦は法学者のジュセッペ・コンテ氏が首相候補に指名され組閣に取り掛かっていました。

 イタリアでは上下院議員と各州の代表者の投票によって選ばれる大統領(現在はマッタレッラ氏)が、首相の指名や議会の解散、軍隊の指揮などの権限を持ちますが、コンテ氏を首相に指名したマッタレッラ大統領が「五つ星運動」の推すユーロ懐疑派のパオロ・サボナ氏の財務相指名を拒否し、5月26日に新たにIMF財政局長などを歴任したコッタレッリ氏を新首相行候補に指名しました。

 しかし親EU派で財政再建派でもあるコッタレッリ氏は、「五つ星運動」と「同盟」が多数を占める議会の支持を得られるはずがなく、一気に再選挙となり、積極財政(つまりバラマキ)を掲げる「五つ星運動」と反EU・反移民を掲げる「同盟」がさらに躍進すると予想され、市場はイタリアの放漫財政が進むとの警戒からイタリア10年国債利回りが5月上旬の1.7%台から昨日(5月29日)には3.16%まで上昇しています。

 イタリアの10年国債利回りはギリシャなどの財政危機・金融危機がイタリアやスペインにまで飛び火した2011年には7.7%まで上昇していますが、2015年以降はECBによる量的緩和もあり1~2%で推移していました。

 もともとイタリアの公的債務はGDPの130%にもなる2兆3000億ユーロ(300兆円)もあり、もちろんユーロ圏では断トツの1位で、世界でも4位に位置しています。さらにそのうち7000億ユーロ(90兆円)が非居住者(その大半がドイツなどユーロ圏諸国)の保有となっています。

 あまり知られていませんがユーロ構成国の中央銀行間には「ターゲット2」という決済システムがあり、中央銀行間の資金の過不足を調整しています。この最大の恩恵を受けている国がイタリアで、イタリア中央銀行が「ターゲット2」を通じてドイツ連邦銀行(中央銀行)などから4430億ユーロ(58兆円)も借り入れています。

 もともとユーロを統一通貨とするEUとは、1951年にドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、イタリアといった旧フランク王国の6か国で発足したECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が原型で、以降この6か国が中心となってEU拡大・ユーロ導入が行われてきました。

 要するにそんなEUとユーロのオリジナルメンバーであるイタリアで、反ユーロ・放漫財政・反移民・果てはEU離脱まで掲げる政権が再選挙により誕生する可能性が大きくなったわけです。

 その5月29日の世界の金融市場は、当のイタリア株式(MIB指数)が581ポイント(2.85%)安の21350ポイントと、直近の高値となっていた5月7日の24544ポイントから13.0%も下落しています。

 またDAXなど欧州株式も軒並み急落しており、NYダウも391ドル(1.58%)安の24361ドルと「意外に大きく反応」しています。もっとも最近の米国株式市場で最も要注意とされていた長期金利(10年国債利回り)は、5月17日の3.11%から2.78%まで急低下しています。

 為替市場ではもちろんユーロが売られており、対ドルではすでに4月中旬の1ユーロ=1.24ドル台から、5月29日には一時1ユーロ=1.1510ドルまで下落しています。対円でも4月中旬の1ユーロ=133円台から、やはり一時1ユーロ=124.62円まで下落しています。

 円は対ドルでもつれ高しており、本日(5月30日)早朝には、1ドル=108.56円まで円高となっています。

 少し前までは、ユーロの下落は米国長期金利の上昇によるドル高・ユーロ安と考えられていましたが、ここで米国長期金利低下・イタリアの財政問題と「材料」が入れ替わってしまったことになります。

 もう少し長い期間で見てみると、リーマンショック以降のユーロは対ドルで、ギリシャなどの財政危機が何度もあったにもかかわらず1ユーロ=1.2ドルが強固な下値抵抗線となっていました。

 ところがECBが量的緩和に踏み切った2015年1月に「あっさりと」割り込み、2017年1月には1ユーロ=1.034ドルまで下落していました。2017年後半から欧州経済が持ち直しECBの量的緩和の減額・終了が予想されはじめたため、ユーロは2017年9月には1ユーロ=1.2ドルを回復し、2018年2月には一時1ユーロ=1.255ドルまで上昇していました。

 ところでこの1ユーロ=1.2ドルとは、ユーロの取引開始以来の取引中心値でもあり、重要なポイントとなりますが、ここからは次回となります。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.05.30
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