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違和感だらけの日本の2017年4~6月期GDP

2017年08月18日

違和感だらけの日本の2017年4~6月期GDP


 少し時間が経過してしまいましたが、8月14日の早朝に発表された2017年4~6月期GDP(速報値)は実質で前期比1.0%増(年率換算4.0%増)、名目で実質1.1%増(年率換算4.6%増)となりました。

 事前の予想(実質で年率2.5%増あたり)をはるかに上回る「高成長」だったことになります。ちなみに前期(2017年1~3月期)は実質で前期比0.3%増(年率換算1.0%増)、2016年度通年では実質1.3%増、名目が1.1%増だったため、明らかに2017年4~6月期は成長が加速していたことになります。

 2017年4~6月期GDPの内訳では、(ここからは実質前期比で年率換算ではありません)家計最終消費が0.9%増、民間設備投資が2.4%増、公的資本形成(つまり公共投資)が5.1%増で、このあたりが予想を上回っていました。

 この公共投資は2016年度の補正予算による駆け込み工事があったはずですが、一方で民間在庫投資が0.0%と在庫積み増しがGDPを押し上げた形跡もなく、全体としては「本当に日本経済の成長が加速していた」ようにも見えます。

 同じ2017年4~6月期の実質GDPは米国が年率換算2.6%、ユーロ圏が同2.2%だったため、日本経済は米国もユーロ圏もはるかに上回る「高成長」だったことになります。

 しかしいろいろな意味で違和感があります。実は8月14日にGDPが発表されてすぐに記事にしなかった理由は、その違和感の原因をあれこれ考えていたからですが、依然としてよくわかりません。

 ここで足元の物価上昇は、消費者物価上昇率で見ると米国が6、7月ともにコアで前年同月比1.7%上昇、ユーロ圏も同じく1.3%上昇となっています。日本は6月分までしか発表されていませんが、総合及び生鮮食品を除く総合で前年同月比0.4%上昇と「かなり低い」ままです。

 つまり6月までは日本と米国・ユーロ圏の物価上昇に差がありますが、7月についてはすでに発表されている日本の企業物価が前年同月比2.6%上昇と加速しているため、8月末に発表される7月の消費者物価もかなり上昇している可能性があります。

 当たり前の話ですがGDP統計はまず経済活動を名目値で集計し、そこから物価上昇分を(正確にはGDPデフレーターで)調整して実質GDPとして発表します。ここで名目GDPを一緒に発表する国は日本だけですが、7月以降の日本の物価上昇が加速していれば、それだけ日本の実質GDPは低く抑えられることになります。

 しかし何といっても最大の違和感は、FRBはすでに利上げを継続しており9月からは資産縮小に取り掛かるはずで、ECBも9月には現在の量的緩和縮小を決定するはずで(実施は来年早々から)、その中で米国よりもユーロ圏よりも「高成長」だったはずの日本で日銀が依然として金融緩和・量的緩和を継続することに何の疑問も感じられていないことです。

 それどころか日本の10年国債利回りは今週に入ってさらに低下し、本日(8月14日)は0.02%となっています。それに対して米国10年国債利回りは(これも低下気味ですが)2.24%、ドイツ10年国債利回りは0.43%となっています。

 ECBの政策金利(下限)はマイナス0.4%と、日本のマイナス0.1%よりマイナス幅が大きいため、ドイツ10年国債利回りも引っ張られて低めとなっているはずですが、それでも米国よりもユーロ圏よりも「高成長」であるはずの日本の10年国債利回りが「突出して低いまま」となります。

 これはもちろん日銀が昨年9月以来、10年国債利回りをゼロ近辺に「釘付け」する金融政策を継続しているからですが、もし米国よりもユーロ圏よりも「高成長」であり、さらに足元では物価上昇が加速している日本経済の現状を全く無視して長期金利(10年国債利回り)を人為的に抑え込んでいるなら、早晩大変なことになるはずです。

 しかし日本の国債市場を眺める限りは、10年国債利回りが人為的に抑え込まれているようにも見えません。逆に日銀は昨日(8月16日)には5~10年国債の買入れ額をそれまでの4700億円から4400億円に減額していますが、それでも10年国債利回りは低下していることになります。

 「専門家」によると北朝鮮情勢の緊迫化により「安全資産」である日本国債が買われているそうですが、もし本当に戦争になったら内外投資家がわざわざ日本国債を買い込むはずがありません。

 つまり日本経済が「高成長」であることと、足元で物価が上昇しているはずであることと、10年(だけに限りませんが)国債利回りが低下していることは理論的に説明不能で、「どこかがおかしい」というしかありません。

 さらにそれに米国とユーロ圏の経済と金利状況、さらにそれぞれの為替を予想するとなると「とてつもなく難しい」となってしまいます。

 まあ「難しい」と言っているだけでは役に立ちませんが、いつも言っているように「すべての答えは相場の中にある」と考えるため、これからはあらゆる相場をさらに注意して眺めることにします。

 この続きは来週月曜日に配信するメルマガ「闇株新聞 プレミアム」で展開します。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.08.18

北朝鮮情勢を巡る問題の本質

2017年08月17日

北朝鮮情勢を巡る問題の本質


 北朝鮮情勢については8月14日夕方に配信したメルマガ「闇株新聞 プレミアム」に詳しく書いてありますが、その後の情勢変化も加えて、やや違った観点から解説します。

 その観点とは、日本政府の対応があまりにも他人任せで当事者意識がなく、大半のマスコミは相変わらず勝手な論評を繰り返すだけで、日本全体としての対応を誰も真剣に考えていないところです。

 今回の北朝鮮情勢の緊迫は、8月8日にトランプ大統領が「北朝鮮がこれ以上米国を脅かせば、世界が見たこともない炎と激怒で対応する」と述べたことに対し、その数時間後に朝鮮人民軍が「中距離弾道ミサイルでグアム周辺を炎で包み込む作戦を検討しており、8月中旬にも金正恩委員長に報告して実行命令を待つ」と応戦したところから始まりました。

 そこから日本の報道では金正恩、トランプ、さらに習近平がどうする?といった勝手な推測を垂れ流し、日本の株式市場も米国の株式や為替に追随して一喜一憂するだけで、肝心な「日本としてどう対応すべき」との議論がすっぽりと抜け落ちています。

 しかも日本の報道では、なぜか重要な情報を「意識的に無視している」としか思えないところもあります。

 その最たるものは、8月11日の環球時報が「北朝鮮が米国およびその同盟国を先制攻撃した場合は中国は静観すべきで、逆に米国およびその同盟国が北朝鮮を先制攻撃した場合は(北朝鮮のために)介入する」とハッキリ書いていますが、日本ではほとんど報道されていません。

 環球時報とは中国共産党機関紙・人民日報系のタブロイド紙で、中国共産党の(つまり中国政府の)正式コメントと考えるべきです。つまり4月上旬の米中首脳会談における「習近平が金正恩を説得して押さえ込み、トランプは対中貿易赤字批判を封印する」など、とっくに消えており、それをいまだに期待しているのは日本のマスコミだけとなります。

 今回の北朝鮮情勢緊迫化の背景には、さらに強化される北朝鮮に対する経済制裁と、8月21日から31日まで実施される米韓合同軍事訓練があり、金正恩には「それらに対する牽制材料はできるだけ膨らませておきたい」との思惑があり、トランプには「国内問題では何を言っても批判されるため、米国民を守るための戦争ネタが唯一支持率を回復させる」との思惑があります。
 
 ただ8月14日には朝鮮人民軍首脳の報告を受けた金正恩が「しばらく米国の出方を静観する」と答え、トランプも軍事に関してはさすがにマティス国防長官、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官、新任のケリー首席補佐官などホワイトハウスの軍人出身者(マクマスターだけは現職兼任)を飛びこえて暴走はできず(ツイッターや発言もギリギリその範囲内でコントロールされています)、結論的にはこのまま何も起こらないと考えます。

 それでは何が問題なのか?というと、冒頭で書いた日本政府の当事者意識のなさとマスコミの勝手な論評です。

 仮に今回は何もなくても、北朝鮮が米国と「対等な軍事強国」あるいは「対等な核保有国」としての立場を確立する目標に対しては着実に前進していることになり、1~2年のうちに北朝鮮は日本にとってもっと脅威となってしまいます。

 つまりここで日本として明確な戦略をもって北朝鮮対策を確立しておかないと、完全に手遅れとなってしまいます。習近平も北朝鮮に親米政権ができてしまうことは絶対に避けるはずで、プーチンも虎視眈々と状況をうかがっており、最も地勢リスクを抱えている日本だけが「のほほん」と他人任せにしておいていいはずがありません。

 最大の地勢リスクを抱えているのは韓国だろう?と思われるかもしれませんが、韓国はすでに親北朝鮮というより北朝鮮そのものの文在寅政権となり、(よくも悪くも)韓国経済をリードしているサムスングループの実質トップである李・副会長を刑務所送りにしようとしており、また相変わらず慰安婦問題を喧騒しているだけで、いざというときに味方であるかどうかはわかりません。

 ここで最近の安倍政権がすっかり弱体化してしまい、どこに遠慮したのか8月15日には閣僚が誰一人として靖国神社に参拝していません。これは民主党の菅政権以来のことで、自民党政権では「あの親中の福田康夫政権」でも若干の閣僚は参拝していました。「そんなこと関係がないだろう?」と思われるかもしれませんが、すでに極めて異常な状況となります。

 たくさんありすぎるので具体的には別の機会に書きますが、最近の安倍政権の弱体化に合わせて親中国、親北朝鮮の勢力があちこちで蠢き始めている状況が「ハッキリと」見えます。

 つまりこの「北朝鮮に対して日本が自ら確固たる戦略を示すべき重要な時期」であるにもかかわらず、その肝心の日本が明らかに腰砕けとなっており、間違いなく1~2年の内にもっと驚異となる北朝鮮に対して(日本における行動も含めて)ますます何の対策も打てないことになります。

 日本にとってそれが「最も深刻な北朝鮮問題」であるはずです。


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■闇株的見方 » 社会 | 2017.08.17

本日(8月10日)付け日本経済新聞夕刊から

2017年08月11日

本日(8月10日)付け日本経済新聞夕刊から


 8月11日は祝日なので(よく意味がわかりませんが「山の日」だそうです)更新もお休みですが、本日の日本経済新聞夕刊を見て「思わず」更新することにしました。

 地方によって内容が違うかもしれませんが、1面トップの見出しは「機械受注7~9月7%増」となっています。これは設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民間の機械受注(前期比)のことですが、現在は8月上旬なので7~9月期の集計が出るはずがありません。

 よく読んでみると内閣府が本日発表した機械受注は4~6月期のもので、しかも前期比4.7%もの大幅減となっていました。1~3月期も前期比1.4%減だったため、2期連続のマイナスでしかもマイナス幅が加速していることになります。

 そこでお決まりの次期(つまり7~9月期)は改善しますよという内閣府の希望的観測の方を、日本経済新聞が大々的に1面トップの見出しで取り上げたことになります。

 一応は日本を代表する経済専門誌であるはずの日本経済新聞なら、どうして「日本経済の先行指標である機械受注は足元でもどんどん減少している」と真実を伝えないのでしょうね?

 同じく本日付け夕刊の3面には「7月の企業物価(速報値)が前年同期比で2.6%上昇 3年8か月ぶり上げ幅」と控えめに出ています。とくにコメントもなく客観的に伝えているだけですが、これは「大騒ぎするほどのニュース」であるはずです。とくに前月比で0.4%も上昇しています。

 企業物価とは卸売物価指数のことで、日銀の黒田総裁がいつも繰り返している2%の物価上昇目標は消費者物価指数(コア)のことで、確かに違います。しかし卸売物価指数の上昇はしばらくのタイムラグを置いて必ず消費者物価指数に跳ね返ります。

 ここで発表された卸売物価指数の上昇が日本の経済活動が活発化している結果なら好ましいわけですが、どう見ても世界の資源価格と食料品価格の上昇がモロに反映されているだけで、日本の経済活動は4~6月期の機械受注で見るように低迷したままです。

 だから7~9月期の機械受注が大幅上昇すると強調したのかもしれませんが、日本の経済活動が低迷=賃金水準の一層の低迷=消費活動のますますの低迷=日本経済のさらなる低迷となるなかで、物価上昇だけが加わるともっと「悲惨」なことになってしまいます。

 日本の企業物価は前年同月比で2014年に一時4%に届いていましたが、これは消費増税を含んだ数字で、2015~16年はずっとマイナスとなっていました。つまり日本はずっと経済活動が低迷したままでしたが、2014年を除いて物価が上昇していなかったので、辛うじて消費活動が「底割れ」していなかっただけです。

 黒田総裁のいう2%の物価上昇目標など「もし本当に実現してしまったら大変なことになる」はずですが、その「大変なこと」が近々実現しそうですよというニュースのはずです。

 先ほど発表されたばかりの米国の7月卸売物価指数は前月比0.1%のマイナスで、前年同月比では1.9%の上昇となっています。つまり卸売物価で見ると日本は米国よりも「物価高」となっており、その米国の10年国債利回りは2.2%台で、しかもFRBは利上げを継続しています。

 つまり日銀は現在の金融緩和・量的緩和とりわけ10年国債利回りのゼロ近辺での釘付けを継続すれば、ますます物価だけを上昇させてしまう可能性が強くなります。金融緩和・量的緩和が日本経済を回復させないことは「とっくに」わかっているため、ここは物価が上昇しないように気を配っていなければならないはずです。

 それでも日本を代表する経済専門紙である日本経済新聞から見れば「大したニュースではない」と扱われていることになります。

 まだまだあったのですが、この辺にしておきます。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.08.11

ビットコインの分裂騒動でわかってきたこと

2017年08月08日

ビットコインの分裂騒動でわかってきたこと


 8月1日にビットコインが「分裂」し、ビットコイン・キャッシュなる仮想通貨が新たに出現しました。

 ここにきてビットコインの取り引き(決済・交換・送金など)が増加したため、それらをブロックチェーン(分散台帳)に記録する作業が滞るようになり、その対策を巡って「コアの開発者」と作業を行う一部の「採掘業者」との間で対立が起こっていました。

 結局のところ一部の「採掘業者」が独自の方法でブロックチェーンに記録することになったため、ビットコインが「分裂」することになりました。

 分裂直前のビットコイン価格は3000ドルくらいでしたが、それが分裂と同時に2700ドルとなり、新たに出現したビットコイン・キャッシュが300ドルほどで取り引きが開始されたため、そのあたりまでは理論通りでした。ほとんどの取引所がビットコインの所有者に対して同数のビットコイン・キャッシュを割り当てていたため、価値も「分裂」したことになるからです。

 その後すぐにビットコイン・キャッシュは700ドル近くまで上昇しましたが、実際はビットコイン・キャッシュの方が取り引きの記録に時間がかかったこともあり取り引きが膨らまず、現時点(日本時間8月7日午後9時)では260ドルとなっています。

 ところがビットコインの方は、「分裂」による大きな混乱がなかったことからか同時点で3400ドルと史上最高値を更新しています。さらにビットコイン・キャッシュの価値を「分裂」させているため、分裂以前に換算すると3600ドルをこえていることになります。

 またイーサリアムなどほかの仮想通貨も軒並み上昇しており、同時点における仮想通貨全体の時価総額は1170億ドル(12.8兆円)と、これも過去最高となっています。

 株式市場でも株式分割が行われると(本来の株式価値が変わらないにもかかわらず)時価総額が急増することがあり、また仮想通貨全体の時価総額が1170億ドルになったといってもアマゾンの年初からの時価総額増加額と同じくらいで(しかもアマゾンのPERは250倍もあるため)、別にそれほどおかしくはないだろう?と思われるかもしれません。

 しかしこれは根本的に違うと感じます。

 だいたいビットコインの取り引きが増加したといっても、せいぜい1日当たり25万件くらいだそうで、実社会における資金取引件数に比べれば「ほとんどゼロ」のようなものです。つまりビットコインにしても他の仮想通貨にしても「決済手段として作り出されたものではない」ことになります。

 またビットコインには政府や中央銀行のような管理者がおらず、また規制当局もない「自由な通貨」とされていますが、今回のビットコインの分裂騒動で、はっきりとビットコインには「コアの管理者」がいて、その方向付けを行い、本来は政府に帰属する通貨発行益を独占していることもわかりました。

 これら「コアの管理者」とは、おそらくもともとはタダみたいなものだったビットコインを大量に確保したまま、その価値がさらに拡大するように工夫を凝らしているはずです。もともとタダみたいなコストなので、何をやってもリスクにはならず「やりたい放題」となります。

 そこへ実社会から「カモ」が法定通貨(ドルとか円とか)をどんどん持ち込んでくるため、ますます「コアの管理者」の保有する価値が膨れ上がることになります。つまりビットコインをはじめ仮想通貨の世界では、実社会をはるかに凌ぐ「富の偏在化」と「カモからの利益収奪構造」がすでに出来上がっていることになります。

 しかもビットコインだけでなく、(コアの管理者が重なっているかもしれませんが)ほかの仮想通貨でも同様の構造がどんどん出来上がっています。最近急増しているICO(Initial coin Offering)なども、その過程で作り出された「新たな収奪手段」となります。

 さらに厄介なことは本年4月から日本の金融庁が仮想通貨取引所を登録制とし、7月から日本の税当局が消費税の対象から外し(つまりモノではなく通貨と認めた)、日本全体として仮想通貨に「お墨付き」を与えた印象となっていることです。

 つまり日本は国を挙げて「どこの誰だかわからない仮想通貨のコアの管理者グループに日本の通貨発行益の一部を無償で提供している」ことになります。

 「いくら何でも言いすぎだ」とご批判を浴びると思いますが、これが仮想通貨に対してずっと感じてきた「言いようのない違和感」の正体であるはずです。その将来図はまだ想像がつきません。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.08.08

積水ハウスが嵌まり込んだ海喜館の怪

2017年08月04日

積水ハウスが嵌まり込んだ海喜館の怪


 大手住宅メーカーの積水ハウスが8月2日午後4時、「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」なるIRを発表しました。

 分譲マンション用地を70億円で購入したものの、所有者側の提出書類が真正なものではなく当該登記申請が却下され、以降、所有者と連絡が取れない状況に至ったというものですが、驚くべきことはすでに購入代金のうち63億円が支払い済みだったところです。

 要は積水ハウスが、その土地の所有者でもなんでもない「なりすまし」が提出した偽造のパスポートや印鑑証明などを見抜けず売買契約を締結し、手付金や購入代金を騙し取られたという典型的な「地面師」の事件です。

 地面師とは、ハコ師(すり)やゴト師(パチンコのイカサマ師)などと同じもう絶滅種に近い古典的詐欺師ですが、実は昨年あたりから結構あちこちで暗躍しています。ただ地面師に新規参入者がいるわけではなく、だいたい昔からの地面師がどこからともなく現れてグループを組み、またどこかへ消えてしまう繰り返しのようです。

 この積水ハウスを嵌めた「地面師」グループも、実はもうほとんど特定されており実名もわかっていますが、捜査の妨害にならないようにここではすべての登場人物をイニシャルとします。また「地面師」グループには弁護士も司法書士も関与しているものですが、通常は「私も騙された」と逃げ切ってしまいます。

 ただ今回のようにここまで綺麗に成功し、しかも購入代金のほとんどを騙し取られるケースはほとんどなく(というより通常の注意力で取り引きを行えば絶対に起こりえません)、もう少し「奥行きが深い事件」である可能性もあります。

 積水ハウスのIRでは具体的な取引内容がほとんど明らかにされていませんが、「舞台」は都内・五反田の目黒川沿いにある約600坪の土地で、数年前まで海喜館という旅館がひっそりと営業していました。土地の形状は長三角形で両側道路が狭く容積率がそれほど大きくならない可能性もありますが、JR五反田駅から徒歩3分で眺望もよくマンション用地として70億円は妥当な価格だと思われます。

 ところがこの土地は過去に何度も「地面師」が暗躍した有名物件でもあり、だから大阪の積水ハウスが巻き込まれたのかもしれません。

 この土地の所有者は海喜館の女将でもあったEさんですが、実はこのE一族はこのあたりの大地主で(一族間の主導権争いも結構有名ですが)、このEさんの自宅もすぐ近くにあります。つまりEさんの「なりすまし」は、本物のEさんのすぐ近くで仕事をしていたことになりますが、積水ハウスがほんの少し確認作業を行っていれば未然に防げたはずです。

 そして本年4月24日、この土地にIKUTA HOLDINGSなる会社が所有権移転仮登記、積水ハウスが2番所有権移転請求権の移転請求権仮登記を、それぞれ登記しています。当事者が売買契約しているならわざわざこんな仮登記を打つ必要はなく、当時から都内の不動産業者の間では不自然だと言われていました。

 このIKUTA HOLDINGSは実体のない完全なペーパーカンパニーで、なんとその登記住所が某元国会議員の事務所となっていました。これも積水ハウスが通常の確認作業を行っていれば未然に防げたはずです。

 そして決済日の6月1日、積水ハウスは自社の司法書士が登記書類を持ち込んだことだけを確認して、売買代金70億円の大半(たぶん63億円で残る7億円は登記完了後だったはず)を支払ってしまったはずです。これも常識では考えられない支払い条件ですが、この時点の積水ハウスは「なりすまし」所有者の気が変わることだけが心配で(そういう演技をしていたのでしょう)、上記の仮登記が逆に安心のよりどころだったのでしょう。

 そして積水ハウスは6月9日に法務局から登記申請却下の連絡を受け、さらに6月24日には自社が購入したはずの土地が2人の男性に相続登記されている事実を知り、ようやく騙されたとわかったものの公表せず、8月2日にやっとその一部だけをIRしたことになります。

 相続登記ということは本物の所有者であるEさんは(たぶん契約日には)亡くなっていたはずですが、相続した2人の男性もE姓ではなく不気味さが残ったままです。ここもまだ「奥行きが深い事件」である可能性はあります。

 事件そのものは「なりすまし」のK(女性)、主犯格の別K、D、Iなどはすでに特定されており、国外逃亡していてもそれほど遠くない時期に逮捕できるはずです。しかし63億円は絶対に戻ってきません。

 さてここから注目すべきは積水ハウスの今後の対応で、もし「再発防止のための第三者委員会の設置」くらいでお茶を濁して事件の真相をこれ以上公表しないのであれば、逆にもっと「奥行きが深い事件」だった可能性が強くなります。

 何度も書いているように、いくら百戦錬磨とはいっても通常の「地面師」だけではここまで綺麗に仕上げられないからです。

 さて本日は緊急アンケートでリクエストが多かった「積水ハウスが嵌まり込んだ海喜館の怪」としましたが、来週早々にはもう1つの「ビットコインの分裂騒動でわかったこと」も書くことにします。

 たくさんのリクエストありがとうございました。



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■闇株的見方 » 社会 | 2017.08.04
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