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今後の中東情勢を巡る5つのポイント

2017年06月23日

今後の中東情勢を巡る5つのポイント


 最近また中東情勢が混沌としていますが、今後を考える際に重要と思われる5つのポイントを挙げておきます。

 まずサウジアラビアのサルマン国王は6月21日、甥で王位継承順位第1位のムハンマド・ビン・ナエフ内相兼皇太子を解任し、息子で31歳のムハンマド・ビン・サルマン国防相兼副皇太子を皇太子に昇格させました。順調にいけば次の国王となります。

 2016年9月6日付け「2人のムハンマド」にも書いてありますが、このムハンマド皇太子は副皇太子時代から国防、経済政策、外交を国王に代わって取り仕切っており、今後はますます権限が集中することになります。

 そしてこのムハンマド皇太子は「対イラン強硬派」であり、サウジアラビアは今後ますますイランとの対立を深めていくことになります。これが最初のポイントとなります。

 そして自称イスラム国(ISIS)の最高指導者であるアブー・バクル・バグダディー容疑者が、先日ロシアの空爆で死亡したはずです。また6月21日には「首都」モスルにあるヌーリモスクが、イスラム国によって自ら爆破されてしまいました。

 このモスクは2014年7月にバクダディーがイスラム国の「独立」を宣言した場所であり、いよいよイスラム国の壊滅が近いと思われます。

 さすがに中東でもイスラム国を「支持」していた国はありませんが、いわば「共通の敵」が消滅することにより、中東の微妙なバランスが変わってしまう可能性があります。さしあたってはイスラム国の「領土」にシリア(アサドの政府軍と反政府勢力が別々に)、イラク、イラン(中東最強のイスラム革命防衛隊)などが入り込むはずで、そうでなくても不安定なこの地域の混乱がさらに拡大しそうです。これが2つ目のポイントとなります。

 ちなみにイスラム国の残党は消えてしまうわけではなく、すでに東トルキスタンに移動しているはずです。中国が弾圧している新疆ウイグル自治区のすぐそばで、またフィリピンのミンダナオ島にも入り込んでいるようで、「テロが東に移動する」ことになるはずです。

 そして依然としてよくわからないのがカタール情勢です。6月5日にサウジアラビア、エジプト、バーレーン、UAE、イエメンの5か国がカタールとの国交を断絶し、後にリビア東部、モルディブも加わっています。

 カタールがムスリム同胞団などテロ組織に資金支援しているからとされていますが、もっとストレートには「イランに近い」ことです。もともとカタールは石油、天然ガスなど地下資源に恵まれていますが、イランとの間のペルシャ湾に大天然ガス田があり、どうしてもイランに対しては強く出られません。

 これは最初のポイントである「対イラン強硬派」のムハンマド皇太子(当時は副皇太子)の意向が強く働いたはずですが、もともとカタールはサウジアラビアなどと同じ親米湾岸諸国であり米軍基地もあります。そしてイランがさっそくカタールに食料支援をしており、今まで比較的平和であった湾岸諸国にも政治的緊張が増すことになります。これが3つ目のポイントとなります。

 そこで米国の中東政策ですが、もともとトランプ政権は親イスラエル、親サウジなど湾岸諸国、反イラン、反アサドで、5月下旬のトランプの初外遊もサウジ、イスラエルをまず訪問していました。

 ところがそのトランプが初外遊に出発する直前の5月17日に、ロシアゲート疑惑を解明するためにモラー特別検察官が任命されており、最大の親イスラエルであるクシュナー氏も捜査対象になってしまいました。

 その間隙をついて、あの超保守派のスティーブ・バノンがホワイトハウスで復活しているようです。そうするとトランプ政権における中東を含む外交方針が、サウジやイスラエルの訪問時から変わる可能性があります。より正確に言うとトランプ政権発足前後の超保守的な状態に戻る可能性があり、これが中東においても4つ目のポイントとなります。

 そして原油価格が下落しています。OPECが減産を続けても、サウジなどがカタールとの国交を断絶しても、トランプがパリ協定を脱退しても、WTI価格で1バレル=42ドル台に落ち込んでしまいました。

 つまり今後も原油価格は低迷を続け、サウジなど産油国経済に微妙な影を落とすはずで、これが5つ目のポイントとなります。

 まだポイントを羅列しただけですが、中東に新たな混乱が続きそうな予感は「たっぷり」しています。


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■闇株的見方 » 社会 | 2017.06.23

ジェフ・ベゾスがホールフーズを買収する意味

2017年06月20日

ジェフ・ベゾスがホールフーズを買収する意味


 本誌が新時代の錬金術師と考えるジェフ・ベゾス率いるアマゾン・ドットコム(以下、アマゾン)が6月16日、食品小売り大手のホールフーズ・マーケット(以下、ホールフーズ)を137億ドル(1兆5000億円)で買収すると発表しました。アマゾンにとっても過去最大の買収となります。

 この137億ドルには債務が4億ドルほど含まれますが、買収価格はホールフーズの前日終値を27%上回る42ドルで、アマゾンはすべて現金で支払います。アマゾンの3月末の現金残高は215億ドルでした。

 ホールフーズは1978年にテキサス州・オースティンで創業した高級・自然・有機食品がイメージの小売り大手で、米国を中心にカナダ、英国などで469店舗を展開しています。共同創業者のジョン・マッケイCEOはその職にとどまり、またホールフーズの社名も、オースティンにある本社もとりあえずはそのままのようです。

 ただホールフーズの最近の業績は伸び悩んでおり、本年初めには全世界で1200店舗という目標を棚上げし、若干の店舗閉鎖も行っていました。株価もここ2年ほどは30ドル前後で低迷し、マッケイCEOもアクティビストの攻撃対象となっていました。

 さてそんなホールフーズの買収を発表したアマゾンの株価は3%上昇し、時価総額がたった1日で140億ドルも増加しています。そういう比較をするものではありませんが、新時代の錬金術師であるジェフ・ベゾスはホールフーズの買収金額に相当する企業価値を、たった1日で「作り出した」ことになります。

 さてアマゾンがホールフーズを買収するメリットは、食品はアマゾンの主力販売商品とは違って消費者が「ほぼ毎日買うもの」であり、アマゾンのプライム会員向け生鮮食品宅配サービス・アマゾンフレッシュの拡大には劇的な効果があります。

 それ以外にも実店舗における仕入れ・販売、宅配、ネット注文品の実店舗での受け取り、店舗や倉庫を物流拠点にしたサービスの拡大が見込めるはずです。

 そんなことより1つだけ間違いがないと感じることは、ジェフ・ベゾスはホールフーズの現時点におけるサービス内容や消費者の評価や企業イメージなど全くお構いなしに、アッという間にホールフーズをアマゾンの事業拡大戦略に組みこんでしまうはずです。

 つまりベゾスは現時点のホールフーズに価値を見出したわけではなく、あくまでもアマゾンの拡大戦略のなかで「たまたまそこにあった」ホールフーズを買収したほうが、手間もコストも省けると考えただけだったはずです。

 これは日本企業がよく海外企業を買収した後に企業文化の違いなどに苦労するものですが、おそらく全く違ったスピードでホールフーズはアマゾンの一部となるはずで、そこは見ていて参考になるはずです。

 普通は巨額買収となると買収する企業の株価が下がるものですが、今回はアマゾンの株価が3%上昇しています。これは株式市場がその辺を感じ取っているからで、そこがベゾスは新時代の錬金術師であると考える理由です。

 また同日に小売り大手のウォルマートの株価が5%、クローガーに至っては11%も下落しています。

 だいたい(アマゾンはもうその範疇から外れていますが)ネット販売会社が小売店舗を買収したら評価され、逆に小売り会社がネット通販会社を買収しても評価されないというのも「どちらかがおかしい」はずです。

 ウォルマートも昨年、ネット販売会社のジェット・ドットコムを30億ドルで買収しており(当然にネット販売会社を買収する方が安上がりです)、4700店舗で売り上げの56%が食料品であるウォルマートの事業拡大効果の方が(株価への評価という意味ではなく)はるかに大きいはずです。

 6月1日付けで「ジェフ・ベゾスとイーロン・マスク 2人の新しい錬金術師」を書いていますが、引き続き企業価値(時価総額)を生み出すベゾスの錬金術について、考えさせられてしまいました。

 ちなみに今回の買収では、ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカがアマゾン側の、エバコア・パートナーズがホールフーズ側のアドバイザーを務めています。

 そんな錬金術師からも巨額報酬を引き出してしまう投資銀行も(今は投資銀行とは呼びませんが)健在のようです。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.06.20

利上げに加えて保有資産圧縮にまで踏み込んだFRB

2017年06月16日

利上げに加えて保有資産圧縮にまで踏み込んだFRB


 FRBは6月14日まで開催されていたFOMCで本年2回目の利上げを決定し、政策金利のFF翌日物誘導金利を0.25%引き上げて1.00~1.25%としました。

 同時に発表されたFOMCメンバー(投票権のないメンバーも含む)16名の本年末までの予想では、もう利上げなしが4名、あと1回が8名、2回が4名となっています。

 また2018年末までの1年半の予想では、16名の平均値があと4回の利上げとなっていますが、その内訳はゼロ回から8回まで見事にばらついています。

 ちなみにこのゼロ回と予想したメンバーは、たぶんミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁で、今回のFOMCでもただ一人利上げに反対票を投じています。カシュカリ氏はゴールドマン・サックス出身で、リーマンショック時は財務次官補として問題債権購入計画(TARP)の運営責任者も務めている典型的な「回転ドア(注)」ですが、市場に対する嗅覚は優れているはずです。

(注)民間ポストと公的ポストの間を「回転ドア」のように行き来しながらキャリアアップを図る野心家のこと

 今回のFOMCでより重要なことは、FRBの保有資産圧縮を「年内に着手する」と公表していることで、これまでよりやや前倒しで具体化することになりそうです。
 
 またその具体的方法も初めて公表しており、4.5兆ドルに膨らんだFRB保有資産の償還分の再投資を圧縮することにより、最初の3か月は毎月米国債の60億ドルとMBS(住宅ローン担保証券)の40億ドルを上限に圧縮し、以後3か月毎に上限を合計100億ドルずつ引き上げ、1年後には毎月米国債の300億ドルとMBSの200億ドルを上限に圧縮するようです。

 つまり圧縮開始から1年後には米国債とMBSを合計で年間6000億ドルのペースで圧縮することになります。しかしFRBの保有資産の償還額は年間4~5000億ドルのはずで、その時点では償還分の再投資を見送るだけでは足りず、保有債券を市場に売却する必要が出てくるはずです。

 本誌は以前から、FRBが金融政策を引き締めすぎて米国経済にブレーキを掛けてしまう事態を懸念しており、とりわけFRBの保有資産圧縮を急ぎ過ぎることが米国株式に対する「唯一のマイナス材料」と考えています。

 米国株式に限らず世界の株式市場は、実体経済が伸び悩んでも政治が混乱しても上昇を続けていますが、それを支える最大の要因が世界的な金融緩和とりわけ量的緩和であるはずです。

 FRBは資産の新規購入を2014年10月に打ち切っていますが、現在に至るまで保有資産が償還になると再投資して4.5兆ドルの総資産残高を維持しています。リーマンショック直前のFRB総資産は9000億ドルほどで、米国は今でも未曽有の量的緩和を継続していることになります。

 それがリーマンショック以降はじめて縮小に向かうことになり、そのショックとりわけ株式市場に与えるショックを明らかに「軽視」していると考えます。

 イエレン議長をはじめ(カシュカリを除いて)学者が多いFOMCメンバーは、足元の失業率が4.3%と「完全雇用状態」に達し雇用数も順調に伸びているところだけを見て、利上げ継続だけでなくFRBの保有資産圧縮まで「前倒しで」踏み込んでしまうようです。

 ところが足元の米国経済は、雇用情勢が逼迫していても一向に賃金が上がらず、したがって消費が伸び悩んで経済成長の足を引っ張るという「日本経済化」が急激に進んでいると感じます。

 GDPに占める消費の割合は米国が68%と、日本の56%より高いため、その影響はもっと大きいはずです。日本では2014年4月の消費増税で経済回復を潰してしまったように、米国では早すぎるFRBの保有資産圧縮が実体経済だけでなく今度は株式市場まで停滞させてしまう恐れがあります。

 FOMC当日のNYダウは、利上げ=金融機関の業績改善と安直に反応して史上最高値を更新していますが、すぐではないもののFRBの再投資縮小で需給関係が悪化するはずの米国債市場では10年国債利回りが2.13%まで低下しています。

 米国債市場は需給悪化より実体経済の低迷を予想していることになり、株式市場の反応と違っています。またあまり関係がないかもしれませんがビットコインは前日の2800ドルから2300ドルまで急落しています。

 この辺は目先だけでなく向こう1~2年の世界の金融市場にとって大変に重要なところと考えます。また本日(6月16日)は日銀政策決定会合もあるため、あわせて来週月曜日に配信するメルマガ「闇株新聞 プレミアム」でじっくり解説します。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.06.16

米国のハイテク株急落はあまり心配する必要はない、しかし、

2017年06月13日

米国のハイテク株急落はあまり心配する必要はない、しかし、


 先週末(6月9日)の米国株式市場は、ここのところの相場上昇を主導していたハイテク株が軒並み下落しました。ハイテク株の比率が高いNASDAQ総合指数は、その前日の8日の史上最高値となった6321ポイントから1.8%下落して6207ポイントとなりました。

 しかし金融株やエネルギー株が上昇したため、NYダウは逆に上昇して21271ドルと史上最高値を更新しています。金融株については米議会でボルカー・ルールを含むドット・フランク法撤廃が進展しており、金融機関の規制緩和が一層進むと期待されたからです。

 このハイテク株急落の直接のきっかけは、新型スマートフォンのスペックが期待されたほどではなかったアップルが急落したからで、アップルの時価総額はたった1日で300億ドル(3.3兆円、3.88%)も減ってしまいました。

 時価総額がアップルに続くアルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックも合わせた時価総額上位5社合計では、900億ドル(10兆円)以上も減少しています。しかしこの5社の時価総額合計は、まだ昨年末を5700億ドル(62兆円)も上回っており、ほんの少し調整しただけです。

 また日本にも登場した空売りファンドのシトロン・リサーチが売り推奨レポートを出したエヌビディアが6.5%、ネットフリックスも5%近い下落となりました。エヌビディアはソフトバンクがビジョンファンドでの投資用としてすでに40億ドル(4500億円)を手当てしているはずで、以前から懸念されている利益相反の問題がさっそく出てきそうです。

 これを受けた本日(6月12日)の東京市場では、そのソフトバンクが2.6%安、東京エレクトロンが3.0%安、キーエンスが2.2%安となりましたが、日経平均は104円安(0.5%安)の19908円と小幅の下げで終わりました。

 さてこのハイテク株急落はどう考えればいいのでしょう?結論だけ言えば、それほど心配する必要はありません。

 結局のところ米国の(日本でも)株式市場で買われ過ぎていたハイテク株のスピード調整であり、株式市場全体が急落する兆候はまだ見当たらないからです。米国に限らず(日本を含む)世界の株式市場にとって、経済の低迷や政治の混乱はマイナス材料ではなく、また最近はイベント(突発的悪材料)による混乱も短期的ですぐに株価は大きく回復しています。
 
 リーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和の効果がようやく本格的に株式市場に出ているからで、その変化が簡単に終わってしまうことはないからです。

 仮に買われ過ぎていたハイテク株が一時的に調整するとしても、金融株、エネルギー株、消費関連株などが代わって株式市場を主導していくかというと、再びハイテク株に戻ってくると考える方が自然です。

 昨年に中国人民元急落や英国EU離脱決定などで、あれだけ急激な調整に見舞われた世界の株式市場が、相変わらず中国経済が不安定で英国のEU離脱がますます混沌としているにもかかわらず「ほとんど」気にもしなくなっています。

 それと同じで1~2回、ハイテク株の急落にヒヤリとさせられても、すぐに「次に急落したら買いチャンス」と考えるようになるはずです。

 ただハイテク株だけではなく米国株式市場で1つだけ「近い将来」の懸念材料があるとすれば、それはFRBの金融政策がより「引き締め」に向かうケースです。

 米国経済でも好調な企業業績にもかかわらず賃金が伸び悩み、消費が低迷して経済全体(GDP)の成長が鈍化し始めています。この状態は日本経済が「先輩」ですが、米国はGDPに占める消費の割合が68%と日本の56%より高いため、その影響は日本よりも深刻です。

 そこへFRBが一見好調な雇用統計だけを見て利上げを重ねたり(今週のFOMCでの利上げは確定的です)、FRB保有資産の縮小に早期に取り掛かったりすると、消費が伸び悩んで「急激に日本経済化」している米国経済にさらに急激なブレーキをかけてしまう恐れがあります。そうなるとさすがに米国株式市場にも影響が出るはずです。

 これもすぐに「そうなる」というわけではありませんが(今週の利上げは完全に織り込んでいるためショックはありません)、本年後半にかけては気にしておく必要があります。

 来年2月に任期が切れるイエレン議長が再任される可能性は低く、また3名も空席のあるFRB理事の人選もこれからで(トランプ大統領が指名して上院が承認します)、FRBの現体制とすれば「金利は上げられるうちに目いっぱい上げて、FRBの保有資産縮小もできるだけ早くスタートしておこう」と考えてもおかしくないからです。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.06.13

ビットコインなど仮想通貨について改めて考える  その2

2017年06月09日

ビットコインなど仮想通貨について考える  その2


 6月7日付け「同題記事」の続きです。ビットコイン価格はちょうどその記事を配信した頃の2922ドルが高値となりましたが、本日(6月8日)も2800ドル近い値動きとなっています。

 したがって仮想通貨全体の時価総額も1000億ドル(11兆円)が維持されており、この1000億ドルとはアップルの時価総額のここ3か月半の増加額と同じです。そう考えるとたいしたことがなさそうですが、仮想通貨の時価総額はほとんど昨年(2016年)春から1年ほどの間に積み上がっているため、やはり無視できない存在となっています。

 さて本日は、そもそも仮想通貨の「価値」とは何か?から考えます。やはり代表的なビットコインで説明します。

 ビットコインは「採掘」と言われるコンピューター上の作業に対して新たに発行されています。この作業とはビットコインの安全性確保や(盗まれたり消えたりしないという意味です)、管理作業や(取引データの記録・保存作業)、さまざまなシステム構築のためのもので、日銀でいえば紙幣を印刷する輪転機や日銀決済システム(日銀ネット)の運営費のようなものです。

 確かに「採掘」があるため、ビットコインはどこの国家や団体に所属しなくも運営が可能となり、それによって無国籍通貨として世界中どこにいても決済できるという特性は維持されていますが、それでビットコインの「価値」が形成されているわけではありません。

 つまりビットコインでもその他の仮想通貨でも、それ自体には何の価値もない単なる電子空間のデータでしかありません。確かに無国籍通貨として世界中で自由に決済できるとしても、19世紀初めにスタートした金本位制における金のように「それ自体に価値がある」わけではありません。

 そういうと1970年代に金に代わって基軸通貨となったドル紙幣も、ほとんど世界中で決済に使えるものの、ドル紙幣自体には何の価値もないではないか?となります。

 ドル紙幣そのものは、FRBが購入した米国債を裏付けに発行する小口・無記名・無利息の国債担保付き債券ですが、ドル紙幣をFRBに持ち込んでも米国債に交換してくれず、そもそも米国債は無担保の「借用証書」にすぎません。

 じゃあ日本は(中国もですが)そんな怪しげなドルを外貨準備として後生大事に抱えているのか?となれば、その通りとなります。ましてや日本では(中国は知りませんが)そのドルの外貨準備を米国政府の許可なしに勝手に売却することもできません。

 少し見方を変えますが、日本人がビットコインを取得する時は当然に円を売ってビットコインを買うため、円の流出となります。また外国人が日本の製品やサービスを購入してビットコインで支払えば、当然に財やサービスの流出となります。どちらの場合も日本にビットコインが積み上がります。
 
 これはビットコインがドル(あるいは米国債などドル資産)に代わっただけではないか?となりますが、せいぜい価値が年間2~30%変動するだけのドルに比べて、つい4年前の2013年初めには12~13ドル、つい1年前の2016年春に400ドルだったビットコインが、3000ドル近いところで円(円資産)や日本製品やサービスと大量に交換され日本に持ち込まれていることになり、決して気持ちの良いものではありません。

 ドルも基本的には同じではないか?となりますが、ドルは米国の通貨であり基軸通貨でもあるため、米国が自国の利益のために必ずその価値や信認を維持するという安心感はあります。リーマンショック時もなりふり構わずドルの信認維持に奔走していました。

 ビットコインは無国籍なので、いざとなれば誰もその価値や信認を維持するために奔走せず、あっという間に放り出して「新しい仮想通貨」を始めることになるだけです。

 ここまでくると日本政府も、わざわざ金融庁がお墨付きを与えて超高値となったビットコインを日本に積み上げるだけではなく、自らが胴元となって新しい仮想通貨を作り出し、創業者利得(正確には仮想通貨発行益)を日本の福祉等に還元する方法を考えるべきです。少なくとも日本の富が日本以外の仮想通貨発行益となって消えてしまう事態だけは回避しなければなりません。

 別に特別難しいわけではなく、日銀とは別に仮想通貨発行体を作り、銀行決済システムを通さずにネット上の自由な決済を認め、犯罪事業への関与だけはチェックする監視体制を整え、その後の仮想通貨発行量を年間2%程度に抑え、その発行益の一部を商店やホテルなどに還元して利用を促進し、さらに一部を発行体の運営費やシステム構築に使い、残りを社会福祉に充てれば誰も文句は言わないはずです。

 突き詰めれば社会福祉の財源確保の一形態ですが、それを超高値のビットコインを争って購入して日本国外に流出させている富と置き換えるだけです。

 この仮想通貨の最初の発行量と売り出し方法だけは工夫する必要がありますが、そこを一生懸命考えても実現するわけでもないため、この辺にしておきます。

 名前?「アベ・コイン」はどうでしょう?冗談を言っているわけではなく外国人にも発音しやすいからです。


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■闇株的見方 » 経済 | 2017.06.09
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