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ヤマトHD(ヤマト運輸)の潜在的事業価値を再評価すべき

2017年04月28日

ヤマトHD(ヤマト運輸)の潜在的事業価値を再評価すべき


 メルマガ「闇株新聞 プレミアム」では「株式市場の今後の勝ち組・負け組」をシリーズで掲載していますが、最近の闇株新聞は東芝以外の個別企業がほとんど登場しないため、シリーズの予定企業から1社を選んで取り上げます。

 宅配最大手のヤマトHD(以下、ヤマト運輸)が、9月にも宅配便の基本運賃を5~20%引き上げる方針を固めたようです。運賃の引き上げは消費増税時を除くと27年ぶりとなります。

 具体的にはインターネット通販業者など割引が適用されている大口顧客にはさらに大きな値上げ幅を求め、応じなければ取り引きを打ち切る方針のようです。

 日本国内の2016年度・宅配個数シェアは、ヤマト運輸が46.3%、佐川急便(非上場)が33.9%、(以下、宅配専業ではありませんが)日本郵便が11.9%、西濃運輸が3.9%、福山通運が3.5%となっています。

 つまり日本の宅配市場はヤマト運輸と佐川急便の2社による寡占体制が出来上がっています。そしてこの2社はすでに全国的な集配のための店舗網をほぼ作り上げており、各家庭・各オフィスまでの「ラスト数百メートル」の集配体制がほぼ出来上がっていることになります。

 拡大する宅配市場に限らず今後の日本の消費動向を考えると、「ラスト数百メートル」の集配体制を寡占するヤマト運輸と佐川急便の「潜在的事業価値」は大変に大きいはずです。現時点では上場会社はヤマト運輸だけです。

 例えば携帯電話事業では3社による寡占体制が出来上がっているため通信料金が高止まり3社とも巨額利益を享受していますが、宅配事業では寡占2社が「寡占メリット」をほとんど享受していません。
 

 さらにその「しわよせ」が現場の労働環境に押し付けられていますが、ここにきてヤマト運輸は過去の未払い給料(主に残業代)を遡って百億円単位で支払うようで(すでに2017年3月期決算をこのために減額修正しています)、ここも改善していくようです。

 それではその宅配事業における「寡占メリット」はどこが(誰が)享受していたのかですが、かなりの部分をインターネット通販業者が享受していたと考えます。
 
 通販業務とは注文された品物を正確に顧客の元に届けて初めて完了となるはずですが、今までは大半の通販業者がそこを低価格で宅配業者に丸投げし、宅配現場における追加コスト(再配達やクレーム処理)もすべて押し付けたままでした。大量に発注するため、通販業者が宅配業者に対して「優位性」があるとされていたからです。

 その結果、通販業者=高成長企業=高株価、宅配業者=ブラック企業=低株価とのイメージが定着してしまっています。

 ヤマト運輸の持ち株会社であるヤマトHDの時価総額は1兆円弱、PERは減額修正したため50倍ですが、PBRは1.7倍と、低株価とまでは言えないものの「普通の株価」です。

 これに対して通販世界最大手のアマゾン・ドットコムの時価総額は48兆円、PERは180倍、PBRは22倍もあります。アマゾンは通販専業ではなく、また日本において宅配コストが割安なので急拡大したわけでもありませんが、今回のヤマト運輸の値上げ(あるいは取引打ち切り)は日本の事業において少なからずの影響があるはずです。

 アマゾン日本法人に対しては数年前から佐川急便が取り引きを打ち切っており、今回は残ったヤマト運輸がやっと「本格攻勢」に出るわけです。

 また日本の通販会社で「最大の勝ち組」と言われるスタートトゥディの時価総額は7500億円ですが、PERは43倍、PBRは27倍もあります。

 もちろんこのスタートトゥディも、宅配コストが割安なので高成長企業のイメージを維持しているわけではありませんが、少なくともこれまでの通販業者と宅配業者の「力関係」「イメージ格差」「株式市場の評価」などが修正されていくきっかけにはなりそうです。

 本誌は「寡占に胡坐をかいた割高な価格設定」にはもちろん大反対ですが、今回のヤマト運輸の値上げと過去の未払い給料の清算は、適正な価格体系や労働条件を模索する「正当すぎるもの」と考えます。

 これらを含めてヤマトHD(ヤマト運輸)の潜在的企業価値を再評価すべきと考えます。また時価総額が48兆円のアマゾンが、1兆円のヤマト運輸を買収しようと考えても全く不思議ではありません。


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オール米国の報復を受ける東芝

2017年04月11日

オール米国の報復を受ける東芝


 最近、東芝と北朝鮮ばかり書いているようですが、また東芝です。

 東芝は3月29日に米子会社・ウェスティングハウス(以下、WH)の米連邦破産法適用を申請しましたが、その日を境にオール米国の対応が大きく変わり、報復が矢継ぎ早に加えられています。
 
 まず東芝がWHの連邦破産法適用を申請した先は、もちろん米国の裁判所です。裁判所もオール米国と考えると、東芝がこれでWHの損失負担が軽減される判断が下されると考えているなら「おめでたい」というしかありません。
 
 WHはもちろん米国企業なので支援先選定にも対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が必要であり、東芝に有利な支援先(外国企業)は出てきません。

 もし本気でWHの損失負担を軽減するつもりなら、東芝本体を破産させて日本の裁判所と法律を含むオール日本で、オール米国と戦うしかありません。もちろん東芝の現経営陣にはそんな度胸はなく一見安直に見えるWHの破産法申請に走ってしまいました。

 さらに4月4日付け「明確な上場廃止基準に抵触していた可能性のある東芝」に書いたように、監査法人のPwCあらた監査法人が東芝の2016年3月期決算に疑義を挟み、2016年10~12月期の決算も再々延期された期日の4月11日までに承認することはありません。

 PwCあらた監査法人は英国が本部のプライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)傘下ですが、WHの監査はPwC米国法人が担当しているため、これもオール米国と考えると東芝に「やさしい」監査が行われるはずがありません。

 2016年3月期が修正に追い込まれると2期連続債務超過で上場廃止となるはずですが、これは過年度決算の修正は遡及しないため上場廃止とはならないとのご指摘を頂きました。確かにオール日本で「東芝に最も過保護な東証」の見解はそのようで、さらに2016年10~12月期決算に監査法人の承認がなくても、すぐに上場廃止にはならないかもしれません。

 ただオール米国のPwCあらた監査法人のままでは東芝にとってリスクがあまりにも大きく、即刻解任してしまうべきです。決算発表がさらに遅れますが、そこはオール日本の関東財務局と東証が何とかしてくれるはずです。

 そして極めつけが4月6日、米国際貿易委員会(ITC)が東芝半導体事業のドル箱製品であるNAND型フラッシュメモリが、台湾の旺宏電子(マクロニクス)の特許を侵害しているとして調査を開始しました。

 クロとなれば少なくとも米国では東芝製のNAND型フラッシュメモリが締め出されるため、分社化したばかりの半導体事業売却に大きな障害となります。

 それ以前に日本政府は半導体事業売却に外為法の事前審査が必要としており(これだけなら正しい措置ですが、オール米国の意向も入っており実質的に米国企業グループに売却せざるを得なくなるはずです)、そこへオール米国のITCがクロと判定すれば(間違いなくそうなります)、いよいよ米国企業グループに「捨て値」で売却するしかなくなります。

 ここにきて日本政策投資銀行、産業革新機構それにいくつかの日本企業が集まったオール日本で半導体事業の入札に参加する動きが出ています。ただその内容は5000億円程度で全体の3分の1強を取得し、それで経営のイニシアティブを確保しようという「とんでもなくおめでたいアイデア」でしかなく、オール米国でなくても相手にされません。

 以前から本誌は、半導体事業は誰にでも(東芝の現経営陣にでも)売却できるので、何も急ぐ必要はないと主張していますが、こうなると冗談ではなく売却をいったん中止するべきです。ここまできたら東芝本体が消滅する事態も想定し、せめてオール日本で資産(半導体事業)の散逸を防ぐべきです。

 やはりどう考えても3月29日を境に、東芝の運命は大きく暗転しています。WHの米連邦破産法適用申請は、パニックになっている銀行の要求に簡単に応じてしまったもので、オール日本の利益とまでは期待しなくても東芝そのものの利益も大きく損なってしまいました。

 ここで、もうとっくに東芝株式を売却したと思っていたエフィッシモ・キャピタルが、さらに買い増していたようです。4月7日に提出された大量保有変更報告書では持ち株比率が9.84%と前回提出の8.14%から増えています。

 エフィッシモはもちろんオール日本の一員として頑張っておられるわけではなく、最後は(東芝経営陣に重大な判断ミスがあったとして)巨額損害賠償請求まで考えておられるかもしれません。違っていたらごめんなさい。


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明確な上場廃止基準に抵触していた恐れがある東芝

2017年04月04日

明確な上場廃止基準に抵触していた恐れがある東芝


 表題は「上場廃止基準に抵触している恐れがある」ではありません。「上場廃止基準にすでに抵触していた恐れがある」という過去の事実です。

 東芝はすでに2度も延期している2016年10~12月期の四半期決算発表が、提出期限の4月11日でも難しくなり、3度目の延期申請に追い込まれるようです。

 東芝については3月30日付け「地獄の扉を開けてしまった東芝」で、米子会社・ウェスティングハウス(以下WH)の米連邦破産法申請(3月29日)と、半導体事業の分社化・売却(3月30日に開催の臨時株主総会で承認)で「2枚のカード」を自ら放棄することになるため、従来のような不思議な過保護を受けられなくなるはずと強調しました。

 ここでいくら東芝の決算発表が遅延しても何度でも延期申請を認める関東財務局や、何のペナルティーも課さない東証も、もうこれまでのような過保護で対応してくれない(つまり3度目の延期は認めてくれない)恐れがあるといっているわけではありません。

 それ以前にすでに上場廃止基準に抵触していた可能性があり、すでに過保護で対応すれば何とかなるといった段階ではありません。

 今年度から「あの」新日本監査法人から交代して東芝の監査を担当しているPwCあらた監査法人が、2015年度決算(2015年10~12月期あるいは2016年3月期決算のことと思われます)について疑義を指摘しているようです。

 東芝は2016年10~12月期決算の遅延理由について3月14日に、子会社WHで一部経営者による不適切な行為が存在するため追加の調査が必要であるからとしていましたが(関東財務局にも同じ説明で延期申請が認められていたはずですが)、これもウソだったことになります。

 そもそも2016年3月期決算とは、2015年9月に過去7年分の決算で合計2248億円(当時)の修正を行ったばかりでありながら、さらに「どこからともなく出てきた」7000億円規模の営業損失計上が必要となっていました。

 そこで東芝メディカルを6600億円もの高値でキャノンに引き取ってもらい、公正取引委員会の審査が終了する前に強引に3817億円の利益を計上し、今まで頑として拒否してきたWHの「のれん」をやっと2500億円だけ減損し、4600億円の最終赤字となりました。それで2016年3月期末における純資産は3288億円まで減少していました。

 ところがその決算期中である2015年12月末にWHが係争相手のストーン&ウェブスター(S&W)を買収しており、そこから1年後の2016年12月末に7000億円規模の損失が出ると突然に発表したのですが、この7000億円規模の損失は2015年12月末の買収時点で認識しておく必要があったとの推測ができます。

 だとすると2015年10~12月期決算あるいは2016年3月期決算では、さらに7000億円規模の損失計上が必要だったはずで、その時点で東芝は債務超過となっていたことになります。

 たぶんPwCあらた監査法人は、2015年10~12月期あるいは2016年3月期でこの修正を求めているはずですが、そこを認めて修正した瞬間に2015年10~12月期あるいは2016年3月期で債務超過に転落します。

 そして遅延中の2016年10~12月期だけでなく、終わったばかりの2017年3月期決算において債務超過であることは明らかなので、これで2期連続債務超過(あるいは債務超過転落後1年以内に解消できない)という明確な上場廃止基準に2016年12月末あるいは2017年3月末時点で抵触していたことになります。

 冒頭に書いた不思議な過保護が受けられるかどうかではなく、2015年10~12月期あるいは2016年3月期の決算修正に応じて債務超過とした瞬間に上場廃止が確定してしまいます。

 それを回避するためには、半導体事業の分社化は4月1日付けなのでいくら高値で売却しても債務超過解消(上場廃止回避)とはならないため、何が何でも2015年10~12月期あるは2016年3月期の決算修正を回避するしかありません。
 
 そもそも半導体事業の分社化を承認した3月30日の臨時株主総会時点で、東芝の経営陣はこの事態を認識していたはずなので、議場で修正動議を出してでも分社化を3月31日にしておくべきでした。だとすると5月中旬までに半導体事業が高値で売却できれば(この期に及んで外国企業に売却する是非はともかくとしても)、2016年3月期だけの決算修正で済めばそこで債務超過になっても2期連続債務超過による上場廃止は免れます。

 さもなければ2015年10~12月期あるいは2016年3月期の決算修正を、プライスウォーターハウスクーパース傘下であるPwCあらた監査法人を解任してでも食い止める必要があります。

 WHの破産法適用を申請した段階で、米国政府も米国裁判所もプライスウォーターハウスも「敵になった」と認識しておかなければなりません。

 「地獄の扉」を自ら開けてしまった東芝の現経営陣には、もうそこまでの気力も能力も残っていないのかもしれませんが、そうなるとWHの破産や半導体事業売却の前に上場廃止が来てしまいます。

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■企業 | 2017.04.04
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「地獄の扉」を開けてしまった東芝

2017年03月30日

「地獄の扉」を開けてしまった東芝


 東芝は本日(3月29日)、連結子会社・米ウェスティングハウス(以下、WH)など2社が米連邦破産法11条の適用をNY州連邦破産裁判所に申請したと発表しました。

 またこれに伴い2017年3月の連結最終損益が国内製造業としては過去最大の1兆100億円の赤字となり、3月末時点の債務超過額が6200億円になるとの予想も発表しました。2016年10~12月期の決算発表を延期した2月14日時点では、その債務超過額は1500億円と予想されていたため、今回の破産法申請などにより新たに4700億円の「自己資本棄損」となるようです。

 また東芝は明日(3月30日)に臨時株主総会を開き、半導体事業の分社化を決定する予定です。その分社化した新会社「東芝メモリ」の過半を(あるいは100%を)外部企業やファンドに売却する予定ですが、その入札の一次締め切りも本日でした。

 まさに東芝の命運を握るWHの破産法申請と半導体事業の分社化・売却が「もはや後戻りできない状況」となったわけですが、それで東芝は完全に「地獄の扉」を開けてしまったと感じます。

 なぜならWHを維持することが日米原子力協定に縛られる日本政府に対する(少しくらいは米国政府に対しても)東芝の「カード」であったはずです。それがあったから東芝はいくら粉飾決算をしても刑事事件化せず、決算発表がいくら遅れても上場廃止の恐れもなく、いろいろな意味で「過保護」に扱われていたはずです。

 また東芝は、これからも高収益が上がる(少なくともそう考えられている)半導体事業という「もう1枚のカード」もあったため、合わせて政府も官僚組織も金融機関も株式市場も「それなりに重要な存在」と考え扱ってきたはずです。

 つまり東芝はその曲がりなりにも保持していた「2枚のカード」を自ら放棄してしまったわけで、今後は過保護に扱われることも重要な存在と考えられることもなく、単なる「倒産寸前のボロ会社」となります。

 つまり今後は日本政府からも(少しくらいではあったものの)米国政府からも官僚組織からも金融機関からも株式市場からも見捨てられ、もちろんそこから盛り返せる経営陣もいるはずがなく、文字通り「消滅して」しまうだけとなります。

 東芝について最も失望したところは、このWHの破産法申請も半導体事業の過半以上の売却も(当初案だった20%未満の売却をあっさりと変更したことも)、すべてパニックとなった金融機関の主張をそのまま受け入れて進めてしまったところです。オール日本としての損得など全く考えていないだけでなく、東芝の今後すら考えていない「まさにサラリーマン経営者の責任逃れ」で動いてしまいました。

 だから表題の「地獄の扉」を開けてしまった東芝となります。しかし今回のWHの破産法申請も半導体事業の過半以上の売却も、やはり大きな問題が残っています。

 WHの破産法申請は「これでWHは東芝の連結対象から外れるため、ここからの損失拡大に歯止めがかかる」と考えているようですが、そんな単純なものではありません。

 まず東芝がまだ計上しているWHの資産・3000億円、WHへの債権・1756億円、WHへの債務保証・6500億円(本日のIRによる)の計1兆1256億円がすべて新たな損失となるはずです。しかし会計上の相殺はあるはずですが、本日発表の新たな自己資本棄損は4700億円しかありません。

 さらに東芝は、WHの株式の3%をIHIから189億円で、10%をカザフスタンのカザトムプロムから(たぶん)5億4000万ドルで、それぞれ買い取って全額減損しなければなりませんが、それも計上していません。

 さらに米国で建設中の原発4基のうち、サザン電力の2基は工事の遅れによる損失を米国政府が83億ドル(9200億円)保証しており、また4基とも2020年までに稼働できなければ(できません)減税措置を受けられなくなるためその損失も5000億円ほどあり、すんなりと米国電力会社や米国政府がWHの破産で諦めてくれるとも思えません。

 そしてWHは、米国の4基よりもはるかに以前に中国で4基受注しており、工事の遅れによる損失は米国の4基よりも膨らんでいるはずです。

 また本日の破産法申請を受けて米国政府からは早くも「安全保障上の問題がある」との懸念が示されています。つまりどう考えても「ここからの損失拡大に歯止めがかかる」はずがなく、また米国側ともかなりのギクシャクがあるはずです。

 半導体事業の分社化・売却については、日本政府が外為法上の事前申請に該当するといい出しています(これは当然です)。

 つまり「2枚のカード」を自ら放棄した影響が早くも出てきていると感じます。

 もう遅いですが、3月16日付け「これだけは言っておきたい東芝のこれから」に書いたように、WHではなく東芝そのものの法的整理と、WH経営陣の刑事責任追及と、プライスウォーターハウスクーパース傘下のPwCあらた監査法人の解任などを「ブラフ」に徹底的に損失拡大を食い止め、誰にでも売却できる半導体事業は最後まで確保しておくべきだったはずです。

 もはや手遅れになってしまいました。

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「これだけは言っておきたい」東芝のこれから

2017年03月16日

「これだけは言っておきたい」東芝のこれから


 昨日に引き続き東芝ですが、本日は単なる解説ではなく「オール日本として東芝はどうすべきなのか?」を考えます。

 ここまでくると、「東芝は刑事事件化すべきか?」「上場は維持されるのか?」「半導体事業はどこが買うのか?」「経営陣の責任はどうする?」「今後のコンプライアンス体制はどうあるべきか?」などと評論している段階ではなく、オール日本としての利益をどう守るか?を真剣に考えるべき段階にきています。

 現時点における東芝のこれからは、半導体事業を分社化して(たぶん)海外企業あるいは海外ファンドに売却してしまい、米子会社ウェスティングハウス(以下、WH)は法的整理してもしなくても「ほとんどの損失」を押し付けられたあと、すっかり健全になって米国企業に「捨て値で」売却してしまうシナリオしか見えてきません。

 半導体事業については産業革新機構が出資するとも伝えられていますが、これはあくまでも半導体事業を取得する海外企業を資金的に「援助」するだけです。将来的にはいくばくかの売却益が得られるかもしれませんが、東芝にとっても日本にとっても虎の子の半導体事業の経営権を「丸ごと」海外企業に売り渡してしまうことになります。

 1999年の日産自動車も2016年のシャープや三菱自動車も、いくら資本が注入されても会社自体の経営権を「丸ごと」売り渡しているため、その資本はすべて経営権を取得した海外企業が自由に使えることになります。

 東芝は半導体事業を分社化して売却するため、少なくともその資金は東芝が使えます。つまり「いくらかは」学習効果が働いていることになりますが、その資金もすべてWHの損失処理に使われ、その健全になったWHの経営権は「捨て値」で米国企業に売却されるため、結局はあまり変わらないことになります。

 そもそも東芝が買収した時点のWHは、軍事部門など「高収益部門」は米軍産複合体に売却されており、買収後も高収益の工事は米国エンジニアリング会社に奪われていました。

 この軍産複合体、米国エンジニアリング会社、そして(たぶん)健全になったWHを「捨て値」で買収する米国企業とは、具体的にベクテル社のはずです。

 ベクテル社とは、インフラ関連施設(石油コンビナート、原子力を含む発電所、ダム、港湾、空港設備)の建設に圧倒的強みを持つ世界最大規模の総合建設会社(非上場)です。2013年9月13日付け「軍産複合体の正体」に書いてあります。

 さてここからが本題ですが、半導体事業を売却すれば1.5~2.0兆円が入ります。しかしWHは仮に法的整理しても親会社の東芝が債務保証している8000億円、米国政府が債務保証しているサザン電力の83億ドル(9500億円)、米国で建設中の4基が2020年に稼働できないと(できません)失う減税分5000億円、それに今回計上するはずの損失7000億円の合計約3兆円は、逃れられないように思われます。

 それに中国の4基(三門、海陽発電所の各2基)でも同じくらい覚悟しておく必要があります。つまり(さすがに最大に見積もってですが)合計6兆円となります。

 ということは半導体事業を海外企業に売却して、その資金でWHの海外原子力事業から撤退するという現時点のシナリオは「そもそも成り立たない」となります。ハミ出した損失は、結局オール日本で負担することになります。

 ここで絶対に必要なことはWHの法的整理あるいは東芝の損失負担あるいは売却などの交渉に、東芝の現経営陣を関与させないことです。ロクな結果にならないのでオール日本で「徹底的に強い態度で」臨むべきです。

 さらにWHの過去からの損失についてWHの現在・歴代経営陣、さらにそれに関わった東芝の現在・歴代経営陣の「不正」を日米捜査当局で協力して徹底的に洗い出し、東芝の(オール日本の)損失をできるだけ軽減することが絶対に必要です。

 ところで現時点で、WH経営陣が不当に圧力をかけたとして(これもよくわからない説明ですが)東芝の2016年10~12月期決算を承認していないPwCあらた監査法人は、プライスウォーターハウスクーパースのメンバーファームです。

 考え過ぎかもしれませんが、その監査だとWHが法的整理あるいは売却となったときに東芝の責任が過大になる可能性があります。つまりいい加減な新日本監査法人と交代したPwCあらた監査法人は厳格かもしれませんが、オール日本にとって将来的に不利な監査判断となる可能性も考えておかなければなりません。

 その辺が「どうにもならない」のであれば、WHではなく東芝そのものの法的整理を考えた方がよくなります。少なくともそれくらいの「ブラフ」をかけながら交渉に臨むべきです。繰り返しですがここからの損失はオール日本の損失となるからです。

 半導体事業の売却などは「その辺を見極めてから」ゆっくり取り掛かればいいわけです。「誰にでもできるような楽な交渉」は慌てずに後回しにすべきです。

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