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それからの東芝

2017年08月15日

それからの東芝


 東芝については6月30日付け「どうして東芝はそんなに死に急ぐ?」から取り上げていませんでしたので、その後の経過も含めてまとめてみます。

 まず本日(8月14日)午後にBloombergが関係者の話として「東芝のメモリー事業売却交渉、支払時期などを巡り失速」なる記事を配信し、それまで高値307円まで買われていた東芝株が260円まで急落、前週末比5円安の287円で終わりました。

 本当の関係者なら守秘義務が課せられているはずで、よくある「自称関係者」の噂話をBloomberg東京事務所が記事にしたような印象ですが、その中に「(優先交渉権を与えられている)日米韓連合は(東芝の)合弁相手の米ウエスタンデジタル(以下、WD)との係争解決を条件にしている」という部分があります。

 もしこれが本当なら、そもそも日米韓連合への売却など最初からできるはずがなかったことになります。そもそも最初からWDとの係争を抱えたまま、よく日米韓連合が(その他の連合でも同じですが)交渉のテーブルに着いたなあと不思議に思っていましたが、東芝の経営陣も「決めてしまえば何とかなる」くらいに考えていたのでしょう。

 当然のように日米韓連合への売却交渉は進展しておらず、今頃になってKKRとWDの連合との売却交渉が水面下で再開されているようです。大変に情けないことに日米韓連合への売却では議決権の過半を確保する約束になっていた産業革新機構がKKRにもすり寄っていますが、日米韓連合の中心にいるベインキャピタルに比べれば「はるかにえげつない」KKRがすでにWDの協力を取り付けているなら、最終的には徹底的に買いたたいて(1兆数千億円ほどで?)手に入れてしまうことになりそうです。

 そもそも日米韓連合でもKKR・WD連合でも、独占禁止法の審査期間を考えると債務超過解消のタイムリミットとされる来年3月末までの売却完了は「すでに大変に厳しい状況」となっています。

 東芝は2016年3月末に、東芝メディカルのキャノンへの売却が完了していないにもかかわらず強引に売却益を計上し、それで「待ったなし」となっていたウェスティングハウスの減損を一部だけ行ったことがあります。まあ今回も「何とかなる」と考えているのかもしれません。

 そして遅れに遅れていた東芝の2017年3月期決算が8月10日、PwCあらた監査法人から「限定付き適正意見」を得て、ようやく提出されました。「限定付き」とは東芝の内部管理体制の不備がまだ改善されてないからのようですが、それなら最初からそこは呑んで「限定付き適正意見」を貰うように交渉していれば、ここまで時間がかからなかったはずです。

 その2017年3月期決算では、最終純損益が9656億円の損失(前期も4600億円の損失)、2017年3月末の債務超過が5529億円と「ようやく」確定しました。
 
 つまりこの5529億円の債務超過を2018年3月末までに解消できないと、東京証券取引所の規定では上場廃止となります。また東証は本年3月に東芝を内部管理体制の不備を理由に監理ポストに割り当てており、これも東証が改善を認めなければ上場廃止となりますが、こちらの方は東証が判断するため最終的には「問題なし」となるはずです。

 ところが2018年3月末までの債務超過解消は、できなければ上場廃止と東証の上場規定にはっきりと明文化されており、それで上場廃止となった企業もたくさんあるため、さすがに東証でも「東芝だけ特別扱い」とはできないはずです。

 そこでどうしても来年3月までに半導体事業会社を外部に売却しなければならないとなりますが、このまま時間に迫られていくと「そうでなくても当事者意識がなくなっている」東芝の経営陣では、ますます海外勢に煽られ「とんでもない条件でも売却してしまう」ことになりそうです。

 そういえば8月7日に、キング・ストリート・キャピタルなるヘッジファンドが東芝の5.81%(2億6400万株)を取得したとする大量保有報告書を提出しています。6~7月に市場で買い付けているようですが、これなども半導体事業売却完了=上場廃止回避とのインサイダー情報を関係する海外勢から得ているとしか思えません。
 
 つまり日米韓連合でもKKR・WD連合でも、これから時間が迫れば迫るほど足元を見られることが明らかなら、ここはいったん上場廃止にしてでも半導体事業を中心に再建策を立て直し、それでも売却となれば徹底的に高値で売却できるよう強気に出るべきです。

 上場廃止となっても東芝が生き残れば、どこかで再上場のチャンスがあるはずで、株式が紙くずになることもありません。それがオール日本にとって「最善の策」のような気がします。


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■企業 | 2017.08.15

ソフトバンクは大丈夫なのか?

2017年08月09日

ソフトバンクは大丈夫なのか?


 本誌は以前からソフトバンクについて否定的な意見が多すぎるとのご批判がありましたが、ここ2年ほどは否定的な記事をほとんど書いていないはずです。

 むしろ昨年6月の株主総会でアローラ副社長(当時)の首を切ったことや、サウジアラビアのムハンマド副皇太子(当時、現皇太子)を巻き込んで10兆円ファンドをまとめ上げたなどの孫社長の行動力は、素直に賞賛していたはずです。

 そのソフトバンクが8月7日に2017年4~6月期連結決算を発表しました。日本の報道ではその記者会見における孫社長の「スプリントを軸に米携帯再編は合意が近い」との発言をそのまま大きく伝えていますが、実は「その発言」も含めていくつか気になるポイントがあります。

 そこで久々に、日本の報道がほとんど指摘していないソフトバンクの問題点を取り上げ、表題の「ソフトバンクは大丈夫なのか?」との記事となります。

 まず孫社長の「その発言」からですが、これは7月4日付け「スプリントが米通信・メディアの再編に組み込まれる?」で書いたように、最大のポイントはスプリントの通信設備を米通信・メディアの勝ち組であるケーブルテレビ最大手のコムキャストと同2位のチャーター・コミュニケーションズの連合に提供し、スプリントがその大規模な通信・メディア再編の中に組み込まれる可能性か出てきたという「大変に夢のある記事」でした。

 実はその独占交渉期間が7月末までだったはずで、実際にスプリントが(孫社長が)チャーター・コミュニケーションズに買収交渉を持ち掛けた形跡もありましたが、結局のところ何の進展もなく白紙に戻ったようです。つまりスプリントを「高値で売却する」あるいはソフトバンクが米通信・メディア再編に「首を突っ込める」ほとんど唯一の可能性が消えてしまったことになります。

 つまり今回の記者会見で孫社長は、再びTモバイルとの経営統合に話を戻しているだけですが、そもそもスプリントは時価総額も契約者数もTモバイルを大きく下回っており、経営統合のイニシアティブが取れるはずがありません。

 また常にソフトバンクに好意的な日本の報道では、今頃になって何とスプリントが(あるいはソフトバンクが)チャーター・コミュニケーションズを買収する可能性まで記事にしていますが、最初からそんな話ではありません。ただスプリントの2017年4~6月期のセグメント利益が1319億円と、前年同期比2.9倍となり、ソフトバンク全体の収益をけん引するようになっているのは「さすが」です。

 さて順序が逆になりましたが2017年4~6月期におけるソフトバンクの連結決算は、売上げが2兆1860億円(前年同期比2.8%増)、営業利益が4792億円(同50%増)となっていますが、最終純利益が55億円(同98%減)しかありません。

 それについては前年同期にアリババの売却益を2042億円計上しており、今期は逆に2571億円のアリババ関連のデリバティブ損失を計上したからとしか説明されていません。ソフトバンクは2016年6月にアーム買収資金をねん出するため保有するアリババ株式を79億ドル(8600億円、アリババ全体の4%に相当)売却しています。

 このうち29億ドルは単純売却で、前年同期に計上した2042憶円の売却益となっています。問題は残る50億ドルで、当時のソフトバンクの説明ではこの50億ドルのアリババ株式を担保に資金を調達し、返済は現金かアリババ株式かのどちらかをソフトバンクが選ぶことになっていました。

 アリババ株はそこから上昇していますが、それならソフトバンクは資金を現金で返済して値上がりしたアリババ株式をそのまま保有することになるはずで、契約途中の今期に損失計上となるはずがありません。またソフトバンクはこの関連において最終損益は9億ドル(1000億円)の損失となる(だから今期の損失の大半は戻ってくる)と説明しているようですが、その9億ドルは50億ドルの調達期間(たしか3年)の支払金利のような気がします。ドル建ての仕組債なので年6%くらいの支払金利となるはずだからです。

 要するに今期に発生した2571億円の特別損失の説明になっていませんが、そこを指摘する日本の報道はありません。

 さらに「ドル箱」の国内通信事業のセグメント利益が2184億円と、前年同期比8.6%減となっています。これは規制に守られた儲け放題の国内携帯電話事業が、ようやく格安携帯などに侵食されはじめたからですが、ソフトバンクの積極的な海外投資を支えている国内携帯電話事業が稼ぐ豊富なキャッシュフローが減少に転じていることは、気に留めておく必要があります。

 さらに10兆円ファンドが5月20日にスタートしており、さっそく今期から連結対象に組み入れ1068億円の評価益(エヌビディアのようです)を計上しています。これは最初から指摘されているファンド出資者との典型的な利益相反となるはずですが、全く気にせず堂々とソフトバンク本体の連結収益に含めています。

 また3兆3000億円で買収したアーム事業も、今期の売り上げが470億円で69億円のセグメント損失となっています。まあこれから大変に大きくなる事業だそうなので、ここはあまり気にしないことにしますが、それでもいろいろな「気になるポイント」が山盛りとなっているソフトバンクの2017年4~6月期決算でした。

 引き続き目が離せなくなりました。


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■企業 | 2017.08.09

やっぱり差し止まらなかった出光興産の公募増資 創業家に残された方法は?(追加記事あり)

2017年07月20日

やっぱり差し止まらなかった出光興産の公募増資 創業家に残された方法は?(追加記事あり)


(お知らせ)

 本日(7月20日)は新しい記事はお休みさせて頂きますが、昨日の記事の最後に「追加記事」を付け加えてあります。以下、本文です。


 7月5日付け「出光興産が公募増資発表 創業家の差し止めに対する裁判所の判断は?」の続きですが、本日(7月18日)に東京地方裁判所が創業家の差し止め請求を(予想通り)却下しました。

 東京地方裁判所は「支配権をめぐる争いにおいて出光の経営陣が自らを有利な立場に置くという不当な目的が一応認められる」としたものの「新株発行の主要な目的であるとまでは断定できない」とし、新株発行が「著しく不公正な方法」により行われたものであるとは言えないとの判断を下しました。

 さすがに裁判所も創業家に対しては、その辺の「乗っ取り屋」の請求とは同列に扱わなかったようですが、それでも資金需要を前面に出すと新株発行は差し止まらないものです。

 創業家は同日、東京高等裁判所に即時抗告を申し立てましたが、何しろ新株の払込日が7月20日であるため(注)、東京高等裁判所は明日(7月19日)までに判断しなければなりません。もともと高等裁判所の判断はより保守的であるため、本日の決定が覆ることはありません。

(注)発行IRによると払込日は7月20~26日のいずれかとなっていますが、発行価格決定日の5営業日後ともなっており、発行価格は7月12日に2600円(払い込み価格は2489.36円、差額は証券会社の取り分)と決定されているため20日が払込日となります。

 つまりこのままだと創業家側の持ち株比率が26%ほどとなり、昭和シェル石油との経営統合を承認する株主総会で拒否権が使えず、また経営統合も株式交換となるはずで創業家の持ち株はさらに薄まってしまうことになります。

 それでは創業家側はもう打つ手がないのでしょうか?別に本誌が依頼されているわけではありませんが、以下はほんの「お節介」です。


ポイント その1)

 出光興産は2016年12月19日に、昭和シェル石油の117,761,200株(議決権の31.3%)を1株=1350円でロイヤル・ダッチ・シェルから購入していますが、その日の昭和シェルの株価は1147円でした。つまり時価より1株=203円、総額で239億円も「高く」買っています。

 この分を会社(出光興産)に返還させるべく現経営陣に株主代表訴訟を提起します。もちろんこの昭和シェル石油株の購入には、いろいろな経緯があることはよく理解していますが、そこは無視して「時価より高く購入した」事実だけを強調します。

 実際には株主(ここでは創業家)がまず出光興産の監査役会に訴訟提起を求め、3か月間たっても会社(ここでは出光興産)が行動を起こさなければ、株主が正式に株主代表訴訟を提起できます。

 そんな株主代表訴訟など勝てないだろう?となるかもしれませんが、それは重要ではありません。裁判は長く続くため、出光興産のサラリーマン経営陣にとっては相当のプレッシャーとなるはずです。また訴訟費用も(保険がありますが)自分持ちです。そのプレッシャーが目的です。


ポイント その2)

 今回の新株発行を発表する直前である7月3日の出光興産株の終値は3260円、発行済み株数は1億6000万株なので時価総額が5216億円でした。そして本日(7月18日)の終値は、新株発行が差し止まらなかった影響もあって2646円、時価総額が4233億円となり、実に創業家を含む既存株主の株式価値が総額983億円も失われています。

 これを出光興産に損害賠償請求を行います(もちろん保有株式分だけです)。現在の法解釈では、株主の損害賠償請求が認められるのは経営陣に不正があったとき(また不正を知って止めなかったとき)に限られます。

 もちろん新株発行は不正ではありませんが、そこで東京地方裁判所が本日の決定に入れた「不当な目的が認められる」を利用させてもらいます。まあ不正と不当はかなり違い、そんなこと認められないだろう?となりますが、それも重要ではありません。会社が損害賠償を求められたときは、その不正があった経営陣にその分を請求する訴訟を提起するもので、これも出光興産のサラリーマン経営陣に対する相当のプレッシャーとなります。

 ましてやその1)にある昭和シェル石油株を購入した際の1590億円の借入金返済が、今回の新株発行の主要目的となっているはずで(本日の裁判所の決定文にも書いてあります)、その1)とその2)は関連付けられます。

 要はこの2つのプレッシャーを出光興産の経営陣にかけることにより、昭和シェル石油との経営統合を思いとどまらせるわけですが、これだけなら「危なっかしい話」です。

 そこで次が最も重要となります。


ポイント その3)

 それでは昭和シェルはどうすればよいのでしょう?昭和シェル株式ではなく、昭和シェルそのものをどうするのか?です。

 出光興産はすでに昭和シェル石油の議決権の31.3%を保有しています。これをももう少し買い増します。できれば40%超としたいのですが、とりあえず33.4%以上とします(TOBが必要です)。そして遠慮することなく経営陣を送り込み、支配してしまいます。もちろん昭和シェル石油も抵抗するはずで委任状争奪戦となりますが、31.3%をすでに抑えていることは大きいはずです。

 つまり融和的な経営統合ではなく、大株主として昭和シェルを支配してしまいます。ルノーは日産自動車の44%(当時)を保有しただけで、日産自動車を見事に食い尽くしてしまいました。これが外国企業にできて日本企業にできないはずがありません。そして同業企業を支配するメリットは大変に大きいはずです。

 つまり創業家は出光興産のサラリーマン経営陣にその1)とその2)のプレッシャーをかけ、その3)に方向転換させればいいだけです。その方が創業家だけでなく、出光興産にとっても出光興産の株主にとってもはるかにプラスが多いはずです。

 出光興産の創業家の皆様におかれましては、どうぞご自由に参考になさってください。


(以下、追加記事です)

 東京高等裁判所も本日(7月19日)夕刻、創業家側の新株発行差し止め仮処分の申し立てを却下しました。前日(7月18日)の東京地方裁判所の決定(同じく却下)に対して創業家側が即時抗告を申し立てていましたが、決定文作成も含めてちょうど1日で却下されたことになり、新しい判断は何も加えられていないようです。

 これで明日(7月20日)の朝一番には、幹事証券会社から出光興産に新株発行代金が送金され、4800万株の新株が発行されることになります。

 創業家側の代理人弁護士は「数多くの一般株主に犠牲を強いながら(新株発行を)強行することは、株主の信頼関係を損なうもので許されない。経営陣に強く抗議し、今後も合併に断固と反対し続ける」とコメントしています。この点に対して(だけ)は本誌も賛同しますが、その是正を司法判断に期待することも無理があり、長々と書いてきたような「お節介」な記事となるわけです。

 昭和シェル石油と融和的に経営統合する必要はなく、大株主の立場から(足りなければ買い増してでも)昭和シェル石油を力で支配するべきと考えます。ルノーが日産自動車の44%を所有するだけで、日産自動車をきれいに食い尽くしていることを参考にすべきです。同業他社を支配下に入れると、それだけメリットも大きいはずです。

 出光興産は、すでに手に入れている「昭和シェル石油に対する圧倒的に有利な立場」をもっと利用することが、株主に対する最善の方法です。出光興産が昭和シェル石油の株主(あのアラムコもいますが)を気にする必要は全くありません。


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■企業 | 2017.07.20

出光興産が公募増資発表 創業家の差し止めに対する裁判所の判断は?

2017年07月05日

出光興産が公募増資発表 創業家の差し止めに対する裁判所の判断は?


 昭和シェル石油との合併に反対する創業家に対抗するために、出光興産が7月3日の取締役会で4800万株の公募増資を決定し発表しました。現在の発行済み株数の1億6000万株に対して30%の新株発行となります。

 そもそも6月29日に開催された定時株主総会では「おくび」にも出していなかった公募増資を強行する出光興産の目的は、現時点で拒否権が発生する33.92%を確保している創業家の議決権を「薄めてしまう」ためであることは明白で、創業家の代理人弁護士は早くも発行差し止めの仮処分を裁判所に請求すると発言しています。

 本日は、どちらの主張に大義名分があるかではなく(どちらにもありません)、この発行差し止めを巡る裁判所判断のポイントについてです。担当は東京地方裁判所民事部でも大型案件を扱う(したがって保守的な判断を下す傾向のある)民事第8部となるはずです。

 まず今回発表された4800万株の公募増資の内訳は、大和証券とJPモルガン証券が共同主幹事となる国内募集分が3360万株、Daiwa、JP Morgan、Goldman Sachsの各欧州法人が共同主幹事となる海外募集分が1440万株(全体の30%)となっています。

 この海外募集分は「ほぼそっくり」貸株とセットにヘッジファンドが売り叩いた後のショートカバーに充当されます。さっそく本日(7月4日)から活発な売り叩きが始まっており、終値は364円安の2896円(本年最安値)、出来高も738万株(前日は43万株)と急増していますが、まだまだ続くはずです。海外募集分は1440万株もあるからです。

 ここは裁判所の判断には全く関係ありませんが、もし差し止められたならヘッジファンドは大慌てとなるはずです。

 それから払込日が7月20~26日の「いずれかの日」となっていますが、たぶん初日の7月20日となるはずです。つまり裁判所はその前日の7月19日までに判断する必要がありますが、東京地方裁判所の判断がどちらでも必ず東京高等裁判所に移されるため、東京地方裁判所は遅くとも7月11~12日頃までに判断する必要があります。

 これも裁判所の判断には関係ありませんが、公募価格決定が払込日の5営業日前となっているため7月12日となるはずで、そこに向かってヘッジファンドの売り叩きが加速することになります。

 さて会社法では株式発行が「著しく不公正」であれば株主は発行差し止めを請求できるとしか規定されていません。差し止めは6か月以上保有する株主であれば、保有株数に関わらず誰でも請求できます。

 それではこの「著しく不公正」とはどういう意味なのか?ですが、その中には「経営権を巡る争いを有利にするため」が含まれていると解釈されています。

 しかし当然に出光興産は公募増資のIRでは、設備投資や借入金返済のためと強調しており、本音である「合併に反対する創業家の議決権を薄めるため」とは書いていません。だいたい事業会社である以上、常に資金需要があるはずで、そのままではなかなか差し止まらないことになります。

 2005年3月に、ニッポン放送がフジテレビジョンに割り当てた新株予約権に対し、ライブイドアの差し止め請求が認められたことがあります。しかしこれはあまりにも素人のような買収防衛策だったからで、もう少し資金需要を強調して「うまくやっておけば」差し止まらなかったはずです。

 だいたい裁判所は、余程のことがない限り会社側が正しく、外部からその会社を攻撃する勢力は「けしからん」と判断するもので、今回の創業家も「けしからん」となる可能性がやや強いと感じます。これは会社側には一般株主を含め大多数の株主の利益を守る義務があり、創業家といっても一部株主の利益だけを優先することはできないという大前提があるからです。

 ここで本誌の経験から、裁判所の判断に影響を与える要素が2つあると考えます。その1つは会社側と外部勢力(ここでは創業家)を巡る社会的風評、つまり世論がどちらの見方なのかを裁判所は意外に気にすると考えます。ここはどちらが有利かはわかりません。

 もう1つは代理人弁護士の「格」です。「能力」ではなく一般的に認識されている「格」のことです。だいたい差し止め請求などはどちらも主張するポイントはほとんど決まっており、それを提出文書にまとめる能力も、それほど差が出るものではありません。そうなると最終的にはそれぞれの代理人弁護士の「格」で決まることになります。

 本年に入って創業家は浜田卓二郎弁護士を解任しており、無名の弁護士が後任となっています。別に浜田弁護士の見識が優れていたという意味ではなく、この交代は創業家に不利となります。

 以上から出光興産の公募増資は「差し止まらない」と予想します。


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■企業 | 2017.07.05

どうして東芝はそんなに死に急ぐ?

2017年06月30日

どうして東芝はそんなに死に急ぐ?


 過激な表現を好まない本誌ですが、もはやこう表現するしかありません。またあまり東芝ばかり取り上げないようにするつもりですが、こう次から次へと「驚くべきニュース」が飛び出してくると、やはり取り上げざるを得なくなります。

 東芝は昨日(6月28日)、定期株主総会を開催しました。しかし2017年3月期の決算報告はなく、ただ現取締役陣の再任を承認しただけでした。さすがに再任された取締役陣の任期は、2017年3月期の決算報告を行う臨時株主総会までとなっています。一応は決算報告ができる日がくることを想定しているようです。

 さてこの定時株主総会に間に合わせるために、半導体事業会社売却の優先交渉権を6月21日に「日米韓連合」に与えていたはずですが、当然のように何の進展もありません。

 表面だけでも議決権の過半を維持していることにしたい産業革新機構など日本勢が、ベインキャピタルの出資分の大半を議決権のない優先株にしてもらったわけですが、当然にベインキャピタルは「とんでもない条件の普通株への転換条件」を求めているはずで、おいそれと合意できるはずがありません。優先交渉権を与えてしまったら足元を見てくることは当たり前です。

 またその優先交渉権で、半導体事業会社の分離・売却を差し止めているウエスタン・デジタル(以下、WD)が当然のように態度を硬化させ、最高価格(2兆2000億円)を提示していたブロードコム・シルバーレイク連合やKKRも当然のように降りてしまいました。

 さらに東芝は定時株主総会が終わった直後にWDが半導体事業会社の売却を妨害しているとして1200億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴してしまいました。ここでWDとは、曲がりなりにも東芝と四日市工場を共同運営しており、建設中の第6製造棟も含めてそれなりの投資も行ってきた「仲間」であるはずです。

 つまり権利を主張している「仲間」に対し(その主張が正当なものかどうかはともかくとして)、今まで東芝には何の力にもなっておらず(これからも何の役にも立ちそうもない)産業革新機構のメンツとベインキャピタルのカネ儲けを優先するために、「仲間」を訴えたことになります。

 本誌は日本の事業を海外に簡単に売却することは常に反対していますが、これは全く「それ以前の信義に関わる問題」であるはずです。

 そもそも2018年3月までに債務超過を解消しなければ上場廃止になるというタイミングと、そこから逆算した2兆円という金額と、経済産業省と産業革新機構のメンツと、パニックになっている銀行団を黙らせることを考えただけの優先交渉権となります。

 そこで依然として目途の立たない2017年3月期決算をどうするとか、「仲間」であるはずのWDをどうなだめるとか、そもそも半導体事業会社を売却することが最善の策であるのかなどの議論が、スッポリと抜け落ちたままになっています。

 さらに半導体事業会社の簿価が7000億円ということなので、仮に2兆円で売却できたとすると数千億円規模の税金を支払う必要があります。東芝の「試算」では2017年3月期において5816億円の債務超過だそうですが、企業会計と税務会計は違うものなので「おそらく」売却益の全額が課税対象となるはずです。

 これなども最近になって「えっ、税金がかかるの?」と慌てているはずです。

 本誌が予想する半導体事業売却の最終形とは、WDがギリギリまで差し止めて最後にKKRを抱き込み、徹底的に買い叩いて(たぶん1兆数千億円くらいで)買収してしまうと考えます。

 世界最大級のプライベート・エクイティファンドであるKKRが出てくると、ベインキャピタルなど比べものにならないほど「えげつない」はずで、結局は何のために虎の子の半導体事業会社を海外に売却するのかわからなくなるはずです。

 話題が変わりますが、3月末に米連邦破産法の適用を申請したウェスティングハウス(以下、WH)も、結局は中国で止まっている4基の原発建設も含めた損失はすべて東芝にツケ回されるはずですが、破産後のWHは間違いなくピカピカの会社になります。さっそくインドでの6基の原発建設が復活しているようです。

 WHも3月末に連結対象から外すためだけに破産申請したものの、その3月末の決算も全く目途が立っていないため、いったい何のためにオール米国を敵に回してまでWHを破産申請したのかがわからなくなります。

 それに加えて今回は「仲間」であるはずのWD相手に訴訟しており(それも全く意味のない東京地裁に)、いよいよ表題にある「どうして東芝はそんなに死に急ぐ」となってしまいます。


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■企業 | 2017.06.30
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