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衆議院選挙後の日本株はどうなる?

2017年10月26日

衆議院選挙後の日本株はどうなる?


 「衆議院選挙と日本株はスルーするのか?」とのコメントも頂いていますので、本日はこの話題です。

 本日(10月25日)の日経平均は17営業日ぶりに下落(97円安)して21707円となりましたが、昨日まで史上最長となる16連騰となっていました。連騰記録は途絶えましたが株式市場の参加者はかなり強気となっており、まだまだ日本株は出遅れで上昇余地が大きいとのコメントも多いようです。

 本誌は9月29日付け「日本株の中期見通しを数年ぶりに修正する6つの理由」で書いたように、2012年夏の民主党政権時の閉塞感の中で日経平均が8000円前後、円相場が1ドル=77~80円だった時代から「ずっと」強気を続けていましたが、それを約1か月前に修正して警戒レベルを引き上げるよう主張しています。

 実際にはその日(9月29日)から16連騰が始まったので、明らかに「タイミングが早すぎた」ことになりますが、修正に至った背景は全く変わっていません。つまり警戒レベルを「さらに」引き上げるべきと考えています。

 日本経済に限らず世界の経済は、リーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和にもかかわらず本格的に回復しておらず、したがって設備投資など前向きの資金需要が盛り上がらず、結果的に溢れ返った投資資金が主に株式市場に向かい未曽有の上昇相場が続いています。

 この間にも世界の株式市場は、2010年と2012年の二度にわたるギリシャ危機(とくに2012年はイタリアやスペインにまで飛び火)、2013年5月のバーナンキショック(FRBの量的緩和縮小を示唆)、2015年8月と2016年1~2月の二度にわたる中国ショック(人民元の急落がきっかけ)、2016年6月の英国ショック(国民投票でEU離脱を決定)、さらに2016年11月のトランプショックに至るまで、何度か急落場面がありました。

 しかしその度に、世界の株式市場は比較的短期間で上昇相場に戻り、また金融緩和・量的緩和の強化など政策面の後押しもあり、とくに本年に入ってからは(日本にとっては北朝鮮情勢の緊迫化など悪材料もありましたが)急落する場面もほとんど無くなっています。

 現時点の日経平均は21年ぶりの高値水準となっていますが、米国や一部の新興国を含む世界の株式市場はほとんど史上最高値を更新しています。

 つまりリーマンショック以降の世界の株式市場は、何度かあった急落場面では「パニックになって売らない」「じっと耐える」「余裕があれば買い下がる」が正解だったことになります。そのため2017年になると「悪材料でも売らない」から「買いチャンスとなる悪材料すら待望する」となり、世界の株式市場から急落場面も大きな調整場面も消えてしまいました。

 世界の株式市場はすでに各国の経済情勢に反応しなくなっていますが、ここにきて世界の政治情勢の緊迫化にも反応しなくなっています。要するに世界の株式市場から「弱気」が消えていることになります。

 これが本誌の日本株への中期見通しを数年ぶりに修正した最大の理由となります。ここに来てたまたま悪材料そのものも目立たなくなっていたこともあり、その上昇に加速がつきましたが、ますますそう考えるようになっています。日本株ほどではありませんが、世界の株式市場に対しても同じように考えています。

 ここで問題は、世界の(とくに)量的緩和が株式市場を上昇させる効果があったことは間違いありませんが、その効果がすでに十分に出ているのか、まだまだこれからなのかが誰にもわからないことです。

 さらにそう考えているうちに、リーマンショック以降の世界の量的緩和を主導したFRBが保有資産縮小に踏み切ってしまいました。つまり量的緩和の効果が(それに弊害も)よくわからないうちに、その正常化(資産縮小)が始まったことになります。

 さらにECBは、現行の量的緩和の縮小に(買入れ額の縮小に)来年早々にも踏み切るはずですが、日銀は足元で物価が上昇し始めているにもかかわらず現行の量的緩和と長期金利水準のコントロールを続けることになるはずです。

 つまり量的緩和がそれぞれの株式市場に与える効果は、ますます複雑でわかりにくいことになります。

 衆議院選挙は小池新党の自滅もあり、自民・公明の与党で改憲発議ができる3分の2が確保できました。また何よりもアベノミクスが信任されたことになりますが、2019年10月からの消費増税(10%に)が確定的となり、そのショックを和らげるために日銀の金融政策も当面は維持されることになるはずです。

 つまり当面の日本株は、日本を含む世界経済や政治情勢さらに金融政策の方向にまで影響される度合いが少なくなり、ひたすら市場参加者の心理状況に影響されることになりそうです。

 そして株式市場から「弱気」が消えてしまった時に上昇が止まり、やがて下落に転じることは、過去に何度も経験しているはずです。ただその場合も株式市場全体が同じように反応することはなく、EVやAIや仮想通貨関連やIPO直後の銘柄など「明らかに買われすぎているところから」変化することになるはずです。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.10.26

昭和HD・ウェッジHD・Jトラスト

2017年10月25日

昭和HD・ウェッジHD・Jトラスト


 また連想ゲームですが、表題を見てピンときた読者の方も多いはずです。すべてタイを本拠にあきれるような悪事を繰り返している日本の投資家グループが関わっています。

 本誌はいつも「経済事件は悪質な順番に刑事事件化するわけではない」と書きますが、実際にあきれるほどの悪事が繰り返されても全く刑事事件化しないケースや、逆に何でこんなところを大騒ぎして刑事事件化するのかと不思議に思うケースもあります。

 東芝の不正経理のように国策上の背景があるとか、裁判で万が一でも無罪になり輝かしい連勝(有罪)記録が途絶えてしまう恐れがあるとか、背後に戦いたくない巨大勢力が潜んでいるなどの理由で刑事事件化が見送られることがあります。それはそれで(決して容認はできませんが)全く理解できないわけでもありません。

 ところがこれから書く昭和HDの架空増資事件は、少なくとも上記理由がどれも当てはまらないながら刑事事件化が見送られた(本誌が選ぶ)奇怪なケースのチャンピオンです。

 もう時効になってしまいましたが、2008年6月27日に払い込まれた昭和HDの約12億円の第三者割当増資において、引き受けた投資家グループが直後にその払込金だけでなく昭和HDにあった資金も合わせて27億円も還流させた「レバレッジ型の架空増資」となりました。

 さすがに証券取引等監視委員会が2010年6月8日に強制捜査に踏み切りましたが、典型的な架空増資であり無罪になるはずがなく、関係者を国策上の理由で守る理由もなく、背後に巨大組織が潜んでいるとも思えない(ごく小さい勢力しか出てきません)にもかかわらず、刑事事件化(刑事告発)が見送られてしまいました。

 その増資払い込み直後に昭和HDの取締役会も支配していた投資家グループおよびその関係者は、まんまと逃げきってしまいました。さらに「不法な捜査令状によるいわれなき強制捜査によって被った損害の賠償を求める」として1億1000万円の国家賠償請求裁判まで起こしていました。

 徹底的にコケにされた証券取引等監視委員会は2013年11月になって、この投資家グループを率いる此下益司氏に対し、同じく支配しているウェッジHDの株式に係る偽計について40億円余の課徴金納付を発するよう金融庁長官に勧告しています。

 しかしもともとタイを本拠にする此下氏は、課徴金が40億円でも400億円でも1円も支払うつもりがなく、意味がない行政処分であり、実際に悠然と逃げ切ったままです。

 そもそもウェッジHDの株式に係る偽計なら、完全にコケにされた証券取引等監視委員会や東京地検特捜部が「最も得意とする金融商品取引法違反」であるはずで、そこで改めて刑事事件化(刑事告発)すればよかったはずですが、なぜか耐え忍んだままでした。

 その後もこの投資家グループはタイなど東南アジアにある関係会社、昭和HD、ウェッジHD(2011年に昭和HDの子会社となっていますが上場は維持したままです)などを舞台に「怪しげな錬金術」を繰り返していたはずで、2015年頃からJトラストとの関係を深めていったようです。

 本誌は、Jトラストについては2013年夏頃の巨額ライツイシューを集中的に取り上げましたが、その後はほとんど見ていませんでした。また昭和HDとウェッジHDを巡るこの投資家グループについても「憤るだけ無駄」と考えて無視したままでした。

 そこでやっと最近の話題となりますが、そのJトラストが10月17日に「当社株価下落の要因について」なるニュースリリースを公表しています。

 確かにJトラストの株価は10月16日に急落しており、その前日の1037円が867円となっていました。本日(10月24日)も838円と続落しています。要はその理由がこの投資家グループを率いる此下益司氏が、タイの証券取引委員会から偽計および不正取引の疑いで捜査対象となっており、Jトラストが出資しているタイの合弁会社の株式がタイ証券取引所において取引停止となったからと書かれています。

 そこではJトラストの予想損失は一部しか公表されていませんが、2015年の取引開始時点で3000万ドル(34億円)のグループ会社転換社債を引き受けたはずで、現時点ではもっと膨らんでいる可能性があります。

 まあどう見てもJトラストが此下益司氏の「うまそうな話」に引っかかっただけですが、もし此下氏およびそのグループがタイにおいて刑事事件となるなら(もっと正確に言うともみ消すだけの政治力と資金力が此下氏に残っているかですが)、Jトラストだけでなく昭和HDとウェッジHDとの資金関係も洗われることになるはずです。

 普通ならタイ当局から日本の証券取引等監視委員会あるいは検察庁に協力要請がくるはずですが、そこでも腰が引けた対応でタイだけの刑事事件で終わってしまわないことを期待しています。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.10.25

ブラックマンデーから30年

2017年10月18日

ブラックマンデーから30年


 明日はブラックマンデー(1987年10月19日)からちょうど30年目となります。NYダウがたった1日で508ドル(22.6%)も急落し、たちまち世界の株式市場も急落となりました。

 本誌を書き始めて約7年となりますが、まだブラックマンデーについて1度も書いたことがなかったため、ブラックマンデーに至った当時の背景を検証してみます。

 NYダウが1987年10月19日に急落したため、翌20日の日経平均も急落しました。前日の25746円(終値、以下同じ)から21910円まで3836円(14.9%)もの急落となりました。下落率、下落幅とも現在まで破られていません。

 昨日(2017年10月17日)の日経平均は11連騰中で21336円となりましたが、まだブラックマンデーで急落した水準より少し安いことになります。

 日経平均は1984年に10000円を突破したあとも上昇を続け、ブラックマンデーの少し前には26646円と、当時の史上最高値を記録していました。

 それでは当時のNYダウの水準はどうだったのでしょう?

 ブラックマンデーの前営業日の10月16日が2247ドルで、それが当日に508ドル(22.6%)下落して1739ドルとなりました。

 ケタを間違えているわけではありません。当時のNYダウは現在の10分の1以下でした。NYダウは30銘柄で構成されていますが、常に成長力のある銘柄に頻繁に入れ替えているため、米国株式市場全体より大きく上昇しているはずです。

 現在もNYダウを構成する30銘柄のうち、何と18銘柄がブラックマンデー後に構成銘柄となっています。さらに2銘柄がブラックマンデーのあった1987年に構成銘柄となっています。本年1月27日付け「祝2万ドル! NYダウ」にも書いてあります。

 そうは言ってもブラックマンデーからNYダウは10倍になり、日経平均はやっと当時の水準に追い着こうとしています。

 それではブラックマンデーに至った背景とは、何だったのでしょう? 

 1985年2月に1ドル=260円をこえた「行き過ぎたドル高」を、協調介入で強引に押し下げようとした同年9月22日のプラザ合意は劇的な効果がありました。問題はそこからドル安が止まらなくなってしまいました。
 
 そこで1987年2月のルーブル合意で「行き過ぎたドル安」を止めようとしましたが全く効果がなく、同年末には1ドル=120円になってしまいました。当時の米国は(現在もそうですが)大幅な貿易赤字と財政赤字を抱えていたのでドル安が止まらず、そこに猛烈なインフレと長期金利上昇が加わってしまいました。

 そうなると米国からの資本引き上げも加速し、ブラックマンデーまでの半年間で10年国債利回りが7%から10%まで上昇していました。まさに当時の米国は最悪の経済状況だったことになります。

 そうなると処方箋は、まず利上げでドル安とインフレを止めなければなりませんが、これ以上の景気後退も避けたい米国は、何と日本と西独(当時)に利下げを要請します。

 日本はそれに従って公定歩合を史上最低(当時)の2.5%まで引き下げましたが、西独は聞き入れません。それどころかインフレ回避のため1987年9月に利上げしてしまいました。つまりドル安を止めるためには米国も利上げしなければならなくなり、そこですでに下落に転じていた米国株が一気に崩れてしまいました。

 一方で日本株は急落翌日に2037円高となり、半年後の1988年4月には急落前の水準を回復していました。さらに日銀が1989年5月まで利上げを躊躇していたため(まだ米国の利下げ要請を守っていたため)猛烈なバブルとなり、日経平均も1989年の大納会に38915円の史上最高値となりました。

 この辺が振り返って考えるブラックマンデーの背景です。少なくとも現在の世界を取り巻く経済・金融情勢とは全く違うため、ブラックマンデー型の株価急落は考えられません。

 本誌は数週間前に日本株の中期見通しを数年ぶりに修正し、警戒レベルを引き上げるべきと考えていますが、その背景は「気になる材料が揃ってきたこと」と、「市場から弱気がほとんどいなくなったこと」と考えます。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.10.18

絶好調の米国株式市場で「ちょっと気になる」ニュース

2017年10月17日

絶好調の米国株式市場で「ちょっと気になる」ニュース


 CEOが交代したばかりのゼネラル・エレクトリック(以下、GE)は10月9日、トライアン・ファンド・マネジメント(以下、トライアン)の最高投資責任者(CIO)であるエド・ガーデン氏が同日付けで取締役に就任したと発表しました。

 また日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(以下、P&G)は10月10日に株主総会を開催し、同じトライアンを主宰するネルソン・ペルツ氏が株主提案していた同氏の取締役就任を否決したと発表しました。

 ここでトライアンとは2005年にこのネルソン・ペルツ氏、エド・ガーデン氏らが立ち上げた投資ファンドで、運用資産は100億ドル(1兆1000億円)を超えています。米国でも最大級のアクティビスト(物言う株主)とされており、かなりの大企業でも果敢に投資した上で、大胆な事業再編案やリストラ案を提案して株価上昇を狙う投資手法となります。

 そのトライアンが、GEには取締役を送りこむことに成功し、P&Gには失敗したことになります。逆に言えばGEはトライアンの要求を受け入れ、P&Gは拒絶したことになります。

 トライアンは2015年からGEに投資しており、合計25億ドル(2800億円)を投入してGEの約1%を保有しています。しかしGEの株価は年初から27%も下落しており、トライアンの持ち株も含み損となっています。

 GEの新CEOであるフラナリー氏は、このままでは株主である機関投資家がかなりトライアンに賛同して今後の経営がやりにくくなると考え、早めに要求を受け入れたはずです。また今後もトライアンの提言や要求を、ある程度は受け入れた経営となるはずです。

 一方でトライアンは本年に入ってからP&Gを大量に買い増し、合計35億ドル(3900億円)を投入してP&Gの約1.5%を保有しています。P&Gの株価は年初から5%上昇していますが、同期間におけるS&P500の12%上昇、同業・ユニリーバの29%上昇と比べれば「かなり」見劣りします。

 P&Gは株主総会における委任状争奪となり、P&Gの合計4割を保有する機関投資家や大手株主アドバイザーがトライアンを支持するなど拮抗していたはずですが、結果は否決でした。

 トライアンは早速、独立した機関による票数確認を要求しています。また今回の委任状争奪を巡るキャンペーンに、P&Gとトライアン双方が合計で6000万ドル(67億円)を費やしたそうです。

 またトライアンのこれまでのアクティビストとしての活動は、ハインツ(ケチャップで有名)、ペプシコ、BNYメロン(大手の銀行持ち株会社です)、デュポンなどに投資して、同じような提案・要求を繰り返しています。BNYメロンには取締役1名を送り込みました。
 
 さてここからが本題です。

 確かにトライアンはGEに25億ドル(2800億円)、P&Gに35億ドル(3900億円)と、巨額資金をつぎ込んでいますが、対象が大企業であるためそれぞれ1%、1.5%の株式を保有しているだけです。
 
 それにも関わらずGEは委任状争奪の前に要求を受け入れ、P&Gは株主総会の委任状争奪で(今のところ)拮抗しているところまで漕ぎつけました。

 アクティビストの提案・要求とは、突き詰めれば投資している企業の株価を「手っ取り早く」上昇させるためであり、その企業の長期展望はあまり気にしないものです。

 しかも同じように目先の株価上昇を求める機関投資家が比較的簡単に賛同するため、自らはそれほど大量の株式を保有する必要はありません。

 ということはアクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます。

 つまり上昇を続ける米国株式市場では、今後ますます「将来の株価上昇まで先取りする」ことになりそうです。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.10.17

アサツーDK・ベインキャピタル・WPP

2017年10月04日

アサツーDK・ベインキャピタル・WPP


 久々の3点セットですが、正確に書くと「アサツーDKのサラリーマン経営陣・ハゲタカのベインキャピタル・根回し不足のWPP」となります。

 もちろん「東芝のサラリーマン経営陣・ハゲタカのベインキャピタル・根回し不足のWD」と対比させています。たぶん似たような混乱が起こると感じます。

 国内3位の広告会社であるアサツーDK(以下、ADK)は10月2日、ベインキャピタルがTOBを実施して非上場となると発表しました。

 TOB価格は直前の終値である3170円に約15%のプレミアムを加えた3660円、TOB成立の最低買入れ株数は議決権の50.1%、上限は定めておらず最大買収金額は1517億円となります。

 TOB(非上場化)の目的は「再上場までの間に遅れているデジタル化対策を急ぐ」となっており、当然にADK経営陣はTOBに賛同しています。

 ADKのIRには、こういうTOBの決まり文句である「目先の決算や株価に影響されない大胆な経営で企業価値を増大させる」といったニュアンスで書かれています。また最初から比較的短期間での再上場を想定しているようです。

 ADKは1998年に世界最大の広告会社であるWPP(英国)と資本提携しており、現在でもWPPはADKの25%を保有する筆頭株主です。またADKも同時期にWPPの2.4%を取得していますが、当初は両社がともに300億円で相手会社の株式を取得していました。

 為替変動もありますが、現時点でADKが保有するWPP株式の時価総額は640億円、WPPが保有するADK株式の時価総額はTOB価格で計算しても378億円しかありません。

 確かにADKは2014年頃からWPPに提携解消を申し入れていたようですが、今回のTOBはWPPが全く承諾していない「見切り発車」のようです。提携契約書には合意なしでも一方が通知すれば12か月後に解消できると書かれているそうですが、普通の契約なら例外規定が必ず盛り込まれているはずで、最初から喧嘩を売るようなTOB発表は「まるで東芝とWD」となります。

 東芝の記事に何度も書いているので簡単にしますが、ベインキャピタルが買い付け会社を通じて最大1517億円を出資するわけではなく、自己資金による出資はせいぜい3割(つまり最大で450億円ほど)しかなく、残りは買い付け会社が銀行(三菱東京UFJ銀行のようです)から最大1000億円超を借り入れて賄います。

 そしてTOBが成功してADKが非上場となると、この買い付け会社をADKと合併させてしまいます。つまりその1000億円超の借り入れはベインキャピタルではなくADKがせっせと返済することになり、買収資金の3割しか出さないベインキャピタルはADKの全株式を握り、再上場益を独り占めすることになります。

 ベインキャピタルに限りませんが、こういうハゲタカファンド(正確にはLBOファンド)が日本企業を手に入れてしまうと、その最優先課題は再上場による売却益の確保でしかなく、企業価値の増大などは期待できません。

 報道では売り上げが10倍あるWPPとの間に経営スタイルや価値観の違いが出ていたそうですが、かといって負債を最大1000億円も押し付けられ再上場益しか目的がないベインキャピタルの傘下となる道を、ADKのサラリーマン経営陣が選んでしまったことになります。

 業績が上がらないと(というより再上場が遅れると)即刻クビとなることも知らないようで「まるで東芝」です。それでも日経新聞は「ADK、広告世界大手から独立へ」と好意的に報道しています。

 さらに改めて考えると「TOB価格が安すぎる」はずです。6月30日現在のADKの純資産は1080億円ですが、882億円ある投資有価証券にはこのWPP株式だけでなくかなりの含み益があるはずで、TOBの最大金額(全株取得金額)の1517億円は「実質純資産だけ」となります。ADKの収益力(今年度の純利益予想が55億円)や、のれん代や各種無形資産は「ゼロ評価」となります。

 本日(10月3日)のADK終値は3800円と早くもTOB価格を上回っており、市場もTOB価格が安すぎる(TOB価格の引き上げか対抗するTOBが予想される)と感じているようです。少なくともWPPは3660円のTOBには応じないはずです。

 やはりベインキャピタルが主導権をとった東芝の半導体事業の売却でも、2兆円のうち2120億円しか出資しないベインキャピタルが(どうでもよい当初の議決権ではなく)新規上場時にどれだけの株数を保有することになっているのかは、当分は絶対に発表できない「とんでもないもの」となっているはずです。


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■闇株的見方 » 株式 | 2017.10.04
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