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仮想通貨市場における「テザー疑惑」とは?

2018年06月28日

仮想通貨市場における「テザー疑惑」とは?


 テザー(Tether)とは仮想通貨の1つですが、その最大の特色は発行されるテザーの価値がすべて米ドルに裏付けされているところです。テザーは常に発行額に相当する米ドルが確保されている(いわば担保となっている)ことになっています。

 したがってテザーの価格は常に米ドルとほとんど等価であり、値動きの激しい仮想通貨の中では安定的な価格で取り引きされており、新たに仮想通貨を購入する投資家にとっても入門編でもあり取引量も大きくなっています。

 またテザーが新規に発行されるとそれだけ米ドルが新たに確保されている「はず」となります。テザーそのものは2015年2月に創設されていますが、そもそも「発行額に相当する米ドルが本当に確保されているのか?」という疑念は、かなり前からあったようです。

 テザーはここ3か月ほどの間に3億ドル相当分(3月21日)、2.5億ドル相当分(5月19日)、そして2.5億ドル相当分(つい先日の6月25日)と立て続けに発行されており、現時点における発行残高は30.2億ドル・テザー=30.2億ドル(こちらは本物の米ドルのことです)=3300億円となっています。

 そもそも発行額に相当する米ドルが本当に確保されているなら、わざわざブロックチェーンを使った仮想通貨とする必要もないはずです。仮に発行額に相当する米ドルが確保されていないなら、単なる(巨額の)詐欺事件となりますが、そこは仮想通貨の秘匿性を悪用して発覚を避けていることになります。

 しかし大半の仮想通貨は何の裏付けもなく発行されているため、仮にテザーが発行額に相当する米ドルを確保していなくても「いったいどこが違うのか?」となってしまいます。

 ところがこのテザーを運営しているグループが(いろんな名前が出ていますが、真の責任者ではないようです)、仮想通貨取引所でも大手に属するビットフィネックス(Bitfinex)を支配下に置いていることもわかっています。

 本誌はテザーが発行額に相当する米ドルを確保していない確率は「ほぼ100%」と考えますが、もっと大きな問題は昨年価格が急上昇したビットコインなど仮想通貨全体の価格急上昇も左右していた疑いが出ているところです。

 ビットコイン価格は昨年(2017年)初めの800ドル前後から、12月には20000ドル近くまで急上昇していますが、このビットコイン価格の急上昇を見て仮想通貨全般が同じように(あるいはそれ以上に)急上昇していました。つまりこのビットコインの価格急上昇が、仮想通貨全体の時価総額を大きく増大させていたことも事実です。

 そしてこのビットコイン価格の急上昇にテザーが大きく関わっていたとの疑念が急激に大きくなっています。

 そのからくりはテザーが米ドルを確保せず(つまりタダで)発行され、そのテザーが仮想通貨取引所であるビットフィネックスに持ち込まれ(繰り返しですがビットフィネックスはテザーの管理者と同じグループが所有・運営しています)、ビットコインなど実通貨と交換ができる仮想通貨に交換され、最終的には米ドルなど実通貨に交換されていたことになります。

 しかもビットフィネックスはテザーの売却代金で、さらにビットコインを猛烈に買い上げて価格を急上昇させていた疑念が出ています。つまりもともと何の価値もない(本誌はそう断定しています)テザーの売却代金で見事に仮想通貨バブルを引き起こしていたことになります。

 テザーの発行直後にビットコイン価格がさらに急上昇していた事実があるからです。

 日本では本年1月に発覚したコインチェックの仮想通貨NEMが580億円相当流出していた事件が連日大きく報道されていたため、テザー疑惑についてはほとんど報道されていません。

 またこのコインチェックも、本当に自社で手当てした仮想通貨だけを販売していたわけではなく、同じようなスキームで荒稼ぎしていた疑念があります。しかしこの巨額流出事件も、「不自然なほど」手早く終結し、マネックスグループに売却され完全に蓋がされてしまいました。

 いずれにしても「テザー疑惑」は、仮想通貨そのものの存在感を大きく毀損させる恐れがあるため、続編を書くことになりそうです。



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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.28

米中貿易戦争が株式市場に与える影響は一定していない

2018年06月27日

米中貿易戦争が株式市場に与える影響は一定していない


 昨日(6月25日)のNYダウは、前営業日比328ドル安の24252ドルとなり、直近高値となった6月11日の25322ドルから1070ドル(4.2%)も下落しています。

 しかもこの下落が始まった6月12日から24日までの10営業日で、NYダウが上昇した日はたった1日(6月22日)しかありません。そしてその株価下落は、深刻化する米中貿易戦争が米国経済に与えるダメージを懸念したものであるようです。

 もちろん米国が(トランプ政権が)仕掛ける貿易戦争は対中国だけではありませんが、今のところその米国経済や株式市場や本年11月の中間選挙における与党(共和党)の人気度など、すべてにおいてマイナス効果となっているようです。

 ちなみに中国の上海総合指数もこの間は同じように下落しており、6月12日の3079ポイントから本日(6月26日)の2844ポイントまで、235ポイント(7.6%)の下落となっています。

 ここでトランプが仕掛ける貿易戦争は、3月22日に発表された米通商法301条(中国の知的財産侵害の損害分)による中国製品500億ドル相当に対する25%の追加関税措置と、翌23日に発表された米通商拡大法232条(保安上の理由により全世界が対象となる)による鉄鋼(25%)とアルミニウム(10%)への追加関税措置から始まりました。

 ところがNYダウは、その3月23日の23533ドルが本年の最安値で、そこから6月11日の25322ドルまで1789ドル(7.6%)も上昇していました。

 またトランプは6月1日に、その通商拡大法232条による追加関税措置の発動を猶予していたEU、カナダ、メキシコに対しても同じように発動に踏み切り大きな批判を浴びていますが、NYダウはそれでも上昇中でした。

 さらにトランプは6月15日に知的財産権が侵害されているとして、中国からの輸入品500億ドル相当に対して(とりあえず340億ドル相当だけですが)具体的品目を確定して7月6日から実施すると発表しています。ここにきてようやく米国株式市場も「大丈夫なのかなあ?」と心配になったようで下落に転じており、6月11日の25322ドルが当面の天井となりそうです。

 こうやって見てくると、トランプが仕掛けた貿易戦争は(とくに対中国の貿易戦争は)、スタートとなった3月22~23日に本年最安値だった米国株式を上昇させていたことになります。つまり米国が仕掛けた貿易戦争は、始まった当初は米国株式市場にとってプラス材料と考えられていたことになります。

 さらに6月22日には、トランプがさらに2000億ドル相当の中国からの輸入品に対して10%の追加関税を課す検討に入ったと伝えられたため(これは実施までかなりの期間がかかりますが)下げ足をさらに速め、昨日(6月25日)の24252ドルまで下落してしまいました。

 ここだけ見ても同じトランプによる貿易戦争に対する株式市場の反応は、(徐々にトランプが本気であることを株式市場が認識して心配になり始めたこともありますが)、一定していません。

 そもそも2月上旬に米国長期金利(10年国債利回り)が上昇して2.8%台となったことが、その後しばらくの米国株式市場において最大の懸念材料だったはずですが、その10年国債利回りが5月17日に3.11%まで上昇しても株式市場はあまり気にしなくなっていました。

 本日(6月26日)の米10年国債利回りは2.88%あたりまで低下しているため、ここだけ見ると10年国債利回りの低下は(それでも金利上昇が株式市場にとって最大の懸念材料と考えられていた2月頃と同水準ですが)、米国株式市場にはプラスに作用しているはずです。

 つまり今年になってから出てきた、長期金利上昇と対中国をはじめとする貿易戦争という米国株式市場の判断材料が、時にはプラス材料に、時にはマイナス材料に働いていることになります。

 つまり本年後半の米国株式市場は、同じ判断材料に対しても株式市場の動きが違うことになり、ますます読みづらくなってきます。

 また日本の株式市場は、その読みづらい米国株式市場と、同じくらい読みづらくなっている円相場に反応するため、結果的にますます読みづらくなることは覚悟しておかなければなりません。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.27

どうなる米中貿易戦争?

2018年06月22日

どうなる米中貿易戦争?


 トランプ大統領は6月18日(日本時間翌19日)、新たに2000億ドル規模の中国からの輸入品に対し、10%の(25%ではないようです)追加関税を課すと警告しました。

 これは米国通商法301条に基づき中国の知的財産侵害に対する報復として適用するもので、6月15日には1102品目・500億ドルの中国からの輸入品に25%の制裁関税を上乗せすると発表していますが、その第2弾と考えられます。

 ただその実施については、産業ロボットや電子部品やハイテク製品など818品目・340億ドルについては7月6日から、残る化学品や光ファイバーなど284品目・160億ドルについては一般の意見募集後に発動すると2段階に分けています。

 中国もそれを受けて即座に大豆、牛肉、自動車など米国からの輸入品545品目・340億ドルについて、同じ25%の追加関税を7月6日から発動し、原油、エチレン、医療器具など114品目・160億ドルについても米国と同じタイミングで発動すると発表し、一歩も譲りません。

 トランプ大統領の6月18日の警告は、中国が最初の500億ドルに対抗して即座に同じ金額に対する報復関税を発表したことに対する「報復の報復」の意味合いがあります。

 しかし通商法301条に基づく追加関税は、昨年(2017年)7月頃から選別作業に入っていたはずで、その実施については1年弱かかってやっと545品目・340億ドルが確定しただけです。1品目ごとに膨大な事務作業が必要となるからです。

 だいたい昨年(2017年)1年間で、米国は中国から5054億ドル(モノだけ、以下同じ)を輸入していますが、逆に中国への輸出は1302億ドルしかなく(つまり米国は3752億ドルの対中貿易赤字となります)、仮に2000億ドルが追加されれば中国からの輸入の約半分に追加関税がかかることになります。

 また逆に中国が報復しようとしても米国からの輸入は1302億ドルしかないため、足りません。ちなみに中国が米国から輸入している1302億ドルの内訳は、最大が航空機(160億ドル)、その次が大豆(120億ドル)となっています。

 ここで米国が最初の340億ドルについて発動を約3週間後の7月6日としている理由は、その間に中国からの大幅譲歩を引き出そうと考えているからですが、そのまま時間切れになり本格的な米中貿易戦争に突入することになりそうです。

 ちなみに米国の輸入制限はもう1つあり、通商拡大法232条により安全保障上の問題があるとして米国が輸入する鉄鋼(25%)とアルミニウム(10%)にそれぞれ追加関税を課しています。中国と日本は3月23日の公表時から即日実施となりましたが、猶予されていたEU、カナダ、メキシコも6月1日から実施となったため、それぞれがWTOに提訴しています。

 トランプ大統領は、自動車や自動車部品に対してもこの拡大通商法232条を適用する可能性に言及していますが、1年近い調査期間が必要となるため、すぐに実施というわけではありません。

 また6月20日になって米国は、鉄鋼とアルミニウムのうち代替が難しい日本製品を含む42品目について、追加関税対象から除外しています。

 さてトランプ政権におけるこれら強硬な通商政策は、米国を含む世界の経済や金融市場にどのような影響があるのでしょう?

 そもそも2017年における米国の貿易赤字(モノだけ)は7962億ドルと9年ぶりの大きさです。ちなみに米国のサービス収支は2440億ドルの黒字で、モノとサービスを合わせた米国の貿易収支は5660億ドルの赤字となります。

 米国の貿易赤字といっても、基軸通貨であるドルが相手国(黒字国)に渡るだけで、結局は相手国による米国債の購入や米国への直接投資などを通じて還流しているはずです。やや乱暴な言い方ですが、基軸通貨である米国はいくら貿易赤字が巨額でもドルへの信認が維持されている限り(当面は維持されているはずです)何の問題もないはずです。

 ありえませんが仮に米国が貿易黒字になってしまうと、ドルが世界中から米国に還流するため世界は一転して流動性不足に陥ってしまいます。

 単純に考えれば米国も報復する相手国(とくに中国)も、輸入品価格が自動的に追加関税分だけ上昇するため、かなりのインフレとなって消費が減退するはずです。また制裁関税で競争力が回復した(とくに)米国企業は雇用を拡大するため人件費も上昇することになります。

 つまりどう考えてもマイナスしかない貿易戦争ですが、まだまだ激しくなっていくような気がしています。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.22

FRBが予定通り利上げ

2018年06月15日

FRBが予定通り利上げ


 FRB(連邦準備理事会)は6月13日まで開催されていたFOMC(連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFF翌日物誘導金利を0.25%引き上げ、1.75~2.0%としました。

 今回の利上げそのものは市場で確実視されていましたが、本年(2018年)における利上げ回数が3回(つまりあと1回)から4回(あと2回)に引き上げられたと伝えられたこともあり、NYダウが119ドル安の25201ドルとなりました。

 FOMCとは、FRB理事7名と、全米に12ある地区連銀総裁からNY連銀総裁を含む5名が交代で投票権を持ち、過半数の賛成で承認されます。ところが現時点におけるFRB理事は、パウエル議長、クォールズ副議長、ブレイナード理事の3名だけで、4名が空席のままです。理事の指名権があるトランプ大統領がグッドフレンド教授ら3名を指名していますが、議会(上院)の承認が遅れており、まだ就任できていません。

 つまり今回の(今までもそうですが)FOMCは3名のFRB理事と5名の地区連銀総裁の合計8名で評決され、今回は全員賛成で利上げとなりました。またFOMCは年8回開催されますが、その後にパウエル議長の記者会見が行われるのは4回(3、6、9、12月)だけで、ここのところ金融政策はこの4回のFOMCで変更されています。

 パウエル議長は今回の記者会見で、年8回のFOMC終了後すべてに記者会見を行うと公表しましたが、それで利上げ回数が増えるわけでもないため、あまり気にする必要はありません。

 ここで今回、本年(2018年)の利上げ回数が3回(つまりあと1回)から4回(あと2回)に引き上げられたとされますが、もちろんパウエル議長が記者会見でそう言ったわけではありません。

 FOMC終了後に、3名のFRB理事に、すべての地区連銀総裁の12名を加えた15名(FRB理事の空席がすべて埋まれば19名となります)による、各年末の政策金利予想を図表化したドット・チャートが公表されます。そこで前回まで年3回と予想していた1名が今回は年4回に変更したため、その中央値が年3回から年4回に動いてしまっただけの話です。これもそれほど気にする必要はありません。

 また来年(2019年)は前回までと同じ年3回の利上げと予想されていますが、この通りとなれば本年末の政策金利は2.25~2.5%、来年末には3.0~3.25となります。

 さてこれを見た(確かに多少はタカ派=引き締め的に見えなくもありませんが)6月13日の金融市場はどのように動いたのでしょう?

 まず米10年国債利回りは一時3.01%まで上昇しましたが、結局は2.96%と前日までとほとんど変わらない水準で終了しました。いつも言うように米国の短期金利(FF金利、短期国債利回り、せいぜい2年国債までの利回りなど)は人(FOMCメンバー)が決定しますが、長期金利(その代表が10年国債利回り)は米国経済に対する市場の見通しを反映するため、それぞれが連動するとは限りません。

 この米国の長短金利差はすでにリーマンショック前の2007年のレベルまで縮小していますが、FRBが予定通りのぺースで来年末まで利上げを継続すれば、当然に米国経済の減速要因となるため長期金利がそれほど上昇するとも思えず、長短金利差が一層縮小してしまうことになります。

 株式市場でも利上げはプラス材料であるため株価が上昇するはずの金融株が、この利鞘(長短金利差)の縮小傾向から収益がそれほど拡大しないと見たのか、軒並み下落しています。

 リーマンショック以降、米国をはじめとする世界各国経済の潜在成長率が逓減しているため、物価がそれほど上昇せず、何よりも長期金利がそれほど上昇していません。

 本誌は米国経済がこの利上げペースについていけず、どこかでFRBは利上げを中断するかペースをスローダウンさせるかの判断が求められると考えます。その時こそ急激なドル安・円高になると考えています。いつも指摘していますが、今後の米10年国債利回りの水準は「とくに注目しておくべき」と考えます。

 その為替市場ですが、発表直後に一時1ドル=110.84円までドル高・円安となりましたが、本日(6月14日)の東京市場では1ドル=110円台前半の動きとなっており、これ以上のドル高になるようには見えません。

 またドルの水準を表すICEドルインデックスも、わずかながら下落しています。

 つまり今回の利上げ直後の各市場の動きを見る限り、予定通りの利上げだったとはいえ、米国経済は利上げを来年末まで継続しなければならないほど過熱しているようには見えません。

 最後にFOMC後の報道を見て「あれっ」と思ったところは、FRBも量的緩和時に大量に買い込んだ米国債やMBSを、Reserve Balances(日銀の当座預金に相当)でファイナンスしていますが、それに対する付利は政策金利の上限が適用されています。つまり今回の利上げでその付利が2.0%になるはずですが、それが何と1.95%と0.05%だけ低くなっています。

 意味がよくわからず、大変に気になっています。こういう細かいところが、あとになって重要な意味があったとわかることがしばしばあるからです。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.06.15

混迷深めるイタリア政局 波乱がありそうなユーロ

2018年05月30日

混迷深めるイタリア政局 波乱がありそうなユーロ


 久々にNY時間終了まで様子を見ていたため、早朝の更新となります。

 3月4日に行われたイタリアの総選挙以降、積極財政策など大衆迎合主義(ポピュリズム)を掲げる「五つ星運動」と、EU懐疑派で移民排斥を(さらにはEU離脱まで)掲げる極右「同盟」が連立政権を目指し、5月23日に一旦は法学者のジュセッペ・コンテ氏が首相候補に指名され組閣に取り掛かっていました。

 イタリアでは上下院議員と各州の代表者の投票によって選ばれる大統領(現在はマッタレッラ氏)が、首相の指名や議会の解散、軍隊の指揮などの権限を持ちますが、コンテ氏を首相に指名したマッタレッラ大統領が「五つ星運動」の推すユーロ懐疑派のパオロ・サボナ氏の財務相指名を拒否し、5月26日に新たにIMF財政局長などを歴任したコッタレッリ氏を新首相行候補に指名しました。

 しかし親EU派で財政再建派でもあるコッタレッリ氏は、「五つ星運動」と「同盟」が多数を占める議会の支持を得られるはずがなく、一気に再選挙となり、積極財政(つまりバラマキ)を掲げる「五つ星運動」と反EU・反移民を掲げる「同盟」がさらに躍進すると予想され、市場はイタリアの放漫財政が進むとの警戒からイタリア10年国債利回りが5月上旬の1.7%台から昨日(5月29日)には3.16%まで上昇しています。

 イタリアの10年国債利回りはギリシャなどの財政危機・金融危機がイタリアやスペインにまで飛び火した2011年には7.7%まで上昇していますが、2015年以降はECBによる量的緩和もあり1~2%で推移していました。

 もともとイタリアの公的債務はGDPの130%にもなる2兆3000億ユーロ(300兆円)もあり、もちろんユーロ圏では断トツの1位で、世界でも4位に位置しています。さらにそのうち7000億ユーロ(90兆円)が非居住者(その大半がドイツなどユーロ圏諸国)の保有となっています。

 あまり知られていませんがユーロ構成国の中央銀行間には「ターゲット2」という決済システムがあり、中央銀行間の資金の過不足を調整しています。この最大の恩恵を受けている国がイタリアで、イタリア中央銀行が「ターゲット2」を通じてドイツ連邦銀行(中央銀行)などから4430億ユーロ(58兆円)も借り入れています。

 もともとユーロを統一通貨とするEUとは、1951年にドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、イタリアといった旧フランク王国の6か国で発足したECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が原型で、以降この6か国が中心となってEU拡大・ユーロ導入が行われてきました。

 要するにそんなEUとユーロのオリジナルメンバーであるイタリアで、反ユーロ・放漫財政・反移民・果てはEU離脱まで掲げる政権が再選挙により誕生する可能性が大きくなったわけです。

 その5月29日の世界の金融市場は、当のイタリア株式(MIB指数)が581ポイント(2.85%)安の21350ポイントと、直近の高値となっていた5月7日の24544ポイントから13.0%も下落しています。

 またDAXなど欧州株式も軒並み急落しており、NYダウも391ドル(1.58%)安の24361ドルと「意外に大きく反応」しています。もっとも最近の米国株式市場で最も要注意とされていた長期金利(10年国債利回り)は、5月17日の3.11%から2.78%まで急低下しています。

 為替市場ではもちろんユーロが売られており、対ドルではすでに4月中旬の1ユーロ=1.24ドル台から、5月29日には一時1ユーロ=1.1510ドルまで下落しています。対円でも4月中旬の1ユーロ=133円台から、やはり一時1ユーロ=124.62円まで下落しています。

 円は対ドルでもつれ高しており、本日(5月30日)早朝には、1ドル=108.56円まで円高となっています。

 少し前までは、ユーロの下落は米国長期金利の上昇によるドル高・ユーロ安と考えられていましたが、ここで米国長期金利低下・イタリアの財政問題と「材料」が入れ替わってしまったことになります。

 もう少し長い期間で見てみると、リーマンショック以降のユーロは対ドルで、ギリシャなどの財政危機が何度もあったにもかかわらず1ユーロ=1.2ドルが強固な下値抵抗線となっていました。

 ところがECBが量的緩和に踏み切った2015年1月に「あっさりと」割り込み、2017年1月には1ユーロ=1.034ドルまで下落していました。2017年後半から欧州経済が持ち直しECBの量的緩和の減額・終了が予想されはじめたため、ユーロは2017年9月には1ユーロ=1.2ドルを回復し、2018年2月には一時1ユーロ=1.255ドルまで上昇していました。

 ところでこの1ユーロ=1.2ドルとは、ユーロの取引開始以来の取引中心値でもあり、重要なポイントとなりますが、ここからは次回となります。


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■闇株的見方 » 経済 | 2018.05.30
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