Category : 経済

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どうなるポスト黒田日銀総裁?

2017年03月28日

<お知らせ>

 本日(3月29日)付けの「闇株新聞」は、お休みさせていただきます。



どうなるポスト黒田日銀総裁?


 やや気が早い話ですが、黒田日銀総裁の任期が約1年後の2018年4月8日に終了します。水面下ではすでにポスト黒田となる日銀総裁の椅子を巡る「駆け引き」が始まっていますが、その基本的構造を解説しておきます。

 ポイントが2つあり、1つ目は日銀総裁を巡る旧大蔵省と日銀プロパーの「争い」です。

 もともと日銀総裁は旧大蔵省OBと日銀OBが交互に就く「たすき掛け人事」でしたが、1997年に改正された日銀法で廃止され、速水優氏、福井俊彦氏、白川方明氏と3代続けて日銀OBが総裁となっていました。

 ところが旧大蔵省は武藤敏郎・元事務次官を副総裁に送り込み、そこから総裁に「内部昇格」させようとしましたが民主党(当時)の反対で国会承認されず、いったん2008年3月20日に副総裁に就任していた日銀OBの白川方明氏が同年4月9日に日銀総裁となりました。つまりここで旧大蔵省は日銀総裁の椅子奪回に失敗しています。

 2012年12月に自民党が政権に復帰して第2次安倍内閣になると、経済回復を最優先課題とする安倍首相の「意気込み」に乗じて、旧大蔵省OBの黒田東彦を「見事に」総裁に押し込みました。旧大蔵省は1998年3月に退任した松下康雄氏以来、久々に日銀総裁の椅子を奪回したわけです。

 「そんな大げさな」と思われるかもしれませんが、最上級天下り先(日銀総裁)を確保する官僚組織(旧大蔵省だけではありませんが)の執念はこんなものです。

 そして2013年4月8日まで任期のあった白川前総裁を同年3月20日に辞任させてまで、同日に黒田総裁を誕生させています。2013年3月20日に就任した黒田総裁の任期(5年)が2018年4月8日までと微妙にヅレているのは、こういった事情です。

 ところで黒田総裁の誕生には「理論武装」も必要でした。それが浜田宏一氏を中心としたリフレ派理論であり、日銀はどんどん資産を購入してマネタリーベースをどんどん拡大させれば経済が回復するというものでした。

 リフレ派からは浜田宏一氏のほかに旧大蔵省OBの本田悦朗氏が内閣官房参与となり、学者の岩田規久男氏が日銀副総裁となり、就任直後の黒田総裁が早くも2013年4月4日に「異次元」量的緩和を発表しています。

 ここで旧大蔵省OBの黒田総裁がもともとリフレ派だったというわけではなく、旧大蔵省がOBを日銀総裁の椅子につけるための「理論武装」がリフレ派であり、それが安倍首相の「意気込み」にもピッタリだったというだけです。

 ただ「異次元」量的緩和の導入直後は確かに市場心理を劇的に改善させたことは事実で「その時点」では決して間違った政策ではなかったはずです。ただ旧大蔵省の目的が「消費税率を当時の5%から10%に引き上げるためだけだった」ことがまもなく露呈します。

 そして2つ目のポイントは、金融政策の主導権を巡るリフレ派と日銀主流派の「争い」です。

 2013年4月の「異次元」量的緩和導入に続き、2014年10月に追加量的緩和、さらに2016年2月にはマイナス金利導入と、リフレ派によるカンフル注射が立て続けに打たれましたが、日本経済は全く回復しませんでした。

 そこで日銀内ではリフレ派が勢力を失い、金融政策の主導権を日銀主流派が取り戻し、そこで出てきたのが2016年9月の「総括的な検証」だったはずです。

 「総括的な検証」では、基本的にリフレ派の導入した金融政策の枠組みは残し、10年国債利回りをゼロ近辺に「釘付け」する政策だけが加えられました。これも大変に問題がある政策であるとは感じますが、「市場はすべて日銀がコントロールできる」と考える日銀主流派の特色がよく出ています。

 日銀主流派とはあまり顔が見えてきませんが、雨宮正佳・理事や加藤毅・企画局長(今月就任)といった日銀エリートのことです。

 リフレ派を代表する浜田宏一氏も遅ればせながらシムズ理論を持ちだして「目からウロコが落ちた」などと仰っていますが、もはやリフレ派に出番はないはずです。リフレ派で最も焼け太ったのがスイス大使に栄転された本田悦朗氏のようです。

 さて1年後に任期の切れる黒田総裁の後任は、この2つの「争い」を念頭に置いて考える必要があります。その時点ではまだ総裁任期が残っている安倍首相が旧大蔵省とは距離を置いているため、現時点では日銀プロパーの雨宮理事が「本命」と考えます。

 そこから旧大蔵省がどのように「巻き返すのか?」が注目されます。

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■闇株的見方 » 経済 | 2017.03.28
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ところで米国の債務上限引き上げはどうなっている?

2017年03月22日

ところで米国の債務上限引き上げはどうなっている?


 3月15日(先週水曜日)は米国連邦債務上限引き上げの「期限」でしたが、何の騒ぎもありませんでした。もちろん上限も引き上げられていません。
 
 債務上限引き上げは、過去にはたびたびホワイトハウスと連邦議会の政治的駆け引きの材料に使われたため難航し、実際にクリントン政権時の1995年12月16日~1996年1月6日とオバマ政権時の2013年10月1~16日に、いくつかの政府窓口が閉鎖されています。究極のチキンレースとなるからです。

 また同じくオバマ政権時の2011年8月5日には、債務上限を引き上げるための財政赤字削減計画が不十分だとS&Pが米国債格付けをAA+に引き下げてしまいました(現在もそのままです)。

 じゃあ、何で今回は大騒ぎにならなかったのでしょう?

 そもそも3月15日とは何の「期限」だったのかというと、オバマ政権時の2015年11月2日に成立していた「2015年超党派予算法」により債務上限が2017年3月15日まで「棚上げに」されていました。

 要するに「時間稼ぎ」だったわけですが、同時に2016年会計年度(2015年10月~2016年9月)と2017年会計年度(2016年10月~2017年9月)の予算まで承認していました。

 つまり本年3月15日までの債務上限は18兆1000億ドルの「まま」ですが、現時点における債務残高は20兆1000億ドルになっているはずです。

 さらに「2015年超党派予算法」には、「期限」とした2017年3月15日は新大統領の就任直後であるため(まさか当時は誰もトランプになるとは夢にも思っていなかったはずですが)、さらに「滑り止め」を加えていました。

 それが「何も対策がとられなければ、財務省のキャッシュバランス(現金残高)を約250億ドルまで縮小する」というものです。この250億ドルとは2013年10月に政府窓口閉鎖に追い込まれた時点の財務省のキャッシュバランスとほぼ同じで、それだけあれば米国政府が機能不全にならないギリギリの水準に設定したものです。

 一応財務省は最近の短期国債入札額を削減しており、直近のキャッシュバランスを昨年末の3700億ドルから3000億ドル弱まで削減していますが、本来はそれを250億ドルまで削減しなければなりません。
 
 それを知っているのか、あるいは意味を理解しているのかが不明なトランプ大統領は、その3月15日の翌日の16日に、国境警備強化やメキシコの壁建設などを含む300億ドルの2017年会計年度国防補正予算と、さらに国防関連予算を540億ドル(10%)増加させた2018年会計年度(2017年10月~2018年9月)予算教書を議会に提出しています。

 そもそもトランプ政権では、各閣僚(長官)の議会承認の目途がほぼついたものの、各省庁幹部の政治任用が進んでおらず、予算編成も含む行政執行能力がほとんど備わっていません。またすぐに備わる目途もついていません。

 予算関連では行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー長官は2月中旬に議会承認されていますが(51:49でしたが)、このマルバニー長官はもともと歳出増や債務上限引き上げに強硬に反対する超保守派であり、これもトランプ大統領の「一体何を考えて指名したのかが全くわからない」人事となります。

 つまり米国の債務上限引き上げは、もともとオバマ大統領の怠慢で1年半も「棚上げ」されている間に上限(18兆1000億ドル)を2兆ドルも超過してしまっており、その債務上限の引き上げを議会と折衝するにもトランプ政権では関連省庁の幹部・スタッフがほとんど揃っておらず、国防費大幅拡大と叫ぶトランプ大統領の指名したOMB長官は債務上限引き上げ反対派となります。

 少なくともこの状態で財務省のキャッシュバランスを3000億ドルから250億ドルまで削減しなければなりません。冗談ではなく(間違いなく近いうちに)短期国債を含む国債入札が困難になり、そのうちまた「米国がデフォルトする」と騒ぐ評論家が出てきて市場を混乱させることになりそうです。

 国債償還のための国債発行は可能であるため、償還ができない=デフォルトにはなりませんが、前回もそういう騒ぎになった2013年10月17日に「米国債はデフォルトなどしない」を書いていますので、心配な方は読んでみてください。

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■闇株的見方 » 経済 | 2017.03.22
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予定通り利上げしたFRB、変更なしの日銀

2017年03月17日

予定通り利上げしたFRB、変更なしの日銀


 3月15日まで開催されていたFOMCは、日本時間本日(3月16日)未明に予想通り政策金利(FF翌日物誘導金利)を0.50~0.75%から0.75~1.0%へ引き上げました。

 また本日まで開催されていた日銀の政策決定会合では、これも予想通りすべて現状維持となりました。政策金利をマイナス0.1%(といっても日銀当座預金のほんの一部に適用されるだけのマイナス金利ですが)、10年国債利回りをゼロ近辺に維持し、同じく日銀の保有国債残高を年間80兆円、ETFを年間6兆円純増させることになります。

 FOMC後のイエレン議長の記者会見からは、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月に前年同月比1.9%上昇してFRBの物価中期目標である2%に近づいていますが、ここからの物価上昇加速についてはほとんど懸念していないことがわかります。

 これは3月9日のECB理事会後におけるドラギ総裁の会見と似ており、米欧の中央銀行は当面の物価上昇加速を懸念していないことになり、今後の相場判断において重要なポイントとなります。

 今回のFOMCでは、本年の利上げは3回(つまりあと2回)、2018~2019年も年3回ずつとの従来の見通しを据え置いたため、結果発表直後の為替市場は1ドル=114.50円から113.40円まで、1ユーロ=1.063ドルから1.073ドルまで、それぞれドル安となりました。

 また米国10年国債利回りも2.6%から2.52%まで低下したため、それだけ長短金利差が縮小したことになります。

 今回公表されたドットチャートでは、2018年末における政策金利(FF翌日物誘導金利)が2.00~2.25%、2019年末では2.75~3.0%となっており、景気見通しでは2017年と2018年の経済成長はともに実質2.1%と前回予想(2016年12月)と変わらず、物価上昇率は2018年に2.0%に到達すると予想されています。
 
 この物価上昇率とは個人消費支出(PCE)物価上昇率の対前年同月比のことで本年1月はすでに1.9%上昇していますが、FRBはここから物価がほとんど上昇しないと予想しているわけではなく、中期目標である年2%の上昇ペースに落ち着くと予想していることになります。

 つまりFRBは、2018年には米国経済の実質成長率、物価上昇率、政策金利が「概ね2%に収斂する」と予想していることになります。
 
 つまり名目経済成長率は4%となり、これは長期金利(10年国債利回り)にも収斂するはずです。そうすると同時に経済成長率に収斂するはずの長短金利差も2%となり、辻褄は合っています。

 あまりにも整然とした(教科書通りの)予想ではありますが、中央銀行として市場に大雑把な「経済成長・物価・長短金利シナリオ」を掲げておく意味は確かにあります。

 翻って日銀のシナリオはどうなのでしょう。日銀は黒田総裁が2013年4月に「異次元」量的緩和に踏み切って以来、経済成長目標は掲げず「2%の物価上昇」だけを目標としています。

 そして現在の長短金利シナリオは、政策金利(短期金利)をマイナス0.1%、長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺としていますが、実際的には短期金利がマイナス0.1%~プラス0.1%、長期金利(10年国債利回り)が0.0~0.1%となります。

 つまり日銀のシナリオでは、物価上昇目標が2%でありながら長期金利(10年国債利回り)がゼロ近辺であるため名目経済成長率もゼロ近辺に収斂することになり、さらに経済成長率に収斂するはずの長短金利差もゼロとなります。

 つまりこのまま2%の物価上昇が実現してしまうと、名目成長率はゼロのままであるため、実質成長率はマイナス2%になってしまいます。

 それが日銀の「経済成長・物価・長短金利シナリオ」なのです。

 黒田総裁の就任以来、「異次元」量的緩和(2013年4月)・追加量的緩和(2014年10月)・マイナス金利導入(2016年2月)・長短金利誘導(2016年9月)と、安直な金融政策を重ね合わせてきた結果、このような矛盾するシナリオになってしまいました。

 正しい処方箋は、一刻も早く量的緩和ペースを半減させて日銀の国債保有残高の純増額を年間40兆円とし、マイナス金利を止めて政策金利(短期金利)をゼロとし、長期金利(10年国債利回り)の誘導をやめて市場実勢に委ねることであるはずです。

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■闇株的見方 » 経済 | 2017.03.17
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ECB理事会後のドラギ総裁記者会見のポイント

2017年03月10日

ECB理事会後のドラギ総裁記者会見のポイント


 3月9日にECB理事会が開催されましたが、大方の予想通り政策変更はありませんでした。

 政策金利は基準金利が0.0%、上限金利が0.25%、下限金利がマイナス0.40%のままで、ECBによる資産買入れは昨年12月の理事会で決められていた通り本年4月から月額600億ユーロ(それまでは800億ユーロ)、買入れ期間も本年末まで(そこでやめるという意味ではなく「とりあえず」本年末までは継続するという意味)のままでした。

 しかし昨年11月の米大統領選挙以降、ECBの金融政策や欧州の経済状況についてはほとんど注目されていなかったため、そろそろ目を向けておくべきだと感じます。

 もちろん政治では3月15日にオランダ総選挙、4月23日にはフランス大統領選挙の第1回投票が行われます。オランダ総選挙の直前予想では極右・自由党がやや伸び悩んでいるようですが、フランス大統領選挙では極右のルペン候補がトップを走っています。

 さらに先日発表されたユーロ圏の2月消費者物価指数(速報値)は前年同月比で2.0%上昇と、ECBの目標である2%弱をこえています。この上昇率は昨年(2016年)2~8月はマイナス0.2%~0.2%でしたが、その後は9月が0.4%、10月が0.5%、11月が0.6%、12月が1.1%、本年1月が1.8%と「急上昇」しています。

 米国の1月消費者物価は前年同月比2.5%上昇と昨年6月の0.8%から大きく上昇していますが、FRBは3月のFOMC(14~15日)で利上げが確実視されています。

 日本の1月消費者物価(総合)も前年同月比0.4%上昇と、昨年9月の0.5%下落から大きく上昇していますが、日銀も3月15~16日の政策決定会合では現在の量的緩和と10年国債利回りのゼロ近辺での「釘付け」を維持するはずです。

 さてそんな中で開催されたECB理事会ですが、終了後のドラギ総裁記者会見のポイントは以下の3つだったようです。「最近の物価上昇は原油価格上昇による一時的なもの」「(政治的な)リスクイベントに対応するためにもまだ大規模な緩和が必要」そして「金利をこれ以上引き下げることはない」です。

 これをうけて為替市場でユーロは、1ユーロ=1.055ドル近辺から一時1ユーロ=1.0615ドルへ、1ユーロ=121円近辺から一時1ユーロ=121.88円までユーロ高となりました。上記ポイントのうち「金利をこれ以上引き下げることはない」に反応したことになります。

 また欧州の国債市場は、「まだ大規模な緩和が必要」に反応して、全般的に利回りが低下しています。

 景気対策のためには市場金利(国債利回り)の低下、米国からのユーロ安への批判回避のためには(というよりこれ以上の物価上昇を食い止めるためにも)多少のユーロ高が好ましいとするなら、ドラギ総裁は政策変更なしで(記者会見だけで)実現しているのかもしれません。
 
 ちょうど記者会見が行われているあたりで原油価格が下落し、WTI価格が一時48ドル台になっていました。

 結局、3月14~15日のFOMCで利上げが確実に行われるところが再認識された形となり、日本時間3月10日早朝の円相場は1ドル=115.15円近辺、1ユーロ=122円前後の「円安」となっており、日経平均も200円以上も上昇となっています。

 結果的にはECB理事会はほとんど注目されることがありませんでしたが、ドラギ総裁記者会見のポイントである「物価上昇は一時的」「まだ大規模な緩和は必要」「ただしこれ以上の利下げは行わない」は、今後の相場判断のために非常に参考になります。

 3月10日午前零時に更新した内容を少し修正し、表題も変更しました。

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■闇株的見方 » 経済 | 2017.03.10
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今の日本で最も困るシナリオは物価が「本当に」上昇してしまうこと

2017年02月14日

今の日本で最も困るシナリオは物価が「本当に」上昇してしまうこと


 2月10日にホワイトハウスで開催された日米首脳会談は、懸念された通商・為替・金融を巡る米国側からの厳しい要求はなく、その後にトランプ大統領の別荘に招待され一緒にゴルフをしたなど「成功裏に終わった」と受け止められています。

 本日の東京市場でも日経平均が80円高の19459円、円相場は午後10時現在で1ドル=113.72円と落ち着いています。

 単純に考えればトランプ政権では通商・為替・金融に関連する閣僚(財務長官や商務長官など)がまだ議会承認されておらず、実務を取り仕切る幹部の政治任用もほとんど進んでいないため、具体的な要求ができる体制になっていなかっただけですが、それでもとトランプ大統領との親密さを世界に見せることができた意味は小さくありません。

 日米首脳会談はこれくらいにして、ここからが本題です。

 先週末の2月10日に発表された1月の企業物価指数(卸売物価指数のことです)が前年同月比0.5%も上昇していました。この前年同月比は昨年12月が1.2%下落、11月が2.2%下落、10月が2.7%下落、9月が3.2%下落、5月は4.4%も下落していました。

 また2016年通年では3.5%下落、2015年通年では3.2%下落、2014年通年は2.7%上昇でしたが、これは消費増税分(5%から8%へ)が反映されていたため、日本の企業物価は実質的に久々に前年同月比で上昇したことになります。

 しかもその上昇スピードが「異常に早い」ことになります。

 1月は円安加速も一段落していたはずですが、それでもこの上昇幅でした。この動きはすぐに消費者物価指数に反映されるはずです。その1月の消費者物価指数は3月3日にならないと発表されませんが、「総合」は昨年10月から前年同月比で上昇に転じており、円安が加速した昨年11月は同0.5%、12月も同0.3%上昇していました。

 ちなみにこの消費者物価指数はよく生鮮食品を除いて発表されますが(それだと昨年12月は前年同月比0.2%下落です)、生活実感は「総合」で比較しないと意味がありません。つまり消費者物価も「総合」ですでに昨年10月から前年比で上昇しており、企業物価指数の急上昇を見る限り1月はもっと加速しているはずです。

 こう書くと「やっと日本でも物価が上昇しはじめたのだから好ましいことではないか?」と思われるかもしれません。日銀の黒田総裁が2013年4月に「異次元」量的緩和を導入してからずっと「2%の物価上昇目標を実現するため」と繰り返しており、確かに「物価が上昇したほうが好ましい」といっていることになります。

 大きな間違いです。
 
 確かに経済が健全に上向けば物価も少しは上昇するはずですが、逆に物価が上昇しても経済が上向いているとは限らず、かえって消費減退・経済の一層の停滞を招く恐れがあります。

 現在の日本がまさにそういう状況で、そもそも潜在成長率(実質)がゼロ%近辺のなかで、仮に物価が2%上昇するなら少なくとも2%以上の名目成長が必要となります。ところが現在の日本経済は2%以上の名目成長を続けることも大変に難しいため、結局は実質成長率を低下させることにしかなりません。

 たまたま2月6日に日本の2016年の実質賃金が0.7%増と、5年ぶりに増加したと「大きく」報道されていました。ところが中身をよく見ると名目賃金は0.5%増と2014年からほとんど変わっておらず、物価が下がっていたからプラスに浮上していただけです。
 
 つまり今後は、物価が上昇するスピードに名目賃金が上昇するスピードがついていけるはずがなく、実質賃金は大きく下落することになり消費不況に拍車がかかる結果となりそうです。

 さらに物価上昇は長期金利の上昇につながるはずですが、日銀は昨年9月から長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺に抑え込むという理解不能の金融政策を続けており、しかも2%の物価上昇目標が実現しても当面の間は10年国債利回りをゼロ近辺に抑え込むとも公言しています。

 つまり「すでに」物価上昇が加速しており、為替にもよりますが本年夏頃には本当に「2%の物価上昇目標」が実現してしまうと考えます。もちろん経済の発展を伴わない典型的な「悪い物価上昇」となります。

 その一方で10年国債利回りをゼロ近辺に(より現実的には0.1%をこえないように)抑え込むため、結果的に日銀は相当量の長期国債を買い続ける必要に迫られ「意図せざる追加量的緩和」となってしまいます。

 そうなると今度こそトランプ政権から円安誘導と決めつけられ、ますます日本経済と金融市場が混乱することになってしまいます。

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■闇株的見方 » 経済 | 2017.02.14
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