Archive

闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

日本国債の話  その1

2010年11月30日

 たまには金利の話をしてみようと思います。各国の短期金利は、それぞれの金融政策を反映しているため、日米でほぼゼロ、欧州で1%となっています。
 しかし、ここでは政策金利の話ではなく、国債市場や流通利回りの話をします。国債市場は基本的には金融政策で制御出来るものではなく、いろんな要因を反映して流通利回りが形成されます。そのいろんな要因は各国ごとに違っています。
各国の10年国債の流通利回りは、先週末現在、日本が1.19%、米国が2.87%、ドイツが2.74%となっています。欧州については、もちろんドイツ国債の流通利回りが一番低く、スペインでは5%、ポルトガルでは7%、アイルランドでは9%、ギリシャでは12%くらいのようです。

 それらを踏まえて、日本国債の話をします。
10年国債の流通利回りは10月初めに0.82%まで下がりました。確か、10年国債の流通利回りが1%を下回るのは1998年、2003年に続いて3回目です。1998年は日本の金融危機、アジア危機、ロシア危機などがあり、2003年は同時多発テロ後の世界経済の不振がありました。
日本の国債について語るとき、誰もが日本の財政状態は危機的状態であり、間もなく国債の大暴落が来ると10年以上前から言われています。ところが、ここ10年以上の間、10年国債の流通利回りが2%を超えたことは(多分ですが)一度もありません。

確かに、国債の発行残高は増え続けています。2010年9月末現在で、普通国債の発行残高は613兆円もあります。これに財投債の123兆円、政府借り入れ54兆円、政府短期証券の113兆円その他を合計して908兆円が政府の負債であるといわれています。
このうちの政府短期証券の大部分が為券(ためけん)と呼ばれる、為替介入のための資金を調達するために発行するもので、日銀引き受けが唯一認められています。実際は、外為資金特別会計は政府に属しているので、政府が自分で出して自分で購入していることになり、そもそも発行残高に入れる必要はないものと考えられます。

さっきの908兆円から政府借り入れの54兆円を除いた、いわゆる国債(財投債を含む)の854兆円のうち、海外の保有は51兆円しかありません。つまり実に94%以上が日本国内で保有されているのです。
国内の保有先は、家計の直接保有は35兆円しかありませんが、実に631兆円が金融機関による保有です。金融機関の中には銀行も郵貯も簡保も年金も、そして日銀も含まれます。そのうち国内銀行の保有は112兆円で、日銀の保有が73兆円となっています。

ここから二つのことが言えます。
まず、日本の国債は、大半が国内で消化されており、昨今のギリシャやアイルランドのような問題は起こりうる筈がありません。しかし、海外の格付け機関の日本国債の格付けはS&PがAA(見通しはネガティブ)、Moody’sがAa3(ただし円建てはAa2)となっており、スペイン、イタリア、スロベニア、チリなどより下、あのアイルランドと同じ(さすがに今回引き下げるようですが)となっており、全く失礼な話なのです。

もうひとつは、国内で消化されているといっても、家計の直接保有は35兆円しかなく、その大半が金融機関を通じた保有だということです。このことから、さらに二つの大事なことがいえます。

まず、家計(国民)は国債を直接保有すれば、少ないとはいえ金利をすべて受け取ることができます。現在は、今までの中でもさらに国債の流通利回りが低い時なのですが、10年国債なら1%程度、5年国債で0.4%強、2年国債で0.2%弱の利回りが得られます。
これに対して銀行預金金利は、三大メガバンクの300万円以上1000万円未満の定期預金金利を見ますと、10年定期で0.25%、5年定期で0.08%、2年定期で0.04%と、実に4分の3がピンはねされているのです。皆がすぐにでも預金を引き出して国債を直接購入すればよいのです。

もうひとつは、日本国債の流通市場のメインプレーヤーは金融機関のトレーダーとか、ファンドマネージャーと言うことになります。メインプレーヤーと言うより、金融機関のトレーダーとか、ファンドマネージャーしか参加していない市場と言うことになります。
海外の保有は少ないのですから、海外のファンド、特にヘッジファンドが日本の国債市場で存在感があるということはあまり聞いたことがありません。

つまり日本国債の流通市場は、日本のサラリーマンで、しかも金融機関(つまり銀行、証券、生保など)に所属する、エリートである(と自分では思っている)人種しか参加していないのです。

日本国債の流通市場を考えるとき、これを頭に入れておくと、結構理解できるものなのですが、続きは明日にします。


平成22年11月30日

Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:0 | TrackBack:0
■日本 | 2010.11.30
関連記事

東京証券取引所の奇妙な発表

2010年11月29日

 やや旧聞に属すのですが、東京証券取引所が11月24日に、以下の発表をしています。まず、報道されている内容をそのまま書きます。

「東京証券取引所は、大型公募増資の発表直前に大量の空売りが相次いでいる事例を受け、情報漏れへの監視強化やカラ売りに対する新たな規制を、金融庁と協議しながら検討すると発表しました。売買代金の7割前後を占める海外投資家への信頼性を高めるためです。」

 確かに最近の例でも、国際石油開発帝石、東京電力、日本板硝子など、増資の発表前後から大量の空売りで株価が急落するケースが相次いでいます。この辺のからくりについて本誌は「エクイティファイナンスの裏側」シリーズとして10月14日(東京電力)、同16日(武富士)、同17日(三大メガバンク)、及び11月8日(りそな銀行)で、かなり詳しく書いてありますので、是非読み返してみてください。
 ここに書いてあるのは、全て「いかに海外投資家のみに儲ける機会を提供しているか」なのです。

 上記の報道文に戻るのですが、読んでみて非常に奇妙な感じがします。

まず、公募増資の発表直前に大量の空売りが出る、と言うのは明らかにインサイダー取引であるため、わざわざ規制しなくても、とっくに金融商品取引法違反となり立派な犯罪ですから、どんどん取り締まればよいだけです。
ところが、公募増資発表前に海外投資家だけに需要調査が認められているのです。例えば「東京電力が新株を発行したら買ってくれますか?」なんて聞かれたら、普通は増資があると考えるものです。この場合の海外投資家と言うのは、いわゆるヘッジファンドです。だから海外投資家(だけ)は事前に公募増資があることを「知らされる」のです。

もうひとつ、どうも新たに取り締まろうと思っているのは「空売り」だけのようですが、海外投資家(くどいようですが、ヘッジファンドのことです)が行うのは「借株」を調達して売却することで、これは「空売り」には当たりません。さらに、この「借株」は国内投資家には認められていません。つまり新たに 空売り」規制の対象になるのは国内投資家だけなのです。

「空売りに対する新たな規制」というのは、海外のルールにある、「公募増資の発表後、値決め前までの5営業日に空売りをした投資家は、増資株の割り当てを受けられない」のことを考えているようですが、海外投資家は、そもそも日本で発行される株式については、このルールが適応されないため、この規制が新たに日本で導入されたら、国内投資家のみに適応されることになるはずです。

 つまり、すでに十分海外投資家のみが儲ける機会を得ている国内の公募増資について、さらに国内投資家のみに対する規制を強化するということなのです。
報道の最後にある、「海外投資家に対する信頼性を高めるため」と言うのは、もうブラックジョークとしか言いようがありません。

つまり、東京証券取引所は金融庁と協議しながら、「そうでなくとも優遇されている海外投資家(くどいようですがヘッジファンドのことです)には、今まで通り儲けてもらい、そうでなくとも不利な状態に置かれている国内投資家に対する規制をますます強化し、そうすることによって海外投資家(ヘッジファンド)からの信頼を得よう」としているのです。まさにブラックジョークです。
 
ヘッジファンドは、証券会社(これも外資系証券会社が普通海外分の幹事に選ばれます)から「需要調査」という名にインサイダー情報を得て、大急ぎで借株を調達して売却し、十分価格の下がった公募株の割り当てを受け、借株を返却して利益だけ得ます。
つまり、ヘッジファンドは公募の発表前も、公募の払い込み後も「その会社の株主」ではないのです。ヘッジファンドの儲けは、株価が値下がりした「その会社の株主」が負担していることになります。
「その会社の株主」には(ヘッジファンドではない)外人投資家も含まれるのですが、今回の東京証券取引所の発表では、ますます海外投資家に対する不公平感が増すばかりです。

これに限らず、日本の金融行政には、なぜか海外投資家のみを優遇することが非常に多いのです。この辺のことはまた本誌で取り上げていく予定です。



平成22年11月29日

Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:4 | TrackBack:0
■日本 » 日本の株式 | 2010.11.29
関連記事
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

10月 | 2010年11月 | 12月
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム