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MBOについて その1 幻冬舎MBOの行方

2011年02月07日

MBOについて  その1
幻冬舎MBOの行方

 昨年12月頃からMBOの発表が続いています。

 幻冬舎の他に、コンビ(東証1部上場。コード7935)、ユニコムグループ(ジャスダック上場。コード8744)、インボイス(東証1部上場。コード9448)、エノテカ(東証2部上場。コード3049)などと続き、つい先日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC。東証一部上場。コード4756)、アートコーポレーション(東証1部上場。コード9030)が発表しました。

 あまり注目されていませんが、最近のMBO急増の原因の一つに、銀行が経営者に対し巨額融資を申し入れてMBOを勧めている事があるようです。何でも横並びで競争する銀行の体質からすると、今後も続出すると思われます。

 銀行が、株式市場における数少ない優良企業を市場から退出させ、新たに間接金融で囲い込んでしまうことの是非については、今後もこのシリーズで考えていきたいと思います。

 しかし、このシリーズの1回目としては、やはり昨年来、本誌で何回か取り上げている幻冬舎について考えてみます。

 幻冬舎は、2月15日に臨時株主総会を行い、全部株取得が出来るように定款変更の承認を目指します。株主確定の基準日はTOB(注)成立直後の1月7日に設定されており、その時点で、イザベル側が9729株と議決権を有する株式の35.44%を保有しており、このままでは定款変更に必要な3分の2の確保が出来ないと思われていました。

 ところが、2月3日に幻冬舎から「主要株主の異動に関する経過のお知らせ」というIRで、「今までイザベルが主要株主との報告を受けていましたが、信託銀行からの株主名簿によると名義はすべて立花証券でありました。」とし、立花証券を主要株主としてイザベルを主要株主から外した旨を発表しました。

 これはイザベルの大量保有報告にも記載されていたのですが、取得した幻冬舎株式の大半が立花証券を通じた制度信用取引であり、従って名義はすべて資金を融通した立花証券名義となっているからです。またイザベルは6カ月後に株主権を発生させるため最低必要とされる300株のみは現物で取得しているはずですが、多分信用取引の担保として差し入れていたため、全ての名義が立花証券となったのだと思われます。

 また、幻冬舎のIRでは、「立花証券に照会したところ、その議決権についてはイザベルを含む第三者が指図権を有しているものではないとのことでした。」とされています。つまり、この議決権は立花証券に属すると言ってしまったことになります。

 幻冬舎がどういう形で立花証券に確認したのかが分かりませんが、もし文書で取っているとすれば、立花証券は非常に軽率な発言をしたことになります。
立花証券にすれば、どちらに議決権を行使しても説明責任が発生し、双方からの訴訟リスクを負うことになります。

 つまり職務上の名義人である立花証券が、その依頼者であるイザベルの意向ではなく、自らの意思で議決権を行使する、ということになり、それでは同じ職務上の名義人である海外投資家の名義人であるカストディーとか、投資信託の名義人である信託銀行などの議決権行使に関しても影響が出ることになります。

 これに対して、今後どういう議論が出てくるのか、非常に興味が持たれます。

 もうひとつ、多分イザベル側はその後の展開において、会社法172条に規定されている買取り価格についての不服申し立てをすることも考えているはずです。

 これは前例として2006年にMBOをしたレックスホールディングスで、TOBに応じなかった株主の一部が買い取り価格(TOB価格と同一)を不服として訴訟し、2008年に東京高裁が一部株主の主張を認め、買い取り価格を23万円から33万6966円に引き上げる判決を出しました。(その後2009年に最高裁が抗告を棄却して確定)
 しかし、その判決の根拠は2006年当時、レックスホールディングスがTOB発表の直前に予想利益の下方修正を意識的に行い、TOB価格を不当に安くしたというものであり、33万6966円の根拠はTOB発表以前の6カ月平均株価を20%上回る価格でした。

 しかし、その恩恵を受けたのは訴訟を起こした株主だけで、全体のわずか0.3%の株式にすぎず、もちろんすでに応じてしまった大半の株主に対して何の恩恵もありませんでした。

 幻冬舎のケースも、こうなった時に、非常に興味深いことになります。

 この場合の論点は、TOB価格の正当性が争われることになります。少なくとも幻冬舎のTOB価格は発表時の市場価格に対して十分なプレミアムを乗せており(発表直前6カ月の株価平均である約15万円に対し、当初22万円、その後24万8300万円に修正。つまり最終的には65%のプレミアムを支払ったことになります)、それでも帳簿上の1株当たり純資産(自己株を除いて計算すれば37万5000円程度)に比べて安いことは理由にならないと思われます。

しかし、もしこれが裁判で争われることになった時、裁判所の判断の根拠に、異常に安かった市場価格(15万円)と帳簿上の1株当たりの純資産(37万5000円)をどう位置付けるのかも、今から非常に興味が持たれます。
つまり、明らかに人為的に株価を引き下げたレックスホールディングスに比べ、幻冬舎の株価が不当に安かったことを幻冬舎に責任にすることは出来ないはずだと思われます。

まさかとは思いますが、もしそうなった時の裁判所の判断として、純資産に比べて株価が安かったことに対する会社の責任を少しでも認めれば、株式市場にとってまた厄介なことが増えてしまうのです。

つまり、TOB直前の株価が安かったことに対し、経営者が明らかにMBOを意識して、株価が上昇するための十分な経営努力をしていなかったとか、十分に株主に対して情報提供していなかったなどが、理由とされることも考えられます。そもそもMBOは一般株主の利益と相反するものなので、一般株主側がこの辺を丹念に突けば、裁判所の判断がどう転ぶかは分かりません。

いずれにしても、今後間違なく増えてくるMBOに対しても、重大な影響があるため、注意して見ていきましょう。

平成23年2月7日


(注)MBOと言うのは、現経営陣が全株取得をして非公開化することであり、その最初の段階として行う株式公開買付はTOBといいます。従って文中では使い分けてあります。

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■闇株的見方 » 株式 | 2011.02.07
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