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ウォールストリートの地殻変動  その2

2011年02月17日

ウォールストリートの地殻変動  その2

 前回は、米国の金融規制改革法案により、金融機関の自己勘定による投資やファンドへの投資が大幅に制限されることになり、実際Goldman Sachs などの業績が低下し、ヘッジファンドに資金と人材が流れている事を書きました。

 今回は、それについてもっと掘り下げて考えようと思うのですが、その前に米国金融行政の歴史を少しだけ振り返っておきましょう。

 1929年の株価暴落を引き金とする大恐慌を経験した米政府は、1933年にグラス・スティーガル法で銀行と証券会社の兼営を禁じました。
 預金者の資金を使って引受業務や自己勘定を使った証券取引を行い、結果預金者の資金をリスクにさらすことを禁じたのです。
 1935年には、金融帝国を築いていたモルガン財閥から、自己勘定による引受業務などを行うMorgan Stanleyが独立しました。

 1975年に、株式委託手数料が自由化されました。これで収益が減少した証券会社は、負債を膨らませて自己勘定で相場を張るようになり、投資銀行業務が拡大していきました。

 1980年代に、その頂点にいたのがソロモン・ブラザースです。
会長のジョン・グッドフレンド、副会長のジョン・メリウエザー(伝説の債券トレーダー。1991年に国債入札の不正で辞任。1998年にLTCM事件でもう一度世間を騒がせます)、エコノミストのヘンリー・カウフマン、モーゲージ市場の考案者とも言えるルイス・ラニエリなど、ウォールストリートの著名人のほとんどが在籍していました。

 そのころからグラス・スティーガル法が徐々に骨抜きにされてゆき、クリントン政権の1999年に完全に撤廃されました。いよいよ預金者の資金まで動員した投資銀行業務の全盛時代となったのです。まず最初に、あり余る資金が向かったのが、生まれたばかりのIT産業で、あっという間にITバブルを引き起こしてしまいました。

 後から考えると、そのころにもう一つ重要な規制緩和がありました。
 2000年末に商品先物取引現代化法案が成立しましたが、その中でクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に関する規制が全廃されたのです。つまり、ある資産がデフォルトして価値が大幅に減損した場合に、それを補填してくれる保険がCDSなのですが、その資産に全く関係ない人でも自由に売り買いできることになったのです。

 サブプライム問題が大きくなったもう一つの理由がこれで、サブプライム関連商品を保有している投資家がCDSを購入しているので、元本が全く安全に保全されていると信じていたところ、ある日突然、そのCDSを全く保全能力のない者が引き受けており、全く保全になっていなかった事を知らされるのです。

 まあ、CDSの最大の引き受け手が、当時もっとも安全な機関だと思われていたAIGで、あっさりと公的管理下に置かれてしまったわけで、保全にならなかったという点では大差がなかったわけですが。

 こういう中で、サブプライム問題、リーマンショックで多額の公的資金を投入しなければならなかった米国政府が、1933年以来初めて、再び金融機関の行動を規制する方向に舵を切ったのが、2010年7月にオバマ政権によって成立した金融規制改革法案(ドッド・フランク法案)なのです。
 
 同法案は2300ページにも及ぶ膨大なものであり、しかも施行のために数多くの関連法案を通さなければならず、最終的にどういう形で運用されていくのかは誰も分かっていないのです。

 現在の米国では、Goldman Sachs とMorgan Stanleyは銀行持ち株会社になり、Merrill LynchはBank of Americaの傘下に入り、Bear SternsはJP Morgan の傘下に入り、Lehman Brothersは破綻したため、純粋の投資銀行は残っていません。従ってウォールストリートのメインプレーヤーは全て金融規制改革法案、特に自己勘定による投資やファンド投資などを大きく制限するヴォルカールールに規制されるのです。

 この最大の問題は、伝統的な投資銀行業務を通じて世界の金融界に君臨していたウォールストリートが方向を失って迷走するということです。つまり日本の金融行政と同じで、何をやるにも規制されているのか、されていないのか、従ってやっていいのか悪いのか、誰も分からないのです。恐る恐るやってみると、ある日突然告発されてしまったり、全く大丈夫だったりするものなのです。

 前回書いたGoldman Sachs の証券詐欺事件にしても、住宅ローン関連商品で損失を出したケースは数多くあるものの、なぜGoldmanのあの商品だけが対象になったのか、誰も分かりません。

 もうひとつ象徴的なのは、これもGoldman Sachs がフェイスブックの未公開株を、SPCを使って優良顧客に最大15億ドル割り当てようとしたのですが、これも証券取引委員会(SEC)が予備調査に入ると、戦うことなくあっさりと中止しました。ただこれが合法なのかどうかは誰も分からないので、以前のGoldmanなら敢然と進め、他社も追随したはずです。

 ことの善悪ではなく、こういうエネルギーが失われて、日本のように当局の顔色を伺いながらの業務になってしまうのです。

 もうひとつの問題は、それに対処するために、平時から膨大な関連部署を抱えて無駄なコストを使っていかなければならないのです。

 つまり世界の金融市場を引っ張っていったウォールストリートの活力が、大きく削がれてしまうことになるのです。

 米国の場合、資金と人材の受け皿になるのは、今のところ規制の適用を免れているヘッジファンドをはじめとする各種ファンドなのですが、それらについては、まだ次の機会に書くことにします。


平成23年2月17日

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■世界経済 | 2011.02.17
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