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2011年03月14日
3月14日午後2時46分に、東北地方を中心とした東日本に巨大地震が襲いました。時間が経つにつれ、特に津波のもたらした甚大な被害の様子が伝わってきています。
こういう時に、いつものようにマーケットについて書くことがいいのかどうか分からないのですが、とりあえず少しずつ書いていきます。
地震発生直後の円・ドルは直前の82.80円付近から一気に83.40円近辺まで円安となりましたが、すぐに円高となり同日のNY市場終値では81.85円と、逆に円高が進行して終わっています。
市場では、地震による巨額の保険金支払いに備えて日本の損害保険会社が海外資産を売却するとか、一般的に日本の機関投資家の海外資産の処分によるドル売りの増加を理由とした円高予想が多いようです。
それに加えて、1995年1月17日の阪神・淡路大震災の直後から円高が進み、同年4月19日に79.75円という史上最高値を付けたことへの連想もあるようです。
そこで、本日は1995年当時の円・ドルレートの推移と、その背景を思い出してみたいと思います。
まず、1994年末にメキシコ通貨危機が起きました。メキシコの危機は、お隣の米国の銀行の巨額メキシコ資産の劣化を意味し、円・ドルは1995年初めの100円台から急落し、ついに4月19日に79.75円まで下がりました。しかし、その後もドルは反発せず、7月頃まで80円台前半の動きでした。
当時の日米関係を思い出してみますと、米国は日本の規制緩和への取り組みが不十分であり、これが日米の貿易収支不均衡の原因であるとし、日米自動車協議を控えて緊張感が高まっていました。
時のクリントン政権は、日米の貿易不均衡是正のために積極的に為替相場を活用すると発言し、ドル安を是認していました。
米国としては、当時の日本の首相が社会党党首の村山富市であったことも、日本に対して警戒心を強めた理由であったと思われます。
1994年に非居住者のユーロ円発行が10兆円にも上ったのですが、発行体は円が欲しかったわけではなく、すぐに発行代金をドルに換えて使っていました。
ところが1995年になって円が急騰したため、あわててその半分に当たる5兆円程度を買い戻し、円高に拍車をかけたのです。
今でいうキャリートレードの原型で、その巻き戻しによる円高加速だったのです。
この流れは、1995年8月2日の大蔵省による「円高是正のための海外投融資促進政策」によって一気に変わり、ドルは9月中旬までに105円程度まで反発します。
この「円高是正のための海外投融資促進政策」というのは分かりやすく言うと、日本の機関投資家による海外投資に関する各種制限の緩和と、為銀による外貨保有規制の一部撤廃等、要するに日本の銀行や機関投資家が円貨を外貨に換えての海外資産の取得を推奨したものなのです。
そして、その流れのまま1998年には147円まで円安・ドル高が進むのです。
以上が、1995年当時の流れで、その初めの1月17日におこった阪神・淡路大震災の影響は分かりませんが、それほど重要な原因ではなかったようです。
現在は、すくなくとも米国側に、これ以上ドル安を進める動機も見当たらず、事実ドルはユーロをはじめ多くの通貨に対して反発を始めています。
しかしドル・円についていえば、新たな円キャリートレードによる円売りが出るはずもなく、日本の機関投資家の円投による海外資産の取得も期待できないなか、外貨証拠金取引のドル買いのポジションが推定300億ドルくらい積み上がっている事を考えると、ドルの需給は非常に悪いと言えます。
今回の地震をきっかけに思わぬ円高になる恐れは十分にあると思われます。
週明け、月曜日の朝方が注目されます。
3月10日付け「踏みとどまったドル」でも、ドルは他通貨に対して反発を始めているものの、円だけは需給関係の悪さから円高の恐れが強いと書いてあります。合わせてお読みください。
平成23年3月14日
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