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2011年11月20日
ここのところ上場維持期待から株価も上昇していたオリンパスですが、週末(11月18日)に新たな「ニュース」が海外から飛び込んできました。
現地11月17付けのNY Timesが、「日本の捜査当局に近い関係者」から得た文書をもとに「オリンパスの巨額の損失隠しに絡んで、2000億円を超える資金が指定暴力団などの「闇経済」に流れた可能性がある」と報じました。
2000年から2009年までに(それ以前は時効)疑わしい企業買収や投資助言手数料として支払った4810億円のうち、決算書で説明のつくのは1050億円に過ぎず、残る3760億円が使途不明であり、「捜査当局」はそのうちの半分以上が指定暴力団に流れたとみている、と非常に具体的な数字を挙げて報道しています。
また、現地11月18日付けの英国・Financial Timesにも、同様の記事が出ています。
これにはいろんな「背景」や「思惑」があると考えられ、また内容が内容であるため慎重に取り扱わなければならないものですが、本誌としてはこの「背景」や「思惑」について考えられることを分析し、今後の「報道」に備えたいと思います。
従って、週末の内に書き上げるつもりですが、どうしても2回分になってしまいます。
まずこのオリンパス事件とは、ウッドフォード元社長が社内資料を海外の捜査当局や報道機関に持ち込んだところから始まっているため、どうしても海外からの報道が先行していました。
日本のマスコミも、初めのころはいつもの経済事件と違い「捜査当局」から捜査方針や経過について「リーク」が全くなかったため、各社独自の取材を余儀なくされていましたが、先週末(11月11日)に証券取引等監視員会・東京地検特捜部・警視庁が合同で捜査にあたると発表され、そのころからいつもの「リーク記事」が目につき始めました。
それらの「リーク記事」から伝わるメッセージは、法人としてのオリンパスの犯罪性は問わずに課徴金処分とし(したがって監査法人の責任も問わず)、オリンパス株式の上場も維持するというものでした。
本日の各紙が一斉に報道しているのは、オリンパスの森・元副社を東京地検特捜部が任意で事情聴取したというもので、もちろんこれは「リーク記事」です。
その意味は、証券取引等監視委員会の担当が「開示検査課」であり、その告発先は金融庁で課徴金処分を求めるだけのため、この東京地検特捜部の事情聴取は金融商品取引法(あるいは旧証券取引法)に直接関係ない「特別背任」などの独自捜査のはずです。
従って、法人としてのオリンパスが捜査対象ではなく、あくまでも「損失隠し」の首謀者としての刑事責任を旧経営陣に問うものであり、報道されているように菊川元社長や山田常任監査役も捜査対象となることが予想されます。
しかし、その捜査の結果がどうなるのかとか、さらに捜査対象者が増えるのか(損失隠しの取引に直接かかわったとされる外部の数人が入るのか)などは、まだ読めません。
つまり「リーク記事」からは、このように捜査当局の明確なメッセージが読み取れるのです。
そして、件(くだん)の「闇経済」云々(うんぬん)の記事は、当然のことのように報道各社が取り上げておらず、捜査当局から「リーク」されていないのです。
「外国紙に、そういう報道がある」という客観記事は一部にありますが、とくかく報道各社は「リーク記事」以外、あるいは「リーク記事」に反する内容の記事は書かないルールなのです。
そして、日本の「捜査当局」が外国紙だけに「特別な情報」をリークすることは、絶対にありません。
最も考えられるのは、外国の報道各社は日本の報道各社のように「捜査当局」から伝えられる内容のみを記事にしているのではなく「独自」の取材を続けていますが、実際のところはウッドフォード以外の「本物の情報源」に取材出来ている可能性は低く、「自称・情報源」や「自称・捜査当局に近い関係者」の推測発言をそのまま記事にしたケースです。
実際、ウッドフォード自身が「(巨額報酬を受け取っている)ニューヨークやケイマンの投資助言会社は(暴力団組織)のフロント企業ではないかと思っている」とも「身の危険を感じている」とも話しているようで、これに尾ひれがついたケースが一番考えられます。
しかし、全くそれだけではないかもしれません。なぜなら「日本の捜査当局」の方針は、いつもの経済事件と同じで、「まずシナリオをつくり」「捜査対象をあらかじめ絞り」「落としどころを決めてから」捜査にとりかかっているからです。
しかも、本件は海外から発覚したもので、いずれにしても「日本の捜査当局」の手柄になることはなく、逆にいろんな批判を国内外から浴びる危険が強く、出来るだけ「素早く」「当たり障りなく」「スケープゴートは出すものの、対象は広げず最小限にとどめる」方針で行きたいはずなのです。
その中で一番重要なのが「素早く」のはずで、その過程でかなりの「大事なもの」が無視されるはずなのです。
その「大事なもの」の中には、「そもそも何の投資損失だったのか?」や「なぜかくも巨額な損失に膨れ上がったのか?」や「本当に資金が損失の穴埋めだけに使われたのか?」などの検証が抜けてしまう可能性が強いのです。
続きます。
平成23年11月20日
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