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何か「すっきり」しない増資インサイダー摘発  その2

2012年03月26日

何か「すっきり」しない増資インサイダー摘発  その2

 前回の続きですが、表題にしている「すっきり」しないところを具体的に書きます。

 まず第1に、摘発された国際石油開発帝石のインサイダー取引は2010年7月1日に行われたとされており、その日の出来高は9262株で、大体この株式の平均的なものでした(引け値は485,500円)。因みにインサイダー取引とされたのは210株の売却で、そのうち90株が保有株式の売却で120株が新規の空売りだったようです。

 それでは新株発行の公表が同年7月8日なのですが、その日の出来高は62,922株と明らかに急増しています(引け値は476,000円)。新株発行の公表は取引終了後なので、この日の出来高すべてが新株発行を知らない投資家による取引のはずなのです。そして発表後の最初の取引である7月9日の始値は406,000円で、なんと前日の引け値から14.7%もの急落だったのです。

 証券取引等監視委員会は、当然にこの間の取引を徹底的に調べたはずなのですが、すべて「シロ」だったことになります。これでもって摘発された事例を擁護するつもりは毛頭ないのですが、逆に摘発されたこの1件だけが「クロ」だったことの方が不自然なのです。

 まあ、他にも「疑わしい取引」があったがとりあえず一罰百戒で摘発したのかもしれませんが、そうするとこの摘発された事例が「最も悪質で最も巨額」だったということになります。よく言われる海外投資家への「事前ヒアリング」からのインサイダー取引が全く無かったか、あったとしても「取るに足らない軽微なもの」だったことになってしまうのです。

 第2に、新株発行に関する「不透明さ」の解明のために当然取り上げなければならない海外投資家の貸株を用いた「値鞘稼ぎ」を全く問題としていない事です。まあ、これはルールが整備されていないことによる問題で、これ自体が金融商品取引法に明確に違反しているわけではないからかもしれません。

 確かにルールとしての「空売り規制」はあるのですが、これは海外投資家を実質的には規制できない不平等なものであり、また国内の既存株主から新株発行に伴う値下がりのヘッジ機会を奪うものでもあるのです。

 海外投資家の貸株を用いた「値鞘稼ぎ」の最大の問題は、以前からその発行会社の株主でもなく、また今後も株主でもなく、つまり一瞬たりとも株主でない海外の投資家だけが「瞬間的にほぼ確実に儲かる仕組み」であることです。

 しかし海外投資家(要するにヘッジファンド)の「値鞘稼ぎ」取引が無いと巨額の新株発行が出来ないのです。国際石油開発帝石に限らずメガバンクや東京電力などの巨額増資は、必ず半分が海外向けとなっています。つまり幹事証券は海外投資家(ヘッジファンド)に事前ヒアリングと称する情報提供でも、貸株の提供でも何でもしているのです。

 その理由は、「全く販売努力が要らない」で「巨額の手数料が入るから」です。国際石油開発帝石の場合の手数料総額は195億円で、これを4社(野村・ゴールドマン・JPモルガン・みずほ)で分けたのです。

 明らかに「値鞘稼ぎ」取引は、過去も現在も将来も一瞬たりとも発行会社の株主でない海外投資家(ヘッジファンド)へ、既存株主から奪った利益を「付け替える」だけのものです。それこそ日本の株式市場から収益を「強奪」するだけの取引を、幹事証券が「巨額の手数料」を貰って強行しているのです。

 つまり、そういった「実情」から目をそらし、210株だけの取引を「日本の証券市場における非常に重大な事例」(証券取引等監視委員会幹部)としていることの違和感なのです。

 もっといろいろ書きたいことがあるのですが、本日はこれくらいにしておきます。

 余った紙面で、本日(3月25日)付け日本経済新聞に出ていた経済金融部次長の署名記事「けいざい解説」について書いておきます(3面です)。

 内容は「ギリシャ国債の利回りは債務削減後も約20%であるが、これはユーロ導入以前の1995年の水準に戻っただけである。ユーロ導入後しばらくのギリシャ国債の利回りはドイツ国債と同じ3~5%であったが、これはユーロに加入していたことにより時間稼ぎをしていただけである。だから日本も国内に巨額の貯蓄がある間は時間稼ぎが出来るが、増税などの財政再建に真剣に取り組まないとギリシャのようになる」とのようです。

 まあ、天下の日本経済新聞のしかも経済金融部次長さん(紙面では実名入りです)なので、まさか本気でそう考えているわけではなく、政府の増税キャンペーンを支援して「政府広報の広告」を取ろうとしていらっしゃるのだと信じることにします。


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