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日米欧の中央銀行について  その1

2012年03月27日

日米欧の中央銀行について  その1
 
 それぞれの中央銀行の行動などを、いろいろ比較してみます。まず日本銀行からです。
 
 先週末(3月24日)、日本銀行の白川総裁がワシントンの米国連邦準備理事会(FRB)の会合で講演し、「金融危機後の積極的な金融緩和は必要であるものの、その副作用も限界も意識する必要がある」と話しました。どちらかというと、後段の副作用や限界を強調した内容だったようです。
 
 日本での報道は比較的小さかったのですが、この発言は場所的にもタイミング的にも世界中の投資家が注目したはずで、その中で「日本は、これ以上追加の量的緩和を行わない」と明確に宣言してしまったことになります。
 
 確かに2月14日の「10兆円の追加量的緩和」で、為替は77円台から先週の一時84円台まで円安が進み、日経平均も9000円前後から10000円台まで上昇しました。しかしこれは、特に外国人投資家が「いよいよ日本が本格的な金融緩和に踏み切った」と勝手に「早とちり」してくれた影響が大きいのです。
 
 ちょうど昨年末にECBが大規模な量的緩和(50兆円もの資金を域内銀行に3年間供給)を行い、その効果で欧州だけでなく米国やアジアなどの新興国も含めた景気見通しがいっぺんに明るくなったのを受けて、明らかに日本の追加量的緩和でも同様の効果が期待できると「過大評価」してくれたのです。
 
 この際「早とちり」だろうが「過大評価」だろうが、せっかくの円安・株高の動きをうまく持続させて本格的な経済回復につなげなければならないのですが、出てくるのは「これ幸い」との消費増税の強行だけのようです。野田政権も「何が何でも3月末までに閣議決定する」と息巻いています。
 
 つまり、冒頭の白川総裁の発言に加えて、今週中に消費増税の方向が本当に決まってしまったりすると、あっという間に海外投資家の「過大評価」がしぼんでしまうのです。
 
 もとより日本国内では、本格的に円安・株高が定着したとの見方は少なく、ましてはそのまま景気が本格回復するとの見方はもっと少ないようです。
 
 例えば、これほど円安が進んでいるにもかかわらず国内の外為証拠金取引の円売り(外貨買い)未決済残高はピーク時の約半分しかありません。外為証拠金取引は外貨の逆張りが多いため円高時に積み上がった外貨買いポジションが決済されていく一方で、新規の円売り(外貨買い)が積み上がらないのです。
 
 また日本株が上昇しているにもかかわらず、10年国債利回りは1.01%(3月26日)と、昨年秋に日経平均が8135円の安値をつけた時点の最低利回りの0.93%から、それほど上昇していません。つまり日本国内では景気の本格回復に懐疑的であることを意味します。
 
 そこへ外国人投資家の「過大評価」が「失望」に変わってしまうと、まず株高が止まり、せっかくの円安も日本銀行の追加量的緩和が「ない」と分かれば、再び円高に振れてしまうはずなのです。
 
 つまり白川総裁としては、日本経済のためにもう少し「配慮」した発言をしてほしかったのです。(特に海外における)日本銀行総裁として発言は(ご本人が自覚されている以上に)影響力があるものなのです。
 
 日本銀行の「配慮」についてもう1つ付け加えます。
 
 実は、2月14日の追加量的緩和は「資産買入れ等の基金を10兆円増やして65兆円にして、増加分は利付国債の買い入れに充てる」となっており、「利付国債」を「長期国債」と報じたところも多く、外電はすべて「長期国債」と報じていました。つまりその時点で日本銀行は(償還まで何年以上のものを長期国債というのかはともかくとして)償還期限の長い国債10兆円を新たに買い入れると思った人が外国人投資家を含めて「少なからず」いたはずです(実はしばらくの間、私もそう思っていました)。
 
 ところが、「資産買入れ等の基金」が導入された2010年10月28日の日本銀行の発表文を見てみますと、買い入れ対象として長期国債(当時の買い入れ枠は1.5兆円でした)とはっきりと書いてあるのですが、よく見ると下の方に「長期国債のうち、既発行で残存が1~2年のもの」と付け加えてあったのです。
 
 その後の発表文は(2010年10月28日に再度出されている「要綱」から、本年2月14日のものも含めて)「長期国債」ではなくて「利付国債」となっているのですが、残存1~2年という説明は一切付け加えられていません。
 
 残存1~2年の国債をいくら買い入れても(ましては資産買入れ等の基金がスタートして1年半ほどたっているので)順次償還になっていくため、いつの間にか供給したはずの資金が日本銀行に還流してしまうのです。確かに市中から国債を買い入れたことには違いないので市中に供給された資金が減るわけではないのと、「説明文をよく読めば書いてある」とのことなのでしょうが、中央銀行の(外国人投資家を含む)市場へのメッセージとしては、非常に不親切なものと言えます。
 
 何故これを長々と書いたのかと言いますと、日本銀行の行動・発表・コメントすべてが世界中から注目されており、海外を含む市場との対話をおろそかにするとロクなことがないのです。そしてそのツケは間違いなく日本経済に跳ね返ってくるからです。

 続きます。


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