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もっと日本の「戦略的通貨政策」について考える  その3

2012年05月31日

もっと日本の「戦略的通貨政策」について考える  その3

 昨日書きました「中国書記官のスパイ活動」は、早くも関与した政治家の名前が出始め政治問題化しています。これに外務省や農林水産省の思惑も入ってきて、またまた「国民生活」や「国益」とかけ離れた議論になっていくのだと思いますが、これについてはまた改めて書くことにして本日は「戦略的通貨政策」を続けます。

 これにも中国が絡んでいます。

 安住財務大臣が昨日(5月29日)、円と人民元を直接交換する為替取引を東京・上海の両市場で6月1日から始めると正式に発表しました。

 昨年12月の日中首脳会議での合意を受けて、何故か安住財務大臣が特に積極的に推進して僅か半年で実現にこぎつけたものです。

 それだけ「中国政府にとってメリットが大きく、中国首脳は日本政府が完全に機能不全になる前にまとめたかった」だけの話です。

 教科書的に言えば、円と人民元がドルを介在しないで交換できることは取引コストの低減になり、人民元の国際化が進むだけでなく、例えば円を受け取った中国企業が人民元に交換するまで一時的にも円のまま保有すれば円の国際化になることも事実です。

 しかし、中国政府の「本当の思惑」は別のところにあります。

 今まで人民元が直接交換できる通貨は米ドルだけでした。やや極端な言い方をすれば、中国国内で流通している人民元はあくまでも中国国内で使えるだけで、日本人を含む外国人が「中国国外で価値のあるもの」に唯一交換できる手段が米ドルだけだったのです。

 じゃあ米国は人民元を無制限に買い取ってドルを支払っていたのかというと、これも違います。ドルは基軸通貨なので、中国が海外からの資金流入(貿易黒字でも中国への直接投資でも)として自然にドルを受け入れ、そのドルを中国人民銀行(中央銀行)が無制限に買い取って見返りの人民元(交換性が無い)を中国国内に供給していたわけです。そして中国人民銀行がその買い取ったドルを外貨準備としてFRBに預けて米国国債を買い入れているのです。

 つまり米国は人民元に交換性を与える代わりに、十分に基軸通貨国としてのメリットを享受していたのです。

しかし中国は、外貨準備が3兆3000億ドル(264兆円)にもなり、その70%がドルとなると「大変不安になってきた」のです。

 それはドル安に伴う減価もあるのですが、最大の不安は外貨準備のドルはすべてFRBの管理下にあることです。つまり今後、何らかの理由で米中間が緊張した場合にFRBだけでなく世界中の銀行にある「中国保有のドル」が凍結されてしまう恐れがあるからです。

 「ドル」は世界中どこで決済されようとも、その受け渡しはFRBもしくは米国内の主要米銀でしか出来ないのです。これは日本でも事情は同じです。

 そこで中国首脳が目を付けたのが日本なのです。

 あくまでも極端なケースですが、もし米中間が緊張して「ドルと人民元との交換」が一時的にも止まったとします。この時は東京市場に大量の人民元が持ち込まれ円と交換されていきます。つまり日本中に「交換性のない」人民元が溢れかえることになるのです。

 つまり日本政府は、中国政府のために「いざという時の」交換性を保証してしまったのです。しかも「円」は基軸通貨ではないため、現在のドルのような「還流システム」が全く働きません。

 中国政府に人民元の交換性を保証するためには、中国政府および中国経済が「円」を「ドル」と同じように基軸通貨として扱わないと、日本が一方的に不利になるのです。

 つまり最低限(人民元に貴重な交換性を提供するので)交換した円のまま保有してそれで日本国債を買ってもらう体制が必要なのです。

 そうなって初めて、いざという時に(尖閣諸島が占拠されたとか、スパイが10ダースくらい出てきたときなど)資産凍結・交換停止などのカードが使えるのです。

 日本が世界で唯一戦える武器である通貨・円を使った「戦略的通貨政策」とはこういうことなのですが、現実は全く生かそうとする発想すらなく世界中から「タダ使い」されているのです。

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■日本 » 提案 | 2012.05.31
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中国書記官のスパイ活動報道の影響

2012年05月30日

 中国書記官のスパイ活動報道の影響

 本日(5月29日)付け朝刊で読売新聞が「在日中国大使館の1等書記官が、外国人登録証明書を不正に使って銀行口座を開設し外交官の商業活動を禁止したウィーン条約に違反したとして、警視庁公安部が今月中旬に外務省を通じて中国大使館に出頭命令を出していた」と報じました。

 銀行口座云々は単なる別件容疑で、要するにスパイ活動容疑です。そもそも身柄を拘束できない外交特権を持つ1等書記官に出頭命令を出しても堂々と帰国されるだけなのですが(事実すでに帰国しています)、それでもスパイ1名を追放して中国の対日諜報活動を牽制した効果は大きいはずです。

 中国側としては、うまく活動していると思っていたスパイの行動が、実は日本側に筒抜けだったと分かればそれなりに混乱するからです。実際に日本で活動していたスパイによりますと、日本の公安警察(注)の能力は世界的に見て「かなり高い」そうです。

(注)警察庁警備局を頂点として、首都東京の警視庁公安部をはじめ全国に総勢5000人いるとされていますが、その行動は警察組織の中でも明らかにされていません。

 想像を逞しくすると、野田政権に限らず歴代の政権と過去から一貫した外務省の「卑屈なまでの中国に対する低姿勢」から考えると、本件は報道されることが無かったはずです。それを読売新聞がスクープしてしまったのだと思います。

 実際に日本で報道されたスパイ事件の大半は国交のない北朝鮮関連で、中国関連は件数も少ないうえに、そのほとんどが「ココム違反」など中国と禁止されている通商を行った日本企業が摘発されているケースです。中国スパイの日本での活動が実際に報道されたケースはほとんど思い当りません。

 この1等書記官は東京大学大学院や松下政経塾にも在籍していたようで、現政権およびその周辺にもかなり食い込んでいた可能性があります。野田政権は「日頃の異常なまでの中国に対する気配り」とあわせると「非常に微妙な問題」を抱え込んでしまったことになります。

 問題点としては、中国を「仮想敵」とみなす米国政府が「日本から中国に情報が想像以上に漏れていた恐れがあること」にどう対処するかです。無邪気に「人民元の国際化の推進」とか「中国国債の購入」などと言っている場合ではないのです。

 それから日本の外務省は「何事も無かったように」知らん顔を決め込むはずです。

 以前も書いたのですが、外務省は「国益」より「省益」を優先する官僚組織の典型なのですが、これに加えて「大使館や領事館で夢のように贅沢な生活をさせてくれる外国政府」とは絶対に戦いません。

 「夢のような贅沢」をさせているのは国民の税金なのですが、外務官僚にとって外国政府は絶対に争わない存在なのです。争ってしまうと矢面に立たされることと、「夢のように贅沢な生活」が「危険で厳しい生活」になってしまうからです。

 さらに外務省の中で「チャイナスクール」と言われる入省時に中国語を研修した外交官は、世界中で中国語を話すのは中国だけ(台湾は国交がない)なので、キャリアのほとんどが中国関連となります。もし中国政府と喧嘩して国交が断絶されてしまうとチャイナスクール全員が「路頭に迷う」からです。

 かくして外務官僚にとっては、国民の生活より外国政府の意向が重要なのです。

 チャイナスクール出身の政治家に加藤紘一がいます。加藤の中国寄り姿勢をよく表す「加藤談話」については、昨年8月18日付け「次期首相の資質  その1」に書いてあります。

 いずれにしても読売新聞の今後の報道と、野田政権周辺(特に外務省)の動向に注目しましょう。

 本日は、「戦略的通貨政策」を続ける予定で、頂いている「ドルもユーロも長期的に下落しそうな中で、外貨取得は効果があるのか?」などのコメントにもお答えするつもりだったのですが、予定を変更しました。

 それから時間がありましたら、昨年7月7日付け「大物スパイの話」も読んでみて下さい。


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■闇株的見方 » 社会 | 2012.05.30
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