Archive

闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

米国金融危機で「あまり説明されていない」救済劇 その4

2012年08月30日

米国金融危機で「あまり説明されていない」救済劇 その4

 4日続けて同じ話題なのですが、どうしても本日を入れてあと2回となります。

 米国金融危機で「最も危険だった日」は2008年9月14日(日曜日)のはずです。休日にもかかわらずリーマンが破産申請し(実際に破産法の適用を申請した時は日付が変わっていました)、メリルがバンカメの傘下入りを決めた日です。

 ところが恐らく、この日の米国当局にとっての「最大の恐怖」はAIG(American International Group)だったはずです。少なくとも前年までは「世界で最も強大な保険会社」だったはずのAIGは「いつの間にか」巨額な不動産関連の不良債権を抱え込み、さらに巨額のCDS(Credit Default Swap)を引き受けており、「膨大な追加保証金」などで資金繰りが急速に悪化していました。

 つまりこの日(9月14日)になってやっと、資金ショートが500億ドルにのぼり9月17日にも破綻することが「わかった」のです。

 AIGの生命・損害保険契約者は数千万人にのぼり、個人年金の保証金額も数百億ドルに達していました。1兆ドルのバランスシートを持ち、大規模なデリバティブ事業を通じて世界中の金融機関・政府・企業と取引がありました。間違いなくシステミックリスクがあり、FNMAとFHLMCと同じように米国政府として「潰せない」企業だったのです。

 ところが翌9月15日(月曜日)にAIGは格付各社によって格下げされたため、膨大な「追加担保」が新たに発生し、資金ショートが850億ドルにもなってしまいました。

 ここにきてFRBは、AIGの保険子会社などを担保に850億ドルの融資に踏み切ります。条件はLIBORプラス8.5%(!)で期間が2年でした。

 もちろん保険会社はFRBの融資対象ではなく、あくまでも「緊急時でかつ十分な担保があれば」という例外措置の発動でした。この時点ではFRBですら「AIGは資本不足ではなく、単なる流動性不足である」と信じていたようです(注)。

(注)ガイトナーNY連銀総裁(当時)は、「健全な保険会社の上にヘッジファンド(本社)が乗っかっているようなもの」と絶妙の説明をしていました。

 ところが、そのAIGは2008年通年で992億ドルという「途方もない赤字」を出し、間もなく「資本も全く不足している」状態であることが分かり、後日難産の末に発効する7000億ドルのTARP(Troubled Asset Relief Program・注)から438億ドルもの資本注入を受けることになります。

(注)一度否決された後、2008年10月2日に上下院で同日に承認されました。ちょうど大統領選の直前だったため、格好の政治材料に使われたようです。その名の通り最初は「不良資産買入れ基金」だったのですが、その後より大きな効果が見込まれる「健全な金融機関への資本注入」に使われます。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーもそれまでに銀行持ち株会社になっていたため資本注入を受けることが出来ました。
 しかしその後は、このAIGやGMや(健全な金融機関として資本注入を受けた後、さらに資本不足に陥った)シティやバンカメなどへの「後ろ向きの資本注入」にも使われることになります。

 このAIGに対する438億ドルの資本注入の際、(資本注入の窓口である)FRBがSIV(特別目的会社)のMaiden LaneのⅡとⅢで、AIGのMBSやCDSを525億ドル分引き取ります。同年3月にベアー・スターンズのMBSを300億ドル引き取った時に作ったSIVの別シリーズです。

 同時に最初の融資850億ドルの金利・LIBORプラス8.5%も、LIBORプラス3%まで下げました。これはその後の資産売却などで返済されています。

 つい先日の2012年8月23日に、このMaiden Laneの資産売却が完了し94億ドルの利益が出たことが発表されていました。最初にMaiden Laneで引き取ったベアー・スターンズのMBSはまだ評価損となっているようです。

 ここで同じように2008年9月14日時点でFRBの融資対象でなかったリーマンとメリルが、なぜ同じように救済されなかったのかを考えてみましょう。

 それは最初から「民間で解決するもの」と決められていたからです。つまりこれら投資銀行はAIGやFNMAやFHLMCと違って、不特定多数の米国民を危機に陥れることはなく、また米国や世界の金融市場は揺るがせても「米国やドルの信認が揺らぐ」ほどのものではなく、逆に「国民の税金が毀損した時のダメージ」の方が大きいと判断していたとしか考えられません。

 もちろん米国政府は、メリルもリーマンも救済に向けて努力を惜しまなかったことは事実ですが、それはあくまでも「どこかが救済合併できるように取り計らう」ことでした。

 それでは次回はこのシリーズの最終回として、メリルとリーマンの救済の舞台裏を詳しく書くことにします。

Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:0 | TrackBack:0
■為替・金融 » ドル | 2012.08.30
無料メルマガ配信(不定期)
↓↓↓
メルマガ購読・解除
 
関連記事
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

07月 | 2012年08月 | 09月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム