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2012年09月03日
先週末(8月31日)にSBIホールディングス(以下、「SBI」)が「訴訟の提起に関するお知らせ」とのIRを出しました。
SBI及び同社代表取締役・北尾吉孝氏個人の連名で、月刊誌FACTA及び同社代表取締役・阿部重夫氏を被告として、2012年9月号の同紙の記事が事実無根で見過ごすことができず、名誉棄損による損害賠償請求並びに謝罪広告の掲載を求めて訴訟を提起した旨が書かれています。
SBIは本年3月7日にも、同様の訴訟を行っています。
さてFACTAの記事の内容、およびSBIの反論についてはここで繰り返しませんが、もう少し根本的に考えてみます。
つまり「SBIは近い将来に経済事件になるのか?」に尽きると思うのですが、答えを先に言っておきますと「このままでは事件化しません」。
決してSBIや北尾氏の肩を持っているわけではなく、経済事件になる「要素」がほとんど何もないからです。
客観的に見てSBIの問題点(悪質なところとほぼ同義語です)とは、多額の資金調達をSBIグループ及び関連するファンドで行っているため、常にSBIの連結決算を良く見せる「工夫」をしていること、SBIの株価が急激に下がらないような「仕掛け」が多分あることです。
連結決算に関しては「SBI及び連結子会社」と「それ以外の外部」との間でかなり露骨に「損失の付け替えや無理やりの益出し」が行われているはずです。「それ以外の外部」とはSBIが外部から集めた投資資金や、SBIグループの投資先や、一部の親密企業のことです。このうちの外部から集めた投資資金に「押し付けた」損失は、多分「知らん顔」なのでしょうが、投資先や親密先の一部には「何らかの形で」補填しているはずです。
しかしこれらはいくら外部から「不自然」に見えても、「当事者同士が合意している」として監査法人(トーマツ)が適正とすれば(これだけでは)経済事件になりません。
SBIの株価については、株主名簿の上位に並ぶ「海外投資家」の実態が分かりません。多分SBIや北尾氏の「意向通り」に、売り物を引き取り「黙って保有し」、その資金そのものもSBI周辺から出ている可能性があるのですが、これも(これだけでは)経済事件になりません。SBI及びその周辺から出た資金で、SBIの株式資本の充実や連結決算のかさ上げを図っているわけではないからです。
大型の経済事件とは(他の事件でも基本的に同じなのですが)決して「悪質」な順番に事件化しているわけではありません。(特に大型の)経済事件になるための「要素」があるのです。
つまり捜査当局(経済事件の場合は証券取引等監視委員会と検察庁)や関連省庁(財務省や経産省など)にとって「取り上げる意義のある」順番、もっと言うと「取り上げないとまずいことになる」順番に事件化するのです。
前者の典型例がライブドア事件(あまりにも目立ったので、捜査当局の社会的意義を高める絶好の材料となった)、経済産業省幹部のインサイダー取引(省庁間の勢力争い)、最近の増資インサイダー(結局、野村証券を叩くため)などがあり、後者がオリンパス事件(海外のマスコミが記事にしたからやむを得ず)、AIJ投資顧問事件(年金加入者に対してではなく、厚生労働省のために対応せざるを得なかった)などです。
つまり官僚間の事情によりまず「ターゲット」が決まり、それから「法令違反」を探し出すのです。だから(特に大型の)経済事件の「法令違反」には奇怪なものが多いのです。さらに事件が本当に悪質かどうかも、ほとんど関係ありません。
さらに官僚間の事情で全く事件化しないケースもあります。例えばチャイナ・ボーチー(コード・1412)や新華ホールディングス(コード・9399)などの「明らかなインチキ中国企業がいまだに上場して日本の株式市場から巨額資金を吸い上げている」ケースは全く事件化しません。セラーテムは日本の経営陣だけ「偽計」で逮捕して上場廃止にしましたが、中国の「黒幕」は堂々と逃げ切り、また別の手で上陸してくるのです。
つまり中国と戦うことは、捜査当局を含むあらゆる官僚の利益にならないからです。
こう考えていくとSBIは、捜査当局にとって取り立てて事件化する「要素」もなく、また(不自然かどうかはともかくとして)明らかに金融商品取引法に違反しているようにも見えません。つまり経済事件化しそうな「雰囲気」が全く無いのです。
しかしSBIは、中国銘柄のように「絶対に事件化しない」銘柄でもありません。FACTAとは違った視点で見ていくと、事件化する「要素」が備わったポイントが見つかるかも知れません。あとは金融商品取引法などに「ほんの少しでも関連付けられれば」良いのです。
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