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ソニーの新株予約権付社債発行  その2

2012年11月21日

ソニーの新株予約権付社債発行  その2

 昨日付の同題の記事に対してコメントを頂いていますので、もう一度ポイントについて書きます。

 まず最初のポイントは、最初から普通社債を発行していれば償還時に必ず償還しなければなりませんが、少なくとも発行時もその後も資金予定が変わることはありませんし、希薄化のためという理由に限るのですが株価の下落もありません。

 また、最初から第三者割当増資にしておけば希薄化による株価の下落と、最近の傾向では「株主軽視」といった批判を浴びますが、払い込まれた資金全額は自己資本に組み込まれ当然に償還の義務はありません。

 今回ソニーは新株予約権付社債の発行を選んだ結果、(多分)将来の希薄化を先取りして株価が下落し、肝心の新株予約権付社債はどれほど転換されてどれほどが償還されるのかは「最終的には」社債の償還時である5年後まで確定しません。

 つまり最後までどれほど自己資本が充実するのかとか、どれほどの償還金額が必要となるのかがはっきりとしない中で株価だけが先行して下落してしまったのです。もちろん株価が下落するということは、社債が転換される可能性も下がってしまったことになります。

 まあ経営陣が、よほど将来(5年以内)の業績や株価に自信を持っているのなら別ですが、今の状況だと単に第三者割当増資が批判されるので、それを避けて同じ効果(自己資本の充実)が出る「かもしれない」新株予約権付社債の発行に踏み切ったとしか考えられないのです。

 2番目のポイントは、この新株予約権付社債が国内の個人向けに発行されているのなら、株価さえ転換価格を(時としてでも)上回っていれば新株予約権付社債は確実に少しずつ転換されてその分は償還する必要が無くなるのですが、これは海外の機関投資家(といっても100%ヘッジファンドです)向けのユーロ円建てなのでそうはいかないのです。

 この新株予約権付社債を購入したヘッジファンドは、株価が転換価格の957円を超えれば新株予約権付社債を転換して得た株式を売却して利益を確保するような単純なことは決してやりません。

 まず貸株を調達して売却しても、株価が値下がりすれば買い戻して利益を確保し、また株価が上昇すれば売却して何回でも利益を確保します。

 単なる空売りと同じではないのか?とのコメントも頂いているのですが、新株予約権付社債を購入しているので、売却した株価が値上がりを続けて一度も買い戻しのチャンスが無いままに社債の償還が近づいても(実際はまず考えられないのですが)、新株予約権付社債を転換すれば何も損失は出ません。

 逆に言えば保有者がヘッジファンドばかりだと、新株予約権付社債が転換されるのはこういうケースだけなのです。つまり社債の残存期間の大半で株価が転換価格を上回っていても償還直前に株価が転換価格以下になってしまうと、すべて売却されている株が買い戻されてしまい(ほとんど)すべての社債を償還しなければならないことになるのです。

 実際に過去にはこのおうな例がかなりあります。

 つまり新株予約権付社債の保有者は、損をすることは無く何回でも値鞘稼ぎが出来るのです。仮にソニーの株価が転換価格を下回ったままでも、想定するソニー株式のレンジの上限だと思えば「少しずつ」株式を売却し、仮に株価が上昇を続けて転換価格を上回ったままになってしまっても、残りの株を売却してコストを転換価格以上になるようにすれば損失は回避できます。でも大半の場合は、どこかで買い戻しのチャンスが出てくるものです。

 これは日本株で運用するヘッジファンドの「最も得意な手法」です。特に最近はソニーのような大型で流動性があり貸株が容易な銘柄の新株予約権付社債の発行がほとんどなかったため、ソニーは「格好の」収益チャンスをヘッジファンドに与えてしまったことになります。

 最後にコールオプション条項ですが、ソニーの発行IRによりますと、社債の発行後3年経過したときから株価が20連続取引日にわたり転換価格の130%を超えていたなら、ソニーは繰り上げ償還日から「30日以上60日以内」の繰り上げ償還通知(これは取り消し不可)を、当該20連続取引日の末日から30日以内に行ったうえで、残存する当社債の全部を額面(100%)で繰り上げ償還することが出来る、となっています。

 つまりソニーの株価が20連続取引日にわたり転換価格を上回った後でも、その30日以内に繰り上げ償還の通知を受け取った後でも、さらにそこから30日以上60日以内の猶予がありその間にいくらでも転換できるのです。

 そもそもこの条項の意味は、株価が転換価格を上回った時に転換を促進するためのものです。

 ついでに言えば、発行企業が償還通知を出してしまったあとに株価が急落してすべて買い戻されてしまったケースとか(その場合は単に繰り上げ償還しただけとなります)、そのあとにご丁寧に破たんして空売りしていたヘッジファンドが大儲けしたのに償還金まで支払った武富士のケースなどもあります。

 そして最後に、それが新株予約権付社債(転換社債)なのではないか?とのコメントにお答えしておきます。

 全くその通りなのですが、ソニーの状況から考えて普通社債か第三者割当増資のどちらかにすべきだったと思います。新株予約権付社債にしたため、普通社債と第三者割当増資双方のデメリット(償還しなければならないことと株価が下落すること)が出てしまったことになります。

 今のソニーと日本の株式市場には、ヘッジファンドだけにメリットを渡してしまう余裕はないはずです。

 本日は説明不足にならないように書いたので、少し長くなってしまいました。


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