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2013年02月28日
2月22日付け「貿易収支の赤字で考えなければならないこと」で、貿易赤字が定着して経常収支の黒字も減少(あるいは赤字化)してくると、また高齢化で家計の金融資産が減少してくると、日本国債の引き受け余力が低下するため、国債の海外保有を増やす必要があると書きました。
その具体的方法論を書くと、お約束していました。
まず簡単に全体の数字を挙げておきます。
2012年9月末の資金循環統計によりますと(これが最新のものです)、国債等の発行残高948兆円の保有者別内訳は、金融仲介機関(注)が611兆円、政府関係や公的年金が95兆円、日銀が105兆円、海外が86兆円、家計が25兆円、その他が27兆円となっています。
(注)民間の預金取扱機関、保険・年金基金、その他金融機関、ゆうちょ銀行などです。
一方、家計の金融資産は1510兆円ですが、その主なものは現金・預金が840兆円、保険・年金準備金が426兆円、株式・出資金が87兆円などです。
言うまでもないことですが、家計の現金・預金と保険・年金準備金が、金融仲介機関や公的年金などを通じて国債を買い支えていることになります。
まあこれを見る限りは、すぐに危機的状況になるとも思えませんが、今後のことを考えると現在86兆円の海外保有を増やす必要があることも明らかです。
因みに米国では16兆4000億ドルの政府債務のうち(すべてが市場性のある米国国債とは限りませんが)、2012年11月末で5兆5572億(511兆円)が海外保有です。
そのうち中国が1兆1700億ドル、日本が1兆1320億ドルです。
つまり日本は948兆円の国債発行残高のうちの86兆円(9.1%)だけが海外で保有され、米国は16兆4000億ドルの政府債務のうち5兆5572億ドル(33.9%)が海外で保有されています。
意味のない計算ですが、日本国債が米国国債並みに海外で保有されると321兆円となり、あと235兆円も増えます。
なぜ米国国債が海外でたくさん保有されているのでしょう?
安全で利回りが高いからでしょうか?
米国国債の利回りは、10年国債でも最近は1.80%~2.0%です。直近の日米消費者物価上昇率の差が1.9%(2012年12月の前年比で米国が1.7%、日本がマイナス0.2%)のため、利回りが0.7%の日本10年国債よりも見劣りすると言えます。
米国国債の発行残高は今後も激増すると思います。日本の国債発行残高が激増し始めたのは、前回の消費増税(3%から5%)と山一證券などの倒産があった1997~8年からです(注)。2008年のリーマンショック後の米国は、日本の財政状況を10年遅れで追いかけているように思えます。
(注)国債発行残高は1997年度末が258兆円、1998年度末が295兆円、先ほど書いたように2012年9月末が948兆円(国債だけだと929兆円)となっています。
因みに日本の10年国債利回りも、1998年以降は基本的に2%を超えたことがありません。不思議なようですが、米国10年国債の利回りもここからは2%を大きく超えることは無いと思います。
米国国債が海外で保有されているのは、安全で利回りが高いからではなく、ドルが世界の基軸通貨なので、自然に海外で保有されるドルが多く、その運用手段として買われているからなのです。
最近はドルや米国国債に不安を感じている海外投資家が多いはずで、一部ユーロに移しているものの、ユーロも決して安心はできないはずです。
そして特に米国国債については、近い将来にもっと不安になるはずです。
なかなか「日本国債の海外保有を増やそう」にならないのですが、紙面の関係で、次回に続きます。
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