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2013年03月15日
この表題は、2006年に米国で製作された法廷映画の題名です。
週末なので軽い「映画紹介」にしたのではなく、ちゃんと結論がありますので最後まで読んで下さい。
この映画は、全米最大マフィアのルッケーゼ・ファミリー20人の幹部が、76もの容疑をかけられた裁判を取り上げたものです。裁判は1987~88年の21ヶ月も続き、米国史上最長の刑事裁判となりました。
被告の1人であり、別件で懲役刑となっていたジャッキー・ディノーシオが、検察から刑期の短縮と引き換えに協力を(つまり仲間を売れと)迫られるのですが拒否し続け、毎日刑務所から出廷するのですが、数多くの「嫌がらせ」を受けます。
それでも役に立たない弁護士を解任して、自らが自らを弁護する「奇策」に出ます。他の19人にはそれぞれの弁護士がついており、とんでもなく長い裁判になってしまいます。
ジャッキーは最後まで仲間を裏切らず、マフィアというイメージだけで有罪と決めつける検察主張の不条理さを陪審員に訴え続けます。そして陪審員が下した評決とは、、
これは実話で、もちろんジャッキーも実在します(この映画の撮影中に亡くなったそうです)。監督は法廷映画の元祖「12人の怒れる男」のシドニー・ルメットです。
見ごたえのある法廷映画ですが、言いたいことはここからです。
米国の刑事裁判は12人の陪審員が有罪か無罪を決定(評決)します。裁判官は有罪と評決されて初めて量刑を決定します。つまり罪に問うべきかどうかの決定は、民間人から無作為で選ばれた陪審員によって「のみ」行われます。評決は全員一致が原則で、まとまるまで数日間かかることもあるそうです。
司法取引が横行している米国の司法制度が優れていると言うつもりはないのですが、この陪審員制度は、公訴権(起訴する権限)が検察に独占され、その起訴内容のみを裁判官が粛々と裁いていく日本の裁判制度に比べて、はるかに市民感覚に近い裁判結果となるような気がします。
この陪審員制度は戦後、当然にGHQが導入しようとしました。ところが旧司法省(戦前は検察庁と裁判所がともに司法省に属していました)が、独占している公訴権を大幅に制限されることになるため「大反対」します。
妥協の産物として出てきたのが検察審査会です。確かに公訴権を独占している検察庁が見送った事例を、民意によって公訴する道を残した制度ですが、小沢一郎氏の強制起訴を見ても、検察庁にとって「第2の公訴権」ともなります。
現在の裁判員制度は、陪審員制度とは全く違うものです。制度的に市民感覚が優先されているとは言えないからです。
さて「はるかに市民感覚に近い裁判結果になるような気がする」と書いたのは、当然に「市民感覚から大きく遊離した裁判結果」も多いからです。それが検察庁の都合による「国策捜査」の裁判なら、ほぼ確実に「市民感覚から大きく遊離した裁判結果」となります。
特定の事例を挙げるつもりはないのですが、検察庁の都合による「国策捜査」は絶対に無くならないため、それを裁く裁判制度に市民感覚を入れるべきだと思うのです。
GHQの導入案を旧司法省(検察庁と裁判所)が全力で潰してしまっているため、実現の可能性はゼロなのですが、趣旨は理解して頂きたいのです。
1961年8月に、明らかな国策捜査による松川事件(注)で、被告全員に無罪判決を言い渡した仙台高裁の門田実裁判長は、即座に家庭裁判所に「大左遷」されました。
それから現在に至るまで、国策捜査に対する「勇気ある判決」は見たことがありません。
(注)1949年に福島県松川町で発生した国鉄列車転覆事件。国労と近くにあった東芝労組の組合員が多数逮捕されたのですが、同時期に発生した下山事件・三鷹事件と並んだ明らかな組合潰しだったと考えられています。
市民の代表が評決することは、このような裁判官の負担を軽減する(つまり左遷を恐れなくてもよい)ことにもなるのです。
しばらく息をひそめている「国策捜査」が、また復活しないとも限らないからです。
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