Archive
闇株新聞 the book
闇株新聞 the book 発売中です。 よろしくお願いします。 |
|
2013年08月28日
資本増強が急務のシャープは1000億円規模の公募増資を計画していたのですが、これが先週「先送り」になると報道されていました。
シャープは最近、米クアルコムから2回にわけて110億円、サムスンから103億円の出資(第三者割当増資)を受け入れており、現在もマキタ、デンソー、LIXILなどと交渉しているようです。
また3月には、1年がかりだった台湾・鴻海グループからの670億円の資本受け入れが「破談」になりました。
要するに「なりふり構わずの資本増強」に走り回っているものの「思ったほどの成果が出ていない」ように思います。1000億円の公募増資を「先送り」したのも、個別に第三者割当増資の交渉をしておきながら巨額の公募増資も並行して行うとなると、誰も真剣に検討してくれないからです。
シャープこそ、「当局」お勧めのライツイシューに踏み切るべきです。
何しろ「希釈化せず既存株主の利益を損なわない」そうだからです。喜んで新たな株主になってくれそうな会社(投資家)もいないようで、公募増資を強行してもヘッジファンドに収益機会を提供するだけに終わるからです。
本誌は、ライツイシューが「既存株主の利益を損なわない」などとは思っておらず、当局が推奨するライツイシューにも「さまざまな問題点がある」と考えているのですが、シャープの現状を考えるとこれが「最善の資本増強方法」だと確信しています。
現状のシャープには「理想も選り好みも」いっている余裕などないはずです。「当局」のようにライツイシューを推奨しているのではなく、「どうしても資本増強が必要なら(必要です)、ライツイシューが比較的問題が少ない」と考えるだけです。
シャープの本日(8月27日)現在の発行済み株数は11億8849万株(うち自己株が1039万株)、株価が399円なので時価総額が4742億円となります。
自己株を除く11億7810万株に対して新株予約権を1:1で割り当て、行使価格を200円とします。
行使価格の200円は別に根拠はないのですが、本年5月高値の633円の3分の1以下なので(実際は権利落ちするので全く意味がないのですが)何となく割安にみえるからです。
これで80%が権利行使されると1880億円、60%でも1413億円の資本増強となります。Jトラスト並みの86%なら、何と2026億円にもなります。9月に到来する新株予約権付社債の償還金(とりあえずは銀行が融資するようですが)2003億円が賄えます。
もちろん問題もあります。
まずシャープの上位株主は、第1位が日本生命の5566万株(4.73%)、第2位が明治安田生命の4578万株(3.89%)、第3位がクアルコムの4198万株(3.56%)、第4位がみずほ銀行の4191万株(3.56%)、第5位が三菱UFJ銀行の4167万株(3.54%)、第6位がサムスンの3258万株(3.04%)と、金融機関と外国法人ばかりです。
金融機関(とくに銀行)は通常の新株引受には抵抗があるはずですが、ライツイシューは基本的には持ち株比率が大きく増加するわけではなく、弾力的に考えるべきです。
最大の問題は、海外の株主への新株予約権の割り当ては「引き受け」とみなされ、当該国当局(米国ならSEC)への登録が必要なことです(サムスンの韓国は良くわかりません)。
この場合、登録が必要な国の投資家に割り当てた新株予約権は、シャープが時価で買い取るなどの措置が必要かもしれません。でも不可能ではないはずです。
シャープには2013年3月末現在で146,806人の個人株主がおり、4億5919万株(39.2%)も保有してくれています。これらの個人株主をはじめ、すべての既存株主に「真摯に」お願いすることから始めなければなりません。
これはライツイシューのためではなく、あちこちへの第三者割当増資の相談や巨額公募増資計画の前に、シャープの経営陣は何よりも「現在の株主」を大事にしなければならないといっているのです。
そうすると展望がみえてくるかもしれないのです。
Ads by Google
| Comment:1 | TrackBack:0
- 関連記事
-
- ソフトバンクの驕り -2013/10/07
- 消費税引き上げ正式決定後の株式市場は? -2013/10/04
- 安倍晋三とヘンリー・クラビス -2013/09/30
- メドレックスの新株予約権 -2013/09/19
- なぜ下がった? 日経平均 -2013/09/18
- 川崎汽船の新株予約権付社債 -2013/09/12
- ライツイシューは「駆け込み寺」か? -2013/08/30
- シャープもライツイシューにしたら? -2013/08/28 ««
- 何が起こった? Jトラスト -2013/08/27
- なぜ急落した日経平均? -2013/08/21
- ダニエル・ローブの提案を拒否したソニー その2 -2013/08/09
- ダニエル・ローブの提案を拒否したソニー -2013/08/08
- インデックスの「その後」 -2013/08/06
- Jトラストのライツイシューの権利行使が終了 -2013/08/02
- ヘッジファンドの近況 -2013/08/01