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オリンパス事件の光と影 その8

2014年04月03日

オリンパス事件の光と影 その8


 「私が社長に就任した時には簿外損失が1000億円もありました。これが表に出るとオリンパスは存続できなくなるため、やむなく損失隠しの続行に同意しました。ただその過程でご協力いただいた方々が、最初からあるいはもっと早い段階で協力を拒んでいれば、このような事態にはならなかったと残念に思っております」

 この発言は今年になってから、オリンパス事件の「指南役」の裁判(2件)において、それぞれ検察側証人として出廷したオリンパスの菊川・元会長の証言です。

 これら「指南役」とは、オリンパス本社と菊川氏ら3人の有罪がすでに確定している金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)を「共謀した」として起訴された横尾宣政氏ら3名と中川昭夫氏のことです。裁判はほぼ並行していますが別々に行われています。

 冒頭の菊川氏の証言は、起訴した検察庁の「意向」を見事なまでに反映したものです。前半部分は、菊川氏が2001年6月に社長となったときにはすでに1000億円も簿外損失が積み上がっており「自分が積み上げた損失ではない」といいたかったのでしょうが、問題は後半部分です。

 必要以上に「指南役」の関与を印象づけ、「指南役」がいなければ損失隠しを続けることができなかったとして、「指南役」の共謀を立証しようとしています。そもそも決定的な物的証拠がないところに証言を積みあげて既成事実化する法廷戦術で、問題点が大変多いのですが本日は3つだけに絞ります。

 1つめは、オリンパス事件とは1980年代後半から損失を積み上げ簿外に隠す過程の「犯罪行為」が裁かれたのではなく、時効になっていなかった2007年3月期~2011年3月期の「虚偽が記載された」有価証券報告書を作成・提出したという行為だけを有罪とした形式犯罪です。

 そこで「指南役」の共謀を立証するためには、オリンパス外部の人間である「指南役」が菊川氏ら以上に積極的な損失隠し(正確には虚偽の記載された有価証券報告書を作成・提出すること)を主導したとの状況証拠が必要となります。そこで検察側が注意深く考えだした菊川証言といえます。

 いくら物的証拠がなく証言に頼るしかないといっても、そもそも当時のオリンパスの最高権力者だった菊川氏が、「指南役が止めてくれなかったので損失隠しを続けてしまいました」では通用するはずがありません。しかしこの証言は裁判官の判断を左右する「重要証言」とされてしまっているはずです。

 2つめは、そもそも「指南役」というネーミング自体が、大変に間違ったイメージを世間に(もちろん裁判にも)与えてしまうことです。これは「資本のハイエナ」と並ぶ「必要以上に悪いイメージを世間に与えるため」のネーミングです。誰のネーミングなのでしょうね?

 だいたい取締役会・監査役会・監査法人・財務局・取引所・税務署・取引銀行・アナリストなど、オリンパスのあらゆる部署や関係する外部機関のリアクションを熟考して策定しなければならない「損失隠しスキーム」が、外部の人間でせいぜいオリンパスの経理・財務部門としか接触していない「指南役」が主導して考え実行したとするのは大変に不自然です。

 「損失隠しスキーム」とは、オリンパスの経理・財務部門がトップと慎重に協議して練りあげたはずですが、裁判では全ての検察側証人が「指南役」の役割を大きく見せる証言を繰り返しています。

 3つめは、そもそも「指南役」はオリンパスから「損失がどれくらい隠れている」と具体的に知らされていたのでしょうか? これは裁判の核心部分であり、全ての検察側証人がかなりの時間をかけて証言しています。

 さすがに「具体的に知らせた」との証言はなく、「ご存じだったはず」とか「ご存じだから協力して頂いたと理解している」といった極めてあいまいな証言が続きます。

 これは「知らせていなかった」はずです。なぜなら当時(事件とされた2007年~2010年頃)は、1990年代の初めから数多くの「損失先送り商品」などで巨額の収益を上げた主に欧州系の金融機関がとっくに逃げ出しており、オリンパスにとっては裁判中の「指南役」に手を引かれることが最大の恐怖だったはずだからです。

 そこで「実はこういう金融機関にも騙されまして、こんなに損失が大きくなってしまいました。あとはうまく隠してください」などというはずがありません。つまりオリンパス事件で共謀したとされる「指南役」の裁判は、大変に無理筋を積み重ねながら継続中なのです。

 さて次回は、「指南役」の裁判の続きと、今までいただいていたご質問へのお答えと、(調査中なのでお約束はできませんが)行方をくらませている佐川肇氏の近況です。

 マスコミの方々におかれましては、もうお忘れの事件でしょうが、一度くらいは裁判(2件)を傍聴してみてはどうでしょうか?


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■闇株的見方 | 2014.04.03
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