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2014年06月03日
5月22日~25日にEU加盟28か国で実施された欧州議会選挙では、反ユーロや反移民を掲げるEU懐疑派が大躍進となりました。
EU懐疑派は、フランスの国民戦線(FN)、英国の英国独立党(UKIP)、ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)がそれぞれの国で首位となり、イタリアでも「五つ星運動」が2位となり、欧州議会全体では2割をこえる議席を獲得しました。
欧州議会全体では中道右派が最大勢力を維持したため、7月までに決めるバローゾ欧州委員長の後任には中道右派を率いたルクセンブルクのユンケル前首相が有力となりますが、中道左派や緑の党などEU統合推進派との連携が不可欠となりました。
これでEUの枠組みが壊れるわけではなく、緊縮財政を強いられるギリシャやイタリアやスペインなどではEU懐疑派の躍進はある程度予想されていたのですが、フランスと英国では「明らかに予想外」の結果となりました。
欧州議会の議員はどの国でも名誉職に近く、実際の国政選挙とは全く緊張感が違うのですが、それでもフランスと英国では政権与党の社会党と保守党が、仲良く第3位に転落してしまいました。
これはEUだけではなくフランスと英国の国内政治にも、少なからずの影響を与えます。
まずドイツの経済力が突出しているEUのなかで、唯一政治的な影響力でバランスをとってきたのがフランスですが、そのフランスが最大数の議員を欧州議会に送り込んだのが極右、反EU、反移民、反ユダヤを掲げる国民戦線(FN)というのは、いかにも恰好が悪いことになります。
もともとフランスは、ナポレオンの時代を除いて欧州での戦争にほとんど勝ったことがなく、第二次世界大戦でもヒトラーに「あっと」いう間にパリを陥落させられた国ですが、なぜか昔から国際政治の場では「大きな顔」をして取り仕切っている国でした。
EUでも経済力ではドイツに圧倒的な差をつけられながら、何とか政治力でドイツと並ぶ2大リーダーの地位を確保していたのですが、今後はそうはいかないことになります。
これは今後のEUの(特に)政治的バランスが微妙に変化することを意味します。いまのところその影響を予想することはむずかしいのですが、間違いなく注意しておかなければならないポイントとなります。
さらにフランス自体も財政再建への取り組みが萎んでしまう可能性があります。Moody’sは早くもフランスとギリシャの格付けにネガティブな意味合いを持つと警告しました。
ギリシャはともかくとして、今後フランスの国債市場や株式市場に悪影響が出る可能性があります。
英国では、もともとキャメロン首相が2017年にUE残留か離脱かを問う国民投票を実施すると表明していました。キャメロン首相自身はEU残留支持で、むしろ国民投票で国内をEU残留で固めて自身の政治基盤を拡大しようと考えていました。
キャメロン首相は今回の欧州議会選挙の敗北で、2017年の国民投票どころか、来年の総選挙で生き残れるかどうかの瀬戸際に追い込まれてしまいました。
もともとEUの中核メンバーではなく、1992年のポンド危機でERMも離脱したままなのでユーロに加盟する可能性もなく、米国外最大のドル金融市場であるシティを抱え、EU銀行同盟にはデメリットしかない英国には、そもそもEUに留まる積極的な理由はありません。
少し古い話ですが、2011年12月26日付け「2012年に起こりそうなこと その3 英国のEU離脱」という記事を書いています。
もちろん2012年には起こらなかったのですが、そう考えた基本的な理由は現在も全く変わっていません。
まだアーカイブで読めますので、時間があったら読んでみてください。
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