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2014年12月04日
「金融緩和と量的緩和は全く違う 金融抑圧は回避すべき」 2014年1月7日の記事
本年最初に記事であり、日銀「異次元」量的緩和の弊害について書いた最初の記事です。その弊害がますます拡大しているにもかかわらず、日銀は10月31日に「さらに異次元な」量的緩和に踏み切ってしまいました。
本日(12月3日)は為替が119円台まで円安が加速し、株価が17720円と本年最高値を更新していますが、弊害はだんだん顕在化しているようです。
以下本文です。
あけましておめでとうございます。一週間ほどお休みしてしまいましたが、これからも渾身の記事をお届けいたしますので、今年も宜しくお願い申し上げます。
さて大発会(1月6日)の日経平均は382円安の15908円となりました。別にこれで昨年来の上昇相場が終わってしまったと考える必要はありませんが、もう少し根本的なところから考えてみます。
表題の「金融抑圧」とは、公的債務負担の圧縮を目的として人為的に長期金利を低めに押さえこむことであり、マイナスの実質金利となる債券(主に国債)を保有する金融機関を通じて、最終的な負担を預金者・年金受給者・保険契約者などに押しつけることです。
つまり「増税」と同じです。民間から政府に巨額の富(金利収入)が移転するからです。
それでは「金融抑圧」の結果、景気はよくなるのでしょうか?
よくなるはずがありません。
もっと正確にいうと、長期金利を低めに押さえることによる景気刺激効果と、民間が失う巨額の金利収入によるマイナス効果のどちらが大きいかということですが、教科書的にはマイナス効果の方が大きいと考えられています。
日銀の「異次元」量的緩和とは、この「金融抑圧」に外なりません。黒田日銀総裁も、はっきりと「国債を異次元に買い続けてマイナスの実質金利を実現する」と表明しており、まさに「金融抑圧」を行っていることを認めています。
確かに「異次元」量的緩和で、デフレマインドの払しょくや日本経済の本格的回復への「期待」が盛り上がり、円安と株高が進んだことは事実です。ただ「期待」に反応するのは株式や不動産や為替などの資産価格だけです。
つまり「異次元」量的緩和とは、あくまでも景気回復への起爆剤ではあるものの、長く続ければ続けるほど日本経済に悪影響が出ると考えるべきです。
だからFRBは「さっさと」量的緩和の縮小に踏み切ったのです。
そもそもFRBの現在の量的緩和(QE3)とは、実質国有化していたFNMAとFHLMCの保有資産を前倒しで縮小する際に市場に出てくるMBSを吸収するためと、2012年12月まで続けていたツイストオペで売却対象の3年未満のFRB保有国債がなくなったため長期国債買入れだけを続けていたもので、最初から「応急措置だった」はずです。
ECBの量的緩和とは、2011年12月と2012年2月に合計1兆ユーロの資金を域内の銀行に供給した信用不安対策で、その残高も直近では5600億ユーロまで減少しています。つまりECBは今まで景気対策のための量的緩和は行っておらず、これからも行いません。
FRBは「量的緩和が終了しても、短期金利をゼロ近辺に維持する金融緩和は相当期間続ける」と強調しており、ECBも昨年11月に利下げ(政策金利を0.25%)は行っています。
つまりFRBはこれから、ECBはもとより、政策金利(短期金利)を低めにする「本来の金融緩和」に集中し、経済に悪影響のある「金融抑圧」を回避するため長期資産の購入(量的緩和)を控えるのです。
つまり金融緩和と量的緩和は全く別の概念です。金融緩和で短期金利をゼロ近辺にして長期金利を「自然体」にしてこそ、利ザヤが確保されて経済に好影響を与えます。
その中で日銀だけが「異次元」量的緩和を続け、さらに追加量的緩和にまで踏み切り、「金融抑圧」を維持・強化するのです。ここからの量的緩和(金融抑圧)は日本経済にマイナス効果しか与えないはずです。
しかし聡明な元大蔵官僚である黒田日銀総裁が、その矛盾を認識していないはずがありません。
ここまで考えると、そもそも昨年4月に導入された日銀の「異次元」量的緩和とは、「金融抑圧」を長期間続けて民間から政府に巨額の富を移転させ、増税と同じ効果を上げるための財務省の深謀遠慮だったとまで考えたくなります。
純粋な安倍首相を焚き付けて、見事に消費増税に加えて「実質大増税」を実施していたことになります。
本日の日経平均の大幅下落は、その辺りを暗示しているような気がします。
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