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2015年06月10日
本日(6月9日)の日経平均は360円安の20096円となりました。下落の理由の1つに、ギリシャが今月中にもデフォルトすると懸念されていることがあります。本日の欧州株式市場も総じて続落しています。
ギリシャは今月のIMFへの返済が15億8000万ユーロ(2200億円)もあり、月内に何回かある返済期限を月末に一本化することは認められたのですが、とても返済できる金額ではありません。
ギリシャは2010年と2012年に総額2100億ユーロもの金融支援をEU、ECB、IMFなどの国際債権団から受け、その条件として緊縮財政政策を続けていました。ところが本年1月の総選挙で反緊縮財政を掲げる現政権が誕生してしまい、一気に国際債権団との緊張が高まりました。
国際債権団とすれば、確たる全体像もなく単なる人気取りで無責任な公約を掲げた現政権などはハナから信用しておらず、欧州における最優先課題である財政再建が他の国でも軽視されてしまう事態を避けるためにも、徹底的に強い態度で臨むはずです。
ECBも本年1月に、本来は必要なかったはずの量的緩和(ギリシャ国債を除く域内国債などを月間600億ユーロも買い入れる)に踏み切り、ギリシャの混乱がユーロ圏の他の国に波及しないようにしています。つまり2010年や2012年のようにギリシャの混乱が他国に波及する可能性は大変に少ないと考えて大丈夫です。
つまり今度こそギリシャにとって「最後は何とかしてくれるだろう」はなく、本当にデフォルトしてしまうか、現政権が反緊縮財政の公約を放棄して「袋叩き」にあうかの2択でしかありません。
現時点では前者が35%、後者が65%と考えます。
つまりデフォルトする可能性も35%ありますが、今回はギリシャ地域限定の混乱となるため、欧州を除く世界の株式市場への影響は限定的と考えます。
ところが問題が1つあります。それは今回、期限が到来している返済はIMFの分であり、IMFとEU・ECBは、はっきりと利害が対立しているからです。
IMFは最大出資国の米国が一切の資金提供を拒否しているため、欧州とアジアで存在感を示さなければなりません。ところが欧州ではEU、ECB、ESM(欧州安定メカニズム、EFSFを引き継いで2012年10月に発足)による支援体制がそれなりに確立されており、別にIMFに支援してもらって大きな顔をされる必要はなくなっています。
IMFは1997年12月に金融危機に陥った韓国に550億ドルを融資したのですが、すぐに(関係が冷えているはずの)米国からカーライルやサーベラスなどの禿鷹ファンドを大挙引き連れて乗り込み、徹底的に韓国の財産を買い叩いて2001年には全額回収してしまいました。
つまりIMFとは、並みのヤミ金よりも怖い回収をするところなのです。
EUやECBとすれば、ここでIMFに根こそぎ回収されてしまうことも得策ではないため、何かしらの妥協を強いられる可能性が「ほんの少しだけ」あります。
ちなみにIMFがギリシャに貸し付けた資金は、いったいどこから調達したのでしょう? 実は日本の資金(もちろん国民の税金です)もかなり含まれているはずです。
2012年4月に、時の民主党「アマチュア」政権が、欧州金融危機の支援対策としてIMFに600億ドルも気前よく資金提供(貸付)しています。
まあIMFが日本に代わってギリシャの国家財産を根こそぎ回収して引き渡してくれるなら話は別ですが、もちろんそんなことはありません。また仮に回収できたとしてIMFのために留保されるだけで永久に返済されません。
IMFは、アジアでもAIIBとバッティングするため(ADBもありますが)、いよいよ副専務理事のイス1つだけでついてくる日本に頼るしかなくなってしまうはずです。
それではギリシャがデフォルトすれば、ユーロから離脱するのでしょうか?
実はユーロには離脱の規定がありません。確かに割合は小さくてもユーロの1部にデフォルトした国の資産が入ることになり、好ましいことではありません。
ギリシャがユーロに参加したとき、それまでギリシャ中央銀行が保有していた資産(たぶんギリシャ国債)と負債である通貨(当時はドラクマ)をそのままセットでECBが引き継いだはずで、ギリシャで流通しているユーロ(ECBの負債)に見合うギリシャの資産(ECBの資産、たぶんユーロ建てに切り替えたギリシャ国債)が毀損してしまうからです。
つまりユーロの価値がそれだけ損なわれることになります。
ECBも、IMFに先に根こそぎ回収されてしまう前に何かしらの方策を打つ必要があるはずです。ギリシャ問題の帰趨は、このIMF 対 EU・ECBの力関係で決まると考えておくべきです。
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