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2015年06月17日
2008年秋のリーマンショック以降、ほぼ世界中の中央銀行が金融緩和および量的緩和を(一時的に中断したことはあっても)継続して現在に至ります。
FRBは昨年秋に量的緩和(QE3)を終了させましたが4.5兆ドルに膨らんだ総資産を減らす気配はありません。つまり現在も量的緩和状態を継続していることになります。また本年中にも利上げする可能性はありますが、仮に1~2回(0.25%~0.50%)利上げしてもFF金利はまだゼロ%台で、まだまだ超低金利(金融緩和)状態であるといえます。
ECBの政策金利は運用側がマイナス金利となっており、本年3月から長期国債などを月間600億ユーロ(8.4兆円)も買い入れる量的緩和に踏み切ったばかりです。
日銀はもちろんゼロ金利で、長期国債の保有残高を年間80兆円も増加させる「もっと異次元となった」量的緩和を継続中です。
中国人民銀行も昨年11月から預金・貸出金利と預金準備率を引き下げる金融緩和を加速させており、先週だけでも韓国中央銀行とNZ中央銀行が利下げを行いました。
つまりリーマンショック以降の世界中の金融緩和および量的緩和は、昨年秋頃からさらに加速されています。現時点で利上げを行っている中央銀行はブラジル中央銀行だけです。
なぜでしょう?
世界的にいつまでたっても本格的な景気回復とならないからですが、昨年夏からの原油価格下落でインフレの心配がなかったから(あるいはデフレ状態を避ける必要があったから)、それにとりあえずは株式市場だけでも活況にするために、「安易」に継続している金融緩和・量的緩和かもしれません。
要するにとりあえずは「弊害」がないように思えるからです。
だいたいリーマンショック以降7年近くも継続したうえに、昨年秋からさらに加速された世界の金融緩和および量的緩和の「効果」はともかく、「弊害」がないはずはありません。
それではその「弊害」とは何でしょう?
それが近いうちに世界的なインフレが来る恐れがあることで、最近の世界的な長期金利上昇はそれを暗示しているのかもしれません。
米国では4月の消費者物価は前年比で0.2%の低下ですが、エネルギーと食料品価格を除いたコア指数は前年比1.8%、経済の7割を占めるサービス部門の価格は同2.3%も上昇しています。
ユーロ圏でも5月の消費者物価(速報値)は前年比0.3%と6カ月ぶりにプラスとなったのですが、エネルギー価格を除くと前年比1.0%上昇、人件費が大きな割合を占めるサービス部門の価格は同1.3%の上昇となっています。
つまり米国ではエネルギー価格を除くと物価上昇目標である2%にすでに到達しており、ユーロ圏は同じく2%の物価上昇目標には到達していないものの物価は確実に上昇し始めていることになります。
日本では4月の消費者物価が総合で前年比0.6%、生鮮食品を除くコア指数では同0.3%、食品とエネルギーを除くと同0.4%のそれぞれ上昇で、まだ消費増税の影響が少し残るためコア指数で上昇率はほぼゼロと考えられます。
日本ではいまだに2%の物価上昇目標を掲げており、その到達時期が本年中か来年前半かという「不毛の議論」が続いていますが、だいたい潜在成長率がどう考えてもゼロ%台前半しかない日本で、もし本当に物価を2%も上昇させてしまったら完全に「不況下のインフレ」になってしまいます。
円安が続き、原油価格が上昇を始め、米国やユーロ圏でも物価上昇が続くと、日本でもあっというまに物価上昇が加速してしまうはずです。そしてそれは景気回復の結果である「良い物価上昇」ではなく、不況下の「悪い物価上昇」でしかありません。
日本に限りませんが、それほど遠くない時期に世界的なインフレが到来するような気がしています。それこそリーマンショック以降の7年近くに及ぶ世界中の金融緩和・量的緩和の「たまりにたまった弊害」なのかもしれません。
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