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タレこみ合戦が続く東芝の「不適切会計」

2015年07月08日

タレこみ合戦が続く東芝の「不適切会計」


 5月14日付け「東芝のさっぱり要領を得ないIR」と、6月2日付け「東芝のこんなのありなの?というIR」の続編ですが、本来ならそろそろ一件落着となり「東芝の何事もなかったようなIR(予定)」を書いている頃でした。

 表題の「不適切会計」とは、わかりやすくいえば「粉飾決算」「損失隠し」のことで、普通は頭に「会社ぐるみの」とか「悪質な」などの形容詞がつきます。

 東芝は歴代の経団連会長(2人)や日本郵政の西室社長などを輩出している名門企業なので(輩出しているので名門企業と考えられているだけですが)、また日本有数の家電・原子力メーカーなので、また何よりも銀行借り入れが1兆9000億円もあるので、「粉飾決算」とか「損失隠し」などと喧噪するわけにもいかず「不適切会計」と表現されています。

 歴代の経団連会長や上場を控えた日本郵政・現役社長の出身母体が「粉飾決算」や「損失隠し」では示しがつかず、また銀行も万が一にも1兆9000億円が焦げついたら大事だからです。

 つまり名門企業・東芝は絶対に上場廃止にはならず(決算発表が遅延しても管理ポストにも入らず)、ましてや刑事事件などになるはずがなく、玉虫色の第三者委員会調査報告書を受け取って(必要とあれば)過去の決算も修正し、対立派閥に全ての責任をかぶせて根こそぎ追放して、「何事もなかったようなIR」を発表して一件落着となるはずです。

 いつも書くように日本の経済事件とは、そもそも事件化するかどうかも含めて、世間に明らかになったときにはすべての落としどころが決められており(刑事事件化するなら誰をどういうシナリオで逮捕するのかも決められており)、その通りに粛々と進められます。

 ところがそこまで周囲が配慮してくれているにもかかわらず、肝心の名門企業・東芝はいまだにタレこみ合戦を続けているようで、さっさと一件落着とはなりません。

 本誌が改めて解説するまでもありませんが、今回の「不適切会計」の背景には西田相談役(家電・PC事業出身、2005年~2009年に社長)と佐々木副会長(社会インフラ・原子力出身、2009年~2013年に社長)の確執があり、西田相談役が佐々木副会長の追い落としを狙って画策したものといわれています。

 6月25日に開催された定時株主総会では取締役選任だけが承認されたのですが、その席で田中社長が2月中旬に証券取引等監視委員会から金融商品取引法に基づく報告命令があり、インフラ関連事業の会計処理について開示検査を受けたことを明らかにしました。

 これは明らかに東芝内部からのタレこみがきっかけで証券取引等監視委員会が動いたもので、当初は佐々木副会長の息のかかった社会インフラ事業にだけ「不適切会計」が存在するとされていました(そうタレこんだからです)。

 そして4月3日には室町会長(この人には社長経験がありません)を委員長に社内メンバーを中心とした特別調査委員会を立ち上げたのですが、その日のIRにはわざわざ「企業不祥事における第三者委員会ガイドラインにもとづく第三者委員会の形態は取らない」と大見栄を切っていました。

 まあ東芝は名門企業なので不祥事ではなく、ちょいと邪魔なグループを追い出すだけなので安心して社内の特別調査委員会に任せておけといったノリで、証券取引等監視委員会もそれで引っ込んでしまったのでしょう。

 その後の経緯はよくわかりませんが、5月8日には結局その第三者委員会を設置することになり、業績の下方修正(正確には取消で未定に)や決算短信の6月末までの遅延などを発表し、5月13日には電力システム、社会インフラなど(佐々木副会長の息のかかった)社内カンパニーで過年度の営業収益を500億円強減額する必要があると発表していました。

 その後は第三者委員会の調査報告が7月中旬なので2015年3月期の決算発表を2ヶ月遅延して8月末にするとか、9月末にもう一度株主総会を行うなど「こんなのありなの?」と言いたくなるIRを連発しています。

 ところがその間にも「不適切会計」が東芝のほぼ全部の社内カンパニーに及ぶとか、不適切会計の合計が1500億円をこえるなどの報道が出てきて、東芝は7月4日に慌てて否定のIRを発表しています。

 まあ名門企業・東芝に対しては周囲が配慮しているのでまもなく「何事もなかったようなIR」が発表できるはずですが、あまり社内抗争ばかり続けていると思わぬところから新たな材料がタレこまれ大問題に発展する可能性もあります。

 旧UFJ銀行は社内抗争からタレこみ合戦となり、三菱銀行に吸収されて「消滅」してしまいました。

 古い話ですが野村證券の酒巻社長(当時)らが1997年に逮捕されたきっかけも、社内からのタレこみでした。

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