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2015年12月10日
原油価格が再び下げ足を速めています。昨日(12月8日)のWTI原油価格は1バレル=37.51ドル(終値、一時36.64ドルの安値)となり、リーマンショック(2008年9月)以来約7年ぶりの安値となりました。
原油価格(WTI)は1986年頃から2003年頃までは1バレル=10ドル~30ドルの範囲内でしたが、2004年頃から急激に上昇を始め2008年7月には1バレル=147ドルの史上最高値となりました。
そこでリーマンショックとなり直後の2008年12月には一気に1バレル=32.40ドルになってしまいました。これは明らかに投資バブルが弾けて世界中がパニックとなったからで、落ち着きを取り戻した2011年から2014年夏頃まではおおむね1バレル=100ドルを挟んだ動きでした。その間の高値は2011年5月の1バレル=114ドルでした。
ところが2014年7月に1バレル=107ドルから一気に急落し2015年3月には一時1バレル=42ドルとなり、あわせて産油国ロシアのルーブルが2014年7月の1ドル=33ルーブルから同年12月には一時1ドル=80ルーブルまで急落してしまいました。
そこから2015年5月には1バレル=62ドル、1ドル=49ルーブルまで回復したものの、同年8月には上海株式の急落もあり再び一時1バレル=38ドルまで急落し、10月に一時50ドルまで回復したものの再度の急落となり12月8日には一時36ドル台になってしまいました。同日のルーブルも1ドル=69ルーブルと再度危機水準に近づいています。
原油価格は2015年に入ってからは「急落」と「やや回復」の繰り返しですが、だんだん右下がりとなり典型的に「弱いチャート」になっています。今回も少しは反発するはずですが、全体的には下げ止まったようには見えません。
つまり原油価格は2014年7月から1年4ヶ月ほどの間に3分の1になってしまったことになり、リーマンショック直後の安値(32.40ドル)にも接近中です。
この1年4ヶ月ほどの間にルーブルは対ドルで約半分となりました。ルーブル以外の産油国通貨もこの間に、ノルウェー・クローネが1ドル=6.2クローネから8.7クローネへと約4割も下落し、カナダドルも1ドル=1.08カナダドルから1.36カナダドルまで26%も下落しています。当たり前ですが原油価格の急落は、産油国経済を直撃しています。
さて価格が急落している資源は原油だけでなく商品価格全体を表すCRB指数も12月8日には177.39と、こちらの方はリーマンショック後の2009年3月につけた安値の200.34をすでに下回ったままです。
ちなみに12月8日のNYダウは17568ドルと、リーマンショック後の2009年3月につけた安値の6469ドルから2.7倍になっています。日経平均も12月9日が19301円なので、同じ2009年3月につけた安値の7021円からやはり2.7倍になっています。
つまりNYダウも日経平均もリーマンショック後の安値から2.7倍になっている中で、原油価格は当時の安値に接近中であり、商品価格全般(CRB指数)はすでに当時の安値を下回っています。
商品価格と株価の動きを単純に比較することはあまり意味がなく、商品価格が急落することにより業績が改善して株価が上昇する企業が多いことも事実です。しかし商品価格が急落することはそれだけ世界的に需要不足であることになり、株式市場全体にとってはマイナスであるとも思われます。
先週末(12月4日)発表の雇用統計が好調だったにもかかわらず、今週に入ってからNY市場は12月7~8日の2営業日で279ドル(1.6%)下落しています。米国全体では原油輸入国ですが、株式市場は原油急落をマイナス材料と見ていることになります。
また12月8日に7~9月期のGDPが年率でマイナス0.8%からプラス1.0%へ大幅上方修正された日本は、間違いなく原油価格急落で世界最大の恩恵を受けるはずでありながら、日経平均は12月8~9日の2営業日で397円(2.0%)も下落しています。
この2日間だけで日米とも、リーマンショック以降の(因果関係ではなく単なる結果論ですが)商品価格下落・株価上昇という大きな流れが「逆流」しはじめたと考えることも早計ですが、間違いなく来年にかけては頭に入れておかなければならないポイントです。
来年にかけても商品価格は目先の一時的反発はあっても本格的に反発することはなさそうで、そうなるといずれ世界的な株価上昇が「不自然」に見えてきてもおかしくないからです。
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