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2016年04月06日
パナマ文書(Panama Papers)とは、パナマにあるモサック・フォンセカ(Mossak Fonseca)法律事務所が作成した一連の機密文書で、1970年代から現在まで同事務所が関わった全世界21か所のオフショア金融センター(租税回避地)に設立された21.4万もの会社(Offshore Company)の詳細な情報が含まれています。
要はそのパナマ文書が外部に漏えいしたわけですが、まずなぜそれが「原爆級の大事件」なのかから始めます。
オフショア金融センターに会社を保有すること自体は違法ではありませんが、その会社はどこからも課税されず、また時にはマネーロンダリングや麻薬取引など違法な活動を行っていることもあります。
最大の問題は、それらの会社の実質所有者(Beneficial Owner)が誰であるのか(つまり誰がそれらの会社から課税されない収益を得ているのか)や、それらの会社の違法を含めた活動実態などが、全く外部から(とくにその実質保有者が居住する国家当局から)わからないことです。
そういった情報はどこにあるのかというと、それらの会社の管理代理人や法律顧問を務めるオフショア法律事務所であり、ケイマン諸島に本部を置くMaples and CalderとWalkersが2大事務所です。
今回問題となったMossak Fonsecaは2大事務所よりはるかに規模が小さいのですが、「世界で最も口が堅い法律事務所」として世界中に数多くの顧客(ほとんどがオフショア金融センターの会社とその実質保有者)を抱えていたようです。
そして2015年8月にドイツの南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)に1通の暗号メールが匿名者から送られ、まもなく2.6テラバイト、1150万の文書から成るパナマ文書を受け取ったとされています。
そしてワシントンDCにある国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を通じ、BBCパナマ支局など全世界78ヶ国、107の報道機関、400名以上のジャーナリストが分析に加わり、2016年4月3日にパナマ文書の存在が149の機密文書とともに公表されました。5月初めにはほぼ全貌が公表されるようです。
実はこの中に日本の報道機関や日本人ジャーナリストが加わっているかどうかが全く明らかにされていません。4月3日に公表された文書の中にセコム創業者である飯田亮氏らの名前もあるようですが、それも含めて日本の報道機関によるパナマ文書の報道が大変に控えめであることも気になります。
日本人および日本企業もオフショア金融センターを積極的に利用していますが、Mossak Fonsecaの利用は少ないような気がするため、今後どれだけ日本関連の名前が出てくるのかも不明です。
ここでなぜパナマ文書が最初にドイツに送られたのかですが、ドイツ当局はその2年も前からドイツ企業(あるいは個人)のオフショア金融センターにおける活動を調査しており、その過程でMossak Fonseca法律事務所に目をつけ内偵していたようです。つまりジャーナリストを前面に出しているものの、そこにはスパイ映画顔負けの諜報活動が行われていたはずで、また早い段階から米、英、仏(日本は不明)など自由主義諸国の当局が関与していたような気がします。
4月3日に公表された文書では、ロシアのプーチン大統領周辺の20億ドルもの資産、中国の習近平・国家主席の義兄や李鵬・元首相の娘(李小琳)、ウクライナのポロシェンコ大統領、キャメロン英首相の亡父、シリアのバッシャール・アサド大統領、サウジアラビアのサルマン国王、さらには欧州サッカー連盟・元会長(追放中)のミシェル・プラティニ、アルゼンチンのメッシ、香港映画スターのジャッキー・チェンなどの名前がでています。
プーチン大統領はCIAの陰謀と反論し(確かにICIJはCIAに近いとの噂があります)、習近平はパナマ文書に関するネット情報を閲覧不能にしてしまいました。またジャッキー・チェンは知る人ぞ知る親中国派です。
要するにパナマ文書の暴露とはジャーナリストに花を持たせているものの、明らかに欧米自由主義諸国 対 反欧米諸国(要するに中国・ロシアそれにシリア)、ついでに対世界の犯罪組織(間違いなく日本のヤクザが入っています)の構造であり、そこに日本政府がうまく噛み込めているのかどうかが大変に気になります。
今回のパナマ文書に比べるとはるかに規模が小さくケチくさい話ですが、類似の事件を取り上げた2015年2月20日付け「SWISS LEAKS(スイスリークス)とは?」も読んでみてください。
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