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逆に大丈夫なのかと心配になる米国財務省の「監視リスト」

2016年05月03日

逆に大丈夫なのかと心配になる米国財務省の「監視リスト」


 米国財務省は4月29日、大変唐突に日中韓台独の5ヶ国を為替の「監視リスト」に入れると発表しました。日本などが自国通貨を不当に安く維持しないように監視するとの意味合いです。

 表題の意味は、それで円高が加速すると心配しているのではなく、こういう決定に安直に踏み切ってしまうオバマ政権は本当に大丈夫なのかと心配になるという意味です。

 もともと米国財務省は1988年から毎年2回、議会に為替政策報告書を提出し、対米通商を有利にするために為替水準を不当に安く維持している国を「為替操作国」に認定していました。実際には1988年から1990年代にかけて台湾・韓国・中国を「為替操作国」に認定していましたが、1994年以降はどの国も認定していません。

 つまり1988年~1994年当時の古臭い考え方を、この世界経済・金融市場の規模も各国の力関係も大きく変化している現在に、わざわざ引っ張りだしてきたわけです。

 この「監視リスト」には、対米貿易黒字が年間200億ドル超・経常黒字がGDPの3%超・為替介入による外貨買いがGDPの2%超の各条件に部分的にも該当する国が入り、全てに該当すると「為替操作国」に認定されるようです。

 もともと先週4月28日に開催された日銀政策決定会合は事前の予想に反して「現状維持」となり大幅な円高・株安になっていたところ、日本が連休に入った翌29日のNY時間に「監視リスト」入りが伝わったため、一時1ドル=106円台前半まで円高となりました。 
 この「監視リスト」とは、近年まれに見るほど米国内外で存在感を失っているオバマ政権が野党・共和党が主導権を握る議会に向けた「意味のない懐柔策」です。オバマ政権が主導したTPPは米国各業界の発言力が強い野党・共和党が賛成するはずがなく、このままでは議会承認されずオバマ政権の少ない実績がさらに減るため、為替面で米国産業が不利にならないようにと共和党を懐柔しているだけです。

 ただ前述の3条件のうち「為替介入による外貨買いがGDPの2%超」は、考え方によっては米国にとって危険な話となります。仮に年間介入額だとすると日本では10兆円となりますが、通貨当局(日本なら外為資金特別会計)による為替介入に特定しなくても「民間を含めて過剰にドルを買うな」と言っていることになります。

 日本はここ4年ほど為替介入を行っていませんが、官邸に主導されて官民の機関投資家がドルを中心とした海外資産を積極的に購入しており、円相場が円高に振れそうなときなど為替介入(ドル買い介入)と同じような効果を市場に与えていました。

 官民の機関投資家は2014年度、2015年度の2年間で、ドルを中心とした海外資産(株式と中長期債)を50兆円も買い越しています。同じように「監視リスト」に入れられた他の4ヶ国も、積極的にドルを中心とした海外資産を買い越していたはずです。

 オバマは安直な議会(共和党)対策のために、こういうドル資産の積極購入が「迷惑だ」と言っていることにもなります。それを受けて日本など5ヶ国が「ドル資産の購入を控えよう」となれば、最も困るのは当の米国のはずです。

 今回は日本の旧大蔵省もあまり真剣にとらえていないようで、麻生財務大臣も(旧大蔵官僚の意向を代弁しているだけですが)円高局面では円売り・ドル買い介入も辞さないともとれる発言をしています。大変に珍しいケースです。

 まあオバマ大統領の任期は来年1月までですが、その次がもっと八方美人タイプのヒラリーでも、もっと国際秩序維持に興味がなさそうなトランプでも、このような安直で目先の損得しか考えない政策がどんどん飛び出してきそうな気がします。

 少なくとも当面は気にする必要はありませんが、そもそもリーマンショック以降にFRBの総資産を9000億ドルから4.5兆ドルまで5倍に膨らませてしまった本格的反動が、まだ国際金融市場にほとんど出ていません。

 また米国の連邦債務はレーガン、ブッシュ(父)、クリントンの20年間で1兆ドルから5.6兆ドルになり、ブッシュ(息子)が8年間で10.7兆ドルまで膨らませ、オバマが8年間で20兆ドルまで膨らませてしまうはずです。つまり米国連邦債務の72%はブッシュ(息子)とオバマの2人の大統領が積み上げるわけです。

 こういう状態でオバマでもその後任でも、あまり安直で目先の損得しか考えない政策ばかりを続けているなら、いつかどこかで極限まで膨らんだFRB総資産(ドル発行残高)と連邦債務がドル危機を引き起こす可能性がないわけではありません。
 
 1985年のプラザ合意を思い出すまでもなく、米国政府が主導してドル安を推進すると(少なくとも「監視リスト」はドル高の回避策です)ロクな結果になりません。だから表題にあるように、逆に大丈夫かと心配になる米国財務省の「監視リスト」となるわけです。

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■闇株的見方 » 経済 | 2016.05.03
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