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「低成長のわな」とは

2016年09月30日

「低成長のわな」とは


 リーマンショック以降の世界経済は、金融緩和・量的緩和(中国だけは当初4兆元の財政出動)の成果を過剰評価していた結果、過剰設備・過剰生産・過剰資源に陥ってしまい、今後しばらくの世界経済は収縮せざるを得なくなっていると考えます。

 9月21日に発表されたOECD(経済開発協力機構)の2016年経済成長予測は、全世界が2.9%(6月時点の予想から0.1%減)、米国が1.4%(同、0.4%減)、ユーロ圏が1.5%(同、0.1%減)、日本が0.6%(0.1%減)、中国が6.5%(変わらず)となっています。

 つまり「この期に及んで」2016年の新興国を含む世界経済が2.9%しか成長しない(だろう)と認識されたわけで、世界経済の成長期待の低下が貿易や賃金などを抑制する「低成長のわな」に陥っていることになります。

 こういうときは、根本的な発想を変える必要があります。

 例えば金融緩和とは金利を引き下げて(あるいは資金を市場に供給して)経済活動を活発化させる効果があるはずですが、こういう「低成長のわな」に陥ってしまうとそもそも世界経済が収縮する力のほうが大きくなり、その効果はあまり期待できません。

 また金融緩和に自国通貨を引き下げる(例えば円安にする)効果があるかどうかはともかくとしても、世界的に貿易が縮小してしまうため(例えば)円安による輸出拡大・景気拡大効果もほとんどなくなります。

 つまり「低成長のわな」に陥ってしまうと、従来の金融緩和=通貨安=景気刺激効果がほとんど失われてしまうことになるはずです。

 また昨日(9月28日)のNY時間でOPECの減産合意のニュースが出たため、NY株式や本日(9月29日)の日経平均が上昇しましたが、仮に減産合意ができたとしても(そのあとでイラクが否定したようですが)たかだか日産70万バレルの減産では収縮する世界経済=原油需要の中では景気拡大効果とはなりません。

 世界経済が「低成長のわな」に陥っていなければ、減産合意=原油高=産油国の経済回復=世界経済にもプラスとなるはずですが、原油需要が収縮する中では経済回復効果とはならず、仮に原油価格だけが上昇すれば日本などは富の流出にしかなりません。

 そこで多少の円安(101円台)で株高になったと喜んでいるなら、かなりピントがズレていることになります。

 こういう時期に日銀の「総括検証」は、2%の物価目標の実現のために短期金利のマイナスを維持し、長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺に収斂させるとしています。

 これは日本経済を回復させる効果は全くないため長期金利は再度低下してしまい、結果的に日銀の国債買入れは減少することになるはずです。それ自体は(日銀の国債買入額減少は)好ましいことと考えますが、それが明らかになると量的緩和の縮小=「異次元」金融緩和の終了=国債の出口戦略(日銀の保有国債売却)の開始と受け取られ、新たなパニックを呼んでしまうことにもなりそうです。

 一方で投資を巡る環境は、ますます世界的な資金余剰・投資機会の減少・投資収益の低下、さらに低インフレ・金利水準の一層の低下となります。

 この世界的な「低成長のわな」と「資金余剰」の狭間(はざま)で、世界的な株式バブルが醸成されているはずですが、このバブルは簡単に弾けるとも思えません。

 世界の企業は投資や賃金を抑制して、株主還元(配当や自社株買い)に資金を振り向けるため、ますます見かけ上の株式投資の魅力が向上することになるからです。

 キャッシュフローの大半を株主還元に振り向け、高い利回りの配当を支払い続けることは、低成長の世界経済の中では企業活力が削がれてしまうだけです。

 ここのところ世界的に株価のボラティリティが低下する中で株価が上昇しているため、(日本の株式市場はそうでもないようですが)レバレッジが拡大していることになります。

 本年中はあまり心配する必要はありませんが、来年は「低成長のわな」と「資金余剰」と「高レバレッジ」の組み合わせによる反動を気にする必要が出てくると考えます。

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■闇株的見方 » 経済 | 2016.09.30
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ドイツ銀行は本当に大丈夫なのか?

2016年09月28日

ドイツ銀行は本当に大丈夫なのか?


 ドイツ銀行の株価が急落しています。欧州時間で本日(9月27日)昼過ぎには一時10.19ユーロと、昨年末の22.52ユーロから半値以下になり、時価総額も140億ユーロ(1.6兆円)しかありません。

 ちなみにDAXが史上最高値(12374)となった2015年4月10日の32.26ユーロから3分の1以下であり、リーマンショック時はもちろん1999年のユーロ導入時以来の安値を更新しています。

 直接のきっかけは9月16日に米国司法省が、2005~2007年当時のMBS(住宅ローン担保証券)不正販売に対してドイツ銀行に、現在の時価総額に近い140億ドル(1.4兆円)の巨額和解金を要求したため、株価が一時9%以上の下落となり11.98ユーロ(終値)となっていました。

 このMBS不正販売とは、そもそも米国が一時国有化したFNMAとFHLMCが組成した(保証もしていた)不良ローンを「しこたま」含んだ住宅ローン債権を証券化したもので、その最大の販売先もFNMAとFHLMCだったところ「不良MBSを騙されて買わされた」と米国司法省が訴えた「滅茶苦茶な米国の巨額罰金ビジネス」のことです。

 しかし米国大手金融機関はとっくに諦めて、バンカメ(メリルリンチ)が166億ドル、JPモルガンが130億ドル、シティバンクが70億ドルなどの巨額和解金を支払っています。

 別に米国でMBSを大々的に販売していたわけでもないドイツ銀行が140億ドルというのは確かに解せない数字で、同じ海外金融機関の和解金ではHSBCが6億ドル、野村証券が11億ドル(まだ係争中のはず)と1桁以上も少なくなっています。

 つまりドイツ銀行は米国政府との間に「何か表に出ていない大きなトラブル」があり、それも含めた懲罰的な意味合いのような気もします。

 それに加えて昨日(9月26日)には、メルケル首相がドイツ銀行への公的支援を明確に否定しました。もっともギリシャ政府やイタリアの銀行への金融支援に強硬に反対するドイツ政府としても、身内に甘い顔ができるはずがありません。

 ドイツ銀行も「自力で問題を解決する」と精一杯の意地を表明しましたが、それで本日の株価続落となっています。

 さてドイツ銀行の危機は今に始まったわけではなく、本年1月28日には2015年通年の最終損益が68億ユーロ(当時の為替で8600億円)もの巨額赤字だったと公表し、それに中国ショックが重なった2月10日には13.68ユーロまで下落していました。

 この時はドイツ銀行が抱えるデリバティブの想定元本がドイツGDPの20倍をこえる75兆ドルもあると囁かれていました。この数字は直近でも55兆ユーロ(62兆ドル)のようで、あまり改善しているようにも見えません。

 また2月当時は46億ユーロ(当時の為替で5800億円)ものCoCo債(偶発転換社債、ドイツ銀行の自己資本が減少すると強制的に元本が召し上げられるシロモノ)が発行されており、その価格も額面の7割以下になり市場を不安にさせていました。

 現在は当然にもっと悲惨な状況になっているはずですが、情報がありません。たぶん世界中からビットが消えているのでしょう。日本の外貨建て投資信託に「知らないうちに」組み込まれていないことを祈るだけです。

 さてだいたいこういう時期には大手格付け機関が「ヒステリック」に格下げを繰り返してパニックを拡大させるものです。ドイツ銀行の格付けはMoody’sが本年5月にBaa2に格下げしていますが、これは無担保優先債の格付けで一般的な長期預金格付けはA3であり、実感では「かなり高い」と感じます。

 近いうちにMoody’sお得意の「ヒステリック」な格下げが繰り返され、パニックを拡大させるような気がします。

 さてかつての名門銀行だったドイツ銀行が、なぜこのようにボロボロになってしまったのでしょう?これは(ドイツ銀行だけに限りませんが)1995年頃から商業銀行業務より投資銀行業務に力を入れ、一時的に収益が拡大した2005年頃から「さらに」のめり込んだところにリーマンショックの直撃をうけたものの、めげずに世界中で投資銀行業務の拡大を止めていなかったからです。

 このMBS不正販売や、デリバティブ想定元本の天文学的拡大だけに限らず、世界中で発生したLIBOR不正操作なども、すべてこの背伸びした投資銀行業務の爪痕となります。

 冗談ではなく今後のドイツ銀行を巡る状況によっては、欧州だけでなく世界中の金融市場に「原爆級」の災害を及ぼす恐れがあります。

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■闇株的見方 » 経済 | 2016.09.28
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