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東芝の命運と日米原子力協定

2017年01月24日

東芝の命運と日米原子力協定


 東芝は過去に不正経理があったとして2015年9月7日に合計2248億円(その後2度にわたり2311億円まで増額)もの決算修正を行いましたが、これで当時のトップを含む東芝の刑事責任が追及されることはないようです。

 またそのたった半年後の2016年3月期には、東芝メディカルをキャノンに売却して得た3817億円の売却益を公正取引委員会の審査が完了していないにもかかわらず無理やり計上し、それまで頑として否定していた原子力子会社・ウエスティングハウス(以下、WH)の「のれん」をやっと2600億円だけ減損して、4600億円もの最終巨額損失となりました。

 つまり東芝は、日本政府、官邸、経済産業省、捜査当局、東証など「オール日本で不自然なほど手厚く保護されて」生き残っているわけです。

 ところが2016年12月27日、さらにその原子力事業で「文字通り原爆級の巨額損失」が発生すると突然に発表されました。
 
 WHが2015年12月末に、原子力建設と総合的サービスを担うストーン・アンド・ウエブスター(以下、S&W)を買収していたのですが、そのS&Wに数千億円規模(その後7000億円規模まで拡大)の「のれん」計上に伴う巨額損失が発生するようです。
 
 東芝の2016年3月末の自己資本は3632億円しかなく、2017年3月期は営業利益や円安による資産増加を勘案してもせいぜい5000億円であり、完全に債務超過となります。債務超過となれば財務制限条項に抵触し2016年9月末で1.4兆円をこえる長短借入金の大半は期限の利益を喪失してしまう(つまり繰り上げ返済を求められる)ことになります。

 早急の資本増強(つまり増資)や、唯一残った虎の子の半導体事業の切り売りしかありませんが、3月末あるいは「さらに手厚く保護されても」有価証券報告書提出期限の6月末までに自己資本をプラスに回復させなければなりません。

 東証は東芝を特設注意市場銘柄に指定したままで、このままだと増資ができないとか3月には(上場廃止のリスクがある)監理ポストに割り当てるといった懸念もあります。そこは東証による過保護がまた適用されるはずですが、増資の引受先が現れるかどうかは別問題です。

 そのあとわかったことは、東芝の原子力子会社・WHは以前からCB&Iとの間に、原子力発電所建設の工事遅れなどの補償を巡る複数の係争を抱えていたことです。
 
 そこで東芝とWHは、その係争相手のCB&Iを買収してしまうという「奇策」に出たわけですが、もちろんそれで将来の損失が消えるわけではありません。補償は外部に支払うものだからです。

 冷静に考えると買収した2015年12月とは、2016年3月期決算におけるWHの減損を巡り親会社の東芝が頑として抵抗していた時期です。その時点でWHに新たにCB&I関連の損失が加われば、さらに大きな減損が避けられなくなったはずです。つまり東芝は2016年3月期で大幅な債務超過に陥っていたことになります。

 そこでCB&Iを「そっと」買収して「資産精査期間の1年間」だけ時間を稼いだことになります。別の言い方をすれば「隠した」わけです。まあ「オール日本で不自然なほど手厚く保護されている」東芝なので、今度も事件となることはなさそうですが、今度こそ東芝の存続が危うくなります。

 さてここでやっと本題です。

 そもそも東芝が2005年に「すでに死に体」となっていたWHを高値で買収したところから始まり、不正経理に手を染めてまでその減損を避けたこと、それをオール日本で手厚く保護して刑事事件化を避けたこと、キャノンが東芝メディカルを高値で買い取って2016年3月の債務超過転落を回避させたこと、今回のCB&I巨額損失も結局は2016年3月期の債務超過転落を避けるためだったこと、さらに2017年3月期の債務超過転落も(たぶん)過保護で回避させることなど、すべて「同じ背景」があります。

 さらに東日本大震災後も、あれだけ日本政府が原発再稼働に必死であることにも「同じ背景」があります。本誌は原発再稼働に賛成ですが、それは全く違う日本のエネルギー事情を考慮した理由です。

 その「同じ背景」とは1958年に締結され、1988年に更新され、失効する2018年7月に当然のように再更新される「日米原子力協定」です。

 日米原子力協定とは、簡単に言うと米国が日本の原子力政策を完全にコントロールするための協定であり、日本は米国から「とっくに事業としては成り立たなくなっている」原子力会社を引き受け存続させてパテントを支払い、米国から核燃料を大量に買い付け、さらにそれを軍事転用しないように見張られているわけです。

 東芝の命運は、この日米原子力協定を抜きに考えても無意味です。

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