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いよいよ半導体事業を売却してしまう東芝(追加記事あり)

2017年08月31日

いよいよ半導体事業を売却してしまう東芝(追加記事あり)


 東芝の半導体事業売却については、どうも都合の良いところだけが報道されているようですが、それでも話がまとまりかけていることは事実のようです。

 その最新の報道では東芝の半導体事業会社の買収資金として、1兆円前後を出資の形でKKR、産業革新機構、政策投資銀行が主に引き受け、日本勢が議決権ベースの過半数を確保するとなっています。

 またWDは1500億円を拠出するものの、当初は議決権のない転換社債や優先株の引き受けで「調整中」のようで、何と東芝自身も1~2000億円を出資して影響力を残すそうです。

 そして7000億円を主力銀行が融資し、総額を2兆円とするようですが、これだけだと「何が何だか」わかりません。そこで少しだけ推測を入れて、この「からくり」を解説します。

 まず東芝は2017年3月末で5529億円の債務超過となっており、これを2018年3月末までに解消しなければ上場廃止となります。ここでは上場廃止を避けるためだけに(パニックとなっている銀行団を鎮めるためだけにも)半導体事業を売却してしまうことの是非は論じないことにします。

 東芝が子会社化した半導体事業の帳簿価格は7000億円であるため、今期の期間損益をゼロとすれば、単純に7000億円を5529億円上回る価格で売却すればいいはずです。しかし8月25日付け「まだまだ波乱がありそうな東芝の半導体事業売却」で懸念した通り、東芝には税務上相殺できる累積赤字がないため、仮に2兆円で売却して1兆3000億円の売却益が出ても5000億円ほどの税金がかかり、自己資本は8000億円増えるだけのようです。

 ここで支払った5000億円の税金は、仮に今期中にウェスティングハウスの法的整理が完了して日本の税務当局が税務上も損失と認めれば相殺できて還付されるような気がしますが、実際問題としては難しく「支払いっぱなし」となってしまうはずです。

 だから最初から「2兆円ありき」となっているわけですが、そうするとその2兆円は半導体事業会社の株式購入代金(つまり出資金)として払い込まれなければなりません。

 今回も(たぶん)KKRが主導して買収のための特別目的会社を設立するはずですが、そこから払い込まれる株式購入代金は(本誌の推測を入れて)KKRが4000億円、産業革新機構と政策投資銀行が3000億円ずつ、WDが(優先株であればですが)1500億円、それに東芝が(いったん全株売却してその価格で再取得するしかありませんが)1500億円としても、最大1兆3000億円にしかなりません。

 主力銀行が融資する(といっても半導体事業の売却代金で回収した分を折り返すだけですが)7000億円は、特別目的会社に貸し付けられるため、その7000億円も「誰かの出資分」として合計2兆円を株式購入代金(つまり出資金)として払い込まなければならないはずです。

 何度も書いていることですが、買収が完了するとこの特別目的会社は被買収会社(つまり東芝の半導体事業会社)と合併させるため、半導体事業会社はこれから人件費も設備投資もケチり、自らを買収するために使われた7000億円もの負債を最優先に返済しなければなりません。

 それでは半導体事業を買収するために払い込んだ(出資した)2兆円は(というより近い将来に新規上場した時にもっと増えているはずの株式価値は)、いったい「誰のもの」となるのでしょう?

 先ほど考えた通り、実際の出資のために払い込まれる資金は最大1兆3000億円なので、「誰かが」7000億円の出資分を(実際は近い将来にもっと増えるはずの7000億円分の株式価値を)タダで貰ってしまうことになります。

 「それは出資者全員で案分するのだろう?」

 その可能性も1%くらいはありますが、KKRの正体は世界最大のLBOファンドであり、このLはLeverage(レバレッジ)のLです。つまりLBOファンドとは、そもそも自分の出資分をはるかに上回る(レバレッジがかかった)株式価値を確保しないと出資しません。つまりKKRだけが「ぼろ儲け」する構造になっていると考えておくべきです。

 だから日米韓連合にも同じ(格はだいぶ落ちますが)LBOファンドのベインキャピタルが食いついており、今回もWDを抱き込んでもっと「えげつない」KKRが出動してきたわけです。そのKKRが産業革新機構や政策投資銀行と同じ利益率を求めてわざわざ出動するはずがありません。

 「日本勢が議決権の過半数を持つのでは?」それはあくまでも当初の議決権だけの話で、KKRも当初は優先株を取り混ぜて議決権を抑えるはずですが、売却時には普通株に転換してしまいます。

 たぶんKKRは、1500億円を出資する(当初は優先株の)WDにもこの「ぼろ儲け」を配分するはずですが、当初の議決権の過半数確保だけでメンツが守られたと喜んでいる日本勢には配分されるはずがありません。

 この辺を頭に入れて今後の報道を読んでください。

 繰り返しですが産業革新機構と政策投資銀行がこの予定している3000億円ずつで、東芝本体の第三者割当増資を引き受ければ、半導体事業など売却しなくても債務超過は解消されます。また2017年4~6月期の半導体事業は903億円の営業利益が上がっており、これはこの期間の東芝全体の営業利益の93%に相当しています。

 でも残念ながら東芝の半導体事業売却は、もう止まらないようです。


(以下、追加記事です)

 この状態でも東芝は、8月30日になってWDに独占交渉権を与えて9月中に契約締結を目指すことを8月31日の取締役会に諮ると報道されています。銀行団が最もパニックになっているようで(東芝の経営陣はすでに当事者意識を失っています)、どうも銀行団サイドから東芝の背中を押すためのリーク記事のようです。

 主力行はすでに半導体事業会社の株式も担保で確保しているはずなので、下位行だけが騒いでいるのかもしれませんが、それで本日の記事にあるような方法でも「何が何でも」売却してしまおうとしていることになります。


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米国債務上限引き上げの行方

2017年08月29日

米国債務上限引き上げの行方


 米国の新会計年度は10月1日から始まりますが、今年はそれまでに歳出予算法案と債務上限引き上げ法案を連邦議会の上下院でそれぞれ通過させなければなりません。しかし議会は9月5日まで夏休みで、実質的には十数日しか審議時間がありません。

 予算案は期限内に通過しなくても暫定予算で凌げますが、債務上限が引き上げられないと政府は国債発行ができず、やりくりしても10月中旬には政府資金が底をつき行政がストップしてしまいます。

 何よりも米国債の借り換えや利払いもできなくなり、また「米国債がデフォルトする」と騒がれることになります。2011年にはこれでS&Pが米国債の格付けをAA+に引き下げてしまい、現在もそのままです。

 とくに予算案と債務上限引き上げが同時に審議されると、当然に財政支出削減がセットになり、各議員の政治的思惑が微妙に絡みギリギリまで難航してしまいます。2013年を含めて何度か時間切れとなり政府窓口が閉鎖されています。

 オバマ政権時の2015年11月2日には「超党派予算法」を成立させ、何と債務上限の適用を2017年3月15日まで棚上げしていました。その3月15日以降も政府短期証券の発行を削減するなどやりくりが認められていましたが、それも10月からは使えません。

 つまりあらゆる意味で「待ったなし」となります。

 連邦議会は上下院とも与党の共和党が過半数を占めており「何とかなるだろう?」と思われるかもしれませんが、実は財政削減を主張する議員はフリーダム・コーカスなど共和党議員に多く、逆に民主党議員を多数抱き込まなければなりません。

 とくに上院が難航しそうです。もともと共和党52:民主党48の議席ですが、時間切れを狙う議事妨害(フィリバスター)を排除するためには60の賛成票がいるため、今のところ「ほぼ絶望的」に思えます。

 さらに問題をややこしくしているのは、本来の予算案や債務上限引き上げは行政の最高責任者である大統領が議会に対して承認を働きかけ、米国債のデフォルトはもちろん政府窓口の閉鎖などを回避するという構図ですが、トランプ大統領は何と「メキシコの壁建設の予算16億ドル(1740億円)が認められなければ政府窓口の閉鎖も辞さない」と言い放っています。

 つまりトランプ大統領は自分の立場や役割が全くわかっていないことになりますが、そうまでして獲得したい予算はメキシコの壁建設のためだとすれば「本当に大丈夫なのか?」と心配になります。たぶんまったく大丈夫ではないのでしょうね。

 さらに付け加えれば、トランプが行政管理予算局(OMB、政府の予算関連業務の元締め)の局長に任命したミック・マルバニーは財政削減の強硬論者として知られています。その主義主張は立派だとしても、OMB長官は最も矛盾するポストであるはずです。

 この状態で9月5日から予算案と債務上限引き上げの審議が始まるわけですが、どう考えても「まとまりそうもない」となります。9月になると米国債のデフォルト懸念が再燃し、世界の金融市場が「少なからず」動揺する可能性があります。

 常識的にはドル安・円高、米国株安・日本株安、米国長期金利上昇・日本の長期金利低下といったところでしょう。米国長期金利の上昇は景気回復による健全な金利上昇ではないため、ドル高とはならないはずです。

 ところで米国の財政赤字が拡大を始めた時期は「強いアメリカ」を標榜して軍事拡大に走ったレーガン政権からとされますが、そのレーガン政権の発足時(1981年1月)の連邦債務残高は1兆ドル弱でした。そこからブッシュ(父)とクリントンの政権を合わせた20年間で連邦債務残高は5.6兆ドルとなりました。

 つまりブッシュ(息子)政権がスタートした2001年1月の連邦債務は5.6兆ドルだったわけですが、次のオバマ政権がスタートした2009年1月には10.8兆ドルとなっており、トランプ政権が発足した2017年1月には20兆ドルに到達していたはずです。

 つまり米国連邦債務の約4分の3はブッシュ(息子)とオバマの2人の大統領時代に積みあがったことになりますが、トランプも自由にやらせておけばもっと野放図に積み上げてしまうことになるはずです。
 
 一方で米国債の発行残高は(市場性のあるものだけです)、リーマンショック前の6兆ドルから15兆ドルまで増加していますが、その15兆ドルの内訳はFRBが2.5兆ドル、米国内の金融機関・機関投資家・MMF・家計が7兆ドル、公的を含む海外保有が5.5兆ドルとなっています。

 この状態で9月にもFRB保有債券(米国債とMBS)の縮小が始まるはずです。そこでいくら米国政治のチキンレースで最終的には回避できるとしても、米国債のデフォルト懸念が出てくることはあまり気持ちのいいことではありません。


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■日本 » 政治 | 2017.08.29
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