Archive

闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

クルドとカタルーニャ 2つの独立を問う住民投票

2017年10月03日

クルドとカタルーニャ 2つの独立を問う住民投票


 9月25日にイラクのクルド人自治区(クルディスタン自治区)、10月1日にスペインのカタルーニャ州で、それぞれ独立を問う住民投票が行われました。

 結果はともに圧倒的多数で「独立」を支持しましたが、それぞれ中央政府が認めた住民投票ではなく、当然に「独立」が簡単に認められるわけではありません。さらに両地域の独立運動は長く複雑な歴史的背景を抱えていますが、世界各地における多数の独立運動の「新たなスタート」になると強く感じます。

 そこで今回の2つの独立運動の背景を中心に、簡単に振り返っておきます。

 まずクルド人とは、中東のトルコ、シリア、イラク、イランの山岳地帯を中心に約3000万人居住しており、「国家を持たない世界最大の民族」と言われます。民族的にはペルシャ系で、宗教はイスラム教・スンニ派です。

 クルド人はもともとオスマン・トルコ帝国内に居住していましたが、第一次世界大戦の敗戦でオスマン・トルコが消滅すると、主に英国とフランスが勝手に領土を分割してしまったため、完全に取り残されたまま現在に至ります。

 今回の独立を問う住民投票はイラクにおけるクルド人自治区で行われました。この地域のクルド人は500万人といわれます。1991年の湾岸戦争で連合国軍が戦略上保護したことから自治が認められるようになり、2005年からは独自の大統領(議長とも呼ばれます)、首相、議会、軍隊、ある程度の外交権限が認められる「独立国に準ずる自治区」となっています。日本政府も本年1月に「領事事務所」を設置しています。

 さてこのイラクにおけるクルド人自治区は、イラク北部のトルコと国境を接する山岳地帯に位置していますが、そのすぐ南西に当たるイラクとシリア領には自称イスラム国(ISIS)が実効支配する地域があります。

 最近はほとんど壊滅したとされるイスラム国ですが、最近になって死亡したとされていたカリフ・バグダディーの肉声が公開されて生存説が出てきました。そしてこのイスラム国との戦闘で互角以上に戦えるのは、クルド軍(ペシュメルガ)とイラン革命防衛隊だけといわれています。

 さらにイラクにおけるクルド人自治区は、最近になってイスラム国が実効支配していたキルクーク油田も支配しており、日産65万バレルといわれる原油生産がさらに増加しているようです。つまりかなり豊かな自治区であるはずです。

 そんな幅広い自治が認められているクルド人自治区が「独立」を問う住民投票を強行しましたが、たちまちイラク中央政府だけでなく中東諸国、米国、ロシアまで揃って反対の大合唱となりました。

 イラク中央政府はクルド人自治区の空港への国際便発着を禁止し、陸路の封鎖、さらに域内の油田の返還まで求めそうな勢いです。つまり幅広く認めていた自治権を軒並み停止する可能性があり、間違いなく新たな混乱となるはずです。

 とくに国内に1000万人と最大のクルド人が居住するトルコでも独立運動が高まることをエルドアン大統領が警戒しており、そうでなくても微妙なバランスである中東情勢がさらに複雑化する恐れがあります。

 一方のカタルーニャ州はスペイン東北部の地中海岸にあり、交通の要地として古代から栄えていました。中世にアラゴン・カタルーニア連合王国として栄えていましたが、スペイン王国成立後は統合されていました。

 とくに1714年にスペイン継承戦争でブルボン家による支配が始まると、カタルーニャは独立を求めて武力蜂起しましたが鎮圧され、ほとんどの自治権を失いました。今でも人気サッカーチーム・FCバルセロナの本拠地であるカンプノウでは、前半の17分14秒に「独立コール」が沸き上がります。またそこから300年後の2014年にも、非公式ですが独立を問う住民投票が行われました。

 フランコ独裁政権が瓦解した直後の1979年に自治州となりましたが、これはスペイン全土が17の自治州にまとめられたからで、カタルーニャだけに自治が認められたわけではありません。

 カタルーニャ州の面積はスペイン全土の6.4%ですが、人口は16%にあたる750万人、GDPは20%をこえています。カタルーニャ州は貧しい州を援助させられているとの不満がくすぶります。

 今回のカタルーニャ州の住民投票では、スペイン中央政府が数千人の警官を派遣して実力行使で妨害したため投票率が42%しかなく、独立反対派の大半は棄権したようでもあり、カタルーニャ州全体の民意としてはやや不透明です。

 スペイン中央政府は、カタルーニャ州が強引に「独立」すれば、すべての自治権を停止すると公表しています。同じように独立志向の強いバスク州やガリシア州などに飛び火することを警戒しているはずです。

 繰り返しですが今回の2つの独立を問う住民投票は、間違いなく世界各地に拡散し、国際政治における「新たな混乱」を呼ぶことになると強く感じます。


ダイヤモンド版「闇株新聞プレミアム」のお申し込みはこちらから
インフォカート版「闇株新聞プレミアム」のお申し込みはこちらから


Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:2 | TrackBack:0
■闇株的見方 » 社会 | 2017.10.03
関連記事
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

09月 | 2017年10月 | 11月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム