Archive

闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

かくも節操のないゼロックスの「買収白紙撤回」

2018年05月15日

かくも節操のないゼロックスの「買収白紙撤回」


 米事務機器大手のゼロックスは5月13日(日本時間14日午前)、1月31日に合意していた富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルム)による買収合意を解消すると発表しました。

 ゼロックスの現経営陣が、かねてから今回の買収案に反対していたカール・アイカーン、ダーウィン・ディーソンら「物言う株主」の意向を受け入れ、買収合意解消を決めてしまったようです。しかしこれに至るまでのゼロックス経営陣の迷走ぶりは、まさに表題にある「節操のない」ものとなります。

 そもそも1月31日に発表されていた富士フイルムのゼロックス買収案とは、まず合弁会社(富士フイルムが75%、ゼロックスが25%を保有)である富士ゼロックスが金融機関から6710億円を借り入れて富士フイルムの保有する75%を自社株買いし、ゼロックスの完全子会社となります。そして富士フイルムはその6710億円でゼロックスの第三者割当増資を引き受けて50.1%の株式を取得し、連結子会社にするというものでした。

 その6710億円の根拠は、富士ゼロックスの企業価値を約9000億円と算定し、その75%という計算です。しかし発表当時のゼロックスの時価総額は直前の株価上昇もあり約90億ドル(約1兆円)あったため、その50.1%を取得するためには倍額を少しこえる第三者割当増資が必要となるため6710億円では足りません。

 そこでゼロックスの株主に25億ドル(2750億円)の特別配当を支払い、ゼロックスの企業価値を引き下げて何とか6710億円で収まるように考えたようです。つまり富士フイルムの資金負担はゼロとなります。

 一見してゼロックスがタダで手に入るように見えますが、そのからくりはゼロックスの50.1%しか取得していないからで、さらに少なくとも収益が上がっている富士ゼロックスの75%と、業績が縮小しているゼロックスの50.1%を交換したことにもなります。

 最大の問題は、ジェイコブソンCEOらゼロックスの現経営陣が大半残留して引き続きゼロックスの経営にあたり、「親会社」となった富士フイルムも4名の取締役を送り込みますが取締役会の過半数を握るわけでもなく(経営を支配できるわけでもなく)、何よりもカール・アイカーンら「物言う株主」を含むゼロックスの既存株主もそのまま残ってしまうことです。

 「物言う株主」であるかどうかは別にしてもゼロックスの一般株主は、投資先が買収されることによるプレミアムを一切受け取ることができません。25億ドルの特別配当もゼロックスの資産から支払われるため、それだけゼロックスの企業価値が低下することになり、差し引きでは何のプラスにもなりません。

 さてそこからの動きですが、カール・アイカーンやダーウィン・ディーソンら「物言う株主」の申し立てを受けてNY州の裁判所が4月27日、富士フイルムのゼロックス買収を一時的に差し止めてしまいました。

 さらに5月1日になって、(富士フイルムによる買収後にも残留して経営にあたることになっていた)ジェイコブソンCEOを含むゼロックスの現経営陣が、カール・アイカーンら「物言う株主」と電撃的に和解し、ジェイコブソンCEOを含む7名の現取締役が辞任して「物言う株主」が推薦する6名の取締役候補を受け入れると発表してしまいました。6名にした意味は、富士フイルムが推薦する取締役候補は4名なので(取締役の定数は10名)、すでに過半数を押さえてしまったことになるからです。

 ところが5月3日になって、今度は大株主が期限内に提訴を取り下げなかったとしてジェイコブソンCEOを含む現経営陣が和解と辞任の撤回を発表してしまいました。

 そして今回(5月13日)、ジェイコブソンCEOを含む現経営陣が、カール・アイカーンら「物言う株主」と再び和解し、現経営陣の辞任と、「物言う株主」の推薦する取締役候補の受け入れ、さらに富士フイルムによるゼロックス買収まで白紙撤回してしまいました。

 今回の理由は、4月15日までに合弁会社である富士ゼロックスの財務諸表が提出されなかったというものですが、3月決算の富士ゼロックスが4月15日までに財務諸表を提出できないことを、長く合弁会社の株主だったゼロックスの現経営陣が知らないはずがありません。

 富士フイルムによるゼロックス買収の最終決定権は両社の株主総会にありますが、ゼロックスの取締役会が一度承認した富士フイルムによる買収を白紙撤回しても、それだけでは法に触れるわけではありません。

 一般論ですが企業の経営陣は、自らの損得勘定より株主の利益を優先しなければなりません。ところがどうもジェイコブソンCEOを含むゼロックスの現経営陣は、高額の退職金と引き換えに、富士フイルムによる買収を白紙撤回したと噂されています。

 富士フイルムの古森会長を含む経営陣は、「訴訟も考える」と言っているようですが、それが米国の裁判所である限り、富士フイルムに有利な決定が出ることはまずありません。

 富士フイルムがすぐにやるべきことは、富士フイルムの取締役会でもゼロックス買収と、富士フイルムと富士ゼロックスの取締役会では自社株買いを、それぞれ白紙撤回してしまうことです。ゼロックスがすでに白紙撤回していますが、富士フイルムと富士ゼロックスもそれぞれの取締役会で承認しているため、同じように白紙撤回しておく必要があります。

 現時点のゼロックスに興味を示す企業は多くないはずで、これらの白紙撤回でゼロックスの株価も一層下落するはずです。それでもどうしてもゼロックスを買収したいのであれば、今度はTOBでゼロックスの全株を正々堂々と取得するべきです。また収益の上がっている富士ゼロックスは当分の間そのまま75%を保有しておくべきです。


ダイヤモンド版「闇株新聞プレミアム」のお申し込みはこちらから
インフォカート版「闇株新聞プレミアム」のお申し込みはこちらから

Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:0 | TrackBack:0
■企業 | 2018.05.15
関連記事
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

04月 | 2018年05月 | 06月
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム