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エクイティファイナンスの裏側----儲けたのは誰だ? Part3

2010年10月17日

3回にわたって書いてきたエクイティファイナンスの裏側の最終回です。ここでは日本の銀行のエクイティファイナンスについて書いてみます。前回までに書いてきたのは、公募増資にしろ、新株予約権付転換社債にしろ、大型のファイナンスで海外が絡むものはほとんどヘッジファンドに収益源になっていて、日本の一般投資家がババをつかまされていると書いてきました。ところがその最たるケースが日本の大手銀行のエクイティファイナンスなのです。

 日本の銀行と言えば1990年代にバブル時代の清算で大きな損失を出し、公的資金の世話になりました。また結局つぶれてしまって税金で補てんをしたケースもありました。また自己資本比率を上げるために、永久劣後債とか優先出資証券とかの発行を余儀なくされ、その引き受け手となった主に米国の投資銀行やヘッジファンドを、例によってボロ儲けさせたことなど、書きたいことが山ほどあるのですが、やや古い話なのでここでは省きます。

 ここでは三大メガバンクの最近のエクイティファイナンスと、それに関連した「けしからん話」を書いていきます。

 リーマンショックから現在までの約2年間で、日本で最も大量にエクイティファイナンスを行ったのが銀行です。三大メガバンクのエクイティファイナンス(ほとんどが公募増資)をまとめてみましょう。

1) みずほフィナンシャルグループ

① 平成21年7月1日発表で普通株上限30億株。発表時の発行株数は112億株。
国内向けが15億株で主幹事が野村証券。海外向けが15億株で主幹事がJPモルガン。
株価推移は、発表前が250円台、発表の7月1日の引け値が231円、値決めの7月15日の引け値が190円、それで発行価格184円で払い込み価格176.40円と決定。

株価はすぐに200円台回復。発表後の一ヶ月間の出来高累計46億株
調達金額は5263億円。手数料228億円(注1)

② 平成22年6月25日発表で普通株上限60億株。発表時の発行株数155億株。
国内向けが30億株で主幹事が野村証券。海外向けが30億株で主幹事がJPモルガン。
株価推移は、発表前が150円台、発表の6月25日の引け値が153円、値決めの7月13日の引け値が135円、それで発行価格130円で払い込み価格125.27円と決定。

株価はすぐに140円台回復。 発表後一カ月間の出来高累計65億株
調達金額7480億円。手数料283億円。(注1)

(注1) 発行価格と払い込み価格の差額が幹事証券の手数料相当額となります。

 2回のファイナンスで1兆2743億円を調達し、支払った手数料も2回分で511億円と巨額です。その間に発行株数は当初の40%も増加しました。2回ともちょうど半分が海外向けであり、その期間の株価推移や急増している出来高を見ても、ヘッジファンドに格好の儲け場所を提供したことは確かのようです。

 ヘッジファンドの儲け方ですが、新株予約権付社債のように長期にわたって儲けられるわけではなく、増資発表時に(あるいは発表前のプリマーケティングのうちに)借株を手当てしてあらかじめ売却して値段を下げて値決めを低くしてサヤを抜くか、あるいは値決め後の払い込み前までに株価が戻れば、これまた借株を売却してサヤを抜きます。国内の投資家が株券を受け取ったころには、すべて終わっているのです。

 国内の幹事団には、当然みずほ証券が入っていますが、海外の主幹事のJPモルガンは、みずほグループとそれほど親密ともいえないため、単に巨額の手数料を支払っただけで、見返りメリットを何も得ていないようで、いかにも海外戦略が一貫していない「みずほ」グループらしいといえます。海外での販売は、別にみずほグループの収益性とか成長性などを説明する必要は一切なく、ヘッジファンドが勝手に流動性と借株で手当てできる株数を見て買いにくるわけで、JPモルガンでなくてもだれでもできます。

 株価は、平成22年10月15日の引け値で116円です。別にこの間分割も何もしていないので、増資に応じてそのまま保有している投資家や、以前からみずほ株を保有している投資家は含み損を抱えてしまっていることになります。

2) 三井住友フィナンシャルグループ
 平成21年5月と平成22年1月に、なんと同じ期に2度も大量の普通株を発行しています。当初の発行株数7億8908万株に対し、2億2900万株(発行価格3928円、払い込み価格3766円)と3億6000万株((発行価格2804円、払い込み価格2702.81円)の普通株を発行し、なんとこの間に発行株数は当初の66%もの増加となっています。そのうちの半分が海外向けで、詳しい説明は省きますが、やはり同じようにヘッジファンドが儲けた形跡がはっきりとあります。

 ちなみに平成22年10月15日の引け値は2388円でした。

 この2回での調達金額は1兆8340億円に上がり、支払った手数料も738億円になります。このうち2回とも海外分はGoldman Sachs International が主幹事となっており、Goldmanの日本法人も国内分の幹事団に入っています。実は三井住友銀行とGoldmanは古くから大変親密なのですが、国際ビジネスで、特にユダヤ系と「親密」ということは、言葉通りの「親密」ということは絶対にないと言い切れます。

 とくに1990年代の金融危機の時以来、住友銀行(当時は三井銀行と合併前)は、何度か自己資本比率を引き上げるために優先株などを海外で発行していますが、その引き受け先は必ずGoldman Sachsでした。合併して三井住友フィナンシャルグループとなった後、2003年1月に次のような優先株発行を含む合意をIR発表しています。その内容とは、

① Goldmanは、三井住友フィナンシャルグループの転換型優先株式を1503億円購入する。条件は、利率4.5%で、転換価格は下方修正のみ、発行後25年経過して未転換のものは強制転換する。など

② 三井住友フィナンシャルグループはGoldmanが顧客に対して行う信用供与について10億ドルを目途に信用補完を行う。

③ 三井住友銀行の不良債権処理および財務基盤拡大のため、 Goldmanの専門性を利用して両社で業務協力を幅広く行う。
 
 これは、①については転換型優先株式と言うのは今の新株予約権付社債と同じで、向こう25年間も、転換価格は株価が下がったら下げるけど、上がっても上げないので、1503億円相当の三井住友銀行の株式の売買でいくらでも儲けて下さい。しかも金利も4.5%も付けましょう。というものです(その辺は、前回の新株予約権付社債を使ったヘッジファンドの儲け方を参考にしてください。本合意では、儲けるのはヘッジファンドではなく、Goldmanそのものです。)事実発行後に株価は約半分になった後、約10倍になり、そのあと5分の1くらいになっているので、普通にやっていても数千億円くらい儲かっているはずです。

 ②については、10億ドルの信用供与というのは、日本と違って信用度の違いが金銭的に計算できる米国のビジネスでは、とんでもなくGoldmanに有利となり、③では日本のビジネスとって一番おいしい不良債権処理のビジネスを、ほぼ独占的にGoldmanにだけ渡したということになります。ちなみにこの時のGoldmanの代表が、後の財務長官のポールソンで、三井住友銀行の頭取が、後の日本郵政社長の西川善文氏でした。

 これは三井住友フィナンシャルグループが株主等のために最良の方法を模索した結果だとはとても思えません。偶然かどうか、住友銀行副頭取だった足助明朗氏が2002年から2010までGoldman日本法人の取締役会長に天下って(?)いました。


3) 三菱UFJフィナンシャルグループ
 平成20年12月と平成21年12月に2回の普通株の発行をしています。当初の発行株数103億株に対し、それぞれ10億株(発行価格417円、払い込み価格399.8円)と25億株(発行価格428円。払い込み価格412.53円)の普通株を発行し、この間に発行株数は当初の34%の増加となりました。海外向けは全体のちょうど半分です。
 ちなみに平成22年10月15日の引け値は385円です。2回の調達額の合計は1兆4311億円で、支払った手数料合計は558億円です。やはり主幹事は国内分が野村証券で、海外分はMorgan Stanley です。海外分はヘッジファンドが儲けたはずだということは、今更繰り返しませんが、この海外分の巨額の手数料を受け取ったMorgan Stanleyについて、是非お話ししておかなければならないことがあります。

 平成20年9月22日のIRで、三菱UFJフィナンシャルグループは、米国Morgan Stanleyの議決権の約21%を90億ドルで取得する。出資形態は30億ドル相当の普通株式(一株=25.25ドル)と、60億ドル相当の永久優先株式(転換価格31.25ドル)と発表しています。さらに、議決権の10%以上を保有する限り取締役1人を派遣する権利を有する、とだけ付け加えています。

 また同年10月13日のIRで、議決権の21%を90億ドルで取得し、払い込みを完了したと発表しています。出資形態については、やや変更になっており78億ドルの転換型優先株(転換価格25.25ドル)と12億ドルの償還型優先株で、配当は両方とも10%となっています。さらに、よっぽど嬉しかったのか、議決権の10%以上を保有する限り取締役1人を派遣する権利を有すると、また付け加えられています。逆にいえば、90億ドル(当時の為替レートで1兆円以上)を支払って議決権の21%を取得しただけで、他に何もれなかったということになります。議決権の21%は実質的に何の影響力もないのです。

 ところが、この平成20年9~10月は、一体どういう時期だったかを思いだしてみましょう。そうです。平成20年9月15日にリーマンブラザースが破綻し、同日にメリルリンチもバンカメに身売りしました。さらに同年9月29日には米国の緊急経済安定化法案が下院で否決され、NYダウが777ドルも急落するなど、世界の金融市場が最も混乱していた時です。Morgan Stanleyの株価も9月29日に20ドルを割り込み、10月10日には一時9ドル台まで急落しました。Morgan Stanleyの剛腕John Mack社長も必死になってあちこちに増資の引き受けや身売り話まで持ちかけていたようです。

 三菱UFJフィナンシャルグループのIRを見ても、確かに当初30億ドルを予定していた普通株での出資はなくなり、転換型優先株の転換価格も25.25ドルまで引き下げられていますが、(株価は10ドルを割れていた!)、粛々と約束した90億ドル(一兆円以上)を支払い、取締役1人の派遣だけでひたすら舞い上がっていたとしか思えません。

 私は断言できる。この混乱の最中に一兆円以上使うのなら、Morgan Stanleyの全部を取れていたはずです。そしたらどうやら三菱UFJサイドの最大の目的のようであった取締役の派遣も、1人でなく何十人でも派遣でき、社長まで派遣できたのです。

 その直後の平成20年11月と、そのあとの平成21年11月の三菱UFJフィナンシャルグループの増資に際し、早速、海外分の主幹事をMorgan Stanleyにお願いし、巨額の手数料を支払ったのですが、(繰り返しですが、海外分はヘッジファンドが勝手に買ってくれるので、何の営業努力もいりません)、現在至るまでMorgan Stanleyに一兆円以上を差し上げたお返しと思われるメリットは何も得られていません。せめてもの慰めは、Morgan Stanleyの株価が、転換価格をかろうじて上回っていることぐらいです。
そういえば、そのころのMorgan Stanleyの日本法人の取締役会長は元住友銀行副頭取の堀田健介氏でした。(住友の天皇と言われた堀田庄三氏の息子)さすがに、現在は辞任されているようです。

 ところが、書きましたように三菱UFJフィナンシャルグループは、その後2回の増資で1兆4000億円以上を調達しているのです。半分は海外ですが、それとてヘッジファンドがいろんな形でとっくに売却している筈なので、ほぼ全額、日本の株式市場から出ているといえます。本来は日本経済に貸し出しの増加等を通じて資金を供給し、結果株式市場にその一部が回ってくるために、重要な働きをしなければならない三大メガバンクをはじめとする日本の銀行が、実際は貸出しを減らし続け、結果ただでさえも細ってしまっている株式市場から、リスクマネーを大量に吸収し続け、メガバンク筆頭の三菱UFJフィナンシャルグループに至っては、株式市場から吸い上げた資金から一兆円以上もMorgan Stanleyにプレゼントし、取締役1人だけやっと得たのです。

 思わぬ長文になってしまったので、この辺で終わりにしますが、これ以外にも銀行に言いたいことは山ほどありますので、また紹介したいと思います。日本経済、いや日本全体が良くならない最大の原因は、銀行組織と官僚組織にあると思います。その辺をヒステリックにではなく、事実のみを挙げて皆さんに紹介していきたいと思います。さしあたって次回は官僚組織について、いろんな角度から紹介していきます。まずは今騒がれている検察庁あたりから始めたいと思います。

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