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中国工商銀行と理財商品

2014年01月28日

中国工商銀行と理財商品


 日経平均やアルゼンチン・ペソの行方も気になりますが、やはり地理的に近いこの問題にしました。

 中国最大の中国工商銀行が販売した約30億元(510億円)の信託商品(理財商品)が、期限の1月31日に償還される目途が全く立っておらず、信託商品(理財商品)初めての大型デフォルトとなる可能性があります。

 問題の信託商品は2010年に、山西省の石炭会社・山西振富能源集団向けの資金を調達するために中誠信託有限責任公司が組成したものです。ところがこの山西振富は銀行免許を持たずに預金を集めたとして2012年に副董事長の身柄が拘束され、実質破たんしています。まあ大半の資金が「事業以外に」消えてしまっていたのでしょう。

 つまり「とっくの昔に」デフォルトすることになっていたのですが、騒ぎが大きくなったのは1月17日に中国工商銀行が「資金の返済に責任は無い」と発表してからです。そこから一気に中国工商銀行と、組成した中誠信託と、はては地元の山西省に対して、返還を求める騒ぎが大きくなりました。

 ここで理財商品とは、今回問題になっている信託商品も含めて、通常の銀行業務以外のルートで高利回りをエサに個人や企業から資金を集め、主に地方政府の不動産・インフラ事業に資金を供給するものであり、総残高は8兆元(136兆円)以上もあるといわれています。今回のように中国の大手銀行が堂々と販売しているケースが多いのですが、当然に預金ではないため銀行は元利払いに責任をもちません。

 ところが今回問題になっているケースのように、中国の大手信託会社が組成し、大手銀行が販売しているケース、あるいは今回は当てはまらないようですが資金の受け皿に地方政府が関わっているケースでは、大半の投資家が暗黙のうちに元本や利払いが保証されていると考えており、実際に大きなデフォルトが起こってしまうと総残高8兆元(136兆円)以上もある理財商品全体への信用が揺らぎ、大混乱となってしまいます。

 その引き金が1月31日に引かれる恐れがあるのです。

 1月24日になって、中国工商銀行が「償還に関し一定の責任を負う」とやや歩み寄り、1月28日に投資家に通知すると発表しました。これは中国工商銀行が自行の顧客である富裕層に多く販売しているため、何かしらの措置を取らざるを得ないと判断したのかもしれませんが、いまのところ詳細が全くわかりません。

 また本日(1月27日)になって、中誠信託が「投資家と合意に達した」と発表したのですが、償還の有無を含めてその詳細はもっとわかりません。

 さらに山西省政府が、破綻している山西振富の閉鎖されている鉱山の1つを、投資家への返済のために操業再開を認めたとも報じられています。

 要するに「信頼できる情報が何1つない」ことになります。

 似たケースでは、昨年1月に中信信託(CITICトラスト)が湖北省の鉄鋼会社向け融資を裏付けとした信託商品10億元(170億円)の一部元利払いが3か月遅れたのですが、最終的には地方政府が救済したようです。

 しかし今回の方が、金額も状況も「はるかに深刻」です。

 繰り返しですが、この問題の本質は「何となく保たれている理財商品の危うい均衡が、一気に崩れるきっかけになる可能性をはらんでいる」ことです。

 まあ一党独裁の中国政府としては、救済してしまった方が「はるかに安上がり」で、それなりの利権も維持されるので、今回は国営銀行ともいえる中国工商銀行に肩代わりさせてしまう可能性が強いのですが、問題が後ろに送られるだけです。

 思い起こせばサブプライムローンを含むMBS市場の崩壊は、2007年8月にBNPパリバが傘下の16億ユーロ(当時の為替で2600億円)のファンドを、MBS市場の流動性枯渇を理由に価格算出・解約・返金を一時停止(もちろん永久に停止となりました)したとこから始まりました。

 ところがリーマンブラザーズの破綻を含む金融危機が襲ったのは、そこから1年以上もたった2008年9月のことでした。

 中国の金融市場では、今回は問題を回避できたとしても「引き金は静かに引かれている」ことは忘れてはなりません。


「ブログ速達便からの加筆」

 この記事のアップ直前にBloombergが「新たな投資家と買い取りについて合意したのでデフォルトは回避できた」と報じています。もしその通りならば、記事中で指摘した「政治的判断」が働いたことになり、新たなモラルハザードとなります。


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コメント
いつも拝見しています
はじめまして。
いつも闇株新聞を拝見しています。考察に富んだ記事ばかりでいつも参考にさせていただいています。
中国のシャドーバンキングの問題はいつか表面化するのではないかと思っていましたが、その日は意外に近いかもしれませんね。
やはりでしょうか?
日本国内事情だけで判断すれば株上昇予想なのでしょうが、新興国不安が広がっているとのこと。どうやらその実態はトルコ等ではなく、中国そのものなのでしょうか。
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