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経常収支が赤字でも問題がなさそうな国もあるのでは?

2014年02月14日

 ここのところ日本の経常収支の赤字転落についてばかりですが、考えれば考えるほど奥が深いので、もう1回だけ続けます。

 コメントもいただいているのですが、米国・英国・フランス・オーストラリア・カナダも経常収支が大赤字です。しかし昨日書いたインドなどの新興国とは違い、特に問題があるようにも思えません。

 もう一度、世界各国の経常収支をみてみましょう。まだ2013年の数字が出揃っていないので2012年の数字を使いますが、2013年も基本的には大きく変化していないようです。出典はIMFのWorld Economic Outlook Databases(2013年10月版)です。

 まず経常黒字が大きい国を順番に並べますと、ドイツ(2384億ドル)、中国(1931億ドル)、サウジアラビア(1646億ドル)、クウェート(797億ドル)、オランダ(778億ドル)、ロシア(748億ドル)、ノルウェー(708億ドル)、スイス(707億ドル)、アラブ首長国連邦(665億ドル)、カタール(623億ドル)となり、これが上位10ヶ国です。

 やはり資源に恵まれた国が多く入っています。

 2012年はこの10ヶ国の後に、日本(604億ドル)、シンガポール(514億ドル)、台湾(499億ドル)、韓国(431億ドル)と、アジア諸国が続きます。

 日本の2013年の経常黒字は3兆3061億円で、円安もあり324億ドルまで激減しています。また発表されている2013年のドイツは2146億ドル、中国は1886億ドルで、変わらず1位、2位です。

 一方、経常赤字が大きい国を順番に並べますと、米国(4404億ドル)、英国(938億ドル)、インド(881億ドル)、カナダ(622億ドル)、フランス(571億ドル)、オーストラリア(569億ドル)、ブラジル(542億ドル)、トルコ(477億ドル)、インドネシア(240億ドル)、南アフリカ(240億ドル)となり、これが上位10ヶ国です。

 確かに「特に問題がある新興国5ヶ国」がすべて入っており、総じて2013年も改善していません。

 最大の経常赤字国は米国ですが、ピークの2006年は7984億ドルもあったため、リーマンショック後の世界経済の減速で「かなり減少」していることにはなります。

 もちろん米国は基軸通貨国なので、ドル紙幣も米国国債も「それ自体に価値がある」と考えられ、乱暴な言い方ですがそれらを輸出に含めれば均衡していることになります。

 英国は元基軸通貨であるポンドがドルと同じように考えられているのではなく、ロンドン(シティ)を中心にドル経済圏が確立しているため、やはりドル紙幣や米国国債を輸出して均衡しているとも考えられます。

 しかし「円」は基軸通貨ではないため、円もしくは日本国債を輸出して均衡させることはできません。支払代金として円は「限界的」にしか受け入れられないため、経常収支も資本収支も赤字になってしまうと、いくら国内に円が有り余っていても対外取引に使える外貨(主にドル)が不足してしまうことになります。

 さて問題はカナダ、フランス、オーストラリアです。

 オーストラリアは大変に地下資源に恵まれた国です。それでは何で経常赤字なのでしょう? 特にオーストラリアは30年くらい遡っても「ずっと経常赤字」です。それでもオーストラリアが経済危機だとは聞いたことがなく、オーストラリア・ドルも資源通貨やリスク通貨の代表として活発に取引されており、経済危機で急落したこともありません。

 もっと不思議なのがフランスで、年間8000万人と世界最大の観光客を受け入れているにもかかわらず巨額の経常赤字です。ユーロを使用しているので通貨の急落はありませんが、かといって経済危機といわれたこともありません。

 簡単に考えるとオーストラリアとは、国土に眠る豊富な地化資源を「昔も今も変わらず」評価していることになります。問題国に転落した南アフリカでは、資源が枯渇してコストが上昇しているのですが、オーストラリアはまだそういう状態ではないのかもしれません。

 フランスは、その歴史的かつ文化的な存在感と、ドイツと並ぶユーロ圏の中心国としての役割が評価されているのかもしれません。またカナダも、まだ枯渇していない資源と、米国経済との連動性が評価されているのかもしれません。

 この辺りを考えていくと、経常収支の赤字転落に備えて日本が取るべき道がみえてくるような気がします。直感的には「異次元」金融緩和で金融抑圧を引き起こし、ひたすら円の価値と収益力(国債利回り)を下げてしまうことは「最もやってはならないこと」のような気がします。

 引き続き考えますが、次回は別の話題にします。

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コメント
オーストラリアは通貨切り下げしてます
経済危機による通貨急落はないとのことですが、
過去に2回も突然の通貨切り下げを実施している
はずです。
高金利通貨として人気の国ですが、切り下げで迷惑した
投資家も多いと思います。
「円は基軸通貨ではないため云々」という理屈はこの種の批判で使われる常套句ですが、この理論で行くと、日本は経常収支の赤字を今後拡大できない、もしくは長期にわたる継続的な赤字の垂れ流しは不可能という意味でしょうか。少し基軸通貨の意味を取り違えているように思います。
不思議というか…

経常収支(貿易収支)が赤字でも別に貧しくなんかならないし何の問題もない、というのが18世紀ごろにさんざんアダム・スミスが指摘したこと(国富論は「貿易赤字プギャー」の重商主義の素朴な感覚がいかに誤っているかを指摘した書)だと思うのですが、21世紀に入っても独学では同じ過ちを繰り返すということではないでしょうか。
問題のある国々の農業大国という側面を考慮に入れれば、答えはより簡単ではないでしょうか。
現状の日本には、資源も、国際競争力はおろか、自国民を養える農業もありませんから。
 いつも楽しみに見ていますが、今回のは悪くなるような理由を探してるような不自然さを感じてしまいました。
 今、経常収支を支えているのは海外資産による所得収支なので、円安でいい流れなのではないでしょうか?
 又、貿易収支は円高による企業の海外流出を国内回帰させるためにも、円安基調はしばらく続けるべきと考えます。
勘違いです
情報を頂いたので、読みました。
赤字=悪、黒字=善ではありません。貿易黒字は不況で増えます。

「経常赤字=日本の海外投資<海外の日本投資」ですから、富が流出ではなく、海外からの投資が日本に入ってきている状態です。

ですから、日本の外貨の取り崩しなど、1円たりともありません。日本の対外資産50と海外の対内資産30で、海外純資産20のところ、経常赤字2というのは、51と33になって、対外純資産が18になると言うだけで、日本の対外資産が減るわけではありません。

詳しくは拙著「高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」(第7刷以降が、最新の国際収支金融赤字=経常赤字が載っていて便利だとお思います)か、ブログ「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」を参照下さい。
(日付別のコメントに対しての回答ですので、内容は一緒になっております)


ご意見ありがとうございます。


 本誌も経済理論はしっかり勉強したつもりですが、長く国際投資・マクロ取引に携わった結果、普遍的に通用する経済理論は無いと確信しています。長い経験から1つだけ得たアプローチは「相場は常に正しいもので、その時点で有効な経済理論を出来るだけ早く探し出して、あるいは時流に乗るようにアレンジして、次の変動に備える」で、本誌や有料メルマガも、その観点から書いています。

 つまり理論から相場を考えるのではなく、相場から「その時点で通用する理論」を見つけ出すわけで、当然に本誌の主張も時とともに変化しており、間違っていたこともあります。

 ご指摘の金融緩和と量的緩和ですが、本誌も昨年後半まで「全く同じ」と考えていたので、昨年12月の縮小を予想できませんでした。今はその違いを認識しているので、FRBは量的緩和を止めて金融緩和に戻り、その方が長短金利差が拡大して景気刺激効果が大きいと理解しています。

 また経済理論ではなさそうですが、経常収支の赤字はご指摘の通り、日本人の対外資産の増加より、外国人の体内資産の増加が大きい状態です。外国人の対内資産が増えるということは、日本の資産を外国人が(日本人から)取得していることに外ならず「日本人が国内資産を外国人に売り渡す=日本人全体として貧しくなる」ことになります。まあ表現があまり適当でなかったかもしれませんが、外国人が例え ば日本株を大幅に買い越しても(価格が上昇して日本人の資産が増えることはありますが)、日本人が国内資産を外国人に売り渡していることには違いがありません。

 頂いたコメントには書かれた本の紹介が複数あり、本来は宣伝になるのでコメントの承認ができないのですが、せっかくですので掲載させていただきました。
(多数の宣伝広告がきてしまうからです)
外国人が日本資産を購入すると日本人が貧しくなる?経済学をきちんと学んだ方がいいです。今のままではトンでも論文です。
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