闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

オリンパス事件の光と影 その9

2014年04月11日

オリンパス事件の光と影 その9


 今回は、書きかけの「指南役」裁判(2件)は少しお休みして、昨日(4月9日)IRされた6信託銀行の損害賠償請求についてです。

 オリンパス事件による株価下落で損害を被ったとして、三菱UFJ、日本マスタートラスト、日本トラスティ・サービス、資産管理サービス、野村、ステート・ストリートの6信託銀行が、総額279億円の損害賠償請求訴訟を7日に提起しました。

 これらの信託銀行は海外投資家や国内の年金などから株式の管理を委託され、株式の名義人にもなっています。日本マスタートラスト信託の主要株主は三菱UFJグループと日本生命、日本トラスティ・サービス信託は三井住友トラストとりそな銀行、資産管理サービス信託はみずほグループと第一生命と、見事に「棲み分け」ています。

 日本の金融商品取引法では、有価証券報告書の虚偽記載など会社の不正で株価が下落した場合、会社側の悪意の有無にかかわらず「ほぼ無条件」で損害賠償請求が認められます。これは日本の株式市場にとっては大きなリスクで、民主党政権時に見直しが検討されたのですが政権交代で立ち消えになってしまいました。

 これでオリンパスに対する損害賠償請求は合計17件・856億円となったようですが、そのうちテルモの66億円の請求は昨年11月に60億円で和解しています。また同じ頃に請求されていた海外投資家2件・376億円の請求に対しては110億円の引当金を積んでいますが、テルモとの和解から考えて「不十分」と思われます。

 判例では損害賠償金額は、株主の取得価格から売却価格を引いた金額(つまり売却損)と、当該裁判(オリンパスなら有価証券報告書の虚偽記載に対する裁判)の結審時における評価損の合計となっているようです。ただオリンパス事件では結審時にほとんど株価が回復していたため、持ち株を681万株から123万株減らしただけのテルモとの和解額が60億円というのは腑に落ちません。テルモは取得価格の2200円に対して4800円も売却損を出した計算になるからです。

 今回請求を提起した6信託は、事件発覚直前の2011年9月末にオリンパス株式を合計で6000万株以上保有しており(オリンパスの有価証券報告書から)、直後の2012年3月末までに3000万株前後を処分していたようです。その間に株価が発覚直前の2400円台から瞬間安値424円まで急落し2012年3月末でも1300円台だったので、それぞれの取得コストは不明ですが請求金額の279億円は「妥当」で、ほぼ全額が認められるような気がします。

 オリンパスの2014年3月期決算予想では、「不可解な」テルモとの和解金の60億円と、海外投資家2件(1件がシンガポール政府関係のはずです)の請求376億円に対する「不十分な」110億円の引き当てを計上しているだけです。それに加えて2月8日に再生医療業務撤退にかかる特損を150~190億円と見積もり、純利益が最大40億円の赤字になる業績下方修正をIRしています。ただし営業利益は725億円、経常利益は500億円と予想を据え置いています。

 現時点では今回の6信託銀行の279億円を含めて合計442億円の損害賠償請求が全くの「未処理」で、「不十分」と思われる110億円の引き当てでは足りない分と、2011年9月末現在の筆頭株主である日本生命(2242万株から900万株ほど処分しています)からも今後請求される可能性もあるため、さらに数百億円もの負担が発生しそうです。

 それにいつも書いているように、米国と英国の司法当局から「巨額罰金」を課される可能性があります。これらは全く手加減してくれないため「とんでもない巨額」になるような気がします。

 このシリーズで何度か書いたのですが、オリンパスは自身と菊川元会長らの裁判では「全く戦わずに全面的に非を認めて7億円の罰金」を支払い、またウッドフォードの労働審判でも「全く戦わずに1000万ポンド(当時の為替で12億4000万円)もの追い銭」を支払っています。

 つまりオリンパスは今後の損害賠償請求だけではなく、米国と英国の司法当局をはじめとする「あらゆる訴訟と処分」に対し、全く「戦えない不利な状況」なのです。

 海外では株主だけでなく政府の司法当局まで今後はオリンパスを徹底的に攻めてくるはずですが、日本の証券当局は「あからさまな」インサイダー取引のゴールドマン・サックスさえも全く素通りしてしまいました。

 2月26日付け「本シリーズ その2」に詳しく書きましたが、その確信的な売り崩しで株価が発覚直前の2400円台から海外投資家のロスカットも巻き込んで1か月弱で400円台になってしまい、その損失が損害賠償請求となってこれからオリンパスの株主資本を毀損させることになります。

 ゴールドマン・サックスとか(金融ではありませんが)ノバルティスなどは、これほど旨味のある日本市場から出ていくはずがないため「驚くほど巨額の罰金や課徴金」を課すべきだと思うのですが、まあ何もやらないのでしょうね。

 さて来週は、佳境に入っている「指南役」裁判(2件)の最新状況です。


Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:2 | TrackBack:0
関連記事
コメント
「新羅を愛し忘れるな」
「東学党戦争と日本」「韓半島から見た女真契丹
文化」「木戸幸一側近日記」 最近読んだ書籍です。
監査法人も
関係筋によると、当初の訴状ドラフトには入っていたはずですが、訴状入っていませんね。音頭をとったのがどこかも不明ですね。原告代理人は長島大野だとか。相当の修羅場があったと思われます。投資顧問の親会社の金融機関の監査降りるなど、おそまつなやりとりがあったはずです。あずさ監査法人も新日本有限責任監査法人も金融庁から業務改善命令を一応うけていますから、民事責任を問わない方が信託銀行や投資運用業者の受託者としての責任が問われかねません。 米国ではありえません。共同提訴にのらなかった運用会社が監査法人含めて提訴に踏み切るのかみものですね。
コメントの投稿
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2017年09月 | 10月
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム