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「議決権だけを集めて経営陣と対話する」再生ファンド?

2014年05月20日

「議決権だけを集めて経営陣と対話する」再生ファンド?


 キーストーン・パートナースなる企業再生ファンドが、信託銀行を介して個人株主など多数の株主の議決権を束ねて発言力を確保する新たなスキームを開発したとの記事が、先週(5月14日付け)の日本経済新聞に「小さく」出ていました。

 なんでも第1号として東洋炭素(東証1部上場・コード5310)の株主から約17%の議決権を集め、臨時株主総会の開催を求めているようです。

 確かに昨年10月11日付けでキーストーン・パートナースから大量保有報告書が提出されており、創業者の家族と思われる2名とその資産管理会社らしき1社から合計で約340万株(発行済み株数の16.39%)の議決権行使を委任されているようです。

 しかし本誌が理解する限り(違っていれば指摘していただきたいのですが)、議決権とは株券所有者に帰属すべきもので、そもそも別々の概念ではないはずです。本件では委託者が株券を受託者(信託銀行)に信託するとともに、当該株券の議決権の行使等についての受託者に対する指図について、委託者がキーストーン・パートナースに包括的に委託することを内容とする契約が存在します(変な文章ですが大量保有報告書に記載された通りです)。

 釈然としませんが、これでキーストーン・パートナースは当該株券を所有することなく(金銭的負担を負うことなく)議決権を「所有」していることになります。大量保有報告書にも、はっきりと「保有株券等の数」として340万株と記載されています。ここで株券「等」となっているのは新株予約権のことで、議決権だけのことではないはずです。

 この創業者の家族間に東洋炭素の支配権を巡る争いがあるのかは不明ですが、創業者の家族は株券所有にかかる経済的利得を一切喪失することなく、さらには(ここは推測ですが)議決権行使をプロ(のようです)に委託することにより東洋炭素の現経営陣に圧力をかけ、株価上昇などの追加利得が期待できることになります。

 一方でキーストーン・パートナースは委託者から基本報酬のほかに、株価上昇などの追加利得に対する成功報酬を受け取る仕組みのはずです。

 本件では東洋炭素の経営権(支配権)まで左右できる議決権ではないものの、臨時株主総会を招集しているようで、現経営陣に対して「それなりのプレッシャー」を与えることになります。

 しかしこの株券の所有権と議決権の関係を「あいまい」なままにしておくと、とんでもないことができてしまう可能性があります。

 つまり「大変に少ない金額で上場会社(正確には株主総会)を支配できてしまう」ことです。技術的には簡単です。

 ちょうど株主総会の季節が近づいています。3月決算の上場会社は、3月31日現在の株主に対して6月上旬に議決権行使書を送付し、6月下旬に株主総会を開催します。

 議決権の1%以上(あるいは300個以上)を6カ月以上保有する株主は、株主総会に議案を提出することができます(提出は当該株主総会開催日の8週間以上前まで)。
 
 そこに自分を含む複数の取締役候補(総取締役数の過半数となる人数)を提案しておきます。

 例えば株価が1株=200円の会社として、議決権だけを(実際には株主が捺印した議決権行使書そのものを)1株分=10円で買い集めて、株主総会の出席者(議決権行使書の郵送分も含む)の半分以上の議決権を確保すると、その上場会社の取締役会を(実際は会社そのものを)支配できてしまうことになります。

 当初の1%を別にすれば、株券を買い集める資金の20分の1で上場会社が手に入ることになります。

 株主にしてみれば株券の所有者であることは変わらないので、株券の価値や値上がり益や配当が失われる心配はありません。また株主総会の基準日(3月31日)は過ぎているため議決権行使書(だけ)を売り払ってしまっていても、株券は好きなときに売却できます。

 つまり株主にとっては経済的損失は何もなく、議決権行使書の売却代金の1株分=10円は「臨時ボーナス」になり、価格はともかく「簡単に売却」してしまうはずです。

 実際には安定株主がいるので簡単ではありませんが、議決権(正確には捺印した議決権行使書そのもの)が独り歩きして流通し始めると、上場会社にとって「大変に厄介なこと」になってしまいます。

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コメント
naked voting rights
株式の経済便益と議決権を分けてそれぞれに強いインタレストを持つ主体が別々に保有するスキームは米国で盛んですね。

アクティビストのペリーキャピタルがこのNaked voting rights を活用して己の risk arb のポジションに便宜を図ったりして問題になってます。

あと、某外食チェーンのカリスマ経営者の死後、その持株をヘッジファンドとなんちゃってバイアウトファンドとがそれぞれを分け合って持ってましたね。

これがまかり通ると実質的には黄金株上場の解禁になるので、何らかの手立てが必要でしょうね。
有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」の質問コーナーに、この記事に関するご質問がきていました。有料メルマガは週一回(月曜日)の配信なので、ここでお答えしておきます。

ご質問は、議決権だけを「売却した」株式を第三者に売却すると、その株式は議決権のない株式なのか?ですが、この記事の後半に書いた「議決権行使書」だけを仮に第三者に「売却」しても、それはすでに3月末に発生していた議決権行使の権利だけで、株式の所有権や配当を受ける権利などは一切損なわれません。

その株式を後に第三者に売却しても、その購入者がその後に送られてくる議決権行使書を新たに第三者に売却しなければ、株式所有の経済的権利も議決権行使の権利も、すべてそのままで株式としての違いはありません。

またキーストーンに委託した株式は、議決権の行使を契約書で委託しているため、その契約を破棄しない限り売却できません。もし黙って売却してしまえば「議決権を永久に行使できない瑕疵株」になってしまいます。


闇株新聞編集部
 よく分からないので、教えて下さい。
大前提:株式の内容は平等でなければならないから、自益権と共益権は分離出来ない。そこで

パターン1.信託的譲渡と考えると
 法形式は譲渡(所有権移転)であり、実質は賃貸借(無名契約?)。つまり権利は全て譲受人に移転していると考えてよい(実質は債権に止まる)。そうすると会社は譲受人を権利者と扱えば足り、さらに譲受人のなした株式の処分(さらに第三者に株式を譲渡するなど)は有効。譲渡人は譲受人の債務不履行責任を問いうるに止まる。株式配当等は不当利得として返還義務。但し、信託的譲渡に対して背信的悪意の者に対しては返還請求が可能な場合も。
パターン2.単なる議決権の代理行使権の付与なら
 代理人は委託の趣旨に反しない限度で裁量権を以て共益権を代理行使出来る(但し、代理人自身も株主の場合に限る定款がある場合が多い)。あくまで株式の権利者は委託者。

 今回は1のパターンと見えるので、キーストーン・パートナースを完全な株主と扱うことで問題は無いように思うのですが、これ以外のパターンなのでしょうか?
 素人なので混乱しています。
以前の事業再生ファンドと違う?
PIPEsファンドの一種ですかね。金融危機後、中小企業向け事業再生ファンドを提供していた会社です。今日参院で話題になっていたプラザアセットマネジメントの以前の親会社だったCSKの元執行役員の方が立ち上げたようです。

第1号ファンドは、銀行借り入れが困難な中小企業に有担保で資金を貸し付け、債権を回収する仕組みで、年金基金を中心に地銀、三菱商事から100億円近くを集めたのを記憶してます。債権の評価が妥当なのかなど様々な論点がありそうです。うまくいかなかったのか、コンセプトまったくちがいます。経営陣が総入れ替えになったのでしょうか。海外では同種のサービサーファンドは、債権回収が予定通り進まず、破綻するケースもみられましたが。
すぐやるゾウ様

キーストーンは信託形式をとっていますが委託内容は議決権の行使だけで、そういう意味では代理行使権の付与に近いと考えられます。したがってキーストーンを株主として扱うことは大変に問題があり、キーストーンにもその自覚はないはずです。

闇株新聞編集部
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