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エクイティファイナンスの裏側-----儲けたのは誰だ? Part1

2010年10月14日

 私は、長く上場企業のエクイティファイナンスに関わってきました。もっぱら大手証券会社に相手にされなく、また銀行にも相手にされないような上場企業に対し、唯一の特権である株式発行により数多くの上場企業を生きながらえさせてきました。しかし、その努力(別に私一人のと言うつもりはないのですが)にもかかわらず、こういった企業に対するエクイティファイナンスは、常に怪しい目で見られ、常に当局の調査の対象とされ、目の敵にされてきています。

 今日はここで、皆さん誰でも公明正大に行われていると思われている大手企業(超大手企業と言ってもよい)のエクイティファイナンスの実情について書いてみたいと思います。別に法律違反があるわけではありません。しかし法律の範囲と言っても、皆さんが知らないとんでもない話があるのです。三回に分けてお話します。だんだんとんでもない話になっていきます。まず最初は(従って、一番とんでもなさが少ない話)東京電力の最近の公募増資についてです。

 本年9月29日の引け後、東京電力が大型の公募増資を発表しました。その時点で発行済株数が20%弱増えて、約5549億円の資金調達になると言われていました。また東京電力の増資は1981年以来29年ぶりのことでした。
 発行される株数が上限2億5415万株で、これはそれまでの発行株数13億5286万株の約18.8%に相当します。発行価格は10月12日に決められて当日引け値1900円の3%引きの1843円となりました。野村証券を主幹事とする幹事団は、さらにその4%引きの1767円を東京電力に払い込みます(払い込み価格)。
 増資が発表された9月29日の前の週は、株価はおおむね2350円程度で推移していました。つまり増資前の時価総額は3兆1800億円ほどありました。また一日の出来高は約500万株程度でした。
 ところが、9月29日以降は、出来高を伴って下落し値決めの10月12日には1900円まで下がりました。また9月29日から10月14日までの出来高累計は2億3000万株(今回の発行株数にほぼ等しい)、一日平均2100万株と急増しました。 

 つまり

① 増資完了後の時価総額は3兆500億円ほど(16億707万株の1900円)と、何と増資前の3兆1800億円から減っています。

② 東京電力も調達額は当初予定の5549億円ではなく4469億円程となっています。(東京電力自身のIR発表による)。実に1100億円近く目算が狂っているのです。しかも東京電力は一株=60円の配当をしている為、152億円程の配当負担増となります。これは調達額4469億円のコストが3.4%ということになります。これを社債発行で賄えば、たぶんコストは1%程度で済んだはずです。

③ 募集価格(1843円)と払い込み価格(1767円)の差額76円が証券会社の取り分のため、上限2億5415万株だと取り分が193億円にもなります。

④ 今回は海外分が上限5083万株と比較的少ないですが、このほぼ全額はヘッジファンドが海外で借株をして売却しているはずです。平均1950円で売却していたとしても、そのもうけは54億円となります。考えてみても海外の機関投資家が日本の電力会社の収益力や成長性を評価しているはずがありません。海外分のほとんどすべてがサヤ抜き専門のヘッジファンドと見て間違いありません。さらに言うと、証券会社はプリマーケティング(事前需要調査)と称して、正式発表以前に、あくまでも仮にという話ではあるのですが、ヘッジファンドに打診します。この時点でヘッジファンドは借株を手当てして売却も始めます。そうなると2300円台での売却が可能だったと思われます。東京電力に限らず、海外での販売の実態はこんなものです。

⑤ 残る国内分の約2億株の内にも、前から保有している東京電力株をあらかじめ売却して、新たに1843円で買った投資家もいるはずです。あるいは10月8日に終わる週に東京電力株の信用売り残が1200万株も増えているため、あらかじめ信用で売り建てて増資の新株を購入して決済する投資家もあるようです。いずれにしてもかなりの利ザヤはとれているはずです。その間の出来高が2億3000万株もあったため、これらの売り物を吸収できたわけです。

 別に他人の懐勘定をしているわけではなく、これは東京電力の株主(ヘッジファンドを除く)のためにも、東京電力自身のためにもなっていません。また、今回新たに東京電力株の新株を手に入れた投資家にしても、今までよりも随分安い価格で購入できたかもしれませんが、東京電力の企業価値が今回の増資で薄められてしまったため、その価格は安いわけではなく、まさに「時価」で取得しただけのことなのです。

 つまり、今回の増資は確かに巨額の資金が集まったように見えるのですが、実際は豊富な流動性を利用したサヤ抜きがかなり多く、本当の意味のリスクマネー(注)が入ったわけではないため、結局、時価総額は逆に減ってしまっているのだと思います。

 ただ東京電力の場合、今回の増資では海外分を比較的少なくしたのと、幹事団に外資系が入っていない(三菱UFJモルガンスタンレーは入っています)ことなどから、それほどとんでもないとは思いません。次回は、もっととんでもない邦銀のエクイティファイナンスや、大手企業の新株予約権付社債のことを書きます。

(注)リスクマネーとは、本当に株式市場でリスクを引き受けようとする資金。今回の増資で本当に東京電力の将来に期待した資金が新たに十分入っていたなら時価総額はその分増えているはずです。結局、仕組みで儲けようとする投資家が多かったため、新株自体は売りに出されないものの、形を変えた売り圧力となったのです。

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