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雪国まいたけの「奇怪」なTOB  その3

2015年03月06日

雪国まいたけの「奇怪」なTOB  その3


 今週は雪国まいたけばかりになってしまいますが、まだまだ書きたりないことがたくさんあるため3日連続の登場となりました。

 雪国まいたけを巡る一連の報道では、創業者である大平喜信氏の経営ではコンプライアンス上の問題が多く、その大平氏が再び経営に関与することを防ぐためにベイン・キャピタルがTOBで傘下に入れることは「好ましい」との見方が一般的です。というよりも日本の株式市場「浄化」のために喜ばしいと「称賛」する報道まであります。

 大平氏の経営がコンプライアンス上の問題があったことは事実のようですが、かといってそれで雪国まいたけをベイン・キャピタルに売り渡してよいかどうかは、全く「別問題」のはずです。

 ベイン・キャピタルなどの投資ファンドの買収手法については、昨日・一昨日とさんざん書いてきたので詳しくは繰り返しませんが、要はわずかな自己資金だけで雪国まいたけの手元資金や今後の現金収入まで使って完全に支配下に入れ、その後の再上場益や高値での転売(ライバルのホクトなどへ)による収益を独占してしまうものです。

 日本の株式市場が、あまりにもコンプライアンス、コンプライアンスと大騒ぎしていると、このような外国ファンドによる「とんでもない買収」が続発することになります。

 また創業者や大株主からの影響を逃れて「気ままに経営したい」と考えるサラリーマン経営者が、同じように外国ファンドに駆け込み「とんでもない買収」をしてもらうケースも続発することになります。2014年7月18日付け「ローランドMBOを考える」にその典型例を書いてあります。

 聞くところによると東京証券取引所も雪国まいたけに、大平氏が再び経営に関与することになれば「上場廃止にする」とまでいっていたようで、東証も間接的にベイン・キャピタルの「とんでもない買収」を後押ししていることになります。

 同じように話題になっている大塚家具が、「このように親子間で支配権争いをしているとコンプライアンス上の問題があるので、外国投資ファンドの傘下に入ることにしました」と発表すれば、誰もが「そんなバカな」と憤慨するはずですが、実はあまり大差のない話となります。

 さて今回のTOBは「とんでもない買収」であるほかに、手続き上に重大な疑義があります。昨日は「基準日」の設定に関する重大な疑義を指摘しましたが、本日は明らかな「インサイダー取引」であるところです。

 雪国まいたけが2月24日にIRした「株式会社BCJ-22(ベイン・キャピタルが設立した買付会社)による当社株券等に対する公開買い付けに関する意見表明のお知らせ」には、大平氏と資産管理会社の保有株式に設定した担保権を行使した金融機関は第四銀行だけではなく、りそな銀行、あおぞら銀行、北越銀行、大光銀行、みずほ銀行の計6行で、その持ち株を合計すると51.44%の保有割合になります。

 そのうち50.41%が2月23日に担保権を行使して取得した株数ですが、それでTOB成立のための最低株数が51.44%となっていたわけです。

 さてこれらの6行は2月20日付けでベイン・キャピタルと本件TOB応募予約契約を締結していると「はっきり」と書かれています(本IRの18頁目)。

 さらに2月23日にこれらの6行は大平氏と資産管理会社の株式に設定された担保権を行使し、翌24日に本担保権実行株式を取得しているとも書かれています。ところがベイン・キャピタルがTOB実施「予定」で雪国まいたけが提案を受けて「検討」しているとのIRは2月23日付けで、雪国まいたけが「賛同」を取締役決議したのが翌24日です。

 ここでTOBの正式発表が2月23日なのか24日なのかには議論の余地があるとしても、2月20日時点では完全に未発表情報つまり「インサイダー情報」であり、これらの6行がこの「インサイダー情報」をもとに雪国まいたけ株式を(担保権を行使して)取得した明らかな「インサイダー取引」です。

 投資家が未公表のTOBでも保有株式をそのTOBに応募する契約を行うことは何ら問題ではありませんが、それをもとに株式を取得すれば真っ黒な「インサイダー取引」となります。その合計株数が過半数の50.41%もあることになります。

 じゃあベイン・キャピタルが「明らかなインサイダー取引で取得された株式をTOBで取得する」と何か問題があるのでしょうか?

 釈然としませんが、TOB成立には何の問題もありません。

 今回は東証なども含む日本の当局がベイン・キャピタルによる「とんでもない買収」を推奨しているフシがあるため、これらの6行の真っ黒な「インサイダー取引」も全く問題にならないような気がします。

 これがコンプライアンスを何よりも重視する日本の金融行政なのです。


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コメント
「知りたる者同士の市場外取引」(法167条5項7号)とかではないのでしょうか。
appreciation
ありがとうございます。
すみません
先ほどのコメントですが、特別にこの記事に関する感謝の意ではございません。
日々の貴殿のご活動に対する謝意でございます。
私自身は、現在は何の力もございませんが、いつの日か何かしらの貢献をしたいと希望している者でございます。
いつもいつも、ありがとうございます。
「いつも読んでます」さんが仰る通り、クロクロ取引によりインサイダーの適用除外にしたという整理かもしれませんね。銀行と大平さんの交渉過程の中で、返済に応じないなら担保権行使によりTOBに応じる旨の情報共有があったのかもしれません(これはこれで機密情報管理の観点から別の問題もありますが・・・)
問題企業の内輪揉めはよくある話ではありますが、第四銀行のインサイダーはとても興味があります。
第四銀行は本当にインサイダーのリスクがわかって仕掛けたのでしょうかね?
私見ですが、ベインにそそのかされて今になってインサイダーの疑いに気付いたというところではないでしょうか?(大光、北越銀行であれば尚更)
ベインからしてみればTOBが成立してしまえばインサイダーのリスクは全て第四銀行以下銀行にあり関係ない話な訳で。
また続編期待しております。
担保権の実行による取得は公表後であるためインサイダー取引に該当しない
応募契約の締結は売付け等であって、金商法167条で禁止される買付け等に該当しない(売付け等と買付け等の双方が禁止される166条と異なります。条文をご覧ください。)
ということかと思います。普段の分析興味深く拝見しておりますが、上記のインサイダーの件は単なる誤解と思います。
LBO自体は特段忌避すべきストラクチャーではないと思いますが。。。ノンリコースではありますが、最劣後のリスクを取った上でのリターンかと。。。
金商法の解説を頂いた名無しさんへ

ご指摘の通り金商法167条で未発表のTOBに対して禁じている行為は「買付け」だけです。
しかし本件では、未発表の2月20日に「これから担保権を行使して取得する株数」を含めて応募(売付け)予約契約をしており、当然にインサイダー情報による「買付け」を前提にしています。
またTOBの情報公開が2月23日か24日かも大変曖昧で、24日であれば担保権行使自体もインサイダー取引になります。
当然に6行ともこの辺の法務チェックはしているはずで、条文の解釈によってはセーフであると判断して踏み切ったはずです。たぶん金融庁にも事前に照会して了解を得ているはずで、うやむやのままに粛々とTOBが成功してしまう可能性が強くなります。
これがインサイダー取引でないとなれば、金商法とはいくらでも都合よく解釈できて何でもできてしまう、また逆に何を行っても突然に犯罪者とされてしまう、すべて当局の匙加減ひとつの「大変に恐ろしい法律」であることが改めて確認できてしまいます。

これが本誌が本件を「しつこく」取り上げて主張したい最大のポイントです。


LBOの是非についてコメントを頂いた名無しさんへ

仰る通りですが、本件を含む外国ファンドによるLBO(本件も正確にはLBOです)には、買収者が「勝手に使う」被買収会社の現金および今後稼ぎ出す現金を勘案すると、実質的に買収価格がマイナスか大変に廉価であるケースばかりだからです。
本件はローランドのように「優良会社にさらに現金をつけて(つまりマイナス価格で)謹呈した」ケースには当たりませんが、それでもライバルのホクトや技術がほしい中国企業に売却すれば濡れ手に粟となります。

米国では決してありえないケースです。それでも株価(時価)にプレミアムを払うのだからよいではないか?とも考えられますが、それは実際の会社の価値を株価に反映できない「無能な経営者」がいるからで、それと外国ファンドにマイナスあるいは大変廉価で売り渡すこととは別問題です。
ありがとう
いつも楽しく読んでいます。無料で読ませてもらいありがとうございます

とても参考になります
にほんだいこう
こんばんは

この問題を取り上げるにあたって、
過去にもこういった国内銀行と外資の絡んだ
買収が多数あったのだと思われます

概要でかまいませんので
取り上げてもらえませんでしょうか

国内銀行は果たして銀行としての体をなしているか
わたしははなはだ疑問です
・店頭で宝くじを売るのに熱心
・与信ができないため貸し剥がしをする
・そのためにノンバンクが儲かる
・ノンバンクを買収。高利貸しもするようになる
・暴力団との取引(みずほの件は氷山の一角です)

銀行の規制緩和について
ソフトバンクなど大口の融資先に万一何かあったときに
銀行保有することができるようになるということですかね
その際に銀行は本件と同じように
外資に売却しない保証はあるのでしょうか

行く末に不安を感じます
 インサイダー取引自体が重大なコンプライアンス違反ですね。外資がやることはすべて正義になってしまうから困ったものです。
担保権の実行は株式の「買い付け」にはあたらないと思いますので、本件はインサイダー取引には該当しないのではないでしょうか。
適用除外では?
いつも楽しく拝見させていただいています。

雪国まいたけのTOBにかかる、第四銀行のインサイダー疑惑ですが、金商法167条の適用除外にあたるのではないでしょうか。

公開買付であるため、166条ではなく、167条のインサイダー規制が適用されるはずです。
ベインキャピタルの取締役会との契約があるのであれば、応援買付として適用除外のように思います
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