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金融抑制の弊害

2011年05月19日

金融抑制の弊害


 金融抑制(financial Restraint)についての議論が、米国で活発になってきています。

 金融抑制とは、「金利の上昇を直接・間接な方法で押さえ込むこと。そのために国内で国債の引き受け手を作ること」で、極端に言えば政府の歳入不足を、金融市場を通じて穴埋めすることです。

 似たような言葉に金融抑圧(Financial Repression)がありますが、こちらのほうは国内の産業保護などのために政策的に金利を低くすることで、金融抑制とは違います。
 
 金融抑制とは、まずFRBが市場から国債を買い入れるなど、金融政策として進めることもあるのですが、それ以外にリーマンショック以降、米国機関投資家や商業銀行が国債保有高を3割から5割も増やしているなど、自然な市場の動きを指すこともあります。
 
 結果的に、巨額の財政赤字を出し続けながら、米国長期国債(10年)の利回りは3.1%台と低めに維持されているのです。
 
 リーマンショック以降の超金融緩和で、米国のマネタリーベース(現金プラス中央銀行預け金)は8000億ドル台から直近の2兆2000億ドル台と2.5倍に膨れ上がっています。
 
 しかし、これだけ資金を供給しても米国内のマネーサプライ(M2)は、リーマンショック直前の年率8%の増加から、やっと4%程度の増加までしか回復していません。
 
 つまり、貸し出し等の経済活動を活発化させる方向に資金が思うように行かず、その分、国債投資が増えているのです。
 
 その理由は、経済活動が思ったほど活発にならないため、機関投資家としては株式への配分を少なくして国債投資を増やし、同じような理由で商業銀行は貸し付けを増やさず国債投資を増やしているのです。

 なんだか、日本の金融情勢のことを言っているようですが、米国では早くもこの金融抑制の弊害が叫ばれてきているのです。バブル期以降の日本の金融政策の失敗を米国がよく研究していることもあります。
 
 なぜ、経済にとって悪いかというと、国民はインフレ率を十分にカバーする投資機会を奪われで、実質的に資産が目減りしていくことになり、銀行や年金も安定運用を強いられるために、国債の引き受け手に組みこまれ、それ以外の収益機会を奪われるからです。
 
 つまり国民経済からみて、成長が阻害されることになり、好ましいことではないのです。
 
 米国最大の債券ファンドのPIMCOは、国債残高をゼロにしてしまったようです。国債利回りは人為的に低く押さえ込まれているので魅力がないということです。
 米国の第二次量的緩和(QE2)は予定通りに6月で終了するようですが、FRBがすでに保有している国債や住宅ローン担保証券が償還を迎えると、国債で再投資するようです。
 
 5月13日の「下がり始めた米国長期金利は要注意のシグナル」でも書きましたが、FRBが国債などを買い入れているときは長期金利が上がり、終了すると長期金利は下がるもので、今回も下がり始めているのです。
 
 これは、米国の金融抑制が、金融政策による直接的な金利引き下げ(つまり量的緩和)や、機関投資家や商業銀行による安定運用志向に加えて、景気が落ちれば更なる量的緩和があるはずという期待感・安心感が、すでにビルトインされていることになります。

 これでは、ますます米国内が安定志向になり、景気がいつまでたっても本格的に上向かず、長期国債金利が長期にわたって低く維持され、まさに日本のようになってしまうリスクが出てきているのです。

 金融抑制に関して大先輩である日本では、1990年代の半ばから、大量発行で国債が暴落すると常にいわれてきましたが、確かに国債残高は想定以上のペースでつみあがったものの、長期国債(10年)利回りは、いまも1.1%台なのです。

 一方、全国銀行の集計で、預金残高がここ10年で100兆円も増えて570兆円ほどになっているのですが、貸付残高は逆に50兆円減って410兆円程度なのです。その差額で全国銀行は120兆円以上の国債を買っているのです。

 ここ10年以上の長期にわたる金融抑制の結果、銀行は安定志向で貸付を引き揚げて産業界を疲弊させ、低金利の国債運用を増やして国債金利を自ら引き下げ、預金金利を引き下げて(というよりほとんどゼロにして)預金者の収益機会を奪い、結果、日本経済が疲弊しきってしまったのです。

 ここで、日本の轍を踏まないように、米国がどう対処していくのかが非常に興味が持たれます。そしてそれを、遅まきながら日本でも真剣に検討しなければならないのです。

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