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石油を巡る日本とイランの「浅からぬ因縁」

2016年01月19日

石油を巡る日本とイランの「浅からぬ因縁」


 1月16日に対イラン経済制裁が解除されました。2015年7月の核合意での取り決めをイランが履行したと確認されたからですが、そもそもこの合意とはイランに対して実質的に「小型でゆっくりなら核を製造してもよいですよ」と言っているような内容です。

 IS(自称・イスラム国)の脅威に怯えるオバマ大統領が唯一ISと対等に戦えるイラン革命防衛軍の協力を得るために大甘で合意したもので、米国は親密国・サウジアラビアとの関係をギクシャクさせてまでイランにすり寄ったものでした。

 米国の制裁内容にあった「イランと取引した企業(銀行)は米国と取引できない」により、実質的にイランは原油輸出の資金決済ができなかったわけですが、当然にこれも解除されるためイラン原油の輸出が増加することになります。本日(1月18日)のWTI価格は1バレル=28ドル台まで下落していました。

 支離滅裂なオバマ外交の「成果」ですが、オバマ大統領については、もう任期中にこれ以上の支離滅裂で世界を混乱させないでほしいと祈るだけです。しかし本日書きたいことは、これではありません。

 表題にある通り、石油を巡り日本とイランの間には「浅からぬ因縁」があります。深い意味はありませんが、経済制裁解除でイラン原油への関心が高まっているため、ちょっとご紹介しておきたいと考えました。3つあります。

 1つめは1953年の「日章丸事件」です。

 イランの石油は1908年に発見され長く世界最大の埋蔵量と言われていましたが、その権益の85%は英国が握っていました。1941年に即位したイラン国王・モハンマド・レザー・シャー(パーレビ国王)は大変に無能で英国の傀儡のような存在でした。ところが1951年に政治を取り仕切るモサデク首相がソビエトの協力を得てレザー・シャーを国外追放し、石油国有化を宣言してしまいました。

 怒った英国は艦隊をペルシャ湾に派遣し、イランから石油を積み出したタンカーは無条件に撃沈すると発表しました。事実上の経済制裁・禁輸措置で、イラン国民も経済的に困った状態に追い込まれてしまいました。

 それを見た出光興産社長の出光佐三が、極秘裏にタンカー・日章丸(19,000トン)をペルシャ湾に向けて出航させ、イラン国民も熱狂的に歓迎する中でアーバーダーン港に入港して原油を満載し、英艦隊の海上封鎖を突破して無事に帰国しました。

 滅茶苦茶なようで出光は、英国の経済制裁に国際法上の正統性はないとの理論武装をしていましたが、最大の成功要因は米国が黙認したことでした。日章丸事件の直後、CIAはMI6と協力してモサデクを追放し、レザー・シャーを帰国させました。

 その後はイランの石油権益を巡る主導権は米国に移り、米国はレジャー・シャー(パーレビ国王)を贅沢三昧で籠絡し、石油を巡る米国のやりたい放題は1979年のイラン革命まで続きました。出光の勇気も、結局はイランの石油権益を巡る大国の思惑の間で瞬間的に輝いただけだったようです。

 2つめは「イラン・ジャパン石油化学(IJPC)の巨額損失」です。

 イラン・ジャパン石油化学(IJPC)とは、三井物産を中心とした日本側投資会社・イラン化学開発(ICDC)とイラン国営石油化学(NPC)の折半出資による合弁事業で、当時は油田で燃やしてしまっていた石油採掘時に出るガスを原料に、イランで最初の総合石油化学コンビナートを建設する計画でした。

 実は三井物産は当初から乗り気ではなかったようですが、イランからロレスタン地区の石油採掘権を提供されて1971年に基本契約を締結しました。当時の計画では建設費は1500億円でした。採掘権を提供された鉱区から石油は1滴も出ませんでした。

 ところが1973年に第一次石油ショックに襲われ建設費が高騰して予算が7400億円と5倍に膨れ上がり、さらにおよそ85%が完成した1979年にイラン革命で交渉相手が革命政府となり、さらに1980年からのイラン・イラク戦争で完成間近の設備が爆撃されてしまいました。

 結局、日本側は1991年にそれまで投入した6000億円以上(利息別)を全額放棄し、新たに1300億円の違約金を支払い全面撤収しました。しかしIJPCはその後に名前を変え(確か韓国企業が入り込んだはずです)1994年から順次操業を開始して現在に至ります。

 ここのところ三井物産に限らず大手商社の資源関連巨額減損が続いており、あまり学習効果が働いていないようです。

 3つめは「アザデガン油田」です。

 アザデガン油田とは1999年に発見された世界最大級の確認埋蔵量を持つイラン南西部の油田です。2000年に森元首相らが中心となり、来日したイランのハタミ大統領(当時)に30億ドルとも言われる事業費の提供を約束して、2004年に国際石油開発と石油資源開発(共に石油公団の子会社、要するに官僚の天下り先)が75%の権益を持つとの合意がなされました。

 ところが2002年に持ち上がったイラン核疑惑で米国からの開発中止要請が強まり、国際石油開発らは65%の権益をイラン側に無償譲渡してしまいました。つまり巨額の国民の税金がドブに捨てられたわけです。

 ところがその日本が無償譲渡した権益が2009年にほぼそっくり中国国営石油(CNPC)に譲渡されていました。この譲渡に経済制裁中の米国が関与していたかどうかは藪の中ですが、何ともお粗末な日本の官主導の資源ビジネスだったことになります。

 先ほど書いたように、この3つのエピソードで何かを結論づけるつもりはありませんが、因果は巡り原油価格は1バレル=30ドルを下回っています。

 ここは発想を大きく変えて、原油を持たない(原油を大量に買いつける)日本は、産油国に比べて「大変に有利な立場」であると考えるべきです。イラン経済制裁解除のニュースを聞いて、ついそう考えてしまいました。

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コメント
イランいえば独コメルツや仏バリバ、英HSBC
など錚々たる世界的な大手金融機関
がマネーロンダリングなどで
米国から巨額制裁金食らってましたね。
私は原油急落の時こそ資源を持たない日本が権益を取得するチャンス。血税を使ってでも取得すべしと考えていたのですが、過去の例からも結局はお粗末な巨額損失の繰り返しなだけということなのでしょうか。
これは歯痒い内容ですね。このような情報は日本の新聞、テレビ、通信社は報じませんね、報じているんですか。
挙句の果てに、韓国、中国が横取りでしている状況ですか。まだ、他の国だったら少しは・・・・・・と思いますが。
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