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マイナス金利導入の「最大の勝ち組」は大手銀行

2016年02月04日

マイナス金利導入の「最大の勝ち組」は大手銀行


 本日(2月3日)の日経平均は559円安の17191円(終値)と、先週末(1月29日)のマイナス金利発表直前のレベル近くまで下落してしまいました。

 また本日の10年国債利回りは一時0.045%、2年国債利回りはマイナス0.18%と、それぞれ史上最低利回りを更新し、マイナス金利発表直前の0.22%とマイナス0.03%から大幅に低下しています。

 日銀のマイナス金利導入で長短金利が劇的に低下したことは事実であり、日本経済への影響は不透明で株式市場の混乱は続くかもしれませんが、マイナス金利発表以前よりは株高の水準に落ち着いていくと考えます。

 さて2月2日付け「日銀が唐突に発表したマイナス金利導入とは?」に、「マイナス金利が適用される当座預金は年間最大80兆円で、銀行業界全体が負担する最大コストは年間800億円と考えてよいのか?」とのコメントをいただいていましたが、実は違います。
 
 まず80兆円というのは日銀が今後1年間で増加させる国債保有残高で、今後1年間で増加する「最大の」当座預金残高とも考えられますが、今後1年間に限れば平均増加残高は半分の40兆円で最大コストも400億円のはずです。

 しかし今後はさすがに銀行も日銀当座預金の増加分に対しては、少しでも有利な運用に(というよりマイナスが少ない運用に)しようと考えるため、その最大コストは400億円よりかなり少なくなるはずです。

 そんなことより短期金融市場全体がマイナス金利となれば(なっています)、現時点で250兆円以上ある当座預金残高(そのほとんどを銀行が保有しているはずです)には引き続き0.1%のプラス金利が支払われるため、マイナス金利の中で銀行にだけ年間2500億円もの金利が支払われ続けることになります。

 さらに銀行はこの20年ほど預金金利はほとんどゼロ(1年定期で0.03%程度)にしていますが、それをさらに引き下げてしまいます。また金融庁の要請かもしれませんが、法人の大口預金からは手数料を徴収して実質的にマイナス金利にしてしまうようです。

 もちろんこれらは銀行業界にとって増益要因となりますが、実は大した金額ではありません。銀行はこの20年間も「不当に低い」金利しか預金者に支払わず膨大な収益を預金者から収奪しており、ここで金利をさらに下げてもそれほど大きな変化ではありません。

 またマイナス金利導入で国債利回り全体がマイナス金利も含めて劇的に低下しており、銀行の保有する国債の含み益も劇的に増加しています。しかし最大の問題は銀行が「ずっと以前から」貸出金利を国債利回りの低下に「ほとんど」連動させていないことです。

 10年固定金利の貸出し金利は(クレジットリスクが低く担保もあり、要するに取りっぱぐれのない貸出しでも)、マイナス金利導入前で10年国債利回りが0.2%程度だったときでも1.1~1.8%でした。つまりマイナス金利が導入されなくても預金金利が0.03%ほどだったため「ずっと以前から」大変に厚い利鞘を確保していたことになります。まさに「異次元」量的緩和導入後の国債利回りは「無駄な低利回り」だったわけです。

 それだけ日本の銀行は高コスト体質だからですが、今回のマイナス金利導入で例えば10年国債利回りが劇的に低下しても、10年固定の貸出金利をフルスライドさせることは絶対になく、銀行の大変に厚い利鞘がますます厚くなることになります。

 もちろんずっと以前の貸出しの利鞘は「もっともっと厚くなる」ため、マイナス金利は銀行にとって「さらなる増益要因」となります。

 一般的に金利水準や国債利回りが低下すると銀行にとって「増益要因」となりますが、従来なら金利はゼロに近づきこれ以上の低下余地(つまり増益余地)がなくなったと考えられていたところ、マイナス金利導入でさらに金利の低下余地(つまり増益余地)が拡大したことになります。
 
 マイナス金利導入で銀行の収益が悪化すると考えられ銀行株が下落していますが、収益に限ればマイナス金利導入による「最大の勝ち組」は銀行(特に大手銀行)となります。

 さらに2月2日付け記事に「それでは本誌は当座預金全体にマイナス金利を適用すべきと考えているのか?」とのコメントもいただいていました。

 「どちらかといえば」そう考えています。そんなことをしたら日銀当座預金が取り崩され、日銀は膨大な保有国債をファイナンスできなくなり、国債市場が大混乱になるではないか?

 冷静に考えると短期金融市場全体がマイナス金利になれば日銀当座預金の金利がマイナスでもそれほど引き出されないはずです。どこに置いてもマイナス金利だからです。

 それより1年後に最大80兆円の日銀当座預金増加分にマイナス金利を適用しただけで、はるかに巨大な短期金融市場や8年以下の国債利回りがすべてマイナスになっている現状のほうが「はるかに不自然」と考えます。銀行だけが恩恵を受けるだけでなく、日本の金利体系の「ゆがみ」がますます大きくなり、いずれ大きな「しっぺ返し」に襲われると直感的に感じるからです。

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コメント
 となると「しっぺ返し」に興味が湧きます。教えていただければ幸いです。
3点質問させてください。

①下がっているのは現在の調達金利であり、過去に貸出した時の調達金利ではないので、増益要因にならないのでは?

②銀行の保有している国債はデュレーションが短く、さほど利益は出ないのでは?

③マイナス金利がこれだけ宣伝されては、住宅ローンを含めた貸出金利は下げざるをえず、減益要因になるのでは?
同じく「しっぺ返し」の内容に興味があります
アリチンさん

地方銀行勤務の者です。
①については各金融機関により別れます。メガバンクや地銀の一部は例えば10年固定の融資をしたらその分金利スワップなんかで金利上昇のリスクを回避しますので、金利が下がったからといって儲かりません。この場合他の安いローンに借り換えしようとしても違約金がかかります。多くの地銀や信金は、上記のような対応をしておらず調達金利が下がれば利益になります。ただ元々が10年以上前から預金金利は0.025パーセントといった状態ではあるので市場の金利が下がっても実際は儲かりません。
②収益を多少下支えはするがメインの融資金利がだだ下がりなので減収傾向に歯止めがかかりません。
③地域により差が出ますがその通りです。地銀・信金の営業は毎日100件以上のお宅に電話・訪問のセールスをかけており、金利の高いローンを放っておくと借り換えされるので防衛上下げてます。築10年以内の戸建住宅に住んでいる方で借り換えの提案を受けたことのない方はいないのでは?
こんなところでよろしいでしょうか?
前述の地銀関係者です。市場金利が下がっても貸出金利が下がらない理由について。地方銀行の例で説明します。
いくら金融機関といっても銀行も一般の事業会社と同じで、イメージとしては車のディーラーあたりが業務内容・顧客層・利益の仕組みとしては近いように思います。
売上にあたる貸出について・・・
①中小零細企業向け融資 約1〜2%
②住宅ローン 約0.6%
③大企業向け融資 ケースバイケース
④大企業向け協調融資・地方公共団体向け融資 約0.2%〜0.5%

ざっくり言うと①②が一番手間がかかるが儲かり、④は余った預金を手っ取り早く市場で運用しているイメージでただ置いておくよりまし。当然④で運用すると大赤字になるので①で運用するよう努力します。
中小零細企業向け融資は金利が高いように言われますが、大半は1社あたり300〜5千万円程度の少額(銀行全体の7割近く)で件数では圧倒的に300万から2千万程度の先が多いです。

で、実際のよくあるケースを建設業に500万貸す場合でご紹介・・・

何度にも及ぶ公私にわたる営業(青年会議所に入会させられたり草野球に出させられたり。笑)の末ようやく運転資金500万借りると言う話しとなる。まず決算書取入し格付けを決めるのに膨大な資料作りと聞き込み。決算書に嘘がないか在庫調査。現在の各工事の進捗状況表を作成(中小では表どころか契約書や注文書もなくどんぶりだからこれに何時間もかかる、頭に入ってるというがだいたい入ってない)。
ようやく資料が整った上で銀行内で協議。(中小の場合、99%は粉飾決算や公私混同の資金管理しているから、体裁を整える資料作りにまた膨大な時間)。
信用保証協会とのやりとりし、保証をおろす。
稟議書作成で会社や社長のこれまで、これからのバラ色のストーリーの作文や資料を20枚程度作成。
ようやく契約書にサインもらえ融資。
ちゃんと約束通りの融資金使ったかの確認と以後、返済完了まで数年間毎月1回の訪問面談と銀行への報告。毎年の決算書分析(融資時の作業をまた・・・)
その後、内部検査や金融庁検査が入ればその対策。以上の部分に手落ちがあるば処分や減給もあり。
数年後最後まで借りてくれると思ったら資金に余裕ができたから返すと言われる(笑)

・・・・・・・

とここまでやってようやく500万で金利が1パーセントちょっとの融資に辿り着きます(金額10億でも同じ作業だが)。さすがに市場がマイナス金利といっても金利がゼロにはならない点を理解いただけましたでしょうか。リテール向けで預金金利がマイナスや以前の野村のように口座管理手数料5千円とかはやれば無茶苦茶儲かりますが、世論の反発でできないでしょうし。



利回りマイナスの国債
マイナス利回りの国債を誰が買うのでしょう
円高なら国外からも買うかもしれません
円安になったら日銀と日銀が子分に命令して買わせるしか思い浮かびません
粉飾銀行員さん、

丁寧でリアルな解説、理解出来ました。
ありがとうございました。
それは分かります。
今の国債市場は大バブル状態に見えます。
銀行は単価の利益を得ていますが、これを売りに出るキッカケがあれば、銀行は、保有する長期債の暴落による損失を被る事はありませんか?
これをしっぺ返しと言うのでしょうか?
これまで2021年辺りが危ないと思って居ましたが、ここまで急激な国債バブルが発生すると、ここから数年も持つのか?とも思います。
計画するしかない
ある中小企業の社長さんが「計画するしかない」と公認会計士に言われたそうです。計画倒産のことでした。
金を貸すのに銀行が厳しくなったためほとんどの中小企業は借りられないわけです。
これは国の命令に従ってるからでもありますし、中小企業がずさんだということでもあります。

銀行は決算のしっかりした企業には無理を言って借りさせるそうです。借りる企業も借り入れ実績作りのためだけに借りてるようでした。金のあるところにしか金を貸さない仕組みになっているわけです。
粉飾銀行員 さま


 本誌がお答えする前に、はるかに素晴らしいお答えを頂き、大変にありがとうございました。

 実際に現場で活躍されている(悩まれている)方のコメントですので、大変に重みがあり参考にさせて頂きました。

 引き続き、貴重なご意見をお寄せください。


闇株新聞編集部
粉飾さん

リアルなお話をありがとうございます。青年会議所ね(笑)。確かに新規のネタは転がっているかも知れないが適当に活動を流せなくなると言う諸刃の剣。後任までも大変な感じになる。

貸出の現場としてはマイナス金利が大々的過ぎて金利交渉が大変になりそう。融資が本業だから金利が下がれば当然収益低下、それをボリュームで補うにも限界がある。
低収益の割には貸し倒れリスクもあり。大変。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016022401001774.html
みずほFG労組もベア要求見送り 「日銀マイナス金利が影響」

賃上げ要求→マイナス金利 黒魔術発動。
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