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ソフトバンクのARM買収を仕掛けた「助言会社」という怪物

2016年07月21日

ソフトバンクのARM買収を仕掛けた「助言会社」という怪物


 昨日の続きですが、本日はもう少し「内幕」の話です。

 ソフトバンクのARM買収に限らず、大型買収には必ず売り手・買い手の双方に複数の「助言会社」がつき、膨大な報酬を山分けしています。この「助言会社」には伝統的な投資銀行も含まれますが、最近は新興のブティック型「助言会社」も目につきます。

 また買い手が買収資金の調達を必要とすると(つなぎ融資も含めて)、これに「銀行団」が加わります。この「銀行団」も利息のほかにコミットメント・フィーなど融資報酬を受け取り山分けにあずかります。

 ソフトバンクのARM買収には「助言会社」として、売り手のARMにゴールドマン・サックスとラザード・フレール、買い手のソフトバンクにレイン・グループとロビー・ウォーショー、それに「銀行団」としてみずほフィナンシャルグループがつきました。

 今回の報酬は売り手側・買い手側の「助言会社」がそれぞれ6000万ドル(63億円)、「銀行団」が4500万ドル(47億円、利息は別)、合計1億6500万ドル(175億円)のようですが、これは要した時間が2週間だったことも考えると「かなり高い」と感じます。

 「銀行団」から説明しますが、ソフトバンクは以前から日本興業銀行、富士銀行と取引があった関係で、みずほフィナンシャルグループはソフトバンクが2006年に英ボーダフォンを買収したときに1兆4500億円のシンジケート・ローンを、2012年にスプリント・ネクステルを買収したときに1兆6500億円の緊急協調融資をまとめています。

 今回のARM買収では、みずほフィナンシャルグループが1兆円のつなぎ融資をコミットしています。期間2年のつなぎ融資というのも珍しいのですが、今回は単独なので利息(未公表ですがたぶんTibor+80bpで1%前後?)のほかに4500万ドル(47億円)の報酬を独り占めします。
 
 さてソフトバンク側の「助言会社」のうち、レイン・グループはゴールドマン・サックスのパートナーで投資銀行部門のメディア責任者だったジョー・ラビッチ氏と、UBSでメディア・テレコム部門責任者だったジェフ・シネ氏が共同で設立し、のちに米国野村で投資銀行部門責任者だったグレン・シフマン氏(リーマン・ブラザーズ出身)も加わっています。

 また元グーグルCEOのエリック・シュミット氏、元フェイスブック社長のショーン・パーカー氏、元ニューズCOOのピーター・チャーニン氏らも出資者に名を連ねており、それぞれの人脈を生かしたアドバイスを(もちろん有償で)行っているはずです。

 さらに今回、孫社長がレイン・グループの取締役であることが「発覚」しました。やや問題がありますが、ソフトバンクの株主が異を唱えなければ大丈夫でしょう。

 要するにレイン・グループはIT、メディア、通信業界におけるドリーム・チームであり、2012年にソフトバンクがスプリント・ネクステルの発行済み株数の70%を201億ドルで買収した時もドイツ銀行、みずほ銀行とともに「助言会社」をつとめていました。「助言会社」はソフトバンク側だけで1億ドル近い報酬を得たようです。

 今回のソフトバンクのもう1つの「助言会社」であるロビー・ウォーショーは、ゴールドマン・サックスの投資銀行部門トップだったサイモン・ロビー氏と、UBSの投資銀行部門トップだったサイモン・ウォーショー氏が共同で設立しました。

 ロンドンをベースにして欧州では圧倒的な存在感があり、特定分野に限らずすべての業界に強みを持ちます。ソフトバンクとの取引は今回が初めてですが、欧州の案件なので「助言会社」をつとめています。

 ロビー・ウォーショーは2015年以降だけでロイヤル・ダッチ・シェルによるBG(ブリティッシュ・ガス)の総額470億ポンドの買収(報酬総額1億5500万ドル)、ABインベブによるSABミラーの総額710億ポンドの買収(報酬総額不明)、ドイツ取引所によるロンドン証券取引所の買収、破談になったもののファイザーによるアストラゼネカ買収など、欧州の主要買収案件ほとんどに売り手側か買い手側のどちらかで「助言会社」をつとめ巨額報酬を得ています。また破談になってもいくらかの報酬は必ず請求します。

 さてこれら「助言会社」には各国の銀行や証券会社のように管轄機関がなく、守るべきルールも報酬上限も報告義務もありません。また「助言会社」そのものは資本を必要とせず、しかもますます寡占状態となっています。
 
 要するに「助言会社」とは元手がかからず、誰からも規制されず、文字通り人脈とノウハウだけで巨額報酬を得ている「怪物」のような存在です。また大型買収案件といっても企業側からの要望は少ないはずで、その大半がこれら「助言会社」が集まって談合的に作り上げているのでしょう。

 今回のソフトバンクによるARM買収でも、その「一端」が少しだけ見えたようです。


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コメント
助言だけで2〜300億と聞くと高額に思いますが、買収金額が3兆3千億円と考えると別に高くないように思いますがいかがでしょう。
国内の中堅・中小企業向けM&A仲介会社なんかだと双方から買収金額の1割とかザラですし、見つからなくてもそれなりの手数料とられますし(相手探しから手続きまで全てお任せでやってくれますが)
孫社長の話によると10年前から
ARMの買収は念頭にあったの事。
ARMってどうして今まで誰も買わなかったんでしょうね?
intelとかAtomでモバイル市場を戦わないで
素直にarmを買えば何の問題もなかったのに。

WindowsPhoneなんてやるだけ無駄なのに
やっちゃったマイクロソフトも同じですけど。
本日の記事で述べられている「助言会社」というのは買収においてどんな役割をするのでしょうか?言い換えれば、ソフトバンクが巨額の報酬を払ってでも「助言会社」を必要とする理由は何なのでしょうか。
記事には「助言会社」には経歴のある人物がいることは書かれていますが、「助言会社」が必要とされる理由(もしくは、「助言会社」につけ込まれてしまう理由)がわかりませんでした。

素人考えで恐縮ですが、買収対象の選定、買収交渉の進め方、当局との手続きの仕方といった実務面でソフトバンクが助言を必要するとは思えません。

さらに、英ボーダフォン、米スプリントといった買収実績があるソフトバンク(ひいては孫正義さん)がARMに買収提案を門前払いされると思えません。そのため、買収のための顔つなぎをするような仲介者的存在も不要のはず。

ソフトバンクは自力で買収先を探し、自力で意思決定して、自力で買収交渉することはできる、と思っているのですが、そうなると「助言会社」にソフトバンクが、みすみす巨額報酬を払ってしまうことなんてないと思うのです。
2003年のIPベンダーのシェアと売り上げです。
会社勤めの組織人 様

今回のソフトバンクに限らず、他の日本企業(武田やサントリーなど)を含む世界中の大型買収には必ず「助言会社」が売り手・買い手双方に複数ずつついています。
何をしているのか?ですが、大型買収の企画、お膳立て、売り手・買い手双方への根回し、条件交渉(価格交渉だけではありません)、当局への許認可など「すべて」であり、「助言会社」の存在なしに大型買収は実現しません。
今回のソフトバンクも、その前のボーダフォン買収もスプリント買収も、すべて「助言会社」が持ち込み、すべて「助言会社」が交渉して実現したものです。仮に孫社長がARMを買収したいと考えていたとしても、それだけでは何も起こりませんでした。
報道では孫社長がARMのCEOに直接電話したように伝えられていますが(もちろん事実なのでしょうが)、そのお膳立てをしたのも「助言会社」だったはずです。
世界の大型買収は、これら「助言会社」同士の談合に近い話し合いで企画され、実現しているといっても過言ではありません。

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