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出光興産の不毛な「内紛」

2016年08月18日

出光興産の不毛な「内紛」


 最近の株式市場では企業の「内紛」がやたら目につきますが、そんな企業はだいたい業績面でも株価面でも悲惨な状況となります。本日取り上げる出光興産も、一般株主を軽視した不毛な「内紛」を繰り広げています。

 出光興産は昨年(2015年)7月30日の取締役会で、昭和シェルの33.24%を保有する欧州石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルから全株を取得すると決議しました。取得価格はその時点の株価に約15%のプレミアムを乗せた1株=1350円(取得金額は1691億円)で、公正取引委員会による独占禁止法の許認可を得てから正式取得となり、それから両社は経営統合すると公表されていました。

 そして同年11月12日に、両社はその経営統合の形態を「合併」とすることに合意したようですが、その際に出光興産の現経営陣が出光昭介・名誉会長をはじめとする創業家に十分な説明をしたかどうかが問題となっています。

 常識的に考えると、「合併」なら出光興産はロイヤル・ダッチ・シェルに約束した1691億円は支払っても、それ以外の株主には出光興産株式を割り当てるだけで資金負担が大幅に軽減されます。しかし創業家は持ち株比率が大幅に薄まるため「おいそれ」と承諾できるものではありません。まあ創業家も後から誰かに言われて気がついたのでしょう。

 さらに昭和シェルはロイヤル・ダッチ・シェルだけでなくサウジ・アラムコも14.96%の株主ですが、ロイヤル・ダッチ・シェルもサウジ・アラムコも日本の石油元売りに見切りをつけて撤退するため、アラムコだけが現金ではなく出光興産の株式を受け取る「合併」で承諾するはずがありません。

 つまり出光興産の現経営陣は創業家にもアラムコにも十分な根回しをせずに、安直に資金負担が少ない「合併」に決めてしまったような気がします。「買収」なら発行株数が変わりませんが、昭和シェルの全株式を買い取るため膨大な資金負担となるからです。

 6月28日に開催された出光興産の定時株主総会は、現経営陣の取締役選任と一部監査役の選任だけが議題で、「合併」の承認は年内に改めて開催される臨時株主総会に諮られることになっていました。

 ところがその席で創業家の代理人である浜田卓二郎弁護士(元衆議院議員)が、議題でもない「合併」に創業家は反対である旨と、創業家は出光興産の33.92%を保有していると表明してしまいました。

 これでは浜田卓二郎弁護士が「いったい何をやりたかったのか?」が全く理解できません。もし本当に33.92%を創業家が保有しているなら、「合併」の承認には出席者の3分の2以上の賛成が必要となるため全員が出席しても否決できてしまいます。つまりこの段階では黙っているだけでよかったはずです。

 ここで浜田弁護士の主張する33.92%には、出光文化福祉財団の7.75%と出光美術館の5.0%が含まれているはずですが、冠に「出光」がついているだけで創業家に味方するものと勝手に思い込んでいる可能性があります。創業家は現時点ではこの出光文化福祉財団と出光美術館の議決権行使のための意思決定プロセスをよく確認して、完全に味方に引き入れてしまうことが絶対に必要だったはずですが、どうもその前に浜田弁護士がスタンドプレーに走ってしまったような気がします。

 さらに浜田弁護士は8月3日になって、出光昭介・名誉会長が昭和シェル株式を40万株(全体の0.1%)取得したと発表しました。これは出光興産がロイヤル・ダッチ・シェルの保有する昭和シェル株式の33.24%を「相対」で取得する際、出光昭介氏が0.1%を取得したため出光興産は合計33.34%の昭和シェル株を取得することになり、TOBで全株主に公平な売却機会を与えなければならないという主張です。

 しかしこれも無理な「こじつけ」です。そもそも意見が対立している出光興産と出光昭介氏の持ち株を合計することに、何の意味もないからです。さらに出光興産とすればロイヤル・ダッチ・シェルから取得する昭和シェルの株数を0.1%分だけ引き下げればいいだけで、事実そのように検討しているようです。

 要するに出光興産を巡る一連の「内紛」には大義名分がなく、所詮は出光興産のサラリーマン経営陣と、亡くなった創業者(出光佐三氏)が偉かっただけのお金持ち創業家が、一般株主の利益など無視した「不毛な争い」を展開しているだけとなります。

 しかし一連の騒動で出光興産の株価は2483円(6月10日)から本日(8月17日)は1913円、昭和シェルの株価も1210円(6月9日)から本日は880円と、大幅に値下がりしています。また出光興産はロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル株式を1350円で取得する約束になっており、すでに大幅な評価損失となってしまっています。

 いずれにしても不毛な「内紛」の弊害は、出光興産と昭和シェルの一般株主にしっかりとツケ回されていることになります。

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コメント
出光文化福祉財団と出光美術館は、理事長が昭介氏のようですが、議決権は昭介氏にあるという考え方は違うのでしょうか?
名無し様

確かに両団体の理事長は出光昭介氏のようですが、普通はこういった団体の最高意思決定機関は理事会なので理事長の一存で決定できるものでもありません。というよりこういう団体は株式投資のために設立されているわけではなく、さらに議決権行使をどうするかなどの規定は全くないはずで、まずその規定づくりあるいは定款変更などを行っておく必要があります。

 本日(8月18日)付けの日経新聞には、出光美術館(5%保有)が最近定款変更を行ったと書かれていますが詳細がわかりません。

闇株新聞編集部
大家族主義、長期的視野に立った経営を掲げながら株式上場した頃から出光転落は始まっていたように思います。(まだ調子のよいうちに財務を手厚くしておきたかったので仕方ないですが)
海賊と・・・の映画公開に合わせて骨肉の争いを引き起こしてしまうのは皮肉ですね。
まあ買付価格との開きもここまで大きくなってしまいましたし、違約金を払って白紙に戻した方がいいんじゃないですかね〜。国策的にも純民族系の元売り1社くらいは残しておいた方がいいですし。
純民族系の元売りとして生き残るなら、あとはコスモ石油との合併ぐらいしか手はないのでしょうか?

違う話題ですが、郷鉄鋼所について、いろいろな噂があるようなので、何かご存じなら取り上げて頂きたいです。
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