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自社株買いについてちょっと考えてみよう(米国企業編)

2016年10月28日

自社株買いについてちょっと考えてみよう(米国企業編)


 10月20日付け「同題記事」は日本企業編だったので、本日は米国企業編です。2015年通年の日本企業による自社株買いは過去最高の4.8兆円でしたが(2016年通年で更新の可能性があります)、同じ2015年の米国企業による自社株買いは5664億ドルと現在の為替でも59兆円あり、日本企業の12倍強もありました。

 また日本企業の2015年度配当総額も過去最高の10.8兆円でしたが、米国企業の2015年の配当総額は4163億(43.5兆円)で、日本企業の4倍でした。

 ただNYとNASDAQを合計した米国株式時価総額は、ジャスダックなど新興市場を含めた東証株式時価総額の5倍弱もあるため、時価総額当たりで考えると配当額は日本企業が米国企業より少し多く支払っており、逆に自社株買いは米国企業が日本企業の2倍以上も行っていることになります。

 日米の長短金利で考えると(10年国債利回りは米国が1.75%、日本がマイナス0.06%)日本企業が大変に背伸びした配当を支払っていることになり、逆に米国企業は日本企業に比べて高水準の自社株買いで現在の株価を支えていることになります。

 2015年の米国個別企業の自社株買い総額は、トップがアップルの398億ドル(4兆円!)、以下、マイクロソフトが152億ドル、クアルコムが112億ドル、あのウェルズ・ファーゴが106億ドルと、4社が年間100億ドル(1兆円)をこえていました。

 米国企業の経営者は毎四半期ごとの1株当たり利益で「勤務評定」されるため、利益を増加させると同じくらい自社株買いで発行株数を減らすことに熱心のようです。また最近の日本企業の経営者も株主還元を増やすことが株式市場で評価される絶対条件と考えているようで、無理を重ねて企業体力を損ねる株主還元を行っていることになります。

 これは米国企業でも日本企業でも同じですが、人件費をケチり、消費者には値下げなどで還元することなくため込んだキャッシュの大半を、日本企業なら高水準の配当支払いで、米国企業ならこれも高水準の自社株買いで「消費」していることになり、少なくとも日米とも経済にプラスにはなりません。

 ウェルズ・ファーゴに至っては、行員に不正口座開設まで強要して(?)ため込んだキャッシュを、2015年は1兆円以上も自社株買いで「消費」していたことになります。

 それでは自社株買いをもっと高水準で続ければ、経済活動にはプラスが少なくても、株価だけは上がると考えられていますが、果たしてそうなのでしょうか?

 米国企業で、世界最大のたばこ会社(注)であるフィリップ・モリス・インターナショナルは、豊富な現金収入を抱える寡占の優良企業であるはずですが、実は債務超過です。

(注)売り上げだけなら中国国営の中国煙草が圧倒的に世界最大のはずですが、非上場なので実態がわかりません。また先進国のたばこ会社では、先日発表されたBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)の米レイノルズ買収が承認されればフィリップ・モリスを抜いて世界最大となります。

 直近のフィリップ・モリスは時価総額が1485億ドル(15.5兆円)もあり、PERが23倍、配当利回りも4.3%ありますが、実は140億ドルほどの債務超過です。その理由は自社株買いを積極的に行ったため資本勘定がどんどん減少し、ついにはマイナスになってしまったからです。

 たばこ産業は確かに潤沢なキャッシュ・フローを生みますが、成熟産業の代表でもあるため新規の設備投資もそれほど必要ではなく、また先進国では寡占が進んでいまさら有望な買収対象があるわけでもありません。そこでせっせと自社株買いを行い債務超過になってしまっているわけです。

 これはもちろん経営危機とは全く意味が違いますが、それだけ現金の使い道がなく、したがって企業価値がここから飛躍的に向上することも期待できないことになります。

 ここでフィリップ・モリスがもっと自社株買いを続けたなら、もっと債務超過になりながら発行済み株数が減少していくことになりますが、じゃあ株価が上昇するのか?というと、ちょっと違うような気がします。

 太陽のような恒星の寿命が尽きるときは赤色巨星となり、その後はものすごく高密度の白色矮星となるか、超新星爆発を経てブラックホールになり周辺のものを飲み込んでしまうそうですが、フィリップ・モリスも上場企業の最終局面に近づいており、自ら発行していた株式を飲み込んで消えてしまう途中なのかもしれません。

 少なくとも自社株買いが普遍的な株価上昇要因であるとは決めつけないほうがよさそうです。

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コメント
この記事の話が、ダメな投資信託と似ていると感じました。

分配金が多くとも、だんだん基準価額が下がっていってしまう投資信託です。

それでも銀行や証券のオススメで入ってくる人の追加投資でなんとなく基準価額が誤魔化されて長いこと維持され、徐々に基準価額が下がり、分配金が出なくなり、フェードアウトしていく。

自社株買いは投資信託が信託財産で投資信託を買っているようなイメージがします。

この解釈は間違ってますか。



記事とは無関係で失礼ですが
>太陽のような恒星の寿命が尽きるときは赤色巨星となり、やがてブラックホールとなってしまうそうです

前半は合っていますが、後半は間違っています。
太陽程度から太陽の数倍までの質量の恒星は、爆発することなくしぼんで白色矮星になるだけです。

ブラックホールになるのは、質量が太陽の約30倍以上ある恒星に限られ、赤色巨星を経て「超新星爆発」という爆発を引き起こします。

記事とは無関係で失礼と思いますが、気になりましたので投稿させて頂きます。
フィリップ・モリスの自社株買いはさすがにやり過ぎな感はありますが、日本企業は莫大な内部留保を抱えながらも投資にも賃金にもまわさない訳ですからもっとやるべきだと思います。
逆に金利がほぼゼロの銀行借入や社債で調達できる環境で財務内容も悪くないのに公募増資で資金調達する企業の方がどうかと思いますね。
ピエトロが公募増資してますが、財務内容は悪くないですし、資金使途にある銀行借入の返済なんて増資してまでやる必要はないですよね。
証券会社を儲けさせてるだけと言われても仕方ないと思います。
理系人様

ご指摘ありがとうございました。本文を少し修正させていただきました。


闇株新聞編集部
自社株買いによって株主に利益があった場合でも、経済にとってプラスにならないのはなぜでしょうか?
名無し 様

 企業の自社株買いは、すべてではありませんが賃金をケチり、(消費が増えない)、設備投資をケチり(GDPが増えない)、さらには税金までケチってため込んだキャッシュで行うもので、経済活動には何のプラスもありません。仮にそれで株価が上がったとしてもその恩恵は外国人投資家、機関投資家、一部の富裕層に行くだけなので、再投資には回っても消費など経済活動に恩恵が及ぶわけではありません。

闇株新聞編集部
 賃金をケチり、設備投資をケチり内部留保を溜め込んだ結果、日本全体の経済が縮小。その為、国外企業やハゲタカに買収されないために一生懸命自社株買いをしているのが、今の日本企業のように思います。政府が景気を良くする政策を実行しないのですから当然です。円高が続いたためにこういう思考になった企業も多いように感じます。
そもそも株式会社の主な目的は自己の利益の最大化であって、経済活動の拡大ではありません。
目的と手段を捉え違えてはいませんか?
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