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モンテ・パスキは欧州金融界における「火薬庫のスイッチ」

2016年12月22日

モンテ・パスキは欧州金融界における「火薬庫のスイッチ」


 イタリア第3位の商業銀行であるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(以下、モンテ・パスキ)の経営危機が続いており、欧州がクリスマス休暇に入る前の12月22日までに目途をつけるはずだった50億ユーロ(6100億円)の資本増強がどうやら不調のようです。

 状況によっては年末年始を挟んだ欧州金融界最大の「イベント」となり、その影響は世界にも伝播しそうです。

 最近の本誌は、リーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和で世界の金融市場とくに株式市場には「イベントに対する耐性」ができていると考えていますが、逆にモンテ・パスキに限らず欧州銀行の経営不安は年中行事であるため「またか?」程度に受け止められています。

 そこへいざ破綻とか国家管理となると、トランプ当選後は世界中でリスク許容度が上がっており、もともとクレジット・リスクに対して鈍感だったため、意外にショックが大きくなる可能性があります。

 ルネサンス時代の1472年創業で、現在営業している世界最古の銀行であるモンテ・パスキは、公表ベースで不良債権比率が41%、不良債権額で242億ユーロ(2.9兆円)となっていますが、実態はもっと悪いようです。

 ちなみにイタリアの銀行全体では不良債権が3600億ユーロ(44兆円)あると言われており、これはイタリアGDPの22%に相当します。

 つまりイタリアの銀行はEU経済・金融界の「火薬庫」であり、モンテ・パスキはその「火薬庫のスイッチ」となります。イタリアの銀行と並んで問題が多かったスペインの銀行は2012年にEUの包括支援を受けて健全化しているはずで、少なくとも「火薬庫」ではなくなっています。

 その中でモンテ・パスキは、まさにリーマンショック以降のECBによる金融緩和・量的緩和、それにいざとなればEUによる支援体制が備わっているとの「安心感」だけで、何とか破綻せずに生き残っていることになります。

 モンテ・パスキはECBによる銀行の健全性審査ランキング最下位に落ち込み、本年7月にはECBが年内いっぱいをタイムリミットとする資本増強(債務の株式化と新株発行)と、今後3年間で不良債権の4割削減を求めていました。

 またイタリア政府も資本増強が不調に終われば150億ユーロ(1.8兆円)の公的資金を注入して支援すると表明していました。つまりそれなりの時間的余裕と「安心感」が提供されていたはずでした。

 ところが肝心の資本増強が遅々として進まず、そうこうしているうちに12月4日の国民投票に敗れたレンツィ首相が辞任して政府の支援にも暗雲が立ちこめ、政治空白を理由に資本増強のタイムリミット延期を求めたもののECBに「あっさり」拒否され、モンテ・パスキは一気に「抜き差しならない状況」に追い込まれてしまいました。

 直近の状況では、モンテ・パスキは12月19日から50億ユーロの資本増強の申し込みを受け付けています。この資本増強とは新株発行と劣後債の株式化の組み合わせのようですが、詳しい内容も公表されていません。

 また同じ12月19日には就任したばかりのジェンティローニ首相が、いざという時のモンテ・パスキに対する資本注入額を200億ユーロ(2.4兆円)に引き上げると表明しましたが、議会の承認が簡単に得られるとも思えず「気休め」にもなりません。

 そして本日(12月21日)になって、その肝心の資本増強で「主たる引受先」と期待されていたカタール政府系ファンドが難色を示していると伝えられており、それによっては他の投資家も逃げ出す恐れが強く、資本増強はすでに失敗に終わっていると感じます。

 それを受けて本日早朝のモンテ・パスキの株価が15ユーロまで落ち込みました。15ユーロというと倒産株価ではありませんが併合しているようで、年初から85%下落しています。また時価総額も5億ユーロ(600億円)ほどで、すでに「完全な倒産株価」です。

 またユーロも一時1ユーロ=1.035ドル台と、2002年以来の安値となっています。

 いよいよ「火薬庫にスイッチが入った」と感じます。繰り返しですがトランプ当選以降は世界中でリスク許容度が上がっており、もともとクレジット・リスクに対しては鈍感だったため、年末年始最大の「イベント」となる恐れがあります。

 身構えておく必要がありそうです。


<追記>

本記事発信後の現地時間21日遅く、イタリア議会は銀行セクターへの支援資金として200億ユーロを承認しましたが、モンテ・パスキだけに使われるわけではなく、また実際の支援条件なども不明です。

モンテ・パスキの資本増強は、劣後債の株式化が予定通りの20億ユーロに達したようで、22日が払い込み日の機関投資家による30億ユーロの増資にすべてがかかります。

カタール政府系ファンドが10億ユーロ払い込めば、残る機関投資家も払い込むようで、かすかな希望が見えてきました。

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増資不調でイタリア政府が支援を決定。続報をよろしくお願いします。
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