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今の日本で最も困るシナリオは物価が「本当に」上昇してしまうこと

2017年02月14日

今の日本で最も困るシナリオは物価が「本当に」上昇してしまうこと


 2月10日にホワイトハウスで開催された日米首脳会談は、懸念された通商・為替・金融を巡る米国側からの厳しい要求はなく、その後にトランプ大統領の別荘に招待され一緒にゴルフをしたなど「成功裏に終わった」と受け止められています。

 本日の東京市場でも日経平均が80円高の19459円、円相場は午後10時現在で1ドル=113.72円と落ち着いています。

 単純に考えればトランプ政権では通商・為替・金融に関連する閣僚(財務長官や商務長官など)がまだ議会承認されておらず、実務を取り仕切る幹部の政治任用もほとんど進んでいないため、具体的な要求ができる体制になっていなかっただけですが、それでもとトランプ大統領との親密さを世界に見せることができた意味は小さくありません。

 日米首脳会談はこれくらいにして、ここからが本題です。

 先週末の2月10日に発表された1月の企業物価指数(卸売物価指数のことです)が前年同月比0.5%も上昇していました。この前年同月比は昨年12月が1.2%下落、11月が2.2%下落、10月が2.7%下落、9月が3.2%下落、5月は4.4%も下落していました。

 また2016年通年では3.5%下落、2015年通年では3.2%下落、2014年通年は2.7%上昇でしたが、これは消費増税分(5%から8%へ)が反映されていたため、日本の企業物価は実質的に久々に前年同月比で上昇したことになります。

 しかもその上昇スピードが「異常に早い」ことになります。

 1月は円安加速も一段落していたはずですが、それでもこの上昇幅でした。この動きはすぐに消費者物価指数に反映されるはずです。その1月の消費者物価指数は3月3日にならないと発表されませんが、「総合」は昨年10月から前年同月比で上昇に転じており、円安が加速した昨年11月は同0.5%、12月も同0.3%上昇していました。

 ちなみにこの消費者物価指数はよく生鮮食品を除いて発表されますが(それだと昨年12月は前年同月比0.2%下落です)、生活実感は「総合」で比較しないと意味がありません。つまり消費者物価も「総合」ですでに昨年10月から前年比で上昇しており、企業物価指数の急上昇を見る限り1月はもっと加速しているはずです。

 こう書くと「やっと日本でも物価が上昇しはじめたのだから好ましいことではないか?」と思われるかもしれません。日銀の黒田総裁が2013年4月に「異次元」量的緩和を導入してからずっと「2%の物価上昇目標を実現するため」と繰り返しており、確かに「物価が上昇したほうが好ましい」といっていることになります。

 大きな間違いです。
 
 確かに経済が健全に上向けば物価も少しは上昇するはずですが、逆に物価が上昇しても経済が上向いているとは限らず、かえって消費減退・経済の一層の停滞を招く恐れがあります。

 現在の日本がまさにそういう状況で、そもそも潜在成長率(実質)がゼロ%近辺のなかで、仮に物価が2%上昇するなら少なくとも2%以上の名目成長が必要となります。ところが現在の日本経済は2%以上の名目成長を続けることも大変に難しいため、結局は実質成長率を低下させることにしかなりません。

 たまたま2月6日に日本の2016年の実質賃金が0.7%増と、5年ぶりに増加したと「大きく」報道されていました。ところが中身をよく見ると名目賃金は0.5%増と2014年からほとんど変わっておらず、物価が下がっていたからプラスに浮上していただけです。
 
 つまり今後は、物価が上昇するスピードに名目賃金が上昇するスピードがついていけるはずがなく、実質賃金は大きく下落することになり消費不況に拍車がかかる結果となりそうです。

 さらに物価上昇は長期金利の上昇につながるはずですが、日銀は昨年9月から長期金利(10年国債利回り)をゼロ近辺に抑え込むという理解不能の金融政策を続けており、しかも2%の物価上昇目標が実現しても当面の間は10年国債利回りをゼロ近辺に抑え込むとも公言しています。

 つまり「すでに」物価上昇が加速しており、為替にもよりますが本年夏頃には本当に「2%の物価上昇目標」が実現してしまうと考えます。もちろん経済の発展を伴わない典型的な「悪い物価上昇」となります。

 その一方で10年国債利回りをゼロ近辺に(より現実的には0.1%をこえないように)抑え込むため、結果的に日銀は相当量の長期国債を買い続ける必要に迫られ「意図せざる追加量的緩和」となってしまいます。

 そうなると今度こそトランプ政権から円安誘導と決めつけられ、ますます日本経済と金融市場が混乱することになってしまいます。

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コメント
私もそれがオーソドックスな予想だと思います。
円安や原油資源高による物価上昇は富が国外に出てしまうのでよくありませんが、1月の物価上昇の場合富が消費者→企業に移転するだけなのでべつに問題ないのではないでしょうか?おそらく要因はこれまで無理してやってきた値引きを抑制したとかそんなあたりではないでしょうか。
話が変わりますが、日本人が欧米諸国に比べ圧倒的に資産運用をしない、興味がないのはデフレが一番の要因だと思います。
金融知識がない層ですら、どうせデフレなんだから低利でも預金をしていれば目減りはしない、実質殖えると考えているからではないでしょうか。
資産防衛の意味でも投資をする人が増えるのであれば、日本にとっていいことなのではないでしょうか。
何もリスクを取らない層が恵まれ、リスクをとって運用や設備投資をした人、企業が報われないのはあんまりだと思います。
さすがに物価目標を達成したら日銀はテーパリングを始めるのではないでしょうか。ここでダラダラしていると、前から言われていた財政ファイナンス目的の金融緩和だという懸念を裏付けてしまうことになるので、毅然とした態度を見せる他ないはずですが。
物価は上昇すると思います

京都で中国産米混入が記事として取りざたされました
廃棄食品の問題もありました
こうした食品偽装の摘発がまともに行われるようになれば食品の物価は上がります

残業が厳しく管理されるようですが
それによって生産性が上がる見込みはありません
人件費はかさむようになります
社会保険の加入拡大も人件費が増える要因です
給料が上がる前にこれらが物価上昇と消費抑制の圧力になるでしょう

アベノミクスのためにも業績は横並びで右肩上がりを維持しなければなりません
内部留保を削ろうなんて誰も考えません
残業規制はけっこう期待してるんだけどな。別に生産性の向上がなくても、睡眠不足で生じてる経済損失が解消されてくるし、疲れが取れればちょっとは消費する気力も出てくるでしょう。
まあ、ちゃんと実施されればの話ですが。
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