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ロシア疑惑で特別検察官任命 その行方は?

2017年05月19日

ロシア疑惑で特別検察官任命 その行方は?


 米司法省は5月17日、昨年の大統領選にロシア政府が干渉した疑惑(以下、「ロシア疑惑」)の捜査を指揮する特別検察官にロバート・モラー元連邦捜査局(FBI)長官を任命したと発表しました。

 「ロシア疑惑」については、FBIのコミー前長官が5月9日にトランプ大統領によって解任されたものの捜査は継続しています。また共和党が多数を占める連邦議会でも、下院の監視・政府改革委員会、上院の情報特別委員会と司法委員会が、コミー前長官とトランプ大統領の「ロシア疑惑」を巡る会談メモの提出を求めており、行政府(FBI)と立法府(連邦議会)が入り乱れています。

 そこでより公正な立場での捜査で米国民の信頼を回復するため(米司法省)に、今回の特別検察官任命となりましたが、特別検察官はFBIの捜査や連邦議会の調査を妨げるものではなく、今後は「三つ巴」となります。

 つまりそうでなくても停滞しているトランプ政権の行政執行と議会折衝が「ほぼ完全に止まる」と考えてよさそうです。同日(5月17日)の米国市場では、NYダウが372ドル安の20606ドル、為替が1ドル=110円台後半となりました。

 特別検察官に任命されたロバート・モラー氏は、2001年9月の同時多発テロ直前に就任し、オバマ大統領に任期(10年)の2年延長を求められ2013年まで就任していました。その経験や見識は申し分ないと評価されています。その後任が先日解任されたコミー前長官でした。

 さて最大のポイントは、この特別検察官の法的立場と権限が及ぶ範囲です。わかりやすくいえば「解任」される恐れがあるかどうかです。

 まず現行の特別検察官(special counsel)とは1999年に制定された連邦法により設置され、米大統領や閣僚や政府高官が関与した事件や疑惑を捜査する独立性の高い役職で、司法長官が司法省の外から臨時に任命します。期限はとくに定められていません。

 特別検察官は捜査権と訴追権を併せ持ち、捜査権だけで訴追権のないFBI捜査官より強大な権限となります。ついでに言えば日本の検察庁も(正確には各検察官が)捜査権と訴追権を併せ持つ「強大な組織」となります。

 特別検察官は任命されると60日以内に捜査予算をまとめ、司法長官から承認される必要があります。また特別検察官の捜査は日常的に監督を受けることはありませんが、「捜査や訴追に向けたあらゆる進展」を司法長官に報告することになります。

 今回のモラー氏はローゼンスタイン副司法長官が任命していますが、これはセッションズ司法長官自身が「ロシア疑惑」に関与した可能性があるため、この捜査に関与できないからです。したがって報告もローゼンスタイン副司法長官に行うことになります。

 つまり現行の特別検察官の立場と権限は「結構あやふや」であり、しかもトランプ大統領の指揮下にある司法省の権限が大きく残されているように思えます。実際に現行の特別検察官が任命されたケースは1度しかなく、しかもテキサス州のカルト集団に絡む捜査というローカルなものでした。
 
 あまり過大な期待をかけない方がいいかもしれません。司法省が(トランプ大統領が)早期の幕引きを狙って任命した可能性もあります。

 ところで1999年までは独立検察官(special prosecutor)という役職があり、はるかに強大な権限と独立性を保証されていました。

 これはニクソン大統領が1973年10月20日に、ウォーターゲート事件を捜査していたコックス特別捜査官を解任してしまった反省から1978年に制定されたものです。コックス解任については3月31日付け「土曜日の夜の虐殺(Saturday Night Massacre)とは?」に書いてありますが、結局ニクソンも1974年8月に辞任に追い込まれました。

 ところがこの独立検察官の強大な権限は時の政権にとっても大きな恐怖となりました。クリントン大統領のアーカンソー州知事時代の「ホワイトウォーター疑惑」を捜査するために任命されたケネス・スター独立検察官は、その潤沢な予算を使ってホワイトハウスを責め立て、途中で出てきた大統領のセクハラ疑惑で史上2例目の大統領弾劾裁判にまで持ち込んでしまいました。

 それで独立検察官制度は1999年に失効して、現行の「結構あやふや」な特別検察官制度となったわけです。結局のところ「ロシア疑惑」はうやむやになり、トランプ政権の政治・外交を一層停滞させる結果にしかならないと感じます。

 トランプの命運は、来年(2018年)11月の中間選挙で大敗し、民主党が過半を占める下院が発議して弾劾裁判が招集されるまでは「安泰」と考えます。弾劾裁判は上院の3分の2以上の賛成で罷免となりますが、今のところ中間選挙後でも罷免は難しいと考えています。



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コメント
下層の反乱
 マスコミの印象操作が失敗した選挙でトランプ政権が生まれたわけです。支持率もマスコミの眉唾情報です。
 さて、国民はどういう判断をするのでしょう。
ロシアゲートは、大事の前の小事  -ロシア抜きに、IS、北朝鮮、中国にどう向き合うのか?-
●「ロシアゲート」問題の背景として、米指導層の中に「ロシアは中国よりも悪であり、害毒である」という大前提がある。しかし東西冷戦はとうの昔に終わっており、現実を見る必要がある。
●ISの台頭、北朝鮮危機、中国の覇権拡大等の国際情勢の大問題は、事実上の「米露同盟」を以て当たる以外に解決できない。
●ロシアと結ばない事は、即ち中国と結ぶ事を意味する。その結果米国は、将来中国と激突するか、飲み込まれるのを甘受するかの選択を迫られる事になるだろう。

◆「ロシアゲート」◆
トランプ大統領は、「ロシアゲート」で窮地に追い込まれ、弾劾の可能性も出てきた。
ロシアゲートの発端の一つである、フリン元大統領補佐官の就任前のロシア政府関係者との外交交渉が問題とされたのは、端的に言ってそれが法令で禁じられていたからである。
しかしながら、例えば北朝鮮問題で5月9日、北朝鮮外務省で対米交渉や核問題を担当する崔善姫(チェソンヒ)米州局長とノルウェーで非公式接触を開始したのは、米国の民間代表団であるとされているが、これは特に問題とされておらず、このような例は米国外交史で枚挙に暇がない。
即ちこれは、より大きな国益のためには、形式的な法令違反は問題とされるべきではないという原則が働いたからである。

もう一つの大きな柱は、ロシアが、昨年の米大統領選にトランプ陣営と共謀して干渉したとされる問題である。
これについては、ロシアが干渉したのか、したとすれば具体的にどの様なものか、またトランプ陣営が共謀していたのか、していたとすればどのポジションの人物が、どの様な行動をしたのかが、現時点で具体的な証拠と共に示されていない。
この問題は、上記のフリン氏の件に比べて遥かに大きいものの、筆者はこれについてもその違法性の大小と外交上の得失が比較衡量されて判断されるべきと考える。

そもそも、「ロシアゲート」問題の背景として、米指導層の中に「ロシアは中国よりも悪であり、害毒である」という大前提がある。
しかし東西冷戦は、とうの昔に終わっており、米マスコミ、上下院議員、知識層、ビジネス界のリーダーは現実を見る必要がある。

◆中国を取るのか◆
ISの台頭、北朝鮮危機、中国の覇権拡大等の国際情勢の大問題は、事実上の「米露同盟」を以て当たる以外に解決できない。

ISの撲滅の完遂は、ロシア軍抜きに出来るのか?
中東問題の解決は、イスラム・スンニー派、シーア派諸国、イスラエルとの複雑なパズルをロシアを外して解く事が可能なのか?
北朝鮮の核開発、大陸間弾道ミサイルの問題の解決は、平和裏に収めるにせよ、戦火を交えるにせよ、ロシアの関与抜きに行えるのか?

今や世界の工場を超えて世界のマーケットとなった中国とビジネスで繋がることは、確かに産業面で遅れているロシアと結ぶより、米国の利益となる。
しかし、それは主にグローバル企業の、また現時点での利益である。
中国を不公正な通商でグローバル企業と共に肥え太らせて、米国民の経済的利益と安全保障が守られるのか?

身も蓋もないが、「良い国と結び、悪い国を避ける」と言うのが外交ではない。
「悪い国と、より悪い国があって、そのましな方の悪い国と結ぶ」といのが外交の要諦だ。
形式的ながら、民主主義が取り入れられているロシアと、形式的にも民主主義が取り入れられていない中国のどちらがましなのか?

残念ながら、この地球はヘブンではないので、皆等しく仲良くというのは成り立たない。
ロシアと結ばない事は、即ち中国と結ぶ事を意味するのが国際情勢の厳しい現実である。
その結果米国は、将来何れかの時点で、太平洋上で中国と激突するか、飲み込まれるかを甘受するかの選択を迫られる事になるだろう。
No.1の軍事大国が、No.3の大国と組む事無しに、勃興するNo.2の大国の覇権は押されられないというのが、概ね古今東西の歴史が示す所だ。

更に言えば、国益だけの問題ではない。
そもそも正義とは何か?
平時には、既存の秩序を守る事が正義となる。
一方、激動の時代には、既存の秩序を破壊し新しい秩序が台頭した場合、その新しい秩序が齎す多くの人の幸福の総和から、変化に伴う破壊と流血の不幸を差し引いたものが、既存の秩序のそれを上回った場合に正義とされるべきだろう。

現覇権国である米国は、少なくとも今後数十年単位の世界秩序の具体像を描く責任がある。
筆者は、米指導層が深い洞察の下、歴史的大局観を持ってロシアゲートに対処することを望む。
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