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意外に「本音」が出ているイエレン議長の議会証言

2017年07月14日

意外に「本音」が出ているイエレン議長の議会証言


 FRBのイエレン議長は昨日(7月12日)、米下院の金融サービス委員会で証言しました。これはハンフリー・ホーキンス法で定められた年2回の議会証言で、本日(7月13日)は上院の銀行委員会でも同じように行われます。

 またイエレン議長のFRB議長としての任期は2018年2月3日までで、再任されないとすれば今回は最後の議会証言となります。再任の可能性は依然として「ほとんどない」と思われ、イエレン議長本人も今回が最後であることを意識した発言も多かったようです。

 今回の議会証言は、全体的には警戒されていたほどタカ派ではなく、安心したNYダウは21532ドルと3週間ぶりの史上最高値となりました。その一方でドルはやや下落し、7月11日の1ドル=114円台半ばから一時112円台となりました。

 それではイエレン議長の議会証言のどの辺に「本音」が出ているのでしょう?

 まず金融政策の目標としての「2%のインフレ目標達成に注力する」は従来から変わっていません。この目標が設定された時期は意外に新しく2012年1月25日のFOMC後に発表された「長期目標と政策戦略」で、個人消費支出(PCE)デフレーターの総合指数(コアではない)を前年同月比で2%上昇させることを長期目標として現在に至ります。

 しかしこの目標は設定直後を除きほとんど実現しておらず、トランプ効果もあった本年2月に2.1%となったもののわずか1か月で下落に転じ、最新の5月分は1.4%まで下落しています。

 そこでイエレン議長は「インフレ率が目標の2%を持続的に下回り推移するリスクを認識している」「インフレ指標が過去数か月、激しく低水準にとどまっていることを認識している」さらに「人口の高齢化が労働参加率への下押し圧力となっている」と述べ、インフレ率の低迷が目先だけではなく長期的となる可能性も認識しているようです。

 ところが「一時的要因がインフレの上昇を抑制している模様」「米インフレ率が今後数年で2%の上昇軌道に乗っていないとの判断は時期尚早」とやや唐突に付け加えて、現在の年3回とする利上げペースを維持してしまいました。これははっきりそう断定したわけではありませんが、そうとしかとれません。

 ところが市場は、この「現在のインフレ率は目標を下回っている」ところに過剰反応し、今回の議会証言は「警戒したほどタカ派ではなかった」と受け取ったようです。しかしよく考えてみるとイエレン議長は(やや持続不能と思われる)年3回の利上げペースを維持したままとなります。

 さらにFRBの保有資産縮小については「年内に開始する(9月からとは特定していません)」「バランスシートは2022年までに通常水準に戻る可能性(を想定している)」と述べています。

 ここで現在のドル紙幣発行残高が1.5兆ドル以上あるため、FRBのバランスシートの適正規模とは2兆ドルほどと考えられます。そこで現在の保有資産が4.5兆ドルであるため、保有債券を2.5兆ドルほど減らす(とりあえずは償還分を再投資しない)必要があります。6月のFOMC後に示された縮小スケジュールもやや急激すぎると感じますが、確かにその通りに(急激に)縮小させると2022年頃には2兆ドルのバランスシートになります。

 つまりイエレン議長は自身が再任されないことを念頭に、利上げペースと保有資産縮小を「強引にでも」市場に認識させておくつもりで、それに多少のリップサービスを加えてショックを和らげているだけとなります。

 さらに今回の議会証言では「FOMCは米国債のみで構成されるポートフォリオに戻す意思を明確にした」とわざわざ強調しています。FRBは現時点で2.5兆ドルの米国債と1.8兆ドルのMBS(住宅ローン担保証券)を保有していますが、確かにFRBの発行するドル紙幣は保有する米国債を無利息・小口・無記名に分割したもので、住宅ローンを分割したものではありません。

 本誌も何となく米国債とMBSを同じようなペースで縮小すると考えていたのですが(MBSは毎月少しずつ期限前償還されますが全体の償還期限は米国債よりずっと長く流動性も落ちるから)、資産縮小はそのMBSが中心となるようです。

 これはそもそもリーマンショック時に市場で全く買い手がいなくなっていたMBSを、当時のブッシュ政権が無理やりFRBに押し込んだのが量的緩和の始まりであり、イエレン議長は「そんなMBSはもう処分しますよ」とはっきりと釘を刺したことになります。

 さらに「自分(イエレン議長)の知る限りでは、FRBは地方債や学生ローン関連債務を購入することを検討していない」とも唐突に付け加えています。これも最近になって一部州政府の財務状況や学生ローンの延滞率が悪化しているため、「FRBはそれらの受け皿にもなりませんよ」と釘を刺しているわけです。

 その辺を考えると表題にあるように「意外に本音が出ている」と感じます。さて本日の上院では何が飛び出すのでしょう?


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コメント
市場参加者の感覚ですと「自然利子率が低くとどまるならば、利上げを急ぐ必要はない」というところもハトに移ったように思えます。また資産価格についての言及がなかった点もタカ姿勢後退かなと。
全般的には仰る通り「正常化したい」という本音は垣間見えるものの、最近のインフレ率のトレンドやピークを過ぎた景況感を見て流石に慎重になっているというところでしょう。個人的には、あのまま強気で利上げをすれば米経済にはブレーキと思っていましたが、今回程度のスタンスであれば経済にはあまり圧力がかからないと思っています。
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