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やっぱり差し止まらなかった出光興産の公募増資 創業家に残された方法は?(追加記事あり)

2017年07月20日

やっぱり差し止まらなかった出光興産の公募増資 創業家に残された方法は?(追加記事あり)


(お知らせ)

 本日(7月20日)は新しい記事はお休みさせて頂きますが、昨日の記事の最後に「追加記事」を付け加えてあります。以下、本文です。


 7月5日付け「出光興産が公募増資発表 創業家の差し止めに対する裁判所の判断は?」の続きですが、本日(7月18日)に東京地方裁判所が創業家の差し止め請求を(予想通り)却下しました。

 東京地方裁判所は「支配権をめぐる争いにおいて出光の経営陣が自らを有利な立場に置くという不当な目的が一応認められる」としたものの「新株発行の主要な目的であるとまでは断定できない」とし、新株発行が「著しく不公正な方法」により行われたものであるとは言えないとの判断を下しました。

 さすがに裁判所も創業家に対しては、その辺の「乗っ取り屋」の請求とは同列に扱わなかったようですが、それでも資金需要を前面に出すと新株発行は差し止まらないものです。

 創業家は同日、東京高等裁判所に即時抗告を申し立てましたが、何しろ新株の払込日が7月20日であるため(注)、東京高等裁判所は明日(7月19日)までに判断しなければなりません。もともと高等裁判所の判断はより保守的であるため、本日の決定が覆ることはありません。

(注)発行IRによると払込日は7月20~26日のいずれかとなっていますが、発行価格決定日の5営業日後ともなっており、発行価格は7月12日に2600円(払い込み価格は2489.36円、差額は証券会社の取り分)と決定されているため20日が払込日となります。

 つまりこのままだと創業家側の持ち株比率が26%ほどとなり、昭和シェル石油との経営統合を承認する株主総会で拒否権が使えず、また経営統合も株式交換となるはずで創業家の持ち株はさらに薄まってしまうことになります。

 それでは創業家側はもう打つ手がないのでしょうか?別に本誌が依頼されているわけではありませんが、以下はほんの「お節介」です。


ポイント その1)

 出光興産は2016年12月19日に、昭和シェル石油の117,761,200株(議決権の31.3%)を1株=1350円でロイヤル・ダッチ・シェルから購入していますが、その日の昭和シェルの株価は1147円でした。つまり時価より1株=203円、総額で239億円も「高く」買っています。

 この分を会社(出光興産)に返還させるべく現経営陣に株主代表訴訟を提起します。もちろんこの昭和シェル石油株の購入には、いろいろな経緯があることはよく理解していますが、そこは無視して「時価より高く購入した」事実だけを強調します。

 実際には株主(ここでは創業家)がまず出光興産の監査役会に訴訟提起を求め、3か月間たっても会社(ここでは出光興産)が行動を起こさなければ、株主が正式に株主代表訴訟を提起できます。

 そんな株主代表訴訟など勝てないだろう?となるかもしれませんが、それは重要ではありません。裁判は長く続くため、出光興産のサラリーマン経営陣にとっては相当のプレッシャーとなるはずです。また訴訟費用も(保険がありますが)自分持ちです。そのプレッシャーが目的です。


ポイント その2)

 今回の新株発行を発表する直前である7月3日の出光興産株の終値は3260円、発行済み株数は1億6000万株なので時価総額が5216億円でした。そして本日(7月18日)の終値は、新株発行が差し止まらなかった影響もあって2646円、時価総額が4233億円となり、実に創業家を含む既存株主の株式価値が総額983億円も失われています。

 これを出光興産に損害賠償請求を行います(もちろん保有株式分だけです)。現在の法解釈では、株主の損害賠償請求が認められるのは経営陣に不正があったとき(また不正を知って止めなかったとき)に限られます。

 もちろん新株発行は不正ではありませんが、そこで東京地方裁判所が本日の決定に入れた「不当な目的が認められる」を利用させてもらいます。まあ不正と不当はかなり違い、そんなこと認められないだろう?となりますが、それも重要ではありません。会社が損害賠償を求められたときは、その不正があった経営陣にその分を請求する訴訟を提起するもので、これも出光興産のサラリーマン経営陣に対する相当のプレッシャーとなります。

 ましてやその1)にある昭和シェル石油株を購入した際の1590億円の借入金返済が、今回の新株発行の主要目的となっているはずで(本日の裁判所の決定文にも書いてあります)、その1)とその2)は関連付けられます。

 要はこの2つのプレッシャーを出光興産の経営陣にかけることにより、昭和シェル石油との経営統合を思いとどまらせるわけですが、これだけなら「危なっかしい話」です。

 そこで次が最も重要となります。


ポイント その3)

 それでは昭和シェルはどうすればよいのでしょう?昭和シェル株式ではなく、昭和シェルそのものをどうするのか?です。

 出光興産はすでに昭和シェル石油の議決権の31.3%を保有しています。これをももう少し買い増します。できれば40%超としたいのですが、とりあえず33.4%以上とします(TOBが必要です)。そして遠慮することなく経営陣を送り込み、支配してしまいます。もちろん昭和シェル石油も抵抗するはずで委任状争奪戦となりますが、31.3%をすでに抑えていることは大きいはずです。

 つまり融和的な経営統合ではなく、大株主として昭和シェルを支配してしまいます。ルノーは日産自動車の44%(当時)を保有しただけで、日産自動車を見事に食い尽くしてしまいました。これが外国企業にできて日本企業にできないはずがありません。そして同業企業を支配するメリットは大変に大きいはずです。

 つまり創業家は出光興産のサラリーマン経営陣にその1)とその2)のプレッシャーをかけ、その3)に方向転換させればいいだけです。その方が創業家だけでなく、出光興産にとっても出光興産の株主にとってもはるかにプラスが多いはずです。

 出光興産の創業家の皆様におかれましては、どうぞご自由に参考になさってください。


(以下、追加記事です)

 東京高等裁判所も本日(7月19日)夕刻、創業家側の新株発行差し止め仮処分の申し立てを却下しました。前日(7月18日)の東京地方裁判所の決定(同じく却下)に対して創業家側が即時抗告を申し立てていましたが、決定文作成も含めてちょうど1日で却下されたことになり、新しい判断は何も加えられていないようです。

 これで明日(7月20日)の朝一番には、幹事証券会社から出光興産に新株発行代金が送金され、4800万株の新株が発行されることになります。

 創業家側の代理人弁護士は「数多くの一般株主に犠牲を強いながら(新株発行を)強行することは、株主の信頼関係を損なうもので許されない。経営陣に強く抗議し、今後も合併に断固と反対し続ける」とコメントしています。この点に対して(だけ)は本誌も賛同しますが、その是正を司法判断に期待することも無理があり、長々と書いてきたような「お節介」な記事となるわけです。

 昭和シェル石油と融和的に経営統合する必要はなく、大株主の立場から(足りなければ買い増してでも)昭和シェル石油を力で支配するべきと考えます。ルノーが日産自動車の44%を所有するだけで、日産自動車をきれいに食い尽くしていることを参考にすべきです。同業他社を支配下に入れると、それだけメリットも大きいはずです。

 出光興産は、すでに手に入れている「昭和シェル石油に対する圧倒的に有利な立場」をもっと利用することが、株主に対する最善の方法です。出光興産が昭和シェル石油の株主(あのアラムコもいますが)を気にする必要は全くありません。


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コメント
判決を受けて出光の株価は急落しましたが、出光の現サラリーマン経営陣は誰の為に経営しているのでしょうか。
昭和シェル
昭和シェルの仕入先はサウジアラムコのようです。
東証にサウジアラムコが上場し、日本でのプレゼンスを強化する流れで、昭和シェルと出光を合併させ、仕入先をアラムコに集中させてくるとすれば、絶賛衰退中の日本にとって、こんな嬉しいことはありません。アラムコの主要拠点とされた日本で石油が一滴も手に入らなくなるということは考えられないからです。それは中国が尖閣や南シナ海でアラムコの油を載せたタンカーをシャットアウトして、サウジと衝突することになってまで、日本を海上封鎖することは考えられなくなるからです。
出光興産は日本民族資本が海外で原油を調達してくるために設立されましたが、中国と日本の海洋衝突を乗り越えて、日本に原油を持ち込めるだけの力があるか疑問です。それならば、アラムコの背景のサウジの政治力に期待する方が良いと思います。
また、アラムコとしても、イラン原油の窓口になりうる出光を自分の陣営に加えることで、イランへの圧力を強化できます。中東まで日本人が原油を買いに大冒険した時代から、中東が日本に原油を売りにやって来てくれる時代に変わりました。出光は産油国への日本側窓口でしたが、今後は日本国への産油国サウジ側の窓口となるのです。
原油を日本が安定輸入できる体勢を作りたいものです。
昭和シェルの取引関係を出光は積極的に引き継ぐので、吸収合併するのではなく、対等合併するのでしょう。出光は不測の事態に備えて内部留保を厚くし、独自の動きができるようにしてきましたが、今後は不測の事態(恐らく対中国)では日本政府とサウジ政府の政治力に頼ることになります。中国の圧力を前に独自のすばしっこい動きができるとは出光の現経営陣は思わないのでしょう。(創業家は日本政府とサウジ政府だけでなく、独自にロシア政府も頼るつもりだったかもしれません。)独自の動きをしないなら、利益に占める配当率は引き上げられるでしょう。
対等合併かどうかは合併後の動向で変わります。
片方に不祥事が見つかれば人事を一掃して吸収合併につながります。もしくは不祥事の言い合いになるか。

用心のために買い増しておくのもいいでしょう。
昭和シェル石油を買うのは創業家でもかまわないと思います。
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